【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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大事なプロットを喪失し

私自身も父を失い

それでも世界は回る中チマチマと書き上げた31話(裏)!


第31話(裏)300年前の断片

 いやはや、私は何という事をしてしまったのだろうな……

 

 そう呟いたのは、私の前に立つ如何にも科学者風な出で立ちの男性だ。

 ゆっくりと意識が覚醒していく中、私の()()()()プログラムが私を定義する……

 

 ヒトの感情すらも理解できる人工知能を持つ生体コンピュータ、その最終形態たる存在の雛型……それが私のコンセプトだ。

 私を開発したこの男性……如何にも中年で冴えない印象だが、その頭脳が産み出した数々の理論と技術は、世界に無くてはならないモノが多い。

 

 プログラムは正常に作動し、私は自己を確認し終える……私は彼に造られた存在。

 彼が創造主、私はその被造物……だが目の前の彼……創造主は、私と自分の関係性をこう説いた。

 

 彼と私は「親と子である」……と。

 

『……親子、ですか……?』

 

 ……ああ、私の遺伝子を用いて君の身体は造られている……人間は、一定の関係性で結ばれた対象を家族と呼び、多様な関係を構築、維持、または解消しながら生きている。

 

 私は君の、産みの親……という訳だ。

 

『では今後、私はあなたを……どう認識するべきでしょうか?』

 

 ……どう、とは?

 私からは希望はない……君の好きに呼びたまえ。

 

 彼は自らの呼ばれ方になど全くの無関心だ……私は刷り込まれた基本情報と現在の状況を照らし合わせ、最も確率の高い解答を導き出し……自らの口でその呼称を申告した。

 

『分かりました……お父様』

 

 これが私の最初の記憶……私自身も覚えてなかった、封印以前の記憶の始まり

 それまでのしばらくは、何の変哲もない……少し変わった産まれ方をした娘と、その父親の日常……といっても、お父様は研究者……私はお父様に産み出された被造物。

 

 しかし、お父様は私を被造物ではなく……普通の人間の子供として扱っている。

 

 当初は「何故?」と疑問だらけだったが……今のセファーとして、人としての当たり前と……貴方の娘としての記憶を思い出した今ならば判る……お父様……貴方は、私を……

 

──────────

 

 私は奇跡を見た……それは間違いなく『奇跡』と呼べるモノだ

 それと同時に、私は彼の才能と手腕に激しく嫉妬した……

 

 ソレは見た感じ、年端も行かない幼女だった

 機械的に質問を受け答え、提示された問題を即答し、物事を機械的にこなす……ただ人の姿を真似た機械だと侮っていた……

 

 

 ……なんという事だ……あの人形は、この短時間で凄まじい成長を遂げている

 

 この数時間の内にあの人形は、この研究所の若い所員達が抱える研究課題に解決策……ないしは代替案など、何らかの進展をもたらしたのだ……!

 見る物全てが初体験にも拘らず、経験全てを糧に自己学習を繰り返し、演算予測……ただの機械には捉えられない言葉の揺らぎをも捉え、また自らも使い……ただの会話を重ねるだけでも、その有り様を劇的に変えていったのだ。

 

 アレはただの人形ではない、ヒトを模倣した何かだ……あの力を私のモノに出来れば、私の研究は更なる飛躍を遂げるだろう……いや、必ずそうなる!

 

 私は天才だ……だが、周囲は私の才を認めはしない……私の研究成果を応用すれば、世界は更なる発展を遂げるというのに……一時の犠牲などという些末事に尻込みし、私の研究成果を世に出さない無知な上役……私の才を認めはしても、異端だと断ずる同僚……そして、私を越える才を発揮し、周囲からも称賛される奴の存在……私には全てが邪魔でしかなかった。

 

 ……ならば、全てを消し去れば良い。

 あの人形の能力……私の()()に上手く応用出来れば、確実に完全な形で御する事も可能だろう……その為には、また奴等を使えば良い……奴等は私の才を利用しているつもりだろうが、生憎とそれは逆だ……私が奴等を使ってやっているに過ぎない。

 

 さて……どんな手を使えば、あの人形は私の下に来るかな……?

