【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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伝説の機体バエルを起動し、マクギリスは世界の再編に着手すると声明を発する……だがそれは、予見されていた「戦争」の幕開けでもあった


第13話 少女の決意

『このギャラルホルンにおいて、バエルを持つ者こそが、唯一絶対の力を持ち……その頂点に立つ! そして席次や思想など関係なく、その命に従わねばならないのだ!!』

 

 始まった……とセファーは心の中で呟いた

 

──────────

 

「……嘘……だろ、おい……」

「チビ嬢は……コイツを知ってたのか……?」

 

「ねぇ、三日月……セファーちゃん……大丈夫だよね?」

「……わかんない……でも、アイツが一緒なら多分大丈夫だと思う」

 

 全世界に向けて放送されるマクギリスの演説……火星の鉄華団本部事務所でオルガを始めとする主要メンバーは、演説によって何かが変わってしまったと朧気ながらに感じていた……そして、置き手紙1つでこの場を去った1人の少女の身を全員が案じていた

 

「オルガ……アイツは、この事に俺らを巻き込みたくなかったから……ココを去ったんだな」

 

 ユージンが、反芻するかのように事実を口にしてオルガへと語りかけた……オルガは厳しい表情を崩さず、ただ黙って演説を見続けていた

 三日月にしがみ付き、不安な顔を隠しきれないアトラ……三日月は少し前から自分だけが知った事を周囲には伝えないまま自分なりに考えていた

 

(アイツはこうなる事を知ってた……いや、最初から全部知ってたんだっけ……それで、俺たちを巻き添えにしないように動いてた……あそこに俺たちが居たら、必ず皆が不幸になるから……)

 

 三日月の脳裏に、あの夜の出来事が思い出されていた……そして偶然にも彼女の意図に気付いた三日月は、オルガに進言する

 

「オルガ、アイツは俺たちの居場所を守ってくれたんだ……だから今度は、俺たちがアイツの帰ってくる場所を作っておくべきじゃない?」

 

 突然の三日月の進言に、この場の全員がキョトンとする……ただ1人、アトラを除いてだが

 

「そうだよねっ! 三日月の言う通り!!」

 

 アトラも即賛成だと捲し立て、泣きそうで嬉しそうな眼をオルガに向ける

 

「オルガ……」

「団長……!」

「オルガ!」

「団長さん!」

 

「……俺たちも全員、オメェと同じ思いだ……家族を守るのがお前の仕事だって、兄貴(名瀬)にも言われただろ?」

 

 雪乃丞の言葉にオルガも意を決し、神妙な面持ちから一転して「良い漢の顔」で全員に指令を飛ばす

 

「良いかお前ら! 鉄華団はテイワズの傘下にある……だから表立って義妹(セファー)を助けには行けねぇ……だがな、ココでの俺らの頑張りをアイツは見てる! 

 ギャラルホルンの内部は大騒ぎの真っ最中だろうが、アイツはそんな事くらいで目は曇らねぇし、ずっと俺たちを見てるはずだ……だから絶対に泣き言言うんじゃねぇぞ!? 

 アイツの居場所は俺たちと同じ鉄華団だ! アイツが帰ってくるまで、泣き言抜かしたら殺すからな!!」

 

「「「「「応ッ!!」」」」」

 

(セファー……必ず、帰って来いよ……!)

 

 団員たちの猛りの後ろで未だに続く演説に割り込みが入り、ガエリオ・ボードウィンの宣言と、ラスタル・エリオンの声明も流れていたが、鉄華団には全く関係ない話だった……

 そして義妹の思いを汲んで、オルガ達は迷いを振り切って進み出す……その後、鉄華団はその結束力と信頼を武器に著しい成長を遂げ、地球と火星の両方でその名を轟かせる一大企業へと発展するが、それはまだ先のお話……

 

──────────

 

 ガエリオとラスタルの2人がかりで演説に割り込まれ、オマエこそが逆賊だと叩き返されるが、マクギリスは素知らぬ顔で受け流していた

 

「ラスタル・エリオンの差し金か……良いだろう、受けて立とうじゃないか」

 

 こうして、マクギリス・ファリド(地球外縁軌道統制統合艦隊) vs ラスタル・エリオン(アリアンロッド艦隊)という史上類を見ない規模の艦隊戦が始まろうとしていた

 

──────────

 

「部隊の大半は軌道上に上がりました、私達が到着し次第、作戦開始も可能です」

 

