【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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月を跨ぐと忙しくて投稿が……(泣)


マクギリスとガエリオの戦い……再び相まみえた宿敵同士、死力を尽くし命を賭けて相争う
堕天使もまた、最後の戦場へと赴くのだった……


第21話 火星、再び舞い降りる堕天使(3)

 火星圏に到着したアリアンロッド艦隊は、その戦力を2つに分け……反逆者マクギリス・ファリドを追っている。

 地上にはジュリエッタ、宇宙にはガエリオを中心とした各部隊が展開していた。

 

 そこへ民間のシャトルが規定航路を外れ、まっすぐに艦隊へと向かってくる。

 度重なる停船要請や威嚇にも動じず、痺れを切らしたラスタルはシャトルの拿捕を指示する……2機のグレイズが、シャトルを確保しスキップジャック級の近くまで来た時……

 

『……やれやれ、体裁を気にして私だと気付くのに遅れたな? 

 ラスタル・エリオン、その首貰い受けるぞ!』

 

 声と共にグレイズを両断……シャトルの格納スペースからバエルが姿を表した。

 マクギリスは勝ち誇った様な笑みを見せ、スキップジャック級へと突撃しようとするが……ガエリオのキマリスヴィダールの横槍で敢えなく断念、ラスタルとの盟約により、1対1(タイマン)の状況がお膳立てされ、ガエリオはマクギリスに戦いを挑む……

 

『……何処までも俺の邪魔をするか、ガエリオ!』

 

「マクギリス……今のお前は、あの時俺に自分の理想を語ってくれた頃のお前じゃない……!」

 

 バエルとキマリスの鍔迫り合いの中、ガエリオとマクギリスは互いに叫ぶ

 

『ならばどうする?! お前の知らないこの姿こそが、俺の真の姿……! 

 俺は、あらゆる欲に塗れ、ねじ曲がったまま拡大したこの世界を作り直す、このバエルで!!』

 

「……ッ?! マクギリスッ!!」

 

『俺とお前の信念……どちらが正しいかなどと、禅問答をする気など俺にはない! 

 前にも言ったハズだ、お前が正しいのなら……俺を殺してみろ、ガエリオォ!!』

 

 ドリルランスを双剣で弾き、バエルはキマリスの首を狙って機動力に物を言わせた乱舞を繰り出す……キマリスも白兵戦向きとはいえ、強化されたバエルは以前よりも速く、離れる挙動には追従できていない。

 

「……いや、俺は……俺の信念を貫く!! 行くぞアイン!!」

 

 キマリスのシステムが切り替わり、阿頼耶識type-Eを起動させたガエリオはバエルへと追いすがる

 リミッターも全開放され、フルスペックで機動する2機の戦いはますます激しくなるのだった……

 

──────────

 

 一方その頃、堕天使は最後の隠し手を使うべく、とある場所へと赴いていた……

 

(……マクギリスは、史実通りにガエリオと戦うだろうね……まぁ、どっちが勝っても私には関係ないけど)

 

 そして辿り着いたのは、かつて自分が産まれた場所……ハシュマルと共に眠っていた、ハーフメタル採掘場だった

 低空飛行から着地した堕天使は、崩壊して更地になった採掘場を見回した後……眠らせていた能力を発揮するべく、その姿を変える……

 

 追加装備していた小型のミサイルポッドを強制排除、それと同時に胴体と両腕の装甲がスライド変形し、隙間から青色に輝くサイコフレームが顔を覗かせる……その輝きは虹色のエフェクトを帯び、やがて半透明の虹色の波動「サイコ・ウェーブ」となって火星の大地を凄まじい速度で広がるのだった

 

──────────

 

 堕天使が発する虹色のサイコ・ウェーブは、火星圏にあるMSに強制的に干渉し「私はココだ」と存在をアピールする様にセンサー系を狂わせていた

 そしてそれは、阿頼耶識システムで稼働するガンダム・フレームに対し、「ある現象」を引き起こすキッカケとなる

 

『団長! 三日月達がっ!!』

 

「ミカがどうした?! 格納庫で何があったんだ?!」

 

『わ、分かりません……バルバトスにグシオン、フラウロスまで変な反応を……』

 

 それは、セファーにとっての予定調和の始まり……最初に手を加えたバルバトスとグシオン、そしてフラウロスは、堕天使のサイコ・ウェーブの干渉波に反応してある方向をずっと見つめている……

 

