【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

50 / 76
アンケートの乗り換え機体ですが、
意外に最も伸びてるのがフラッグと主役機という……



第7話 ひさしぶりの宇宙、はじめてのフラグブレイク

 斯くして、ブルワーズと戦う事になった鉄華団とタービンズ。

 

 そこで立てられた作戦は……ルート上のデブリ帯に『長距離移動用装備』を施したMSを先行させ、敵に『船はMSの背後にいる』と誤認させ……横合いのデブリ帯から、タイミングを見て奇襲を掛ける……

 岩石や戦闘で破壊されたMSや艦船の残骸などが大小入り交じり、移動も極めて困難なデブリ帯からの奇襲……だが、一部から()()()()()と評されていた彼らならば、()()()()()()()()()()()

 

『……済まねぇな、一番危険な役回りをさせちまう』

 

「大丈夫ですよ、ラフタ姉さんも三日月くんも居るし……」

 

 出撃を待つフラッグのコクピットで、私は名瀬さんと通信で話す……

 

 船でも公私を使い分ける私は、基本的にプライベートでないと彼を父とは呼ばない。

 産みの親を忘れたくないのもあるけど、義理の親子という関係上、甘えがあってはいけないと私が思ったからだ……当初は複雑な表情をされたが、もう日常的な光景……でも、内心はもう少し甘えて欲しいと思って居るのかもしれない。

 

「……そろそろ時間なので」

 

『ああ……っと、透火』

 

「なんです?」

 

『……いや、何でもない……弟分の部下の事も頼むぜ』

 

「分かりました」

 

 モニター画面が切り替わり、オペレーターからの出撃コールが出される。

 

「了解、睦月透火……フラッグ、出ます!」

 

 スラスターを吹かし、カタパルトを使わずにMA形態のフラッグが発進する。

 フラッグならカタパルトよりもMA形態で飛び出す方が、激変する戦場に即座に対応出来るので都合が良いのだ。

 

 バルバトスと百里が先んじて出撃している所に、自前の推力で追い付いて合流。

 魔改造によって原作よりも機動性が向上したフラッグは、最大速度こそ百里に劣るが加速力と汎用性は上であり、可変機構により即座に人型へ変わる事で戦闘にも対応……武装も充実しているので、威力偵察や索敵に最適……バルバトスも再び「クタン参型」とドッキングして、百里とフラッグにも追い付ける様にしている。

 

『じゃ、道案内はヨロシクね』

 

「了解、ラフタ姉さん……三日月くんもよろしくね」

 

『……ん、よろしく』

 

 3機はそれぞれ加速し、デブリ帯の先行偵察を開始した。

 

──────────

 

 うん、私としては戦闘や救出作戦をじっくり書くのもやぶさかじゃないよ?

 

 ……でも、今回のは戦闘後の方が重要だから、こういう形を取らせて貰うね。

 

 まず、敵は原作よりもかなり多かった……

 マン・ロディタイプが10機に、改造されたグレイズが4機……そしてグシオン。

 総勢15機のMS……ほぼ大部隊ってトコかな?

 

 私達が敵に発見された後、マン・ロディが数機迎撃に出されて、私達は罠に嵌ったフリをして混戦状態に突入……少し間を置いてイサリビとハンマーヘッドがデブリ帯を突き抜けて横合いから敵の母艦に吶喊……動きを止めてから人員を送り込み、敵母艦の制圧を開始した。

 

 それと同時に昭弘兄と禍月が出撃し、それぞれ目的を果たす為に行動を始める。

 

 私とラフタ姉さん、アジー姉さん、アミダさんで、弟くんを説得に行く昭弘兄や船を護衛……禍月は三日月兄と協力して死亡フラグを持って来るグシオンを遠ざける……でも、グシオンを追う禍月達の前に、例のグレイズが4機も乱入してきた為、三日月兄と禍月もグシオンを追えなくなってしまった。

 

 しかも、通信から聞こえて来たグレイズのパイロット達の正体……それは、鉄華団……いや、クーデリアさんを疎ましく思うギャラルホルンが契約し、送り込んできた凄腕の賞金稼ぎ達だった。

 

 さしもの禍月も、凄腕と評されるパイロットの駆るグレイズ4機を相手に攻めあぐね……バルバトスは何とかグシオンを追うが、マン・ロディも何機か追い縋っている為、追い付かれ割り込まれたら詰んでしまう状況……

 

(もしココでグシオンに抜かれたら、死亡フラグだけじゃない……クーデリアさんまで危険に晒してしまう!)

