【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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前回の前書きははっちゃけ過ぎましたなw
今回はマトモ(?)です、どうぞ

部下の男の死……革命を目指す男の瞳に写ったのは何なのか……
そして、復讐を誓った男の眼に映るものとは?

激戦の末にこの一大艦隊決戦は
堕天使と、それを追う者の手によって終止符が打たれる事となった……


第19話 火星、再び舞い降りる堕天使(1)

『……ご無……事で……すか……、准将……?』

 

 通信からは、今にも消え入りそうな石動の声が聞こえてくる……繋がっていた接触回線を通して、その声はマクギリスとガエリオの両方に聞こえていた

 

『い、石動ッ?!』

『お前は……何を……!?』

 

 マクギリスはその声で庇われた事実と状況を理解し、ガエリオはヘルムヴィーゲ・リンカーの挙動に動揺したままヘルムヴィーゲに組み付かれてしまう

 

 キマリスのドリルランスチャージを土手っ腹に喰らい、既に下半身とお別れしている機体が最後の力を振り絞り、キマリスの機体にしがみつく……動揺しているガエリオは振りほどくのが遅れ、片腕が動かせなくなってしまった

 マクギリスもその光景に暫し呆然としたが、通信から聞こえる石動の声で我に返った

 

『……准将は……残った部隊……を率い……て、ここは……私が……ッ』

 

『……石動……お前は……すまない』

 

 バエルが踵を返し、ヘルムヴィーゲを放置して飛び去る

 ガエリオも少しだけ呆然としたが、すぐ我に返ってヘルムヴィーゲを引き剥がそうと機体を動かした

 だが思いの外拘束は強く、片腕が動かしにくい状態では振りほどけない……同じく呆然から立ち直ったジュリエッタが加勢し、ようやく拘束が解かれる……ガエリオとジュリエッタには、石動の行動に疑問しか湧かなかった

 

『お前は……自分が奴の犠牲になっている事が判らないのか?!』

 

 ガエリオは戸惑いながらも、石動の真意を問うべく叫んだ……最早死を待つだけの石動だが、まだだ、と言わんばかりに再び組み付こうとしながら答えた

 

『例え、流血の先でも……准将の……下でなら、私は……夢を見れた……私の様な……コロニー出身……者には……明日の夢すらも……ここは……そういう……世界だ……ッ』

 

 息も絶え絶えながら、言葉を紡ぐ石動……ヘルムヴィーゲも、辛うじて動いているが、いつ止まってもおかしくない

 

『だから、私は……准将の……ッ』

 

 そんなものはまやかしだ! と切り捨てるのは簡単だ……だが、ガエリオはマクギリスの想いもある程度は理解していた……史実では「もう醒めてしまった」と切り捨てたが、今回は何故か違う……それ故か、言葉に詰まっていた

 

『だがッ! その夢は、虚構でしか……!』

 

『それでも……構わ……い……准……将の……役に立……なら……』

 

 ついに途切れ始めた石動の言葉……やがて、ヘルムヴィーゲも完全に停止し、最後に静寂だけが残る

 

(アイン、やはり……マクギリスの理想は夢物語だ……なら俺は、どうすれば良い?)

 

『…………』

 

 一部始終を目の当たりにしていたジュリエッタは絶句していた……

 

(今のままで……私は彼女に、堕天使に勝てるのだろうか……?)

 

 心の中で呟くが、答えなど出てこない……様々な感情が邪魔をして……2人はその場に留まるしかなかった

 

──────────

 

(石動さん……逝ったんだね……)

 

 残存艦隊の状況を聞こうと船のブリッジに上がって来ていたセファーにも、石動の訃報が届く

 マクギリスももうすぐ船に戻る……準備が整い次第、火星への進路を取る事になっていた

 

(私も……そろそろ準備しないと……)

 

 ブリッジが騒がしくなる中、誰にも気付かれずセファーはソコを抜け出し、秘密裏に用意していたシャトルで地球へと降りるのだった

 

──────────

 

 少し時間は遡り、ジュリエッタがいきなり無断で出撃してしまった直後のスキップジャック級の格納庫……セファーはザドキエルのセンサーと、本体からの情報フィードバックで全てを察知し、ついに事を終わらせるべく動き出す

 

『さて、エリオン公……何か忘れていませんか?』

 

「……マクギリスの事か? 確かに捨て置けんが……」

 

『いえ、ボードウィンの彼です……マクギリスと彼は少なからぬ因縁のある仲ですし、さっきの彼女がもし、何かに気付いたが故の行動なら……』

 

 そこまで言うとラスタルの表情が一変……そして矢継ぎ早に部下へと指示を出していた

 

「至急! キマリスの位置を特定しろ! それと、バエルの位置もだ! 

 この状況、奴は座して待つほど馬鹿な輩ではない……急げ!!」

 

『……どうやら、ここまでの様ですね?』

 

 セファーはポーカーフェイスを決め込みながら呟く、その言葉に少なからず動揺した部下の1人が、立体映像だという事も忘れて掴み掛かろうとするが、その手はすり抜けてしまった

 セファーもその行動には呆れ、おもむろに立ち上がると、ラスタルへ冷たく良い放った

 

『……では、私はこれで……ああ、そうです……

 今からでは多分マクギリスには追いつけませんよ? あと、この交渉は決裂ですので♪』

 

「……ッ……君はこれから何を成そうとしている?」

 

『私は私の理想を追求しているに過ぎません……

 あ、「私と戯れる覚悟」がお有りなら、どうぞご遠慮なく♪』

 

 不敵な笑みを浮かべながら、立体映像のセファーがかき消える

 直後にザドキエルも動き出し、格納庫から出るため射出口へと続く扉をシールド内蔵GNビームキャノンで強引に突破した

 引き裂かれた扉から空気が漏れ始めて辺りは騒然となるが、ザドキエルが境目を超えた直後にシャッターが降りた為、すぐに空気漏れは収まった

 

