【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
「……オイオイ、何て奴だよ……」
「……MSを……取り込んでやがる!?」
2人の目に映る異形が、あちこちに転がったMSの残骸を吸収しながらその姿を徐々に変えていく……
最初に見た姿は、下半身がまるで植物の様に大地に根を張っているという感じだった
だがそれは、300年に渡る経年劣化によりあちこちが破損または再生しきれず、奇しくも原作での大気圏突入によって破損した状態とほぼ同じであるが、セファー以外には知る由もない……
そして今、目の前で繰り広げられている光景は……初めて見る者にとって、正に「進化」とも言えるものだった
大地に張った根の様な無数の触手を体内に引き戻し、何本も束ね、その形を変化させ、太く力強い脚を形成……その数5対、10本の多脚となっていく。
更に上半身に一番近い脚は他に比べ更に巨大化し、さながら甲殻類のハサミの様な形へと変化……装甲の隙間から覗いていた体内のパーツ部分もしっかりとした黒い装甲に覆われ、いよいよ本格的に移動も可能な姿へと形態変化をしていった
その形状は、甲虫の様な下半身にガンダム様相の上半身が乗った、正に原作初期のデビルガンダムとほぼ同じ姿である……しかし、原作と違いそのサイズは半端なく巨大化し、上半身の片腕だけでも、MSをまるで子供のオモチャの様に鷲掴みできる程であった
唯一の救いは、大量の触手を足として形態変化させた為、その数を相当数減らしている事か。
凄まじい形態変化の一部始終を遠巻きに見ていた昭弘とダンテ……ライドは形態変化が始まった時点で報告に行かせたのでこの有り様を見てはいないが、異常事態という事は報告するよう言い聞かせてある……だが、実際は想定の遥か斜め上を急角度で突いていた
一通りの形態変化を終えたデビルガンダム……遠巻きに様子を伺っていた昭弘達を敵と認識したのか、背中の突起にエネルギーを集束させていく……その光景に野生の勘が働いた2人は、慌てて機体に回避行動を取らせるのだった
デビルガンダムが形態変化により、移動可能な状態へと進化した一方……堕天使の方にも変化があった……僅かながら光っていた堕天使のカメラアイに力強さが戻った直後、サイコフレームが通常の青色ではなく
「いよっしゃぁぁぁ!!」
「待ってたぜお嬢ぉ!!」
「これで勝ったも同然じゃあ!!」
団員たちが口々に成功を喜び合う中、オルガと三日月は黙って腕をぶつけ合う……それは原作で意味ありげに描写された「2人だけの合言葉」のようなものだった
そして……
「セファーちゃん……」
外傷がないため治療ポッドは使えず、マクギリスは身体が満足に動ける様になるのを待って、アルミリアに毛布を持って来させ、部屋の隅にあった低いテーブルへとセファーの身体を寝かせていた
もう何度目か分からない、セファーの名前をアルミリアが呟く……
彼女にとっては、同年代の友達は
そんな中、マクギリスに紹介されたセファーは彼女にとって初めての同年代だった……初顔合わせの時は少々ショッキング過ぎたが、以降も時間を見つけてはアルミリアへ会いに来たし「お友達になろうよ」とも言ってくれた……セブンスターズの一角を担い、権威に固執する父の振る舞いに疲れ果ていたアルミリアにとって、セファーの存在は掛け替えのないものなった
そんな少女の、突然の事態……
「私はまだ、貴女に何も返せてないよぉ……」
動かない友達の身体を前に、徐々に思い知らされる喪失感……今ではマクギリスも、セファーには少なくない恩義は感じていた……人伝いではあるものの、アルミリアとの関係は良好であると評され……アルミリア自身からも、最終決戦前に交わした2人の約束を語られたからであった
「……キミは、こんな事で終わる存在ではない筈だ……
ならば、キミの存在はヒトという矮小な枠には収まらない……人智を超えたその能力で、この苦難をも乗り越えて行けるだろう?」
マクギリスの言葉が、静かな小部屋に響く……彼の手に握られていたのは、セファーがマクギリスを起こす際に使った資材そのままのサイコフレーム……その試料が、徐々に淡い光を放ち始める
「……っ?!」
「……! マッキー?」
マクギリスの握っていたサイコフレームの試料が強烈ながら暖かく優しい光に包まれ、弾かれるように手から飛び出して空中を飛び回り始める
緑色の粒子のような軌跡を描きながら、サイコフレームはセファーの周辺を軌跡で囲い、その光の粒子を降り注がせた……しばらくの間、不思議なその光景に目を奪われる2人
そして気付けば、横たわった少女から聞こえるか細い声……
「……め……んね……泣いちゃって……んじゃない……?」
徐々に声量も大きくなり、はっきりと聞こえてくる少女の声
「……大丈夫だよ……私は、堕天使だから……こんな事じゃ死なないから……もう大丈夫……だよ、アルミリアちゃん」
時間にして半日ほどしか経っていないものの、凄まじい精神的疲労感が見て取れる程の弱々しい動きで起き上がる銀髪の少女……だがその瞳は力強く、虹彩は虹色に光っていた
セファーが起き上がるのを見届けたかのように、手元に落ちてくるサイコフレーム……その音を皮切りにアルミリアはセファーの側で泣き崩れ、それを抱き締めるように迎え入れたセファーはマクギリスを見やる
「……随分とお寝坊さんだったね、堕天使くん」
「……そっちこそ、まだ病み上がりなんでしょ? 無茶しないでよ」
おくびにも出すまいと2人はアルミリアの心配を他所に、開口一番で皮肉を言い合うセファーとマクギリス……この皮肉、実はお互いの健闘を称え合っていたのであった
バエルは失ったものの、本当に欲しかった心の拠り所を見付けられたマクギリス……時間が経てば、いずれアルミリアの兄ガエリオとも本来の関係を築いていけるだろう
「あと……もう少しで、私の願いも叶えられる……でも、それには貴男の協力が要るわ」
セファーの声に、皮肉の笑みから真剣な表彰へと一瞬で切り替わるマクギリス
「良いだろう……ガエリオとは少し違うが、私も一度死んだ身だ……
(……ヤヴァイ、もしかしてロリコンに目覚めさせちゃったかな……?)
