【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
三日月 vs. ガエリオの行方とか、ドルトカンパニーのデモのその後とか……
まとめてドンと行きましょう、14話!!
禍月がアインと謎の2人を相手している同じ頃、三日月はガエリオの駆るガンダム・フレーム「ガンダム・キマリス」と未だ戦闘中であった。
『……チッ、ちょこまか動いてやり辛いなぁ……!』
キマリスの戦術は至ってシンプル。
ガンダム・フレーム特有の高出力を最大限、機体の機動力に振り切り、手にした巨大な得物「グングニール」を用いての突撃……速度をそのまま破壊力に転化し、ひたすら致命傷を狙って繰り返す一撃離脱戦法だ。
単純故に破られやすい様に見えるが、キマリスの最高速度は他のガンダム・フレームでも遠く及ばず、ミサイルや艦砲による迎撃など普通に当てる事すら叶わないという馬鹿げたレベル……透火がこの世界で組み上げたフラッグもなかなかの速度を出す事はできるが、それでもキマリスの最高速度には遠く及ばない……
そもそも透火のフラッグは機動力より、汎用的な運動性能に秀でた機体である。
つまり、キマリスは止まる事なくひたすら一撃離脱を繰り返す戦術に特化した機体……
それに対し、三日月の駆るガンダム・バルバトスはパワー重視の汎用機体。
特化機体と汎用機体……得意分野の土俵を崩さない限り、汎用機体であるバルバトスが勝つ事は非常に難しい。
『どうした? ご自慢の阿頼耶識とやらはその程度か? ……そろそろ決着を付けてやる!!』
より一層加速してくるキマリスに対し、三日月は油断なく構える……
原作ではその加速性能に驚愕し、敢えて突撃を誘って強引に受け止め捕獲するまでの間ダメージを蓄積させていたが、今回はアインの援護がなく……三日月自身も禍月との戦闘訓練で実力を伸ばしている……
『……ッ、トドメだァ!!』
『……ッ……!』
グングニールに内蔵された120mm砲を牽制で放ち、隙を見せたバルバトスに最高速度でキマリスが突撃……構えたグングニールがバルバトスを貫く……
『……な、何ぃッ!?』
……筈だったが、なんと三日月は敢えて120mm砲を喰らって隙を見せた様に演じ、突撃の軌道を見切ってグングニールを脇で受け止めてキマリスを掴んだのである。
……その挙動は、原作よりもスムーズ……かつ、演技も入っていたので正に神業レベルの動きであった。
『掴まえた……これなら速度差も関係ない……!』
『離せ! この宇宙ネズミがッ!!』
接触回線から響く敵の声に聞き覚えがあった三日月はキョトンとする。
声の主は勿論……目の前の敵機、ガンダムキマリスからだ。
『アンタ、確かチョコの隣に居た……』
『ガエリオ・ボードウィンだ!! あの時、名乗ったはずだぞ?』
『……ガリガリ……?』
『なっ、貴様ワザとだろ!?』
自分にとってどうでもいい事はすぐに忘れる三日月、一度会った程度で人の名前までは覚えない……例外はあるものの、彼の名前はもう覚えてないようだ。
『まぁ、どうでもいいや……すぐに消える奴の名前だし……!』
バルバトスに持たせたメイスを振り上げ、潰しにかかる三日月……だが。
『ッ?! 甘ぁいッ!!』
ガエリオの言葉と共にキマリスの肩に装備された射出武装「スラッシュディスク」が放たれ、バルバトスの頭部に直撃……その一瞬の隙を突きガエリオは減速しつつ旋回、同時にグングニールを振り回してバルバトスを強引に振り払う。
『しまっ……グッ?!』
振り払われたバルバトスは運悪く破壊されたランチの残骸に直撃してしまい、衝撃で三日月は操縦桿から手を離してしまう。
『ネズミ相手に大人気なかったな……だが、これで終わりだァッ!!』
背中を打ち付けてしまい、僅かに反応が遅れるバルバトス……キマリスの突撃を確認した時には既に回避不能な位置にまで接近されていた……だが。
『……待たせたな、三日月!!』
バルバトスとキマリスの間に突如として巨大な盾が割って入り、キマリスのグングニールがその丸く湾曲した盾の表面を滑って逸れ、目標を失ってバルバトスの背後にあったランチの残骸を直撃……大爆発を引き起こした。
『……な、何だぁ?!』
勢いを殺せずに不意の爆発へと突っ込んでしまったキマリスは、バランスを直せずに爆炎から飛び出していく……体勢を建て直し、抜け出た爆発の方を見やるとそこには、バルバトスともう1つのMSが居た。
『昭弘……出来たんだ、それ……』
そのボディは薄茶色……いや、クリーム混じりのコーヒーの色と言うべきか……
元の
『……ああ、コレがガンダム「グシオン・リベイク」だ!!』
それからというものの、状況はあまりにも原作通りなのでここからは割愛しよ……
キマリスは結局、バルバトスとグシオン2人掛かりで苦戦を強いられてしまい、ついでにセブンスターズ間の問題もあって戦線離脱……
アリアンロッドも、イサリビに戻った団長達を送ってくれた報道関係の方の協力もあり、クーデリアお嬢様の演説が見事に炸裂!
