【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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前回デビルガンダムに取り込まれそうになったジュリエッタ嬢。
ガエリオ君に助け出され、心境に変化があった模様……

一方、堕天使の再起動は……?


第27話 復活の堕天使(2)

 デビルガンダムに取り込まれる寸前、阿頼耶識を活用した強引な力業で救出されたジュリエッタ……機体ごとガエリオのキマリスによって輸送されていたが、デビルガンダム迎撃に全部隊を投入したという情報をラスタルから受け、合流すべく予定地点にて待機していた……

 

 風に当たるジュリエッタ……ガエリオもハッチを開くが、ジュリエッタが必死に涙の跡を隠そうとしているのがモニターに映り、しばらくコクピットから出ずに居る事にした

 ……しばらくしてジュリエッタが口を開く

 

『……私は今まで、自分を騙して居たのでしょうか……』

 

 ジュリエッタの思わぬ言葉に、神妙な面持ちで次の言葉を待つガエリオ

 状況的には独白に近いが、ジュリエッタもガエリオに聞こえているのを承知の上で話している様だった……

 

『……ラスタル様への恩義の為に、力を尽くしてきたつもりですが……あの時、私は自分の死を前にして……足がすくんでしまった……ラスタル様の為なら、死んでも良いと思って居たのに……』

 

「……誰でも死ぬのは怖いさ……如何に心を鍛えても、死の恐怖には抗えない……俺もそうだったからな」

 

「……さすがに、経験者は違いますね……」

 

 ガエリオも、マクギリスから死を突き付けられた瞬間……己の存在意義を自問自答していた

 それは誰しもが必然の心境……走馬灯が走ると言うのに似ているが、そこで自らの人生に悔いが無い、と言えるのは恐らくほんの一部しか居ないだろう……ジュリエッタはそれまで、堕天使に勝てないという状況から、ラスタル様への恩義を返すという今まで自らの行いに、僅かな疑問を持ってしまった……

 そこに死の恐怖が飛び込み、自分の行いは本当にラスタル様の為になったのだろうか? と、変な発想をしてしまった……

 

 そんな事は彼に聞けば良いと一瞬思ったガエリオだが、すぐにその考えを否定した事に今度は自分が驚く……ガエリオもマクギリスとの問答で「人を疑わないのは欠点だ」と突き付けられていた……マクギリスを疑わなかったから、彼の真意を図れず、彼の被っていた仮面に踊らされ、親友カルタを失い、自らも瀕死となった……その苦い経験は、確実にガエリオの意識を改革していた

 

「……あの時、私は今までの自分を疑ってしまった……そんな事、ラスタル様にはあり得ないのに……」

 

 人の真意など、ニュータイプにでもならなければ分からない……誰かがそう言っていた気がする……

 

──────────

 

「……俺は信じてるからな、アイツの帰りを……」

 

 そう言ってオルガは団員達を焚き付け、堕天使の再起動計画を説明する……

 堕天使に組み込まれたサイコフレーム……人が持つ感情や精神の変化に反応し、時には超常現象や奇跡とも呼べる力を発揮する人類科学の産物……人の手で産み出された、人の手に余る力を持つモノ……だが今は、奇跡でも良いから起きて欲しかった……家族を、義妹を取り戻したかった……

 

「やるぞお前ら……やり遂げて、チビ嬢を見返してやる!」

 

「普段からあの人には世話になりっぱなしだからな……ここらで恩返しってのも悪かぁないだろ!」

 

「俺らの心の癒やしを取り戻せ!!」

 

「団長とお嬢がいなきゃ、俺らの人生狂ってたんだ……俺は1人でもやるぜ!!」

 

「……! お前らなぁ……」

 

 ごく一部は性癖まがいの発言まで混ざっていたものの、ほぼ全員が口々に賛成の意を示していた……それを聞き、オルガは心の中でセファーと賛同してくれた団員全員に何度も礼を言った