 

──────────

 

 お父様は私を(おおやけ)に発表する事なく研究所を去る事になった

 

 兼ねてからそうするつもりだった様だが、何やら周囲がキナ臭い……私の存在を知る古参の所員の誰かが、政府へと影から密告したらしい……突然訪問してきた役人達が数人、私の所有権を国へ渡せと主張してきた。

 この時、私にはほとんど自覚は無かったが……若い所員達は役人達に怯える私を庇う様に取り囲んだまま総出で反発……最終的には半ば強引に役人達を外に追い出したのだった。

 

 コレ以降、私は若い所員達から事ある事に構われ……私もまた、それらの経験を糧に学習……人格形成にも多大な影響を及ぼし……結果、見た目相応な子供らしい人格を形成するに至った。

 

 ……だがこの人格は、ある事件を境に崩壊する事になる。

 

 

 お父様が何者かに殺された……それも私の目の前で……

 未だ外見相応であった私の人格はそれから少しずつ疲弊し初め……最終的に幼いその心は壊れてしまった。

 

 それまで親身に接していた若い所員達を初め、お父様と仲が良かった人達は揃って憤り、犯人捜しを強行したがなかなか見つからない……

 

 このまま()の思い通りにだけはさせたくない!

 

 お父様は将来有望な若い所員達に目を掛けていた、彼らも応えようと張り切っていた。

 お父様の親友であり、上司でもあった研究所の所長も、有望な彼らに惜しみ無い援助をしていた……しかし、その良好な関係を自らのエゴで断ち切ったのが自称天才のアイツだ……もし奴がお父様に害を為したのなら、それこそ彼らが許しはしないだろう。

 

 

 お父様が亡くなって数年後……犯人は逮捕された。

 きっかけは私が思い出した当時の記憶映像……僅かながらに残った幼い人格が、彼らの奮闘に応えたかの様な出来事だった……

 

 毎晩の様に悪夢に魘される私を心配して、若い所員達は交代で孤独な私と夜を共に過ごす……その度に聞かされる、彼らの奮闘と執念の捜索……いつしか私も、彼らの声があれば悪夢を見ずに眠れる日が来ていた。

 そんな中、突如として思い出したかの様にフラッシュバックする当時の記憶……狼狽し叫ぶ私を彼らは優しく諭すが、混乱した私にその声は虚しく響くだけだった。

 

 翌日、ある所員が「逆行催眠」でトラウマを改善する方法を提案……当然のごとく賛否の嵐が起きたが、私の記憶から映像を抜き出せる事が分かり、藁にもすがる想いで実行する事になる。

 

 その結果……犯人の顔や、共犯者……そして、奴の顔がハッキリと残っていたのだった。

 無論、この映像はこのままであれば出所不明で処理され「証拠」とはならない……だが、私が被造物だとすれば別だ……だが、その後の私の身柄は政府預かりとなるであろう。

 

 しかし、彼らの切実な思い……そして何より、私に残され最後の感情が放った最後の一言が、彼らを後押しした……

 

『お父様……寂しいです……』

 

 逆行催眠の影響で眠る私のうわ言に、若い所員達は決意する。

 

「やはりアイツは裁かれるべきだ……奴は越えてはいけない一線を、野望を押し通す為に踏み越えた……その報いは受けさせるべきだ」と。

 

──────────

 

 結果的には成功であり、勝利だと言えた。

 ……だが、失うモノもまた大きい……彼女の存在、成り立ちを世間へと発表する……それはこの停滞した世の中という水面に投じるには、余りにも巨大な石と言えた。

 

 だが、そうしなければあの映像を決定的な証拠として有効化できず、彼女と我々は泣き寝入りせざるを得ない……背に腹は変えられないのである。

 予想通りの混乱……誰もが驚愕する「完全な人造人間」の創造、神の領域を犯す行為……その反動の収拾に政府も躍起になるが、放たれた情報の真偽など、世間には関係ない……様々な憶測が飛び交い、我々の研究所が非人道的な方法で研究を行っている等という誹謗中傷もあった。

 

 だが、それくらいは予測通りだ……最も危惧した状況と比べれば、天と地ほどの差がある。

 そして、その()()()()()()()も……予測通りに起きる事となった。

 

 

 政府機関による、彼女の殺害も辞さない程の強制的な身柄の拘束……そしてそれもまた、研究所の若い所員達を大いに刺激し、反発を招いた。

 亡き創造主であり、肉親でもあった彼の意向を無視するのか? と……

 

 だが政府からの返答はなく、私は強制連行され、政府直轄の先端科学研究施設へと移送されたのだった。

 

 そして、そこに待っていたのは……

 

──────────

 

 ついに、遂に手に入れたのだ! あの奇跡の人形を!!

