インフィニット・ストラトス 重力戦線   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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02.地上のIS

俺がアリーナに降り立つと、そこには既にオルコットがいた。彼女は、蒼い機体に身を包んでいる。

 

ーーデータベースと照合完了。イギリス製第三世代型試験機、ブルー・ティアーズ。特殊兵装有り。

 

陸戦型ガンダムからの情報が直に頭に流れ込んでくる。第三世代機か…………陸戦型ガンダムは安定性と継続戦闘力などその他諸々が普通の機体よりも上だが、所詮は第二世代型だ。しかも、"跳躍"はできても"飛行"はできない、本当の意味での陸戦型。スラスターはあるが、滞空はできない。故に、地上でオルコットを見上げている。

 

「遅かったようですわね」

「すまんな。一夏の野郎の機体が届かず、変更までに時間がかかっただけだ」

「別に、そんな事はどうでもいいですわ。それよりも、貴方に最後のチャンスをあげます」

「何…………?」

 

チャンスだと? PICを切って、地上戦でもしてくれるのかい? それなら嬉しいんだが。

 

「今此処で、泣いて謝るのでしたら、許して差し上げますわよ」

 

そのセリフに俺は、オルコットのアホさ加減に頭を抱えそうになった。まあ、女尊男卑のこのご時世だ。こんなやつも多かれ少なかれいるだろう。

 

「残念だが、その要求だけはのめない」

「そうですか…………ならばーー」

 

ーー敵、六十七口径特殊レーザーライフルの初弾エネルギー装填を確認。回避してください。

 

「ーーお別れですわね‼」

「見え透いた攻撃をどうも‼」

 

俺はその場から一歩後ろに飛び退く。その直後、俺のいた場所をレーザーが貫いた。

俺も対抗するべく、右手に100mmマシンガンを装備する。戦車砲クラスの弾丸が、オルコットへ飛んで行く。

 

「なかなかやるようですわね…………‼ ですが、此処からは私の奏でるワルツ、その独壇場ですわ‼」

「中二病、乙‼」

 

レーザーは絶え間無く俺を狙って飛んできやがる。避けるために俺は、走る。とにかく走る。たまにブーストもするが、走る。マシンガンも結構当たっているようだが、中々落ちる気配はない。

 

「そ、その銃は、マシンガンなんですの⁉ 明らかに、戦車砲の直撃と同じ威力ですわ‼」

 

結構ダメージは入ってるみたいだ。だが、それでも落ちないのは、エネルギーに余裕があるからなのだろう。多分、六百くらい。

 

「ああ、マシンガンだぞ。それも片手で撃てるサブマシンガン」

「有り得ませんわー‼」

 

オルコットが何か叫んだようだが、俺はそのライフルに驚いているぞ。それってスナイパーライフルの類だろ? スナイパーライフルって、そんなバスバス連射できんの?

 

「これ以上はやらせませんわよ…………行きなさい、ティアーズ‼」

 

オルコットがそう叫ぶと、両肩のあたりに浮いているユニットから四つのパーツが外れる。そして、こちらにその全てが飛んでくる。

 

「おいおい…………四基もビットがあるのかよ。どうやって、避けろっていうんだ?」

 

飛んできたものーービットの先端にはスリットが入っている。つまり、

 

「ぬぅっ⁉」

 

レーザーが放たれるわけだ。レーザーは俺の顔の真横を通り抜けていった。幸いにも、ダメージはない。

 

「さぁ、此処からが私のターン。華麗に踊りなさい」

「俺は踊るのは無理なんだよ‼ 胸部マルチランチャー、スモーク‼」

 

ーー胸部マルチランチャー、スモークグレネード装填完了。

 

「こいつはどうだ‼」

 

胸部マルチランチャーよりスモークグレネードが放たれ、煙幕が張られる。いくらISのハイパーセンサーがあろうとも、人間の目視による判断が重要になる。

スモークを張ったおかげか、レーザーは飛んで来ない。俺は、この隙に六連装ミサイルランチャーを左手に装備、赤外線シーカーをオルコットに合わせる。

 

「そこだぁぁぁぁっ‼」

 

ミサイルを二発撃ち込む。スモークの中を突っ切って、ミサイルが何かに直撃する。その爆発によってスモークが晴れる。

 

