【更新休止中】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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前話のアンケートですが、最早茶番でしたねw
まぁ、分かってましたが……声の主に想像付く方は、如何程いらっしゃったかな?

では、待ち望んだエンディングを迎えましょう!!


エピローグ「真に待ち望んだ未来へ……」

 私はデビルガンダムを討伐する為に、サイコフレームの力を解放……

 代償として脳に損傷を受け、薄れゆく意識の中で2つの声を聞いた

 

(……もう良いのかい?)

 

 どこか不満を煽るかのような、大人の声……何処か聞き覚えのある、優しさと強さに満ち溢れた声で聴こえてきた質問。

 良いのか? と聞かれる理由に思い当たる節は無かったが、問い掛けには誠実に答えたい……

 

『私は……』

 

 言いかけて、もう1つの声が聴こえてきた……

 

(セファー……セファー……!)

 

 此方も聞き覚えのある、焦りと不安だらけの呼び声……

 

 私に聴こえてきた、2つの声……どちらに応えるか、私の心は既に決まっていた。

 

──────────

 

 デビルガンダムに特攻した堕天使……緑色の光と結晶体を纏い、デビルガンダムに接触した瞬間……

 凄まじい光量と溢れる緑色の粒子で視界はゼロとなり、その場に居た全員が息を飲む。

 

『……ど、どうなった……んだ?』

 

『……セファー』

 

『デビルガンダムは……?!』

 

『……堕天使は……?』

 

『何も見えねぇ……どうなってんだオイ?!』

 

 昭弘、三日月、ガエリオ、ジュリエッタ、シノ……5人はそれぞれ一点を注視し続け、やがて急速に光が消え去り、5人の視界がブラックアウトする

 

 その後見えて来たのは、大量の土煙……2機の姿はまだ見えない……

 

 焦れったさに全員がコクピットから外へ出る、三日月とジュリエッタが最も近い位置に立ち、移動射撃を繰り返していた昭弘は中ほど……定点から砲撃を繰り返していたガエリオとシノは少し遠目だが、全員が目視で2機の状態を確認できる距離だ。

 

「……ッ!!」

 

 三日月がいち早く、土煙から何かを察する……

 土煙が徐々に晴れていき、顕れたのは……まるで彫像の様に色褪せ、完全に動きを止めたデビルガンダムと……その胸部に両手を添えたまま停止しながらも、サイコフレームから発した結晶体を纏う……ボロボロの堕天使の機体が見えてきた

 

 やがて完全に土煙も晴れ、火星の乾いた風が頬を撫でていく……その風がキッカケとなったのか、デビルガンダムの彫像が少しずつ崩れ始め……最後は轟音と共に本体も残さず砂と化していった。

 

「やっ……たのか……?」

 

「……やれたんだな、セファー」

 

「終わったか……」

 

「恐るべき力でしたね、あの悪魔……そして堕天使も」

 

「よっしゃぁぁぁぉぁ!! やったなセファー!!」

 

 五者五様な反応を示し、それぞれが戦闘の終結を確信する

 コクピットへと戻り、MSでセファーを迎えに行こうとするが……

 

『あん? 機体が……動かねぇ!?』

 

『……バルバトス?』

 

『どうしたグシオン?! 何で動かねぇ!?』

 

『アイン……お前も、全うできたのか……』

 

 ジュリエッタのレギンレイズは損傷こそ他よりあるものの、稼働に問題はないが……バルバトスと初めとするガンダム・フレームは残らず稼働を停止し、皆がコクピットを出るまでは辛うじて動いていたリアクターも既に沈黙している。

 それは、限界を突破して能力を行使した堕天使のサイコフィールドが……乗り手であるセファーの願いを組んで動力源やシステムの重要機能を経年劣化させ、()()使()()()()()()()状態へと導いた結果であった。

 

「……セファー、これがお前の願いだったんだな……」

 

 昭弘、シノ、ガエリオが機体の状態に困惑する中……ただ1人、三日月だけがセファーの真意に気付く……

 

 力なんか無くても、みんなで力を合わせれば、きっと幸せになれる……

 

 そう願って、迷子の子供達(オルフェンズ)に……暴力で解決する以外の道を示す……

 

 ずいぶんと時間が掛かってしまったが、セファーは己の願いを……三日月達に示したのであった。

 

 仕方なくバルバトスを降り、徒歩で堕天使の元へ歩きだす三日月の所へ、1台の社用車が突撃してくる……

 三日月は待っていたかの様に足を止め、急ハンドルとブレーキでバルバトスの足元に停止……後部座席から勢いよく飛び出して来たオルガの側に来ると、いつもと変わらない口調で報告を始めた。

