【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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前回の話は如何だったでしょうか?
しつこいようですが、私は“R-18”的な表現は苦手です。



ラスタル・エリオンとの交渉の場を掴んだセファー
彼女の理想とラスタルの思惑、そしてマクギリスの野望……
3つの思惑が渦巻く宇宙に浸透していく中、堕天使の少女と強兵の長との一騎打ち……その幕が上がる……


第16話 混迷する宇宙(その3)

「はじめまして、といえば良いかな? 堕天使のパイロット君」

 

『そうですね、直接アナタの顔を見るのは私も初めてですし……』

 

 セファーが駆る堕天使は今、ラスタル・エリオンの座乗艦であるスキップジャック級の格納庫に案内されていた

 だが、ラスタルには腑に落ちない点が幾つもあった……

 

 まず第一に、堕天使のパイロットが直接交渉に出たという点……

 堕天使は敵対しているマクギリスが最もアテにしている戦力の1つであり、これまでもギャラルホルンに対し攻撃や威嚇をし続けていた張本人である

 

 第二に、堕天使のパイロットは何故格納庫に来てまで降りてこないのか……

 直接交渉に来たのであれば、直に降りて顔を見合わせるのが普通であり、妥当な状態である……しかし、堕天使のパイロットは一向に降りてくる気配すら見せず、むしろ機体が声と連動した挙動を見せる始末……ラスタルの脳裏に一瞬、試作型の阿頼耶識の件が浮かんだが、事前の調査で生命反応が無い事を掴んでいた為、その線は消えている……だとすれば、この機体は一体どうやって動いているのだろうか……? 

 

 第三に、何故マクギリスの眼を盗まず堂々と交渉に及んだのか……

 この機体のパイロットはマクギリスにアテにされる代わりに、自分の目的を妨害しないという交渉でもしていたの言うのか……? 

 

 考えを纏める間もなく、堕天使から再び声が響いた

 

『まずは自己紹介を……私の名前はセファー、セファー=ザドキエル。

 今までマクギリス・ファリドに故あって協力していた……唯の人間です』

 

「ただの人間、か……此方の想定を軽く上回る性能を持ったMSを操り、我々の作戦の邪魔立てを散々してきた挙げ句、敵対までしてきた危険な存在と同じとは思えんがね」

 

 ラスタル・エリオンは表情こそ平静だが、言葉の節々に怒りや恨みにも似た感情を乗せている……最初はそれでいい、此方の目的を達成させるには、悪感情でも良いから彼の気を惹かないと始まらない

 

『それは……マクギリス・ファリドとの関係の都合としか言えませんね……

 ……私と彼は、対等とは名ばかりの一方的な関係ですので』

 

 セファーの言葉は、穿った見方をすれば「何言ってんだコイツ?」と取れる発言だが、実際は似たようなものである

 対等に見えて互いを利用し合うだけの関係……協力的に見えていたのはこの状況に持ち込む為であり、今の言葉を素直に受け取ったのなら「一方的に働かされた」と思うだろう……だが、ラスタルは違う……

 セファーの言葉を彼女の思惑通りに深読みし、自分の手に乗せやすいようあの手この手を使ってくるはずだ

 

 だから、セファーは敢えて欺瞞を煽りやすい形の言葉を使う……そうやる事で、ラスタルの思惑を利用しながら己の生存戦略を巡らす……

 

(……と、堕天使くんは思っているのだろうな……だが、私はその手には乗らんよ……

 上手く利用できれば、あの堕天使は大きな戦力となる……こちらの思惑を敢えてチラつかせ、利用できると見せかけて此方の手の内へと取り込んでみるか……)

 

 ……とでも、ラスタルは考えてるんだろう……

 残念だがそれは悪手だ、こっちの目的はただ時間を潰す為……もう少しで完成する、バエルの強化プランの為の時間稼ぎだ……最も、ラスタルの出方次第ではこの場で殺れない事も無いけど……

 

「キミは交渉に来たのだろう? だがキミの姿はココには見えない……無理にとは言わないが……降りて来たらどうかね?」

 

 ラスタルの最もな言葉に、あれだけ渋っていた堕天使のコクピットハッチが開放された

 急いでタラップが用意されるが、そこから出てきたのは人間ではなかった

 

『……直接この場に出向く時間と手段が用意できず、この様な手段を用いるしか無かった非礼は重ねて謝罪致します……ですが、誠意を持って交渉に出向いたのはご理解して頂きたい』

 

 そう言ってコクピットから出てきたのは……セファーの容姿を3Dで映し出したそっくりの映像人形だった……この世界には見られないだろう技術の結晶……三次元式多目的投影システムを使った3Dモデルのセファーだ

 

「……驚いたな、そんな技術はギャラルホルンにも残っていない……本当にキミは厄災戦の生き残りという訳だな」

 

