【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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緊急事態宣言の一部解除……ねぇ
少し早い気もするけど、経済活動が滞ってる現状で背に腹は変えられないって事かな……
……たださ、政府が出した保証ってこう……痒い所に手は届いてないんだよねぇ……

さて、前回からの続き……

生まれて始めて、人に殺意を覚えたセファーに呼応し、起動する堕天使。
向かう先はただ一つ……迎えられるべき優しい世界を壊そうとする、悪意ある輩の元へ……


第9話 因果応報、地獄で後悔してね♪

 ジャスレイ・ドノミコルス……

 木星圏を拠点とするテイワズの下部組織の一つであるJPTトラストの頭である

 

 下部組織とはいえテイワズに名を連ねるのならば、相応に相応しい人物であると普通は思うだろう……しかし、彼の本性は「向上心」という名の嘘偽りを被せた、自己中心的な欲望の塊だった

 

 そんな彼は今、火星圏へと船を動かしていた……理由はたった一つ……「逃げるため」である

 

「オイ、親父にはまだ連絡が付かねぇのかよ?!」

 

 彼は最早、いつもの彼ではなかった……それもその筈、彼はテイワズの本拠からこの火星圏に移動するまで、散発的に攻撃を受けていた

 ……それも、本拠を出て半日もしない距離から、この火星圏までずっと……

 

 回数はもう数え切れない、しかも相手はたった1機のMSのみ……なのに撃退はおろか、掠り傷一つ与える事すらできず……

 最初は散発的だった、しかし回数を重ねる事に自分たちの被害は拡大し続け……秘匿戦力だったヒューマンデブリ(身売りされた阿頼耶識保有者)は既に全滅……主力も2/3程にまで減らされており、それも満身創痍……五体満足に動ける機体の方が少ないという悲惨な状況だった

 

「小父貴! 11時方向から急速接近! ……れ、例の白い奴だ!!」

 

 索敵要員からの報告に再び恐怖を煽られるジャスレイ……すでにこのやり取りも両手に余るほど繰り返されていた

 

「動ける機体で迎撃だ! 絶対に近づかせるんじゃねぇぞ!!」

 

 怒声にも似たジャスレイの指示通りに迎撃体制を整えるMS隊だったが、白い流星はその防衛網をあっという間に潜り抜け、その姿を艦橋から肉眼で捉えられる距離まで一気に侵入してきた

 

 ……その姿は荘厳にして繊細、慈悲深く、神々しさすら備える純白の装具に身を包んだ天使そのものだった

 しかし、彼らにとってその姿は死神も同然……このMSはたった1機で木星圏からジャスレイ達を執拗なまでに追尾し続け、時折恐怖を煽るかの様に襲撃を繰り返してはいつの間にか居なくなり、安堵したタイミングを見計らったかのように再襲撃を繰り返していた

 

 虚空を我が物顔で駆け、迎撃をものともせず、展開された弾幕をすり抜けて……瞬く間にジャスレイの乗る船「黄金のジャスレイ号」の艦橋へと超接近してくる

 

「……っ、迎撃のMSは何してやがる!?」

 

 ジャスレイの怒声は最もだが、目の前の相手が相手だ

 この機体を止めろというのが土台無理な話であろう……なにせこの機体は有人機では不可能な加速と軌道を描きながら、先ほど迎撃していた全ての敵機の四肢を破壊してそこに来たのだから……例え抵抗できる状態であっても、この状況では手出しなどできるはずもない

 この堕天使は、艦橋の目の前に立っている……撃てば間違いなく艦橋を巻き込んでしまう

 

 堕天使はその手で艦橋に触れ、接触通信で黄金のジャスレイ号の回線に割り込んでくる

 ……映像は出ないが、通信からはジャスレイのよく知る声が響いてきた

 

「……よぉ、調子はどうだ? ジャスレイ?」

 

「?! お、オルガ・イツカ?!」

 

 通信を聞いた全員が驚愕した……当然ながら「鉄華団」は未だテイワズの傘下……同じ傘下であるJPTトラストに手を出す事など出来る筈がない、いやそんな事をすればマクマード・バリストンを始めテイワズ全体から批難と報復を受ける……そんな事はあのオルガ・イツカ(宇宙ネズミの頭)も分かっている筈だ

 しかし、次に聞こえた声はその予想をはるかに越えた物だった

 

「……残念です……テイワズのNo.2でも、所詮はこの程度の戦力しか持っていませんでしたか……非常に残念ですよ」

 

 女……しかもまだ子供の声……だが、その言葉は子供のソレではない……彼我の戦力差に完全に失望した指揮官の様相であった

 

「……テメェ、何者だ……」

 

「貴方の予想通り、鉄華団の関係者ですよ……まぁ、今は直接的な繋がりはありませんけどね?」

 

 ジャスレイは既に正気を保つのが精一杯だった

 これ程の力を持った敵が、たった1人で此方の戦力をズタボロにした奴が……年端も行かない少女の様な声で、失望したと呆れている……

 

「おや、もう感情制御が崩壊したんですか? やれやれ、貴方は精神も予想以下で面白くも何とも無いですねぇ……」

 

 少女の声がジャスレイの怒りに更なる燃料投下、なりふり構わず通信先の少女の声に反応した

 

「冗談じゃねえ! 俺はテイワズのNo.2、ジャスレイ・ドノミコルスだぞ! こんな……こんな所で終わる筈が無ぇ! テメェは必ず……」

『分かってんだぜ? 名瀬を潰したら次は俺だったんだろ? そんな魂胆くらいちゃあんと知ってんだぜ、俺は……あー、それとクジャン家の御曹司は来ねぇぞ?』

 

 突然ジャスレイの声を掻き消して響いたマクマード・バリストンの声……先程から繋がっている通信から聞こえた予想外の声……更に聞こえてきた声に、ジャスレイは最早絶望するしかなかった

 

『……テイワズの下部組織の一つ、タービンズです……ソレをどうにかすれば……貴方の敵である鉄華団は、必ず動きますよ? そしてその影響はテイワズ全体にも波及し、マクマード・バリストンを叩く絶好のチャンスにもなる……』

 

 史実とは些か内容は違うが、聞こえたのは紛れもなく自分とイオク・クジャンの密会を録音したものだった……つまり、ジャスレイ・ドノミコルスの人生は詰んでいた

 

 脇で必死に外部へと助けを求める通信士だが、その声は外部どころか、今繋がっている回線以外何処にも届かない……全て敵が出すオレンジ色の光……GN粒子によるジャミングによって送信不能だった

 

「……さて、種明かしは以上です……では、さようなら」

 

 ゆっくりと堕天使の右腕が艦橋から離れ、マウントしていた武器を持ち直して構える

 艦長席のジャスレイはその光景に気付き、再び声にならない怒声を上げるが、その声は堕天使の一閃によって引き起こされた爆発に掻き消され、まきこまれないようその場を飛び退いた堕天使は、そのまま向きを変えて虚空へと消えていった……




少しアッサリし過ぎたかな……天罰。(´・ω・)
ともかく、ジャスレイ・ドノミコルスの最後です。

誤字・脱字報告、感想アンケートもどうぞ。

ジャスレイの最後、どうですか?

  • これで良い
  • もう少し、絶望と恐怖を叩き込んで欲しい
  • まだまだ足りない、もっと残酷に!!
  • 絶許!!

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