 

「オルガ、終わったよ……セファーが終わらせた、みんな無事……機体は何か動かないけど」

 

「……っ!? ああ、何時もながらスゲェよお前は……!」

 

「今回は俺じゃない……全部、セファーのお陰……」

 

「……そうだな……堕天使は?」

 

「あっち……動いてないけど、あの光がまだ残ってるし」

 

「そうか……よしチャド、おやっさんに連絡だ!」

 

 オルガは早速後方で控えているメンバーに連絡を取り、機体を引き上げる為の準備をさせる……

 その間に三日月は車に乗り込み、連絡がついた後に堕天使の足元へと到着する

 

「……降りてこないね」

 

「いつもなら団長見ると速攻で来るんだけどな……『また無茶してないよね? 今日はちゃんと休めてる?』とか心配してさ」

 

 そう、普段のセファーならすぐに降りてくる……のだが、一向にその気配がない

 

 少しずつ不安が濃くなるオルガ達……その後おやっさん達も現着し、護衛のランドマン・ロディで堕天使のコクピットに横付けして、外部操作でハッチを開かせた

 

「……オイ、セファー? 疲れて寝てるのか?」

 

 シートに深く座り、辛うじて少女の吐息だけが聞こえる堕天使のコクピット内……覗き込んでいたオルガは最初、単に疲れて眠っているのと思っていた……だが、三日月やチャド達の声が聞こえてきても、昭弘やシノ、ガエリオ達の声にすら全く反応せず、沈黙を守る少女……

 

「……セファー?」

 

 三日月の声色に、ドッと嫌な予感が押し寄せるオルガ……先程まで仲間と勝利を分かち合った笑顔も一瞬で消えている

 

「ミカ……どうした? セファーは?」

 

「分かんない……でも何か、息はしてるのに……死んだ様に眠ってる」

 

 三日月のカンが言わせる言動は、おおよそ外れない事が多い

 今までもその言動に救われた事実も多くあり、ぶっちゃけ予知レベルで凄い時もあった……そんな三日月が、セファーを「死んだ様に寝てる」と評する……

 

 堪らなく不安が募る……もしかしたら……?! そう考えたオルガは急いでセファーを車に運ばせると、堕天使とバルバトス達を雪之丞に任せ、自ら運転してクリュセの病院へと直行するのだった

 

──────────

 

 クリュセの病院に到着したオルガは、セファーに精密検査を受けさせた……

 だが、検査の担当医は「身体機能に一切問題ない」と回答し、眠っている原因は不明だと明かす。

 

 だったら何が原因なのだろうか……? 火星の医療レベルでは判らない原因があるのかもしれない……

 オルガはそう判断し、藁にも縋る思いで兄貴分である名瀬に頼った。

 

『俺もその嬢ちゃんには《簡単には返せねぇ》程の大きな借りがあるんだ……任せろ、一番腕の良い奴を手配してやる……嬢ちゃん連れて、こっちに来れるか?』

 

 

 テイワズのトップ、マクマード・バリストンから正式に「若頭」に据えられ、今までの様な身動きが思う様に取れなくなった名瀬だったが……命の恩人であるセファー絡みの頼み事と聞き、2つ返事で快諾。

 ……後日、テイワズの本拠である歳星へ、オルガと三日月、アトラと……眠ったままのセファーが到着した。

 

「久しぶりだな、兄弟」

 

「兄貴……セファーを……!」

 

「心配するな……頼んでる医者はタービンズ時代から世話になってる医者(ヤツ)の友人で、脳神経・精神科の専門医だ。

 嬢ちゃんの異変も、その先生ならきっと何とかしてくれるさ」

 

 男がそんな顔をするんじゃねぇよ……と肩を叩きながら、名瀬は紹介する医者の情報をオルガに伝える

 既に歳星の病院で待っていたその医者……セレスティア・アーデルハイド。

 

 若干20代ながら脳神経外科と精神科でその腕を振るう才色兼備の女医であった。

 

 だが、その敏腕女医の力を持ってしても……抗えない現実が、オルガ達に突き付けられる……

 

「……結論から言うと、彼女は脳神経に受けたダメージが原因で昏睡状態に陥ってるわ。

 このまま死にはしないけど、意識を取り戻すかどうかは分からないわ……残念だけど、これは私でもお手上げよ……

 脳神経の物理的な損傷や、精神疾患なら何とかなるんだけど……こればっかりは、ね……」

 

