【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
火星宙域で繰り広げられるキマリスヴィダールとバエル・ナトゥムの極限バトル
熾烈を極めた攻防も遂に決着の時が訪れようとしていた……
『アイン! 頼む……届けさせてくれッ!!』
左脇腹に蹴りを捩じ込まれるも、振るわれるバエル・ソードを掻い潜り、体当たりで母艦の壁面にバエルを叩き付けてキマリス……追撃を防ぐべくバエルはビットを散布するが、体勢を整えるよりも早くキマリスはバエルの左手の剣を斬り払って取り落とさせ、右手にバエル・ソードを突き立てられながらも右膝のドリルニーでバエルの左脇腹を抉る
「……クッ、まさか……俺が、ガエリオに……負ける?!」
互いに己の全てを賭け、全力……いやそれ以上を出し切った戦いは、僅差でガエリオに軍配が上がろうとしていた……
マクギリスから見れば、全てを賭け、最強の力の象徴であるバエルを以てしても……己の運命を変えるには至らなかった……その心の片隅に諦めが差し掛かった時、ふと、マクギリスは幻聴を聞いた様な気がした……
『マッキー! 死なないで……ッ!!』
(アルミリア……俺の……願いは……)
幻聴に一瞬だけ、マクギリスの心が静寂に揺らぐ……その瞬間、バエルの機体が赤く輝き始め、トドメを刺さんと迫るキマリスの攻撃を避けて火星へと超高速で飛び去ってしまった……その後、向かった先であろう宙域で、青い粒子を含んだ爆発が起きたのである
すぐさま追撃隊が組織されバエルの後を追ったが……残されていたのは擬似太陽炉を解析不能なまでに破壊され、全身もボロボロ状態で宇宙を漂っていたバエルだけだった……
(……俺は……結局、全てを捨てても……何も変えられなかった……300年もの月日の前には……アグニカ・カイエルの伝説も……バエルの威光も……最早、ただの妄言か……俺があれほど求めた力は、世界にとって……こんなにも矮小なモノだったと言うのか……)
『それは違う、小さくても……誰にだって世界を変え得る力はある……ただ、貴方はやり方を間違えた……それに気付けなかっただけ』
(正しい方法など、あってないようなものだろう?)
『確かに、正しいかどうかは重要じゃない……でも、間違い犯すより正しくあろうという気持ちがあれば、この結果も変わったかもしれない』
(……俺は全てを失った……もう、俺は何も出来ない)
『そう……でも貴方には、待っている人が居るのではなくて?』
(……俺を待つ人……だと?)
『貴方は小さな約束さえも守れない……卑怯者で終わるの?』
(……約束……)
『……今までの貴方がただの偽りだとしても、貴方が残したモノは、確実に残っている……まだ貴方に人として約束を守る気があるのなら、貴方はここで終わるべきではありません』
マクギリスの意識は、その声を最後に微睡みから急浮上させられた……
「……マッキー……?!」
僅かに瞼が動いた直後、名を呼ばれた男が呻き声と共に覚醒する
身体はまだろくに動かせないが、治療ポッドの生暖かい感触はハッキリと感じる……原作では腰に破片が突き刺さり、まともな治療すら受ける前に死んだのだが……今回、マクギリス・ファリドは辛うじて死の淵から生還したのであった……
「全く……
意識がハッキリとしてきたマクギリスに、アルミリアが抱きついて来た……治療ポッドの側でため息を吐くセファーの手には、資材そのままのサイコフレームが握られていた
「……無事で良かった……マッキー」
涙を浮かべたまま微笑むアルミリア……その心中にはまだ複雑な想いを抱えているが、今はそんな事どうでも良かった
好きだった人が戻ってきた……ただそれだけで充分だ、これで良いんだ、と自分に言い聞かせる……だが、この人は私の事などどうでも良かったのだろう……だから私を置いて独りで戦場へと向かった……安堵と共に浮かんできた複雑な感情が再び鎌首をもたげる
「……アルミリア……済まなかった、このまま死んだら……君の兄との約束を違える所だったね」
だが、意外にもマクギリスの口から出てきたのは謝罪だった……
それも、アルミリアを心配して……兄との約束を守るため……この男はアルミリアを見ていないのではなかった……ただ、自らの理想の実現を目前に無我夢中だったのだ
苦難を耐え凌ぎ、漸く自らの理想に手が届く……その直前に足を踏み入れ、耐え難い興奮故に他に意識が回らない……人ならば誰しもが一度は経験ある事だった、彼もそれに陥り、その他が見えていなかっただけなのだ
「……アルミリアちゃんを蔑ろにするのは、もう金輪際辞めなさい……貴方は仮にも、その子の婚約者でしょう? 貴方は、人として最低の行為を犯す所でした……充分に反省して、今後は彼女の為だけに生きなさい、良いわね?」
セファーの声と共に、渡された端末に表示されたのは……
「……これって……?!」
同時刻、火星では……堕天使とジュリエッタの戦いが続いていた
堕天使に目立った損傷は無いものの、その動きは以前と違って手加減など一切無い本気の挙動……だが、対するジュリエッタも負けず劣らずの猛勢で辛うじて機体が動けなくなる程の致命傷は避けている……この一戦で、ジュリエッタの技量は格段に上がっているのだろう
(これが、堕天使の本気……でも、私だって負けてはいません!!)