口が裂けても言えない言葉を必死に飲み込みながら、怪しい企みを始めた様な笑みを交わす2人……アルミリアの泣き声が響く中、火星の命運を左右する最後の悪巧み(?)が動き出す……
その頃、ジュリエッタとガエリオはアリアンロッドの本隊と合流し、事の次第を余す所なく司令であるラスタル・エリオンへと伝えていた
『……謎の巨大モビルアーマーらしき存在と、堕天使の墜落……そして調査隊も全滅、か……2人とも済まなかったな、イレギュラーな事態がこれ程まで長続きするとは……私の完全な想定違いだったよ』
ラスタルの謝罪に、ジュリエッタとガエリオの2人は表情こそ変えなかったものの心底驚いていた
……つい先程まで2人はラスタルの事を疑おうとしていたのだから
「ラスタル、アレは生半可な機体では戦力にすらならない……俺のキマリスでも、単体では力不足に成りかねん」
現状ギャラルホルンの最高戦力とも言えるガエリオをしてこう言わせるデビルガンダム……時間が経つに連れて長年の経年劣化から復帰している中、それを知ってか知らずか、ラスタルも策を動かしていた
『万が一に備えて、軌道上からダインズレイヴによる定点砲撃を行える様に各方面と折衝中だ……準備には今少し時間を要するが、それまで耐えられないか?』
アリアンロッドの全戦力の大半を地上へと降ろしている為、ラスタルは何とかなるだろうと踏んでいた……が、その願いはガエリオの次の言葉で一蹴される
「……ガンダム・フレームなら辛うじて持ち堪えられるだろうが、さすがに俺だけでは……」
言葉を紡ぎながらガエリオの視線は破損したパーツを交換中のジュリアを見る少女の姿を見ていた……ラスタルもその言葉と視線の先を理解して唸りだす
『……そういえば、噂の鉄華団……とやらも近くに来ているのだったな?』
「あぁ、付近に自分達が抱える鉱山があると聞いている……そちらにも被害が及ぶなら、交戦も辞さないだろうな」
ラスタルはセファーとの接見以来、鉄華団とセファーの関係を洗い直した……が、終ぞ確たる証拠は見付けられなかった
しかし、ここまで何もない事は逆に何かがある……それを気付かれまいと、綺麗に痕跡を消しているのではないかと疑っていた……事実、鉄華団と堕天使の関係は驚くほど何もなかった……だがそれは綺麗すぎるのだ
確証を得れなかったラスタルだが、その疑いはどんどん深まっていく……もし、鉄華団と共闘する堕天使を見付けられれば、それを証拠に彼らを抑える事も可能だろう
頭の中で算段を付けたラスタルは、ガエリオに作戦を持ち掛けるのだった
『……300年前のモビルアーマー、ハシュマルとかいう天使を屠った噂の鉄華団……彼らの力を、私もこの目で確かめたくなったな』
火星の命運を決める戦い……混乱を極めるこの状況に、ラスタルは一石を投じるのであった
堕天使復活、か~ら~の~
デビルガンダム、進化ぁぁぁぁぁ!(○○モン風)
そして寝起きのセファーと悪巧みするマクギリスに、混乱を助長するであろうラスタルの作戦……
あぁ……まだまだ終わりそうにないわコレ。
どうなる次回?!
筆が……「止まるんじゃねぇぞ」って囁いて来るんです……かなり怖い。
……めっちゃ混沌してますが、感想お待ちしてます。(白目)
懲りないラスタルくんは、またセファーにちょっかい出そうとしています……
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今度こそ(精神的に)叩きのめすべき
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「だろう疑惑」のまま強制終了のお時間です
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マクギリスとの悪巧みに任せる
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素直に白状(?)して反応を待ってみる
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舐めんなゴルァ!と逆に脅迫(できますが?