 何という事だ……ならばセファーは、奇跡でも起きない限りこのまま眠ったままだというのか……突き付けられた現実に、耐え切れず啜り泣くアトラ、三日月もアトラの心情に同調し表情を曇らせている。

 

 そして、兄であるオルガは……しばらくの間、思考が完全に停止してしまうのだった。

 

 

『……そうですか……セファーちゃんが……』

 

 セファーの治療法を見つける事ができず、一行は火星へと帰還……クーデリアや、地球支部の団員たち……そして蒔苗東護ノ介の下で雇われている元・団員タカキにもその情報は伝わり、クーデリアはセファーが入院する事になったクリュセの病院に駆けつけ……現在、地球支部からタカキ達との通信が繋げられていた。

 

「堕天使の機能はチビ嬢ちゃんしか分からねぇ……だから俺達も、何もしてやる事が出来なかった……情けねぇよな……」

 

 雪之丞の苦しい告白……だが、現実に彼らは堕天使に関して一切を知らされておらず、セファー自身も堕天使に関しては他の誰の手も借りる事はなかった……必然的に彼らが手を貸す事など出来る訳がなく、彼らのせいではない事は明白である。

 

「そんな事はありません、セファーちゃんは整備班の皆さんの手を煩わせる真似をしたくなかったのでしょうから……雪之丞さん達のせいではありませんよ」

 

「そうですよ! 本人すらだって予測出来なかったのかもしれませんし……彼女は俺達に、傷付いて欲しくなかったと思ってたんでしょ?」

 

 そう……歳星から戻る途中で三日月から聞いた出来事……

 

 セファー唯一の、譲れない願い……それは「鉄華団のみんなを必ず未来に生き残らせたい……そして、暴力以外で道を切り開ける様になって欲しい」

 

 義妹の秘めたる思いを知ったオルガは、人目も憚らず涙した……こんなにも真摯に俺達に向き合ってくれた小さな天使……とてつもなく大きなものを、俺達はまたしても失ったのか……

 脳裏にフラッシュバックする、小さな義妹から突き付けられた説教や薫陶、お小言、ダメ出しに愚痴……

 

 それらも全て、俺達に明るい未来を見せたい……その一心からだった。

 300年前の封印から目覚め、どうしようもない子供達を擁する俺達を……彼女はただ純粋に心配しながら、成長を手助けしていたのだった。

 

 全てを知ったオルガはこの後、ある誓いをする……

 

──────────

 

(……本当に良いのか? 此方からの方が、彼らを見守るだけならば都合が良い筈だ……)

 

 不思議空間でセファーは、最初の声とは違う大人の声に質問され……迷いなくこう答えた。

 

「確かに……こっちからの方が、見落としや不明瞭な点も全て見通せるし、堕天使を使って驚異を排除するのも簡単……だけどそれじゃ、私の理想は達成できないんです……私は()()()()()()()()()んですよ」

 

(貴女は、人と違う運命を背負っているわ……ずっと彼らと歩む事はできない、いつかは終わりが来るわ)

 

 承服しかねる、といった風な女性の声……だがセファーの決意は固く、微塵も表情を崩す事すらない

 

「全て知った上での判断です……私はその為に、今を生きてる……そうやって生きたいんです」

 

 どうあってもセファーは意思を曲げない……決意の固さに負けたのか、最初の男の声が響いてきた

 

(そこまでの決意、か……俺達にはついぞ出来なかったな……だから今もこうやって、未練がましく此処に居座っている)

 

 それは自身に対する呆れにも似た、彼自身の過去を鑑みた告白だった……彼もまた、現世に未練を残したまま此処に来てしまったのだろう

 

(そうか……まぁ、君ならばいずれ自由に此処へ来れるだろう……好きにすると良い)

 

(ホントは一緒に居たかったけど……貴女なら彼らも安心でしょうね)

 

「そりゃあ、自慢の兄さま達ですから……!!」

 

 セファーは満面の笑みで、3人の声に対して応えた。

 

(……俺達の心配は杞憂だった様だね、なら……あの光に飛び込むと良い、あとは君次第だ)

 

 誘われ、迷いなくセファーは光の奔流へと飛び込む……去り際に聞こえた声は、セファーへの期待に満ちた別れの言葉だった。

 

(……健闘を祈ろう、君が理想を形に出来るように)

 

(ふふっ……またね♪)

 

(次はちゃんと、天寿を全うしてから来いよ……!)