「……? バルバトス、どうした? ……あっち?」

 

「どうしたグシオン、動けよ?!」

 

「クッソ……流星号が動かねぇ……!」

 

 三日月は普段と違う感覚のバルバトスに、話し掛けるように疑問を口にする……グシオンとフラウロスも、同様に同じ方向を向いたまま乗り手の制御すら受け付けず、ただじっと一方向を向いたままだ

 

『団長ぉ!』

 

「今度は何だ?!」

 

『チビ嬢の機体が……ザドキエルが、採掘場に現れました!!』

 

 突然、過去にMAの掘り出された採掘場へ降臨した堕天使……一瞬だけ喜んだオルガだが、状況に違和感を感じてバルバトス達の向いた方向を地図に照らし合わせる

 

「あぁ、あの方向は間違いなく……チビ嬢を堀り当てた、あのハーフメタル採掘場だ」

 

 雪之丞の言葉に、オルガは自分の悪い予感が当たった気がしてならなかった

 

──────────

 

(これでジュリエッタさんを誘き寄せる……兄さま達にも気付かれちゃうけど)

 

 堕天使は一定間隔でサイコ・ウェーブを発信し続け、決戦の相手を待ち構えている……

 だが、先に到着したのは来て欲しくない相手だった

 

「こちらハッシュ、堕天使の機体を捕捉! ……他に機影は認めず、どうします?」

 

 堕天使の立つクレーターの反対側の縁に、テイワズから提供された新型MS「辟邪」……ハッシュが先行して様子を見に来ていた

 堕天使のレーダーはとっくに辟邪を捉えていたが、狙っていた相手ではない為無反応だった

 

『いいかハッシュ、周囲を警戒しつつそのまま待機……本隊の到着を待つんだ、状況が変化次第逐次報告しろ』

 

 了解、と返事し……ハッシュは堕天使の姿を、機体のカメラで捉らえ続ける……

 初めて機体を見るハッシュの脳裏には、入団当時の記憶が蘇える

 

 それはまだ三日月達、先達ながら年少組の団員達に偏見を持っていた頃の事だった

 

──────────

 

「……で、なんでこんなガキに従ってんっすか?」

 

 その言葉が、発したハッシュ本人以外の耳に入った瞬間、格納庫の空気を一変させた……

 

「オメー、あの子が何に見える?」

 

「……大人に混じって仕事の真似事してるタダのガキっすよね?」

 

 その言葉に、盛大な溜息を吐く雪乃丞……確かに、その場をチラ見しただけの、外部の人間ならそう思えたかもしれない……しかし、雪之丞を始めとする鉄華団のMS関係者は口を揃えて「命が惜しいなら、その考えを今すぐ捨てろ」と言うのだった……当然、納得の行かないハッシュだったが、雪乃丞は……

 

「オルガには話を通しておく……お前さんは今日1日、アイツの仕事ぶりをしっかり見ておくんだな」

 

 それだけ言って自分の仕事に戻っていった……

 ハッシュは半ば疑問の残った頭を抱えながら、自分がチビガキと言い放った少女……セファーの仕事ぶりを見学し始めた

 

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 セファーは仕事中、ほとんど格納庫で動いている事が多い……それは自身の知識と技術が最も的確に活用できる場であると同時に、単純に整備作業……いや、誰かの役に立つ行為そのものが好きだったからだ

 

 1人、鼻歌交じりに部品を磨いていたかと思えば、その片手間にMSやMWの駆動システムチェック……普通なら専門用語や各種データの比較更新など、とても片手間では出来ない知識と作業量が必須の仕事を平然とこなし、途中でクレーンのコントローラーが壊れたと伝言が来ると、すかさずその場へ移動して原因を解決し、手持ちの工具と交換部品であっという間に修理……戻ると部品磨きとチェック作業を再開し、それがが終わったかと思えば、ちょうど昼食を運んできたアトラと一緒になって整備員達を順次休憩に行かせ、その間に止まってしまう部署の作業を肩代わりして済ませたりしていた……最初に聞かされていた「団長の妹」という肩書きなど、本人を始め誰もまるで気にしていない……むしろ整備班で最年少の彼女は、その小さな(ナリ)で他の団員の負担になりそうな作業を一手に引き受け、そのオーバーワークじみた仕事を平然とこなしていた……

 

 あの仕事ぶりと、周囲の反応……たった1日だけ見たとはいえ、その光景がハッシュの固定観念を完膚無きまでに破壊し尽くしたのは言うまでもない

 