お世辞にも機体のコンディションは良好と言えないが、専用機レベルでチューニングされたジュリアは、まだ彼女の操縦に素直に応えている……我流に近いジュリエッタの操縦技術は、まだまだ上に上れる可能性を秘めていた……だが、どうしても反応や認識速度の違いといった要素が重なり、堕天使を操るセファーには後一歩が及ばない……
『……さて、終わりにしましょうか』
堕天使から声が響き、機体が赤く染まる……だが、次の瞬間……
『……う……ぁ……っ……く……ぁぁ……』
突如、堕天使から響く声が苦悶に変わる……同時に堕天使のカメラアイも赤から緑、緑から赤へと不規則に変化、低空から崩れ落ちて墜落し、まるで痙攣でも起こしているかの様に機体が奇妙な挙動を繰り返し始めてしまう
それは、今まで抑圧されていたMA由来の破壊衝動……度重なるサイコフレームの共振作用によってセファーの精神の奥底に成りを潜めていたはずの本能が鎌首をもたげ、TRANS-AM等から来る認識外の負荷に、知らず知らず疲弊していたセファーの精神を押し退けて暴走し始めたのだ
『……あ"ぁぁぁぁぁ……?!?!』
腕にあった武装も外れ、がら空きの両腕で頭を抑えながらもがく堕天使……突如として起こった事態に、ジュリエッタの認識は全く追い付けなかった
(一体、何が……起こっているというのですか……?!)
そこへ駆け付けたのは、鉄華団所属のMS……遊撃隊長として先行したガンダム・バルバトスルプスレクス、三日月・オーガスだ
『ハッシュ……これ、どういう状況?』
三日月は偵察として事態を遠目に見守っていた辟邪のハッシュへと問う
ハッシュも、物覚えは良い方なのだが……この状況を1から説明しろというのは難題であった……辛うじて分かったのは、ジュリエッタとセファーが、戦いに決着を求めた直後に急変し、セファーは戦える状況ではない事、そして、相対していたジュリエッタも事態を把握しきれていない事くらいだ
『……あ"ぐっ……っぁ……っ……み、ミ……カ、兄……逃げ……ッ!?』
破壊衝動を押さえ込む為の凄まじい処理負荷に息も絶え絶えながら、三日月を認識したセファーはこの場を退避してと懇願する
だが、目の前で苦しむ彼女を……
「セファー、苦しいのか……何かされたのか?」
優しく声を掛ける三日月の声……セファーの心に、嬉しさと悲しさが同時に去来する
だが、この状況を正しく認識できる人間などこの場には誰1人居なかった……やがて堕天使からセファーの声が聞こえなくなり、カメラアイの赤い光が不気味な雰囲気を纏ったまま明滅し始める……ただならぬ気配を三日月は直感し、バルバドスに構えを取らせた
直後、堕天使のテイルブレードが閃き……この場に居た全てのMSの足を薙ぎ払う
更に堕天使は飛翔し、取り落としていた両腕の武装を確保し直すと、GNソードを構えてバルバトスへと突撃してきた
持っていた超大型メイスで受け止め、バルバトスと堕天使が鍔迫り合いに移行する……だが、堕天使よりもバルバトスの方が純粋なパワーでは上回っていた
『セファー……?!』
突然の攻撃に、三日月は冷静に対処するもののその心中は困惑していた
だが、セファーから感じるいつもの雰囲気など欠片も見せない堕天使は、バルバトスから離れると左のクローを展開、更にテイルブレードを伸ばしてバルバトスを威嚇する……
想定外の事態に、戦況は更に混乱していく……
堕天使の異変は、もちろん本体のセファーにも凄まじい負荷を与えていた……
「……っく……うぁ……ッ……が……」
突然、堕天使からウイルス侵食の如く逆ハッキングを受けてしまい、慌ててプロテクトを展開するものの、あっという間に防壁を食い破られて無力化……辛うじて自己を保つのが精一杯だった
「……セファー、ちゃん……?!」
「む……どうしたのだ?」
いきなり呻き出したセファーに、動けないマクギリスとアルミリアも困惑していた……頭を抱えて倒れ伏すセファー、呻きながらもがくその動き……知る由も無いが、それは堕天使の変化とほぼ同じだった
唯一違うのは、敵意剥き出しに豹変せずただ呻き苦しむだけ……
「……アルミリア、彼女を診てやってくれ……私はまだ、動けそうにない」
マクギリスの言葉にハッとなったアルミリアは、すぐさまセファーに近寄り目線を合わせる……セファーもそれに気付いて何か話そうとするが、堕天使から強制的に送られる処理負荷とハッキングに抵抗するため、全く余裕が無く言葉にすらならない
「セファーちゃん! 何? しっかりして!」
辛うじてセファーは隠し持っていた腕輪を取り出し、アルミリアへと渡す……そして最後の力を振り絞って、アルミリアに耳打ちをした直後……
「く……ぁ……ッ!?」