 

──────────

 

 クリュセの病院にセファーが入院して、2ヶ月程が経過した……

 

 オルガは、セファーの入院をキッカケに鉄華団の戦闘要員を大幅に削減……代わりに、専用に改造したMSを利用した土木作業の部門や、腕の立つ団員を集めて警備部門を立ち上げ、クリュセや付近の自治区を拠点にする会社や事業者達に売り込んだのである……

 最初こそ反応は芳しくなかったものの……クーデリアの会社であるアドモス商会と、その紹介で利用したクリュセ在住の有力者や議員、事業者達からその熱意や真摯さを評価され……土木作業や民間警備の分野でも、ある程度の知名度を得られる様になっていた。

 

 MSでの戦闘の様な危険など無い、真っ当な仕事でやっていく……その第一歩を成功させたのである。

 

 そしてセファーの病室には、毎日の様に団員の誰かが常駐していた……その理由は勿論、セファーが目を覚ましたら全員に報せる為である。

 交代は朝の9時と、夜の7時……病院関係者も昼夜交代のシフトが代わるタイミングである。

 

 今日の担当は、団内で最も仲の良かったアトラ……病室は個人仕様の特別室が宛がわれており、仮眠用の簡易ベッドや入浴設備も整った豪華な一室である……後にギャラルホルンからの介入があった事が分かったが、誰の仕業かは最後まで判明しなかった。

 

 白いカーテンが微風に揺れる室内……昨日は少し無茶をしたのか、まだ眠たそうなアトラは、セファーの眠るベッドに突っ伏して寝息を発てていた……

 

(……暖かい、誰かが手を握ってくれてる……気持ちの良い風、この匂いは……病院かな? ……それに、アトラちゃんの匂いもする……瞼が重い、どれだけ寝てたのかな……)

 

 瞼が重く感じられる、どれだけ寝ていたのだろうか……力の入らない衰弱した身体に鞭打ってようやく上半身を起こす……見たこと無い部屋だが、調度品や回りの置物が病院の一室だという事を如実に語っていた。

 

「……アトラちゃん……」

 

 代償の影響で一時的とはいえ、衰弱し声すらもか細くなってしまったが……五体満足だという事を確かめ、傍らで眠るアトラを撫でながら呟く……

 ふと、自分の頭に手をやると……そこには緑色に輝くサイコフレームの断片、そしてそれから生える1輪の花の形をした結晶体があった。

 

 淡く儚い光を放ちながらも、しっかりと咲き誇る花……種類は分からないが、この花は「ガンダムOO」1期ラストバトル手前でフェルトが刹那に送り、以降大事なシーンに何度も出てきた……特別な印象を受けた、あの花だった……良く見れば、劇場版ダブルオーのELSの集合体が咲かせた花にも似ているかもしれない……

 

「……? セ……ファー……ちゃん……っ!?」

 

 結晶の花から放たれる暖かい光を感じ、眠りこけていたアトラが目を覚ます……違和感を感じ、視線を上げると……そこには痩せ細った身体で、先程まで永遠の眠りを余儀なくされていた親友が上半身を起こして花を片手に微笑んでいた。

 

「……おはよう、アトラちゃん……お寝坊さんでゴメンね、ただい……」

「セファーちゃんッ!!」

 

 わぷっ……と、台詞を最後まで言わせずに抱きつくアトラ

 空いている手で受け止め、背中に回してぐずるアトラを優しく諭す……

 

「良かった……ホント……目を覚まさない……どうしようかって……みんな……悲しくなって……!」

 

「……うん……うん、ゴメンね……凄く心配させたちゃったね……でも、もう大丈夫だよ」

 

 泣きじゃくるアトラの顔を上げさせ、言いたかった一言を聞かせる。

 

「だいぶ遅くなっちゃったけど……ただいま……」

 

 再び大声で泣き始めるアトラ……外にまで漏れる泣き声を、前日の内に仕事を速攻で片付け、三日月と一緒に見舞いに来たオルガの耳にも届き、全速で突入してきた音にビックリして泣き止むアトラ……その側で弱々しいが、ヒラヒラと手を振る義妹の姿に……恥も体裁もかなぐり捨てて抱き付いた……勿論、アトラは捲き込まれまいと横に退避したが。

 

 

──────────

 

 はい、ずいぶんと紆余曲折ありましたが……当座の改変、ようやく終わりましたッ!! 