「小癪な手を使ってきますわね‼」

「ティアーズが二基落ちただけか‼」

 

どうやら、オルコットはティアーズを盾にしたようだ。だが、それでもダメージは入っている。その証拠に、彼女の顔には焦りが見て取れる。

俺は再びマシンガンを撃ちつつ、たまにミサイルを放つ方向に切り替えた。

 

「捉えました‼」

「ぐっ…………‼」

 

右肩のフックをビットのレーザーが掠めていった。シールドもごく僅かだが、削られた。だが、陸戦型ガンダム自体装甲が硬いため、ダメージとしては表面が焦げたくらいだろう。俺も、負けじと近くに飛んできたビットを膝蹴りで破壊する。

 

「残り一基‼」

「やるものならやってみなさい‼」

「うおぉぉぉぉぉぉっ‼」

 

俺はミサイルを撃ち切ると、左手にもう一丁のマシンガンを取り出す。まるで、2丁拳銃のように俺はマシンガンを放つ。反動が手にじんじんと伝わってくる。

 

「くっ‼ この程度、なんとも有りませーー」

「よし、ビットを全て破壊したぞ‼」

 

別にオルコットを狙ったわけじゃない。厄介なビットを破壊するためだ。残りのビットを破壊し、残るは隠し球だけだ。だが、代わりにマシンガンが両方とも残弾ゼロ。仕方なく、格納する事にした。

こうなると、遠距離からの攻撃は無理だ。俺は、スラスターをふかして、オルコットへ飛んで行く。

 

「ーーかかりましたわね」

 

その時、オルコットの口角がつり上がった。

 

「あいにく、ブルー・ティアーズは六基ありましてよ‼」

 

その言葉と共に腰の突起が外れ、俺へと向かってくる。あれはミサイルか。だが、これくらい想定済みだ。

 

ーー胸部ガトリング砲、掃射。

 

胸部ガトリング砲による射撃でミサイルを迎撃、撃ち落とす。その時に生じた爆煙を突っ切って行く。

 

「これで終わりーー」

「最後まで隠し球を持っていたのはいいが、油断は禁物だぜ?」

「‼ 何故⁉」

「あいにく様、固定兵装があるものでな」

 

俺は胸部ガトリング砲と胸部マルチランチャーの照準を至近距離のオルコットに合わせる。

 

「少し痛いが、まあ我慢しろ」

 

ーー胸部ガトリング砲、胸部マルチランチャー、一斉射撃。

 

多数の弾丸が、オルコットを襲う。俺は重力に引きずられ地表へと落ちて行くが、照準はずらさない。圧倒的連射速度の胸部ガトリング砲によって、ダメージは一気に蓄積されるだろう。

しばらくして、オルコットが意識を失った事を知らせるアラートが鳴った。俺は、落下してくる蒼い機体を両腕で受け止めた。

 

「まぁ、これ以上はやめておくか」

 

少し、灸を据えてやろうかと思ったが、それはやめた。なぜなら、彼女の顔には憑き物が取れて楽になった、そう語っているような安らかな笑顔をしていたからだ。

 

『勝者、雨田士郎』

 

そのアナウンスと共に、アリーナは歓声に包まれた。

 

 

 

 

 

「今戻ったぞ」

「凄いな、士郎‼ 代表候補生に勝っちまうなんてさ」

「そうか?」

「そうだろ。だって、千冬姉の量産型みたいなもんだろ?」

 

ビットに戻ると、一夏のぶっ飛んだ発言を聞いてしまった。は、ブリュンヒルデの量産型だと⁉ そんなものがあったら、戦争になるぞ⁉

 

「…………せめて、劣化コピーと言え。てか、誰だ、そんな事教えたやつ」

「私だ」

「お前か、箒さん‼」

「まぁ、落ち着け雨田。とりあえず、よくやったな。織斑の機体も届いたところだが、お前が戦う必要はない」

「なんで、そうなるんだよ千冬姉ーー」

 

突然、戦車砲のような音がピットの内部に響き渡った。ん⁉ 何が起きたんだ⁉

よくみると、潰れたカエルのようになっている一夏と、煙をふいている出席簿を持ったブリュンヒルデの姿が…………。出席簿、何でできているんだ?