呻き声を最後に全身の力が抜け、微動だにしなくなってしまう……能力の使用によって虹色に輝いていた虹彩の光も徐々に失われていき、やがて元の紫色へと戻っていく
「セファーちゃん?! セファーちゃん!!」
一切の反応がなくなってしまったセファーに、「死」を予感したアルミリアは必死に呼びかけるが……もうその声すらも、セファーは認識不可能になっていた
「……アルミリア、彼女は最後に……何を?」
辛うじて上体を起こすことができたマクギリスは一目で状況を察し、アルミリアへと問いかける……セファーを横たえた後、涙の止まらぬ両目で振り向き見たマクギリスへと嗚咽混じりに答えたアルミリア……全てを言い終えると同時にマクギリスの胸へと飛び込み、大泣きし始めた
マクギリスはそれを優しく受け止めた後、ゆっくりと動き出した右手で頭を撫でて落ち着かせながら、セファーの真意を思考し始める
(この状況はさすがに想定外だった……だがその可能性があるなら、この程度に対策を怠る彼女ではない……何処かに対処法を残して……やはり、この腕輪か?)
アルミリアへと伝えられた言葉に、託された腕輪を検分するマクギリス……大きさ的に大人用ではない、明らかに子供を想定したサイズ……金の装飾が施された表と、精度が一目で伺える程の極小サイズの機器がびっしりと埋め込まれた裏面……やはりコレは彼女に装着するべきモノだと結論づけたマクギリスは、アルミリアに声を掛け、託された腕輪の使い方を指示するのだった
火星の採掘場では、豹変した堕天使とジュリエッタ……そして鉄華団の戦いが未だ繰り広げられていた……
『この動き……速いけど、彼女よりずっと読みやすい……? 何がどうなって……』
最初から通して戦っていたジュリエッタは、動きの違いに困惑しながらも経験と技量で堕天使の攻撃を避ける……だが、頻度や挙動が徐々に三日月のバルバトス相手に集中し、半ば放置状態にされていた……それでも全く攻撃が飛んでこない訳ではないが……
『動きに迷いがない……そしてこの動き、セファーじゃない!』
持ち前の直感で違いを認識した三日月は、中にいるセファーを気遣いつつも反撃に出ていた……だが、人の意思を汲む程のオカルトパワーを持つサイコフレームと連動した破壊衝動は、尽く三日月の攻撃に対応……あるいは反応し、避け、いなし、受け止め、カウンターまでしてくる
セファーの苦悶の声も既に聞こえなくなり、彼女の様子は既に伺えなくなって久しい……だが、三日月はその直感故か、それとも生来の性格故か……全く諦めていなかった
「……セファーを、返せ……人形が……ッ!!」
怒りを滲ませる三日月……だがその動きは冷静であり、度重なる堕天使の反撃や常識外の挙動にしっかりと対応し、唯一上回るパワーを最大限に生かしながら堕天使と斬り結ぶ……
『待たせたな三日月……って、何だぁ?!』
『どうなってんだよこの状況……なんでセファーと三日月が……』
ド派手なピンク色に塗装されたガンダム・フレーム……4代目流星号ことフラウロスとグシオンリベイク・フルシティも現着したが、繰り広げられた光景に唖然とする
堕天使と斬り結ぶバルバトスもそうだが、一緒に戦っているのがアリアンロッド艦隊所属のMSと分かると、その混乱は更に助長されてしまう
『そこの2機! アナタ達も鉄華団ですね?!』
レギンレイズ・ジュリアからの声に昭弘とシノは思わず顔を見合わせてしまう……続けて放たれた声に、ようやく我に返って動き出すのだった
『加勢するか撤退するか、どっちかにしなさい!!』
……ジュリエッタは最早自棄気味に叫んでいた
堕天使 vs バルバトス&ジュリアの様相、なんか書いててジュリエッタが可愛そうになってきちゃうのは気の所為でしょうか……?
そしてグシオンとフラウロスもようやく現着!
ちなみにアリアンロッド艦隊の大部隊もすぐそこまで迫ってますよ!
最早識別なしに暴れまわる堕天使……この先一体どうなってしまうのか……
そして、反応すらしなくなった本人の運命や如何に?
今後の原作キャラの扱いについて
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好き勝手にやっても良いよ♪
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ある程度、原作準拠なら……
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最大限、原作準拠でオナシャス
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これ以上はやめたげてw
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・・・・・・。(崩壊具合に絶句)