 

 いやはや、一時はどうなる事かと思ったけど……何でデビルガンダムとか出てきたんですかねぇ……

 

 ……っと、あれからまた少し時間が経ったし……状況説明からいこうかね。

 

 まず、火星の様子ですが……大規模な政治改革が近々起こるらしく、ギャラルホルンの連中が厳重な警備を敷いて自治区の各主要都市を巡回しているとの事。

 現政権に見切りを付け、特権階級制度や独占の横行する今の状態を何とかしようと奮起した若い政治関係者達が、多くの労働者達を味方に付けて選挙まで持ち込んだらしい……。

 

 政治にはとんと疎い私でも、それがどんな大事なのかは何となく分かった……

 

 そのギャラルホルンですが……なんとあのラスタル・エリオンがクーデリアと共に戦争孤児や難民に関する改革の後押しをしており、「阿頼耶識」の新規施術禁止の厳罰化や、希望者には切除ないしは無効化施術を無償提供する事まで決定したというのだ。

 

 ……何だろ、ある意味かなり良い傾向だけど……何かキナ臭いなぁ。

 

 地球でも改革の兆しは見え隠れしているらしい……蒔苗の爺ちゃん、まだ健在なのかな? 

 

 そして、我等が鉄華団はというと……

 

「オイ! この程度でへばってんじゃねえぞ!?」

 

「「「「うぃーっす!!」」」」

 

 シノ兄の罵声で新規入団者の若者達が本部外周マラソンコースを走らされてる……

 毎月恒例の持久力を鍛える耐久マラソン、発案は昭弘兄……実行者はシノ兄だ。

 

「……ココの配線、よーく見ろ……何か違わねぇか?」

 

「……あっ」

 

「分かったようだな、今回は初挑戦だから仕方ねぇが……仕事じゃこんなヘマすら許されねぇ、肝に命じておけよ」

 

「……はい、スミマセン……ありがとうございました!」

 

 整備場では、おやっさんが新人研修の真っ最中だ……さすがにおやっさんは新人育成も上手い。

 

 っと、ココは団長執務室だ……中に入ると、相変わらず兄さんは書類と格闘中だ。

 さすがに私直々にしごいただけあって処理速度はなかなかのモノ……でも書類の量は以前よりだいぶ増えたので、この時間帯はまだまだ山と積まれた書類に埋もれている。

 

「……なんだ、アトラ……何撮ってるんだ?」

 

「ビデオレターですよ、セファーちゃん宛に」

 

「成程な……って、セファーにか?! 待て、この状況は撮るな!!」

 

 時既に遅し……動画の編集技術なんて誰も持ってないからそのまま送られてるんだよなぁ……帰ったら兄さんに、書類仕事の効率化のコツをもっとしっかり叩き込まないと。

 

 そう、私は今……鉄華団から送られてきたビデオレターを観ている。

 

 私は今……木星圏にあるテイワズの本拠地、歳星に居るのだ。

 ……その理由は、ある物を造る為……。

 

『すまん嬢ちゃん、重力変動区画外縁部でトラブル発生だ……休憩中に悪いが、頼まれてくれるか?』

 

「現場は何処ですか? 3分以内で現着します」

 

『すまんな、場所はルートD8の第七区画……搬入機材の故障で外に放り出された奴が居る、ソコから見えるか?』

 

 私はビデオレターを停止し、外のモニターに切り換えてすぐさまチェック……指定された区画の外部観察用カメラが捉えた映像には、機材の故障で誤動作が起き、搬入作業中だった1人が弾き飛ばされて虚空を漂っている……幸い弾かれた勢いは強くなかった為、今から飛んでも充分に間に合う。

 

 手慣れた操作で私はコンソールを操作し、乗っている機体……歳星で()()に製造させて貰った()()()()()使()()()()()()を操って救助に出向いた。

 

 前の機体はギャラルホルンに接収されそうになった為、自壊シークエンスを作動させて証拠隠滅したので心配無用。

 ココ歳星で堕天使を新規に建造させて貰った代わりに、堕天使を踏襲した姿で……機能的にPD世界の技術のみを使用したデチューンモデルの量産機を設計……製造元のテイワズとライセンス契約を結んで販売用として、一部の高級常連なんかにコレクション感覚で購入出来るようにした……なので、売れれば売れるほどテイワズと私の懐は潤う様になっている。

 

 ちなみに私が乗る機体は()()()()()()()()なので、他のライセンス機体にはコスト問題で不採用となった色々な機能も全て盛り込まれている。

 