 

 その時だった……禍月と私は、今までが嘘のようなレベルの行動を開始。

 

 禍月はあれほど苦戦していた筈のグレイズ4機をあっという間に撃破……

 

 そして私は、昭弘兄の援護から抜け出ると、MA形態で三日月兄を後部に掴まらせ、デブリの隙間を縫う様に曲芸飛行……常識では考えられない反応速度でデブリの間をすり抜け、瞬く間にグシオンとの距離を()()にしたのだ。

 

『なっ……なんだってのよ?! あの白い奴の動きは!?』

 

 クダル・カデルが何か言ってる気がするけど、今の私には関係ない……!

 

「貴方の存在は邪魔なの……だから、ココで消えて」

 

 自分で言ってちょっと不満げだったかなと、感情を口にしてから自覚したものの、移動速度差ですれ違うグシオンとフラッグ……その影から現れたのは、ココまで引っ張って来たバルバトス……もう既に刀を構えており、グシオンの首元……ちょうどコクピットを貫ける角度で一突き……

 

『ぎぃぃぃぃゃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!』

 

 ……実にアッサリとグシオンは沈黙した。

 

『……なんか、物凄く速かった……あと結構、揺れたね』

 

「……ジェットコースターの感想じゃないんだから」

 

『ジェットコースター? ……なにそれ?』

 

「……機会があったら教えてあげる」

 

 戦闘後だと言うのにこんな会話する私と三日月兄……精神構造、おかしくなってるのかな?

 

 

 そんで、弟くんの説得をした昭弘兄だけど……生来の口下手が災いして逆ギレされたらしい。

 まぁ、イサリビまで連れてかれた後、他のヒューマンデブリの皆様と一緒にオルガ兄の言葉を聞くと、全員一斉に泣き出したって聞いたから、取り敢えず一安心かな?

 

 ……でも、1つだけ疑問が残ってしまった。

 戦闘中の禍月の様子がおかしかったのだ……

 

 いつもは通信をオープンに戦闘中でも他世界のガンダムネタ台詞を聞かせてくれるのに……今回の途中、「あの瞬間」から突然通信が()()()()()……

 そして、戦闘から戻ってきた禍月は疲労困憊もいいところ……コクピットから出るなり倒れたと聞いたのだ。

 

 これは絶対何かがある……多分、あの機体……アベンジャーに。

 

 復讐者なんてコードネームを付けられたMSだもの、何かあるなら絶対アレが原因だろう。

 ……今までそんな素振りすら見せなかったのに。

 

 取り敢えずイサリビへと移動し、アベンジャーの戦闘ログを確認した私は、ある事に気が付く……

 

「何よ……コレ、こんな事って……?!」

 

 アベンジャーを稼働させるOSに、巧妙に隠してあった存在……特定条件下で発動し、パイロットの思考に介入するような機能を持つインターフェース・システム。

 どうしようもない不安を抱えたまま私はアベンジャーのコクピットから飛び出し、禍月の元へと急いだ……

 

──────────

 

 私の到着とほぼ同時に覚醒していた禍月……扉を蹴破る勢いで突入してきた私に吃驚したが、顔を確認すると「……お前か」とだけ口にしてため息を吐く。

 

 私はベッドの隣に椅子を持ってきて座る……が、何も言わない禍月……疑いたくはないが、隠している事があるならハッキリと言って欲しい、そんな思いで私は意を決して切り出した。

 

「あの機体、アベンジャーって……いったい何を積んでるの?」

 

 アベンジャーのOSに隠されていた補助システム……その正体を問い質す。

 

