テニスのお姫様   作:GON2929

1 / 1
越前リョーカ

「リョーカ、青春学園に行ってこい」

 

「...は?」

 

 

 

大きな庭にぽつんとあつらえられたテニスコートの片側に、大量の汗を流した小柄な少女が地に伏せていた。

彼女の名は越前リョーカ、先日、アメリカJr.大会四連続制覇を成し遂げたばかりだ。

そんなリョーカは内心不満をもつ。

目の前に飄々と立つ男は、リョーカと打ち合いを始めて数時間、汗一つ流さず、更にその場所から一歩も動いていないのだ。

 

自分と男の実力の差は大きく、果てしない。

だからこそ、リョーカは何としてでもこの男に勝ちたいのだ。

 

 

 

言われた言葉の意味が分からず、再び男を正面からとらえるが、男...南次郎は普段とは一変して真剣な表情をリョーカに向けていた。

 

 

南次郎はいつも唐突に物事を進める。

その昔、突然リョーカの兄貴を紹介され、さらに引越しにより突然引き離された過去もある。

 

そういえば青春学園って、確か日本のJr.ハイスクールで親父がそこのOBだと聞いた事がある。

親父の強さの秘密...もしかしてその青春学園にあるのかもしれない。

 

知りたい、親父がどんなところで育ったのか。

 

そうしてリョーカは、日本へと旅立っていった。

 

しかしこの時リョーカは知らなかった、まさか自分がJr.大会の時と同様、【越前リョーマ】という偽名を使って、【男】として入学することになろうとは。

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

「ダーハッハッハ!!似合ってんじゃねーかリョーカ!いやリョーマくん?」

 

 

南次郎の下品な笑い声に、朝からリョーカの機嫌は急降下した。

 

 

「こら、南次郎さん!リョーカちゃんをいじめちゃいけません!」

 

菜々子の制止も聞かず、南次郎の笑い声は止まらない。

 

リョーカは青春学園中等部の学ランを着ていた。

一応まだ中学一年生であるため、女であるリョーカも成長する見込みがある。

その為少し大きめのサイズを購入したのだが、思ったよりブカブカになりその姿をみて南次郎は笑い転げていた。

 

「もう、南次郎さんたら!

リョーカちゃん、気にしなくていいのよ」

 

菜々子は越前家に下宿している従姉妹の女子大生で、リョーカは何かと世話になっている。

そして常識人だ。

男として中学校に入学すると聞いた時も、彼女は余りの事態に気絶してしまった。

男のふりをしていた方が何かと都合が良い事をリョーカも分かっていた為、南次郎に言われるがままなリョーカを彼女は必死に止めた。

しかし時すでに遅く、入学手続きを済ませた後だった。

 

そんなこんなで日本でのアレコレを面倒みてくれる菜々子にリョーカは感謝しっぱなしだった。(特に南次郎を諫める件)

 

 

「リョーカちゃんはお昼に大会がありますよね?」

 

 

この日、リョーカは一つジュニアテニスの大会に出場申し込みをしていた。

日本での腕慣らしに申し込んでみたのだ。

 

うん、と返事をすると、菜々子は畳まれたリョーカのテニスウェアを手渡してくれた。

 

「頑張ってくださいね、初の日本の大会!」

 

「...よゆーだと思うけど」

 

リョーカは未だ笑っている南次郎を冷たい目で見つつ、部屋に着替えに戻った。

 

 

 

「南次郎さん...」

 

「んあ?何だ?」

 

「リョーカちゃん、きっと不安ですよ。

こういう時こそ父親として何か声をかけるべきじゃないのですか?」

 

不満げな顔を向ける菜々子に、欠伸を噛み殺しながら、南次郎は返事をした。

 

「いんや、あいつにそんなもんいらねーよ」

 

「けど...」

 

言い淀む菜々子に南次郎は視線を向ける。

 

南次郎の瞳にはリョーカへの不安など一ミリも写ってなかった。

それどころかリョーカがこれからどう成長するのか、期待に溢れている。

 

 

「何たって俺の子だからな」

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。