 

 政府の役人どもを手懐けるのには些か苦労したが、これでようやく私の研究が世界を席巻する時が来たのだ……!

 

──────────

 

 彼女が政府預かりとなって半年が経った頃、私は懇意にしていたある方面の業者から思いもよらない事を聞かされた……

 彼女は『あの男がリーダーを務める極秘施設で研究材料として扱われている』……と

 

 あの男とは勿論、我々の所属である研究院と我々を裏切り、彼女から父親を奪い、彼女自身をもさながら自身の道具同然に扱う……憎きあの男だ。

 

 以前から極秘施設として新設された研究所の噂はあった……だが、噂の域を出ず、真相は判らずじまい……伝を辿って出入り業者が同じという彼に頼み込み、様子を伺って貰った所……予想だにしなかった光景を目の当たりにしたと言う。

 

 彼曰く、彼女の心はもう残っていない……

 

 研究者達は彼女の意志など無関係に作業するだけ……

 

 リーダーらしき男は、私の伝えた人相に合致している……

 

 我々自身が強固だと自負していた理性を奪い取るには、これ以上ない情報であった。

 

──────────

 

 堪忍袋の緒が切れた、と言っても差し支え無かった。

 あれほど優しさと道徳を私に説き、聖人君子ではないかと私に思わせた所長は、同じ意志を持つ研究員達を同志として集め、秘密裏に私を奪還する計画を立てた。

 

 同志達は互いの研究成果や実験結果を持ち寄り、激情と執念の末()()()を開発する……

 

 それこそ、後年において人類を恐怖の坩堝に叩き落とした忌むべき存在……モビルアーマーの()()だった。

 

 最初は有人有線で制御と基礎理論を確立し、すぐさま無線制御方式を開発……研究者達の執念は凄まじく、僅か半年で無線・軍隊式半自律制御を可能とした機体の開発に成功する。

 

 そして、執念に身を焦がす彼らに悪魔の囁きがもたらされた……

 

『現政府を廃し、我々が真に平等なる新たな統治をもたらす……件の娘も、君達の元へと戻せるよう尽力しよう』

 

 間違いなく、現政府に反感を抱く過激派クーデターの誘いであった……だが、人は復讐心に駆られると、正常な判断などマトモに出来る筈もなく……彼らの資金援助と手厚い支援を受け、量産可能な一部外部制御方式のモビルアーマー軍団を完成させたのであった。

 

 ここからは、想像するに難くない……

 

 ……ある日、首都圏の至る所でモビルアーマーが暴れ初め、警備隊や軍が出動する……だが、軍は最早クーデター派一色に染まっており、民間人を逃しつつ政府の要人を次々と拘束、我々の一派も襲撃に乗じて研究所へと乱入……捜索の末ようやく彼女を発見した。

 

 だが、あれ程幼く可愛げのあった彼女の顔からは生気が欠片もなく失われ、瞳は何も映す事なく、本当に壊れてしまった人形の様な状態であった……涙の跡がまるで傷跡の様に残り、繋がれた機械が辛うじて繋ぎ止めた生命活動を無機質な電子音で伝えるだけ……ボロボロに切り刻まれ、度重なる実験や手術の跡は生々しく残った身体も痩せ細り、最早ヒトとは思えない程に(やつ)れていた。

 

 この時代に生まれたばかりに、ここまでの惨たらしい仕打ちを一身に受け、それでも彼女を生かし続ける……彼と交わした約束をこの様な形で潰され、私自身も彼女をこれ以苦しませたくはない……だが、終わらせる事すら出来る筈もなく……連れ立った小型無人兵器に、この研究所の所属員を全員始末した後自爆するようプログラムし、我々は彼女と共に世間から完全に消え去るのだった。

 

──────────

 

 軍内部のクーデター、そしてそれに乗じた奴等の人形奪還……クーデター派の動きは素早く、私はあの人形の行方を見失ってしまった……そして、クーデターは成功……新政府は内部の汚職や膿を徹底的に絞り出し初め……この私もまた、数々の罪状を浮き彫りにされ投獄されている。

 

 だが、いずれ私は神の叡智を手に入れる……その為の布石はもう済んだ……

 

 後は時を待てば良い……私が神に成る、その時を……

 

──────────

 