──────────

 

(あの人……三日月さんも、「アイツは立派な妹分だ」って言ってたな……)

 

 あの時からハッシュは、年少組の先達を見る目が変わっていた

 そして、セファーに対しては少々行き過ぎた印象を持つに至る……それは俗に言う「幼女スゲェ・幼女強ぇ」とかいう謎の印象であった

 

──────────

 

『ジュリエッタ、どうやらこの採掘場に堕天使が現れたらしい……この付近の民間組織から、堕天使らしきMSを見たという連絡や、捜索をしていた部隊のMSに異常が見られたとの報告も受けている、お前はその部隊と合流し、採掘場の調査に向かってくれ』

 

 採掘場まで近付く中……普通の機体なら徐々にセンサー類が不調をきたし、ついには使い物にならなくなってしまう

 だが、ジュリエッタは方角を見失う事は無かった……ほぼ常に最前線で戦うアリアンロッド所属のMSには、電磁波等の阻害を無効化するシールドが全機体に施されていたからだ

 到着した採掘場は建物が悉く壊されたかつてのまま、此処で戦ったMSの残骸も無惨に転がっている……

 

「……この反応、採掘場には何かがあるのですね……」

 

 ジュリエッタは慎重に機体を施設跡地からクレーター側へと動かし、ついに目標を発見する……クレーターを前に両腕を広げ、虹色の燐光とオレンジの粒子を撒き散らしながら佇む白い堕天使の姿を

 

「ッ?! ……? ……堕天使? こんな所で何を……?」

 

 この至近距離までMSで近付いたが、意外と気付かれなかった事に拍子抜けしたジュリエッタだったが、すぐに思考を切り替えて堕天使の様子を窺う

 堕天使は両腕を広げたまま時折翼を動かし、まるで鳥が佇むかの如く動こうとしない……それは「何かを待っている」様な行動だった

 

(堕天使は何かを待っている……?)

 

 だが、ラスタルからは堕天使の捕縛ないしは撃破の命令を受けている為、そう長く観察はできないと意識を切り替えて両腕のソードを展開し、堕天使の背後から強襲しようと振りかぶった……だが

 

『そっちが先なのね、じゃあシナリオ通りにやらなきゃ……!』

 

 堕天使からの声……と同時に堕天使は上空へと逃れて飛翔、そのまま迎撃体制を取る

 

「今度こそ私は……貴女を超えてみせる!!」

 

 ジュリエッタは吠えるかの如く言い放ち、スラスターを全開にして堕天使へとジャンプ、左のソードを蛇腹に展開して堕天使の右足を絡め取った

 だが右足へと絡まる蛇腹剣を堕天使は無視して高度を落とし、ジュリアと空中で交差、お互いが振り向くタイミングで右腕のソードでジュリアの左肩に突き込む……攻撃がジュリアの肩部アーマーに届く瞬間、ジュリエッタは機体のバランスをあえて崩してクリーンヒットを避け、そのまま機体を回転させながら右のソードで薙ぎ払う、堕天使もシールドを翳してジュリアの攻撃を防御すると、そのまま突進してシールドバッシュを仕掛けた

 衝撃に加速の反動が重なり、コクピットが揺れる……そこから絡まった蛇腹剣を利用して堕天使はジュリアごと高度を更に上げ、機体の加速と反動を利用してジャイアントスイングの要領でジュリアを振り回し、パイロットを精神的に追い詰めに掛かる

 

「……ぐ……ぅ……ッ!?」

 

 さすがのジュリエッタもこれには耐えきれずに蛇腹剣を堕天使から外し、重力に従って落下する間、腰にマウントしておいたライフルと内蔵火器で狙い撃つ

 だが、不安定かつ距離を離される落下中では大したダメージは期待できない

 

『……本気を出してきた、と言う訳ですか……!』

 

『ジュリエッタ・ジュリス……貴女に1つ、役割を与えましょう……私との死闘を演じる役を!!』

 

着地したジュリアと睨み合う堕天使……僻邪のハッシュは、その光景をただ見ることしか出来ないでいた

 




遂に最終決戦開幕!!
この戦いの果てに待つ未来とは……?

最終決戦のその後……最初に見たい場面は?

  • まずは世界情勢から
  • 鉄華団のその後
  • マクギリスの顛末
  • ガエリオのその後
  • セファーのその後

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