 なお、そんな契約を結んだ背景には……今の私の境遇とお仕事内容が絡んでいるのだった。

 

──────────

 

「……は? 地球側のギャラルホルンがまだ私を探してるの?」

 

 テイワズの若頭、名瀬・タービンとの秘密会談の場で、私は聞き捨てならない現状を聞いた……

 

『ああ……堕天使がデビルガンダム事件の発端だと信じて止まない連中が、この前ココにまで連絡を寄越してな……此方は元から接点が無いから切り抜けられたが……』

 

「……鉄華団は、私がココに居る限り無理でしょうね……」

 

 そう、ギャラルホルンの一部は私こと堕天使ザドキエルをDG(デビルガンダム)事件の首謀者として目の敵にしており、未だに関係者の間を探っていた……

 アリアンロッド司令であるラスタル・エリオンは「聞くに耐えん戯言だ」と切って捨て、この件に介入する事はないと明言していたが……弊害で連中を止める事も出来ない、と前に設けた秘密会談で謝られた。

 

 どういう心境の変化だろうか……よく分からないが、彼が一番厄介な実力者なので願ったり叶ったりである。

 

 なので私は鉄華団から一時離れる事を決意……歳星でお世話になる代わりに、私の持つ「この世界にあっても不自然じゃない」程度の技術提供と、テイワズ主導の新規技術開拓の為の施設建造に携わる事……その間に私は施設を自由に使用して良い、との交換条件を提示し……結果めでたく採用。

 施設利用権の有効期間内に、私は自衛用に新規製造した堕天使の為に、ある物を製造させて貰う代わり……施設内の設備点検とリスクマネジメントを担う事になったのだった。

 

「……居た、右前方……距離40、相対速度合わせ……救助成功、帰還します」

 

 堕天使を操作し、要救助者を確保……マニピュレーターに掴まらせ、両手で保護しながら私は機体を帰還ルートに乗せた。

 

 

 この日の全ての業務を終え、宛がわれた部屋でビデオレターの続きを見るセファー……その目から、一筋の涙が溢れる。

 

漂う宇宙(そら)のどこか遠く

 

 撮影されていたのは、三日月とアトラ……この日アトラの妊娠が判明し、三日月とアトラは揃って祝いの席に強制連行されていた。

 

祈り通ずる 惑星(ほし)があるとしたら

 

 待ち望んだ、原作とは違う形での……未来に繋がる一幕。

 

僕らはそこへ向かうだろうか

 

 そこに同席出来ない現状は仕方ないが、自分の野望……一度で良いから、オリジナルの太陽炉搭載機とした自分の機体(ザドキエル)を造りたい。

 

そして何を祈るのだろう

 

 それを叶えるための代価……そして、夢が叶えば()()()()()()()()()()()()()()()()……そう思えば、安いものだ。

 

希望の花 繋いだ絆を

 

 ビデオレターを見終えた私は、早速返事のために便箋を取り……鉄華団宛に手紙を書いた。

 

力にして 明日を強く咲き誇れ

 

 書きたい事は山程あるが、それはいずれ帰った時に取っておこうと思う……。

 とりあえず、ビデオレターの返事と……帰還時期に目処が立ったら、また連絡をすると明記……そしてアトラちゃんへのお祝いの言葉を添えて、締め括る。

 

戻る場所なんてない 辿り着くべき場所へと

 

「……さて、明日はいよいよTDブランケットの実験だ……早めに寝ておこ……」

 

迷いのない旗を高く掲げて

 

 そう言って私はテーブルのライトを消し、部屋のライトも落とす……ベッドの横には、唯一……火星から持ち込んだ花が飾ってある……

 

今を生きていく

 

 それは、あの時……長い眠りから覚醒した私の側に、いつの間にか添えられていた……サイコフレームの破片から生えている、結晶体の花だった。

 

 

 

 

- END -

 




終わりましたッ!!
……最後の最後にやりたかった
フリージアをBGMにしながらのエンディング……

見辛かったらスミマセン……m(_ _)m

そして、今年最後の投稿にも間に合いました……

来年はある方とコラボストーリーを外伝として連載を続ける方針です。

それでは皆さま、良いお年を……って、もう残り1時間切ってるし!?

トゥルーエンド以外の真相も見たいですか?

  • 最終手段の「羽根」を使った結果が知りたい
  • コード「○○○○」を使った結果が知りたい
  • 最後の「質問」に応じた場合は?
  • その後のガエリオ&ジュリエッタは?
  • その後のマクギリス&アルミリアは?
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