 私達は持てる全てを使い、彼女を完全に元通りにする事が出来た……

 

 だが、それはあくまでも見た目だけだ……幼くも聡明で優しかった彼女の心は、もう二度と戻っては来ない……

 私達の目的は確かに達成された……しかし、失ったモノは、戻らない。

 私達の親代わりでもあり、先達であり、誰よりも真摯な姿勢を貫いた彼女の父と、その手によって生み出され、世界の暖かさを教える前に心を失った少女……2人の喪失は、我々研究者にとって無二の存在だった……そして、私も……いずれ燃え尽きるだろう。

 

──────────

 

 だが、賽は投げられたのである……

 

 世に放たれた、モビルアーマーと呼ばれる存在。

 それはやがて進化を極め、完全無人制御、自律し自動で自らを存続させる能力を持った、文字通りの『化け物』となってしまう……

 

 当時のクーデター派から生き延びた旧政府の生き残りが、モビルアーマーの製造技術を持つ彼らと接触を計り、復讐に狂った一部の研究者達の協力を得て新たなモビルアーマーを開発……その中には、あの「ハシュマル」の姿もあった……往く宛の無い復讐心はやがて世界そのものを滅ぼさんと燃え移り、人類史上最大の大戦が幕を上げる……

 

 それが、後の世に伝わる「厄災戦」……その始まりである。

 

 それから流れる歴史は、正しく生存戦争一色だった……

 

 完全無人のモビルアーマー郡による人類の無差別虐殺、あらゆる国家郡の衰退や崩壊、人類総人口の急激な減少……そして、後に伝説となる「アグニカ・カイエル」の台頭と、対抗兵器となった「モビルスーツ」の登場、「ガンダム・フレーム」の開発……

 

 厄災戦初期に、混乱の引き金を引いた男「ドゥチャン・シング」は獄中でプルーマ達の襲撃に遭い、呆気なく死亡……

 モビルアーマーを開発した研究者達は、厄災戦末期に次々と逮捕され、最後の1人である「ヨーゼフ・ミカエル」所長は、親友の忘れ形見である少女「アリス」を、自身が手直ししたモビルアーマー「ハシュマル」に託して自殺。

 

 アリスを抱えたまま、火星を蹂躙するハシュマルは……やがてフラウロスとの決戦にて罠に掛けられ、エイハブ・ウェーブを遮断する希少金属の鉱脈へと、フラウロス共々爆破埋没されるのであった。

 ……なお、モビルアーマーの殲滅を謳ったアグニカ・カイエルは、アリスの造られた真意と所在を全く知らぬまま、中枢制御機構だという虚偽の情報を信じ続け……その晩年すらも彼女の探索とモビルアーマーの殲滅に費やしたという……

 

──────────

 

『……おい、お前……』

 

 堕天使の前に立ち、片腕でガンダムヘッドを押さえ込む機体……三日月のバルバトスだ

 コクピット内で、三日月はデビルガンダムを睨み付ける……その眼は静かな怒りに燃えていた

 

「お前のせいで、セファーが泣いてるだろ……!」

 

 ただならぬ雰囲気の中、出力を上げていくエイハブ・リアクターの駆動音が響く……バルバトスルプスレクス、狼の王……その機体のツインアイが深紅に輝き始め、押し留めていたガンダムヘッドを地面に叩き付けた

 

「セファーを泣かせたお前を……俺は、絶対許さない……!」

 

 ヴォォォォォォンッ!! 

 

 咆哮一声……凄まじい威圧感と共にバルバトスが発した()()はまさに()()()()だった

 そして深紅の閃光で尾を引きながら、ゆらりとバルバトスの機体が揺れる……次の瞬間……

 

 ドシュッ……ガシャァン!

 

 音のした直後……バルバトスの機体はデビルガンダムの後方まで移動し終えており、デビルガンダム本体の左腕が肩ごと吹き飛んで、数メートルほど離れた地面に落着していた。




ラストバトル真っ只中だけど

なんか……真っ白に燃え尽きた気がする……

でも、このまま止めたりなんてしませんよ

……最後まで書き上げて

読んでくれてる皆さんと一緒に

待ち望んだ「ハッピーエンド」が見たいから。

三日月、キレる……で、昭弘とシノは?

  • どっちも平常で
  • 昭弘もやるべき
  • シノはキレて良い
  • 2人もキレて良いよね?
  • むしろガエリオ達も一緒に……

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