【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
……マクギリスはバエルを起動させ、反撃の時を待っていた
「……では、そのMA……ハシュマル、と言ったか?
その機体を偶然掘り当ててしまい、処分に困った所にマクギリスとイオクがそれぞれ介入……マクギリスは安全に処理する方法を提供してくれたが、実行前にイオクの部隊がMSで近付いた事で、MAは再起動……
セファーは、ハシュマルの再起動から討伐までの詳細な経緯をラスタルに説明……結果的に討伐の立役者となったものの、鉄華団の立場はあくまでマクギリスとイオクの思惑に巻き込まれた形だと主張した
同時に開示した資料の数々からも、その事は浮き彫りになっている
まぁ、
『そういう事になります……最も、鉄華団が保有する戦力を貴方が危惧しているのは重々承知の上、それに、マクギリスとの繋がりも確かに有りました……ですが、マクギリスと鉄華団の関係は一時的なもので、以降は私を頼っていた……それはお間違えの無いよう』
ラスタルは立体映像のセファーを複雑な感情で眺めていた
この少女の言う事は間違いなく、手持ちの手札では覆しようもないし、例え覆そうとしても更なる理論武装を以て覆される事は明らか……挨拶代わりにセファーから手渡された傭兵ガラン・モッサに関するデータに肝を冷やしたラスタルは、警戒レベルを最大に引き上げたのである
そしてこうも思った……『どんな策を弄しようと、彼女に嘘は効かない』と……
どうやら、彼は此方の主張を信じてくれた様である……事前に集めておいたラスタルお抱えの傭兵の情報で、此方の情報の正確さを認識して貰う作戦は上手く行った様だ……代わりに凄い顔でガン飛ばされてるけど……
ラスタルとの交渉自体はただの時間稼ぎとはいえ、ハシュマルを打倒した戦力を保有する鉄華団に対するギャラルホルンの眼を、何処かに向けるか眩ませる方法が無い現状、下手な手は打てない……
しかし、此処でただ時間を使うだけでは望んだ未来は来ないと考えたセファーは、ラスタル・エリオンに再び声を掛けようとした……が、それは第三者に阻まれる事になった
「まさか……貴女が、堕天使のパイロット……?!」
声の主は……先程まで堕天使と死闘を繰り広げたジュリエッタだった
その声色と表情は、セファーの見た目に対する驚きが現れていた……無理もないだろう、今まで声だけしか知らなかった相手……それが自分よりも幼い、こんな子供だと誰が思うだろうか
「……私の越えるべき目標が……こんな子供だったなんて……」
ジュリエッタは、セファーを「超えるべき目標」として見ていた……
タービンズ襲撃の際に堕天使に初遭遇、その圧倒的なまでの強さを肌で感じた
しかし、現実はあまりにも残酷だった……
堕天使のパイロットは自分よりも幼い少女であり、半ば強制的に戦わされる立場に立っていた……しかも、彼女はマクギリスに戦う事を強要(誤解)されているというのだ
「……私の越えるべき目標が……こんな子供だったなんて……」
ジュリエッタの驚愕する顔にセファーは、「何か物凄い勘違いをされてる気がする」と直感した
どうも、この人の感覚と私の感覚は合わないなぁ……
『子供ですが、何か?』
不快だ、と言わんばかりの表情でセファーはジュリエッタを睨む
ジュリエッタは「しまった!」といった表情で気付き、そそくさと去っていった
「……済まんな、私の部下が無礼を働いた」
『いえ、彼女の言う事も事実です……受け入れ難かった、という事でしょう』
少々呆れ顔ながら、セファーはラスタルの謝罪を受け入れた
そして話題を変えようと切り出す……
『では……私が貴殿方に寝返る、と言ったらどうするつもりですか?』
ラスタルはピクリ、と眉を上げる……ポーカーフェイスで貫くつもりだったのだろうが、生憎と私には反応したのが丸分かりだった
「……ほぅ、貴女が此方に付くメリットなど、私にはまるで分からない……一体どんなモノか、聞かせて欲しいものだな」
掛かった、とでもラスタルは思っただろう……
でも残念でした、延長戦に持ち込む為に言ったタダのブラフですよ
「……では石動、後の事は任せる」