 

「織斑先生だ。第一、雨田はクラス代表に立候補してない。よってだ、お前はオルコットとのみ試合を行う。いいな?」

「…………はい、織斑先生」

 

一夏がのされているのを尻目にみながら、俺はピットを出て行く。

 

「雨田、一体どこに行くのだ?」

「ん? 見舞いだよ、見舞い。そろそろ目を覚ましただろうよ、あの天狗は」

 

 

 

 

 

(…………うぅん…………ここは、一体…………?)

 

気を失っていたセシリアは、目を覚ました。視界にはいるのは見知らぬ天井。だが、鼻につく医薬品の匂いにより、ここが保健室である事に気づいた。

 

「どうやら、目は覚めたみたいだな、お嬢さんよ」

「だ、誰ですの⁉」

 

突然声をかけられ動揺するセシリア。辺りを見渡すと、声の主は意外と近くにいた。

 

「おおっと、そう身構えるな。俺だ、雨田士郎」

「あなた、ですの?」

 

いたのは、先ほどまで戦っていた士郎だった。

 

「…………この私を笑いにきたのですか。あれだけ大口を叩いてこのザマなんですもの、笑われても当然ーー」

 

セシリアは、どこか陰鬱とした空気で、言葉を紡いで行く。あれだけ大口を叩いたのに負けてしまった、その事は彼女のプライドに大きな傷を作っていた。それが、自分で作ってしまったものだということも、彼女が一番理解している。

だが、士郎はそんな彼女の言葉を切って、口を開いた。

 

「いや、俺は笑ったりしない」

 

彼の口から出た言葉に、セシリアは一瞬理解が追いつかなかった。

 

「誇り高いってのは別に悪いことじゃねえし、あんたは十分な戦いをした。それに、負けを知らないやつなんてのはこの世界にいないさ。誰もが一回は失敗して、そして次に繋げるんだ。あんたはそれで十分さ」

 

その言葉を聞いた途端、セシリアの心にあった傷がすうっと消えていった。いつの間にか、彼女の表情には笑顔が戻っていた。

 

「ふふっ、貴重なお言葉ありがとうございます。少し、話を聞いていただけますか?」

 

そしてセシリアは語り出す。自分が英国貴族の一つオルコットの血を引いてる事。父が母に媚びへつらうような人間だった事。そして、二人はもうこの世におらず、一人で財産を守っている事。

その全てを目の前の男に話していた。

 

「あんたは、守る為に戦ってきたわけだな。高嶺の花のように、自分の家を触れさせない為に」

「はい…………」

 

それっきり二人は、言葉を交わさなくなってしまった。というのも、空気が重すぎて喋れそうにないという、"交わさなくなった"というより"交わせなくなった"状況なのだ。

ふと、何かを思ったのか士郎は胸から銀色の懐中時計を取り出す。だが、時間は決して見ずに裏の蓋を開ける。そこには、士郎と並んで写る金髪の少女の姿があった。

 

「何を見ているんですの?」

「ああ。昔の知り合いだ。会いたいと思っているんだが、何処にいるのか…………フランスにいるってのは確かなんだがな」

「レディの前で、他の女性の話をするのは少々マナー違反ですわ」

「そうなのか? これからは気をつけるよ」

 

セシリアは士郎に注意をすると、柔らかく微笑む。それはさながら、聖母のような美しい微笑みだった。

 

「じゃ、俺はこれで行くとするよ。またなオルコット」

「ええ。それと、私の事はセシリアとお呼びください」

「そっか。じゃ、また明日な、セシリア」

「ごきげんよう、士郎さん」

 

士郎は保健室を退出して行き、セシリアは再び訪れた眠気に負けて眠った。とんだ出会いの仕方の二人だったが、今此処で友情が芽生えたのは間違いではないはずだ。





オリキャラ紹介

雨田士郎(アマダ・シロウ)

国際連合極東方面軍機械化混成大隊、通称コジマ大隊に所属。階級は少尉。何かと問題を起こす第08小隊の隊長を務める。
会いたい人間がいるらしいが、再会はできてないらしい。
最近の悩みは、気が強すぎるカレンとお調子者のエレドアが引き起こす大捕物の始末書。
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