 

 

 ランドマン・ロディに支えられ、力なく佇むだけの堕天使……その周囲を囲むように仮組みされた足場に団員たちが登り、入れ代わり立ち代わりセファーへの思いの丈を、露出したサイコフレームに触れながらぶつけていく……さながらお礼参りの様な光景を眺めながら、三日月はオルガの隣に歩いてきた

 

「……セファー、気付いてくれると良いね……」

 

「あぁ、気付いてくれるさ……なんたって俺らの妹分だからな」

 

 傍から見れば荒唐無稽……正気を疑うだろう作戦、最初は三日月の真剣な顔に根負けした形だった……だが、自分が焚き付けたとはいえ、団員たちにこれだけ好かれている義妹の手腕と性格に、オルガは羨望と感謝の思いで一杯だ

 普通なら淡い期待……だが自分自身、失敗など何故か微塵も感じていない……そして彼らの思いに応えるかの様に……

 

 ……サイコフレームの力は「人の思い」を反映するのだった

 

──────────

 

 正直言って、自分が悔しい……

 

 自分で墓穴を掘るとか、悔しくて……恥ずかしくて……穴があったら入りたい……いや、もう入ってるんだっけ……主に恥ずかしさで

 脳量子波の相互遮断……その反動で悲しいかな私の意識は、堕天使の制御……そしてあろう事か自分の肉体とのリンクも途切れてしまっている……唯一途切れていないのは、サイコフレームから一方的に押し付けられている堕天使の状況を示す情報だけだ

 

(……これからは、もう少しちゃんとした精神的防御方法を確立しないとなぁ……)

 

 先程やらかした精神世界でのドンパチで判明した、セファーの脳内にあったMAからのハッキング元……これは恐らく、私が憑依する前から仕込まれていたのであろうバックドア

 悪酔いしていた私はドンパチついでに逆ハックをかまし、ノリで一緒に連れて来ていたデストロイガンダム対して「やっちゃえバーサーカー♪」と命令していた……

 

 ……いやぁ、アノ光景は優越感マジで浸れるわ……(恍惚)

 

 っと、その辺はもう置いとこう……今思い返すと超恥ずいわ

 ……元・アラフォーだからねゴフッ(吐血)

 

 それじゃあ結論、ドンパチ大戦と逆ハックの効果もあって私は乗っ取り回避+諸悪の根源を完膚なきまでに破壊したのでもう(永久に)大丈夫です♪ 

 ちなみに残されたクズ情報から、幾つか興味を惹かれるログなんかを拾えたので後ほど精査するとして……何だろう……ずっと誰かに呼ばれてる気がする……

 

 ……それも1人じゃない、何人もの人たちの視線……自分自身の精神世界なのに何を馬鹿なとか思っちゃったけど、間違いなく他人の視線だ

 

(これって、サイコフレームの光……?)

 

 上から降り注ぐ柔らかな光……暖かな光の粒子、同じく意思を繋げる力であるGN粒子とは似てるものの……この感覚ははっきりと違うと思えた

 GN粒子の伝わり方はもっとダイレクトで濃密……元が情報伝達の発展形として「意識を伝達する原初粒子」と冠されたものだ、人の意識を人種の違いなく伝える為に、人の意思は言語の違いを超え、それぞれ母国語の声として感じられる……あと、全裸空間も(赤面)

 

 ……だが、サイコフレームの光は例えるなら触覚だ

 誰かを後押ししたいと思っていれば、それは相手の背中に暖かさを感じさせ……誰か守りたいと思えば、それは相手を守る盾となる……人の意思を直接、現象のように表現するのがサイコフレームだ……私の所感ではあるけど。

 

(この感じは……鉄華団のみんなだ……)

 

 私の目に思わず涙が溢れた……あれからずっと離れ離れで、時々一方的に私が外から覗き込んで、みんなの状況を知るだけだった……あの時からずっとその状態が続いている……あの別れからずっと……