「そうか……堕天使くんはどうしている?」

 

「此方とは一定の距離を保ったまま、ずっと追従して来ています……まさかあれから無補給で我々に追従してくるとは思いませんでしたが……」

 

 堕天使ザドキエルは、ヴィーンゴールヴの戦闘後からずっとマクギリス達に単独で追従していた……その間、普通なら補給や整備等が必要なのだが、あの戦闘から堕天使は誰も近寄らせず、また近付こうともしなかった

 

(彼女は「スタンドアローンモード」と言っていたな……文字通り、単独での活動も十分に可能……という訳か)

 

 マクギリスは、宇宙に上がる前……セファーをアルミリアに紹介していた

 そこでひと悶着あり、史実と同じ様にマクギリスは左手を負傷してしまう……しかし、セファーがその場で治療を施し、アルミリアを説得したためか、怪我の程度はかなり軽いものであった

 その時、セファーは堕天使と自分の関係を少しだけマクギリスに伝えていた……堕天使は自分(セファー)の意思をリアルタイムで反映する特殊なシステムで稼働しており

 

(例え(セファー)が死んでも、機体が稼働し続けられる限り堕天使は止まらない……か……)

 

「彼女は、私に何かをさせるつもりなのだろう……だからこそ、私も彼女を買っている。

 それに何より、彼女と堕天使の力は私の予想を遥かに越えてきた……それだけでも十分に意義はある」

 

 マクギリスは薄々ながら、セファーの真意に気付いていた……中身までは分からなくとも、それが自分の道を塞ぐモノではないと感じていたから……

 石動は多少納得が行かないものの、上司に逆らう気はさらさら無かった

 

──────────

 

「……ゴメンね、アルミリアちゃん」

 

 開口一番で謝った、私はマクギリスより先に宇宙へと上がり、MDの最終チェックをしながらアルミリアちゃんとQCCSで会話をしている……最初の紹介の時にあの話をしておくタイミングを失ったのでこうやって補填しているのだ

 理由はまだ語れないけど……

 

『……マッキーが何をしたいのかは分からないです……でも、私はまだ信じたいんです……戦いさえ終われば、元の優しいマッキーに戻ってくれるって……』

 

 マクギリスは世界を……ギャラルホルンを変えるという目的がある

 だがしかし、その為にアルミリアちゃんを初め、ボードウィン家を利用したのは事実だし、それは私も許そうとは思ってない……しかし、今この時点では、そんな彼を逆に私が利用している……だから私は彼女に謝りたかった

 

「……約束する、私が必ず、あの人(マッキー)を連れて帰るから……それまで少し、我慢してて」

 

 できもしない約束だと誰もが思うだろう……でも、私は敢えて約束した

 こうでもしないと、私が彼女に許された気がしなかったから……そして、私はこの約束を違える気はない……

 

『……ありがとう……ございます』

 

 顔を伏せたまま、見られたくないのだろう……でも、確かに聞こえたお礼……

 これで後顧の憂いは断てたと思う……最後の支度をしないと

 

 通信を終えた私は、システム調整からチェックを走らせ、バエルを見上げる

 バエルは良い機体だ……だが、相手はガエリオ君……今度からは偽装のヴィダールじゃない、本来のキマリスで来る……そして、アルミリアちゃんとの約束を果たす為には……

 

(やっぱり、少しは手を加えた方が良いのかもね……)

 

 以前からザドキエル用に考案してあったけど、結局お蔵入りした強化プラン……アレをバエルに使おう……そうでもしないと、約束は果たせそうにない……

 幸い、手持ちのツールは揃ってるし、システム周りの調整は初起動時のデータが使える

 

 ラストスパートだ……此処から先の選択は、私の流儀で行く……!




バエル魔改造フラグが立ちました

と、言う事でアンケート募集します。
お題は「バエル魔改造プラン」

5つあるプランコンセプトからこれならキマリスにも勝てる!
と思うものを選んでくださいね♪

アンケート締切は第14話の掲載と同時になります。
愛読者さんもそうでない方も、奮ってご参加ください!!

……最近、【安価】っていうワード入りの作品にハマってます。
【安価】……いい響きです♪

バエル魔改造計画!!

  • 本来の機動性と近接性能のアップ
  • 弱点である遠距離火力の補完
  • バランスを崩さず基礎能力を向上
  • 一撃必殺の超火力武装を追加
  • 長期戦向けに防御面と継戦能力の向上

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