 機体の戦闘ログに残されていたのは……まるで狂気に侵されたかの様に、悪魔的なまでに高まった機体性能を駆使し、無惨に敵を屠っていく禍月の操縦履歴……ただの人間では到達し得ない程の反応速度と、機械的な判断で瞬時に武装を切り替え、抵抗する暇も与えずにMS4機を爆散させた記録だった。

 

 そして、彼の口から出た答え……

 

「……EXAMシステム。

 それがアベンジャーに搭載されている奴だ……俺にとっては、トラウマの原因だよ」

 

 たっぷりの沈黙の後に出たのは、紛れもなく非人道的なシステムの名前……

 

 宇宙世紀0079年に起こった「一年戦争」の最中……ジオン出身のある研究者が、画期的なMS用システムを持って地球連邦に亡命……それを皮切りに始まった、新型システムの試験機を巡る抗争劇……その渦中の中心にあった青いジム頭の機体「ブルーディスティニー」に搭載されていた、ある戦闘補助システム……

 マリオンという少女(ニュータイプ)の精神を犠牲にし、ニュータイプを狩る為に造られた……使い手にも破滅を呼ぶ対ニュータイプ用の戦闘オペレーションシステム。

 

 ……「EXAM(エグザム)」それが、あの機体……アベンジャーにも搭載されていた。

 

「やっぱり……多分そこら辺かなって、思ってた……」

 

 間違って欲しかった……あんなものを乗せた機体で、私は彼を戦場に放り込んだ……

 違うと言って欲しかった……知らなかったとはいえ、私は彼の……忘れたかった過去を無理矢理に突き付けたのだから。

 

「俺もないと思いたかったさ……結局その期待は的はずれだったがな」

 

 彼も知らなかった、いや……この世界で手を加えられたのだから、無くなっている筈だ……と、淡い期待を抱いていたのだ……だが、その期待も見事に裏切られた。

 

「……少し、昔話でもしていいか?」

 

 俯き気味な彼の言葉に、私は無言で頷く……

 そして彼は、ぽつりぽつり……と、過去……この世界へ転生する前……宇宙世紀での出来事を語り始める……

 

 連邦軍の総司令、レビル将軍が直々に編成した部隊「STR-1」に一時期、所属していた事……

 

 ……因縁の宿敵と激しい戦いの果てに、精神崩壊までしてしまった事……

 

 はじめて部下を持ち……苦楽と共にし、死別まで経験した事……

 

 ……様々なことを話しながら、彼は泣いていた。

 でも私は、どんな些細な事でも態度を変える事なく、真剣に話を聞いた……()()()()()()()()と断じる事なんて出来ない。

 

 これは彼の……宇宙世紀を命懸けで駆け抜けた中で背負った「重い十字架」だと思ったから。

 

「こんな下らん話を聞いてくれてありがとな……少しスッキリしたよ」

 

「……下らないなんて、言わないでよ……私よりずっと重たいじゃん」

 

 私の思いを知ってか知らずか、再び気絶するように眠ってしまった彼を見ながら……私は愚痴(ぐち)(こぼ)しながら、ある決意をする。

 

 彼もまた、異世界から迷い込んだ鉄華団の一員(オルフェンズ)……ならば、彼も幸せになる……なれるべきなんだ、と……




透火の異常行動は、所謂「半覚醒」というヤツです。
特殊能力者にはおなじみの行動ですねぇ……

そんでもって後半は、ガンダム特有のくっそ重たい過去話……
相棒の禍月くんは人生経験豊富なぶん、重たい十字架を背負ってました。


さぁ、改変は成された……次は何が待っているのかな?

セファー(透火)の脳内再生ボイス担当アンケート決勝戦!(※ 今回の1位が設定上の声優さんとなります)

  • 雨宮 天(アセイラム姫/アルドノア・ゼロ
  • 水樹奈々(フェイト/リリカルなのは)
  • 悠木 碧(ターニャ/幼女戦記)
  • 種田梨紗(マシュ・キリエライト/FGO
  • 林原めぐみ(綾波レイ/エヴァンゲリオン

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。