『了解しました……艦隊の再編が整い次第、私も援護に向かいます』
通信を切り、マクギリスはコクピットシートに体を預けて目を瞑る……
(この戦いで、俺の理想を実現する……この力こそ、俺が求めた力だ……)
「何処の誰でも、この俺を止められはしない……!」
マクギリスが眼を開けると共に、バエルのカメラアイにも光が灯り、リアクターの出力も上がっていく……そして背部からは、白いボディに似合うよう調整された青色に光る粒子が放出されていた……それは紛れもなく、堕天使が放出していたオレンジ色の粒子と同じ性質を秘めた、アレである
改造されたバエルの外見は、さほど変わってはいない……
しかし、唯一の武器であるバエル・ソードのマウント位置や細かな装甲の角度、そして配色に微妙な差異が見られる……そして最も目を引くのは、背部から溢れる青い色の光る粒子……配色調整されたGN粒子の光が、バエルの雰囲気を大きく違うモノへと変えていたのだ
「さて、それでは行こうか……勝利を掴む為に」
マクギリスは格納庫から伸びる射出口へとバエルを歩かせ、専用のスライダーへと機体を固定する
鈍い音と共にバエルの機体はスライダーへとロックされ、船の管制からコントロールを移譲した旨を伝えられた
「了解した……ガンダム・バエル、出るぞ!」
スライダーと船を繋ぐ固定ロックが外され、レール加速でスライダーごと射出口へと滑り出すバエルの機体……途中でスライダー側のロックも外れ、バエルは初速を得たまま自身の機動ユニット……新たに設けられた疑似GNドライヴのコーン型スラスターを噴かして更に加速、戦場となる虚空へと飛び込んでいった
ガエリオは待っていた……奴を……
(アイツはこの程度でくたばらない、必ず来る……ラスタルが堕天使と向き合い、この戦いから眼を逸らしている今を、アイツがチャンスと思わない訳がない!)
そしてそれは、ものの見事に的中した……待ち焦がれた存在、ガンダム・バエルがセファーの手によって生まれ変わった姿を持った事以外は
(……ガンダム・バエル……来たか
いや、細部が違う……まさか、この短時間で強化を施したとでも言うのかっ?!)
虚空を飛ぶバエルの白い装甲も、動きは違えど堕天使に負けるとも劣らない優美さを、見る相手に印象付けている……だが、前回……前に見た姿とは明らかに違う点があった
ガエリオの目に映ったバエルは、この宇宙空間にはっきりと見える光量の……青白い粒子の光で尾を引きながら飛んでいるのだ
『待たせたな、ガエリオ……!』
「マクギリス……今日こそ決着を付ける!」
『それは此方の台詞だ、征くぞ……ガエリオォ!!』
バエル・ソードを振り翳して、マクギリスはガエリオの機体……キマリスヴィダールへと斬り掛かる……ドリルランスで受け止めたガエリオも、開かれた接触回線から聞こえたマクギリスの声に闘志を漲らせ、互いに鍔迫り合いを弾き合って距離を取る……
……互いに隙のない構えと、揺るぎない覚悟……
そして譲れぬ信念を賭け……たった2人の戦いが今、幕を開けるのだった
ついに出撃した強化型バエル!
アグニカの魂を昇華し、堕天使の力を分け与えられたマクギリスと、原作通りのガエリオとの戦いが始まった……
……2人の極まるバトルシーンは、次回に持ち越しですね。
新生バエル vs キマリスヴィダール……結果は?
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「意外な乱入者」の所為で痛み分け撤退
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すんでの所でマクギリスが息切れ
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原作の最終決戦通り、ガエリオくんの辛勝
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「隠し切り札」で逆転されてマッキー辛勝
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強化は伊達ではなかった……マッキーの圧勝