【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
文言とか無いから遠慮してるのかな? 感想・評価は「随時」受付中です。
前回からの続きは……
堕天使のエグい攻撃で瀕死の重傷を負うジュリエッタ……
その隙に堕天使は離脱、ガエリオは慌てて船へと連れ戻す。
一命は取り留めたが、回復にはそれなりの時間を要するのだった……
あれからどれくらい時間が経っただろうか……
寝ている事が億劫になった気がする
まだ生きている事を何となく実感したジュリエッタは、怠い体の感覚を確かめた
(……生暖かい液体、治療ポッドの中か……)
少し重たいが瞼を薄っすら開けると、そこは間接照明で照らされた艦内の施術室だった
部屋の真ん中に3つのポッド置かれており、ジュリエッタの入っているのは真ん中……ふと右に気配を感じ視線を移すと、備え付けのテーブルに片肘を乗せ、頬杖をついたまま居眠りしているガエリオの姿があった
ジュリエッタは一瞬だけ自分が全裸状態である事に羞恥心を感じたが、ポッド内に入っている為見られる心配はない……再びガエリオの方へ視線を移す
(……そういえば、あの時も……)
ジュリエッタは気絶する寸前にも、ガエリオの声が聞こえていた事を思い出す
「……助けられた……という事ですか」
ジュリエッタは小さな声で呟く……視線を天井に戻し、ジュリエッタはあの時を思い出した
『……貴女に私は倒せない……迷いのある今の貴女では……』
去り際、吐き捨てる様に堕天使から響いた……あの少女の声
迷いのある私では絶対に敵わない……そんな事は分かりきっている! だが、ラスタル様は「私が頼りだ」と仰ってくれた……ならば、期待に応えなければならない……なのに……
「……今の私では、勝てそうにないのです……ラスタル様……」
「……お前も、悩んでいたんだな?」
不意に聞こえた声に反応し、ジュリエッタは視線を向ける……そこには居眠りから醒めたガエリオが立ち上がって遠巻きに顔を覗き込んでいた
「……何時から起きてたんですか……?」
「いや……あー、うん、お前が言ったラスタルの名しか聞こえなかったぞ?」
その返答はだいたい最初から聞いていた人が使う言い訳だ……溜め息と共に呆れた顔をするジュリエッタ、微妙な雰囲気にガエリオは苦笑いをするしかなかった
「貴方が、私を助けたんですね……」
「ああ、1週間ほど眠ったままだった……ラスタルも心配していたよ」
ラスタルの名を聞き神妙な面持ちになるジュリエッタ、しかしガエリオはそれを見て軽く笑うと、「そんな顔をするな、お前は良くやったと誉めていたんだぞ」と付け足した
「……そうですか……」
だがジュリエッタの顔は晴れず、雰囲気も暗い……ガエリオは頭を掻きながら、ジュリエッタが眠っていた間の事を語りだした
その頃時を同じくして……マクギリスは堕天使と共に火星圏へと雲隠れ中であった
ギャラルホルン火星支部からは「受け入れないが行き先は知らない」と温情を掛けられ、ある街の街外れにある廃ビルに機体を隠し、自分達はすぐ近くの無人化した家に潜伏していた
ちなみに
なお、分身としてマクギリスに動向している方の私は、仮ボディとして「PGエクシア」を使っている
……PGサイズなら、MGサイズ以上の連続稼働時間や汎用性を確保し、家庭用電源からの充電機能も搭載……潜伏にも最適のスペックを保持していたからだ
「……さて、ここからどうする? 無論私はラスタル・エリオンを待ち、この火星圏で仕留めるつもりだが……?」
『私にも約束事があるので、このままで終わらせませんが……貴方とバエルは、少し休息が必要でしょうね』
私のザドキエルはもう少しで修復も完了するが……バエルの方はマクギリスの脳の負荷ダメージが予想より大きかった為、本人も含めてもう少し休息が必要だ
「まさか、君から心配されるとはね……」
『……アルミリアちゃんとの約束ですから』
意外な人物の名前に、マクギリスは少しの沈黙から「……そうか」とだけ答えた
インスタントのコーヒーを片手に、窓から外を見ているマクギリスの横顔……
本当は彼のクーデターなど止めた方が良かったのだろうが、ラスタルの策略を利用して鉄華団を救うには「
だから、私はマクギリスを煽った……体よく利用する為に……だが、今ではマクギリスを待つアルミリアちゃんの想いに応えようと動いている……今更取り繕おうとも手遅れかもしれないが、今の彼とは一蓮托生の状態……やってみるさ
『私は機体の整備してくるから、貴方はこのマスク無しで外に出ないでね?』
以前マクギリスが使っていた「モンタークのマスク」をテーブルに引っ張り出しておいた後、バエルの整備の為に部屋を出る……史実通りの最終決戦を迎えるなら、今更機体を弄っても結果は変わらない……なら、やることは一つだ
すぐそばに立つ廃墟と化したビル郡……そこに隠したバエルへと私はエクシアを飛ばすのだった
「……ジュリエッタ、体の方はどうだ?」
「ご心配をお掛けしました、もう大丈夫です」
先の戦闘からおよそ2週間とちょっと……ジュリエッタはほぼ全快し、MSでの戦闘にも支障ない程度まで回復している
負傷して担ぎ込まれたと知らせを受けた時は気が気でなかったのだが1週間で目を覚まし、今では「何も問題ない」と言い切る彼女を見て、ラスタルは後見人としてでなく、人の親としてジュリエッタを見ていた……そして、ふと考えたのが
(……彼女の出自は不明……だが、何故あそこまで鉄華団に拘る? いやそれ以前に、彼女は本当に人間なのか?)