 それが自ら選んだ道……鉄華団のみんなを幸せにする為に選んだ、私ができる最善の道だと選んだはずなのに……私の涙は止まらない

 

「……なんだ、私ってばやっぱりダメダメじゃん……

 皆の為に自分で選んだってのに……今更ホームシックだなんて……」

 

 ココ最近、随分と精神的に若返ってる気がする……元アラフォーが今じゃ見た目相応の少女の様な弱さを見せている……これは肉体に引っ張られていると言うのだろうか、今更悪いとは思わないが……この感情はちょっと辛いかも

 でも、そんな暖かさに私の心が何かを感じた

 

(兄さん達、必死で堕天使に話し掛けている……訳も分んないのに答えを出してるとか兄さん達の方が十分チートじゃないかなぁ……)

 

 ……そう、これだけの後押しがあるのに私は何をやっているのだろうか

 

 私の目的は何だ? 

 私が今やるべき事は何だ? 

 私は何を成す為に今まで生きてきた? 

 

 そんな事、最初から決まっている……!

 

「……鉄華団のみんなを、生き延びさせる……」

 

 そう、原作……ガンダム史上、最も報われない結末を書き換える為

 そしてそのフラグはまだ、へし折られてない……奴が、デビルガンダムが居るからだ

 

 私の知らない過去は、とことん邪魔をしてくれる……

 出来るだけ事を穏便に運びたかったのに……だったらもう手加減などしない

 

『私の全部で、アイツを葬る……!』

 

 その為にも、堕天使の存在は必要だ……

 サイコフレームから伝わる心の光……今なら、私は何でも出来そうな気がしている

 

『私は、セファー・イツカ……鉄華団団長、オルガ・イツカの義妹よ!』

 

 全身全霊の叫びと共に、私はサイコフレームの光が導くまま駆け出す……目指すは、私の原点……光が教えてくれた、この先に……私の原点があると

 

 

 前方にうっすらと見えたのは、人型のシルエット……いや、前方で閉じられた巨大な翼が見える

 見慣れた姿(堕天使)が自分を待つ様子に、思わずニヤけた

 堕天使に近寄りながら、走る勢いもそのままにジャンプ……思い描いた動線の通りに私は堕天使のコクピットへと導かれる

 

 シートに収まった私は、すぐさま両脇の操縦桿を掴んで目を閉じた……

 今もずっと、私を呼ぶ声は途切れない……その一つ一つが、私に力をくれる気がしていた

 

 垂れていた頭を振り上げると、一瞬の浮遊感……いや、落ちているのだ

 破壊衝動の残留が起こした、最後の悪あがき……

 

 でも残念、私はもう堕天使(自分)を取り戻している

 

「……待っててね、みんな!」

 

 コンソールを操作し、堕天使のフリーズを解く……力強くカメラアイに光が戻り、閉じられていた翼がゆっくりと開く……装甲の隙間から覗くサイコフレームには緑色の光が灯り、強力なサイコ・フィールドが機体を覆い、機体に掛かる枷を無くす……

 

 ……全ての枷から解き放たれた堕天使は、導かれるままに飛び立つのだった




すみませんが、感動のシーンは次回までお預けです。

破壊衝動の最後の悪あがき……しかし
堕天使という力と、生きる目的を取り戻したセファーには、最早怖いモノなど何もない!

ちなみに堕天使の再起動シーンは
新機動戦記ガンダムW Endless Waltzで、太陽方面から射出されたウイングゼロにヒイロが単独でランデブーし、先行して地球へ向かう時の起動シーンをイメージしてみました

この後、確定事項になるのは?

  • ガエリオにツンデレムーヴするジュリエッタ
  • シスコンに目覚めるオルガ
  • 純粋に家族を守るために覚醒する三日月
  • 恐る恐る堕天使の様子を伺うラスタル
  • 死んだふりムーヴからイチャラブかますマクギリス

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