『ガエリオとジュリエッタに知らせろ! 堕天使を奴の元へ行かせるな!』

 

 交渉開始前とは打って変わり、苦虫を噛み潰した様なラスタルの表情……交渉どころか、全てが彼女の掌だった事に今更ながらに気付く……マクギリスとの関係を誤認させてこの状況を作り、自ら囮となって敵の眼を釘付けにする……ラスタルがセファーに対して欲を出した時点で、彼は完全に負けていたのだった

 

 最も、「ラスタル側に寝返る」というあの言葉……状況次第では現実になるハズだった言葉なのだが。

 

──────────

 

 ラスタルからの指令でガエリオとジュリエッタは、スキップジャック級の外で堕天使を待ち構えていた……しかし、母艦の近くでの戦闘は守備側にとって不利である

 もし、格納庫に続くシャッターや艦橋を狙われれば、それこそ船そのものが落とされるからだ

 それ故、2人は少し離れた場所で待つしかなかった

 

 やがて射出口から堕天使が飛び出し、マクギリスの艦隊と合流するため火星へと進路を取ろうとする……ガエリオとジュリエッタは最大速で待ったを掛けるように立ち塞がった

 

『2対1、ですか……地上の時とは逆ですね? ボードウィンのお兄さん』

 

「……ッ! コイツ、あの時から俺だと見抜いていたのか?!」

 

 堕天使を駆るセファーの言葉に、ガエリオは驚愕した……徹底的に情報漏洩に対しては注意していたし、ラスタルも誰にも話してなどいない……だが、堕天使には最初から「仮面の男ヴィダール」=「ガエリオ・ボードウィン」だと看破されていた

 

『ボードウィン卿、私が合わせます……連携を!』

 

 ジュリエッタの言葉にハッとなって、ガエリオはキマリスを操る……ドリルランスが堕天使へと迫るが、左腕のシールドで簡単にいなされてしまい、続くジュリエッタの攻撃も右腕のGNソードで弾く

 

『……あくまでも邪魔をしますか……少し予定が狂いますが、そろそろ退場して貰っても構いませんね?』

 

 まだあどけなさの残る少女には似つかわしくない、冷徹だが苛立ちの混ざった声色が堕天使から響く……セファーはオープンチャンネルに外部スピーカーと合わせて、わざとらしく言ってのけた

 そのまま堕天使はGNソードから腰にマウントしていたショートライフルへと持ち替え、キマリスに牽制射撃を加えつつジュリエッタの機体へ向かって加速……ジュリエッタは背後を取られまいと構え、迎撃に振るったジュリアン・ソードがザドキエルへと触れる直前、一瞬紅く光った堕天使は砂の如くかき消え、2人はその姿を見失ってしまう

 

『……なんだ?! 堕天使が……消えた?』

『何処へ……?!』

 

 キマリスヴィダールとレギンレイズ・ジュリアが、堕天使を探すために互いの距離を縮めた直後、キマリスの肩とジュリアの右腕が衝撃と共に切り裂かれ、全身を紅に染め上げた堕天使が2機の死角となっていた背中側の虚空から現れる……ガエリオがいち早く反応してキマリスを振り向かせて攻撃するが、堕天使の狙いは最初からジュリアだった

 

「……ッ!? 避けろジュリエッタぁ!!」

『……えっ?』

 

 堕天使の左腕……展開された振動破砕クローがジュリアの胴体を掴み、凄まじい衝撃と音を立てて握り潰す

 

「ッ!? がぁぁぁぁ?!」

 

 TRANS-AM中に発動するGNサイコ・ジャマーの効果より、ナノラミネートアーマーが無効化されてコクピット周辺が振動破砕に耐えきれずあっさりと崩壊、ジュリエッタは機体ごと身体を潰されようとしている……既に強烈な痛みがジュリエッタの身体を襲っており、幾つもの警告音と金属が軋む嫌な音を上げるコクピットを始めとして、機体は最早スクラップ寸前だ

 

「貴様ァッ!!」

 

 ガエリオの渾身の攻撃も、堕天使の右手が……素手のまま振るわれ、ドリルランスを握っていたキマリスの腕ごと掴んで動きを止める

 ガンダムフレームが有するパワーすらモノともしない紅き堕天使は、動きを止めたキマリスを回し蹴りで吹き飛ばしてしまう……だが、その間に艦から砲で威嚇射撃されてしまい、堕天使はジュリアを離すと凄まじい速度で宙域を離脱していった

 

『ジュリエッタ・ジュリス?! オイ……っかりしろ……!?』

 

 ジュリエッタはガエリオの声を朦朧とする意識の中で聞きながら、意識を手放した




多少のズレは改変の証ですが、石動さん死亡&ジュリエッタ瀕死の重症という結果です。
先のアンケートの結果を受けて、こうなりました。

大筋の流れは変わらぬものの、鉄華団がコレに関わってないだけでかなりの改変ですよね……
さて、そろそろ次回予告も本編っぽくしておきましょうか。

─ 次回予告 ─


石動の犠牲により、マクギリスは火星へと逃れ堕天使との合流に成功する……
一方、瀕死の重傷を負ったジュリエッタは、見舞いに来たガエリオに己の心情を吐露するのだった……

次回、
寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~

第20話 火星、再び舞い降りる堕天使(2)

……ねぇ、このガエリオとジュリエッタの雰囲気って……まさか、よねぇ?

そろそろ終盤ですが……2周目があるとしたら?

  • 同じく技術チートで最初から改変だ!
  • 少し違った視点からの流れが欲しい
  • 最初からギャラルホルンルートでも?

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