既に彼女の過去を徹底的に調べ上げたのだが、ろくな資料はおろかマトモな情報がない……それ処か、ある境目から過去には「彼女の存在自体が有り得ない」という結果を示していた
だが、実際に彼女は我々ギャラルホルンに接触して来た……厄災戦の情報を最も多く保有するギャラルホルンであったが、ついぞ彼女に関する決定的な情報を突き止める事は叶わなかった
「……本当に、彼女は300年前の亡霊なのか?」
「ラスタル様……?」
「……ん、あぁ、済まん……少し考え事をな」
「それは、あの少女の事ですか?」
「……良く分かったな?」
「いえ、私は……彼女の言動に何か違和感を感じました……明確には分かりませんでしたが」
ジュリエッタの言葉を聞き……ラスタルは思案の後、ある仮説を立てる
「ジュリエッタ、もし彼女が本当に『人ではない』とすれば……?」
「まさか、ラスタル様……?」
彼が立てた1つの仮説……セファー=ラジエルとは、兵器を無人化する程の科学技術の果てに、人類が産み出した『
「当時のアグニカ・カイエルが、危険を冒してまでモビルアーマーの掃討に固執した理由……もし、彼女が狙いだとすれば……?」
当時の技術者が、何の為に彼女を産み出したのかは最早分からない……だが、少なからず何らかの希望を持っていた……だが、奥底に秘めた願望ほど、他人に理解されないのは世の常……何らかの形で「彼女の存在」を知ったアグニカ・カイエルは、誰かに歪められ間違った情報から彼女を「在ってはならない存在」と断じ、開発者と対立したのだろう……そして開発者とその協力者達は、彼女を人の悪意から護るため……ヒトの手を必要としない兵器を開発した……かつて人自らが嫌悪し、手を出す事を躊躇っていた完全なる無人兵器……モビルアーマーを
「ラスタル様、さすがに飛躍し過ぎでは?」
ジュリエッタの言う事は最もだったが、ラスタルはこの仮説に確信めいたものを感じていたのだった……
「あ"ぁ? セファーが火星に戻ってきてるって?!」
「声デカすぎだろ!?」
「あ、悪ぃ……」
シノの声が事務所に響く、即座にユージンが諌めシノも謝った……そしてテイワズへ仕事の報告から帰って来たオルガも戻り、3人で続きを催促する
「……その情報、確かなのか?」
「あぁ、タービンズ経由でな……テイワズの別部門の連中が、火星に降りる2機のMSを見たって……しかも2機とも白い装甲に翼持ち……それぞれが色違いの光の粒子を背中から放ってたって情報だ」
2機……というのが若干引っ掛かるが、片方は間違いなく堕天使だろう……あんな外見の機体などそうそう見間違えるはずは無い……それに光の粒子を放つMSなど、彼女が関わってなければ他に存在などしないだろう
「じゃあ、チビ嬢は帰って来るのか?」
情報主のチャドがそこから口籠る……シノとユージン、そしてオルガは続きを待ったが……それを聞いた彼らは言葉を失った
「マクギリス・ファリドのクーデターは失敗に終わり、行方不明……ギャラルホルンの連中はマクギリスを追って火星まで来てる……もし、マクギリスがチビ嬢と一緒なら……」
マクギリスは現在、地球と火星の両方で指名手配を受けており……
「何にせよ、今の俺らはテイワズの身内だ……表立っては動けねぇ……だが、関連する情報はしっかり集めとけ……いざとなったら俺らも動けるようにな?」
気持ちを切り替え、オルガの言葉に全員が頷く……例えどんな事になっても、彼らは彼女を心から信頼すると決めたのだから……
唐突にラスタル・エリオンによる、300年前の真相の仮説考察……
こういう背景があったら良いなと書いてみました。
さて、そろそろ最終決戦の幕が上がろうとしています。
果たしてセファーは、この世界の未来を……最高・最善の未来へと変える事が出来るのでしょうか?
ちなみに、ラスタルは直にセファーの顔を見ていますが指名手配は不可能でした。
何故ならあの立体映像……カメラや写真といった機械的記憶媒体には映らないからですw
最終決戦のその後……最初に見たい場面は?
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まずは世界情勢から
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鉄華団のその後
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マクギリスの顛末
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ガエリオのその後
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セファーのその後