 そう言われたのはセファーにとって初耳だった……敵味方を含め、堕天使という名前は外見からくるただの俗称としか思っていなかったからだ

 ラスタルは想定以上にセファーの事を真剣に考察していたのだろうか……

 

『……そうですか、私もその視点でそう呼ばれたのは初めてですので……』

 

 セファーは素直にラスタルの意見に興味を示した

 

「ふむ……まぁ、良い……貴女の現在の境遇は理解した、互いに少々予定が狂った様だが……交渉を始めようか」

 

『えぇ、場所は移動なさるのですか?』

 

「まさか? 私も一介の軍人……噂に名高い堕天使の姿、これ程近くで見る機会に次は無いだろう」

 

 まさかの格納庫で会談OKとかマジっすかエリオン公……

 

「さて……では、まず貴女の交渉目的を伺わせて貰えるかな? 堕天使の少女よ」

 

 ラスタル・エリオンは尊大な態度を崩さず、セファーに対して両腕を開き、交渉の開始を宣言する

 セファーも不敵に微笑み返し、形だけ整えられた交渉のテーブルに着いた……ここからは化かし合いの舌戦……しかし勝つ必要はない……セファーは内心ビクビクしている印象を周りに植え付けながら挑んだ

 

──────────

 

 一方その頃、ダインスレイヴの一斉射で壊滅的な被害を被った艦隊の再編を急ぐマクギリス達の下へ、堕天使の反応が消えたという報告が入る

 

「……アテが外れましたか、いやこれも思惑通りなのですか? 准将……」

 

 報告を聞いたマクギリスの表情は、絶望の色など一切見えない……むしろ状況が好転しているとばかりの感情が口端に見え隠れしていたからだ

 

「石動、お前に今後の艦隊の再編と指揮を任せる……漸く、私が前線へと赴く時が来たようだ……」

 

 後事の指揮を石動に一任させ、マクギリスは格納庫へと移動する……その心には渦巻き溢れる感情が押し込められていた

 

(もうすぐだ……もうすぐ、私の……いや俺の求めた世界への扉が開かれる……)

 

 格納庫へと到着したマクギリスを、ラスタルの前へ姿を見せた先程の映像ではない……本物のセファーが出迎えた

 

「最終チェックと機能類の点検はもう少しで終わるわ、試運転してる時間は……戦闘中なんだから有る訳無いか……」

 

「構わんよ、以前よりバエルの姿が雄々しく見えるな……外見にも手を加えたのか?」

 

 マクギリスの言葉に、セファーは半分当たり、という意味の肯定を示した

 確かに航空力学的に最適化できそうな部分には多少なり手を加えたが、大本の部分は変わらず、装甲材質と新機能の操作系への反映……そして武装面、バエル・ソードの改修が主な内容だ、とセファーはマクギリスに告げる

 

「バエルよ……漸く、新たな力を得たお前の初陣だな……」

 

 新たなる力を得たバエルに感嘆するマクギリスに、セファーは1つ質問をぶつけた

 

「もうこの機体はただの序列一位の悪魔じゃないよ?」

 

 その言葉の裏に、マクギリスは一瞬で思い至り……その言葉を紡いだ

 

「そうだな……バエル、いや『ナトゥム』……」

 

 ナトゥム……ラテン語で「新生」……か、悪くないね……でも……

 

「この装備は一部だけど任意でパージもできるよ、一部の装甲は無くなっちゃうけどね……だから名を変えるのではなく、その名前は追加装備用として登録しようか?」

 

 セファーの意見にマクギリスは「……そうしてくれ、バエルの名の方が呼び慣れているし……やはり呼びづらいと後で思ったからな」とうっかり感を出して来やがった……ホント、バエル馬鹿だねアンタって人は……

 

 新たな力を得たガンダム・バエル……

 初陣から激戦が予想されるだろうが、マクギリスの腕は確かだ……それに、万が一の安全策も弄したし、アルミリアちゃんとの約束……何とかして果たしたい

 

 セファーはチェックを急ぎつつ、堕天使を通じて交渉の行く末を見守っていた

 望んだ未来を造る為に、私はこれからも全力で自己流を貫き通す……私が望んだ未来に、もう少しで手が届くはずだから




今日はお休みだったし、かなり気分がノッてたので1日に2話も投稿しちゃったw

さて、新たなる力……
「ナトゥム」装備セットがバエル専用の換装パーツとして生み出されました。

詳細解説は……どうしようかな……?
ガッツリ紹介したい気もするけど……まずは名前の反響が気になるなぁ……

バエルの新たなる力……どう思います?

  • 新生バエルの活躍が見たい♪
  • その新装備、気になります!
  • ん? バエル強くなったの?
  • バエルって何ですか?(空気感)
  • バエル? そんな事より次の話だ!

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