・
・
・
『ギャラルホルンに問います……貴方がたは「正義を守る」為の組織ではないのですか?!
デモという手段を取ったとはいえ、彼らのものではなかった謎の爆発を、
そんな事をするのが、あなた方の言う「
ならば……私はそんな「
私のこの発言が間違っていると言うのならば……構いません、
今すぐ私の乗るこの船を撃ちなさいッ!!』
・
・
・
演説中にギャラルホルンが現在進行系で行っている作戦の経緯を一方的過ぎると非難……本来行うべき「正義の執行」という在り方に照らし合わせて批判し、その是非を世界中に問う……さらに現状包囲されているという事までぶっちゃけ、
当然、現場のアリアンロッド艦隊は
……勿論、ノブリスの暗躍という事実はあのバエル仮面が教えたものであり、クーデリアの演説によってドルトカンパニーがひた隠しにしてきた労働階級への不当な弾圧や不遇……差別的扱いも露見……経営元であるアフリカンユニオンは当然、
……うん、「ザマァミロ」だわw
・
・
・
そして戦闘終了後……
「……もぅ、幾ら直せるからってアベンジャーの脚はガンダム・フレームと違って繊細なんだから蹴るなぁッ!!」
……はい、戻ってきた禍月
整備班泣かせの問題行動は、
はい、透火ちゃんは只今……イサリビ、禍月の部屋で彼を交えて絶賛反省会中なのです。
主な議題は、地球降下時の戦闘(予定)について。
「……アイン君、また来ると思う?」
「わからん……少なくとも、俺の勘は何も言ってこない」
とは、禍月の言。
頬を掻きながら「勘」が~、って言うの……初めて聞いたよ。
確かに、禍月の言うとおり……クランクさんが存命だと彼が知れば、アイン君が戦う意味は薄れる……しかし、上司であるガエリオ君はヤル気全開な為、戦闘自体は避けられないだろう。
「んじゃこないだの2機は何? あの赤と青のグレイズ……」
禍月が目を押さえながら話す……あまり考えたくないと言う感じがありありと見てとれる。
「……多分、奴らはイレギュラーだ。
俺がこの世界に存在するからか……
少なくともアイツ等は確実に、鉄華団の脅威の一つになる……!」
「そうね、あの2機のパイロット……何か嫌な予感するんだけど……」
「それは俺も同感だ……俺も、あの二人には嫌な予感がした。
特に赤い方……面倒くさくなりそうだ」
禍月が感じたイメージを語られ、録っておいた戦闘ログと通信の音声データを確認する。
な~んか既視感あるんだよなぁ……この赤い方の『ちょいさぁ!』とか、『イッちまいな!』とか
・
・
・
「……軌道上で仕掛けてくるなら、例の対策も役立ちそうね……流星号の追加調整も済ませてるし」
前回の戦闘ではあまり目立たなかったというか、出撃したっけ?
あんま内容は覚えてないけど、軌道上の戦いは数も多く、状況も厳しい……味方は多い方が良いもんね。
「んー、後はアベンジャーのEXAMなんだけど……」
私は禍月の乗機であるアベンジャーのEXAMシステムを何とか使わずに済ませたかった。
その為、禍月の意見を聞きたくて切り出したのだが……
バツンッ!!
突如として照明が全て落ち、艦内全てが闇に包まれる。
「……?! ……ッ!! あ、ぁぁぁ……」
「……オイオイ、いきなり何なんだよ……」
禍月は少し忌々しそうに天井を見上げる、辛うじて出入口等が判る程度の明るさで光る非常灯だけの薄暗さしかない部屋……その状況は、彼女の
「あ……あっ……ぁぁぁあぁぁぁっ?!」
「?! お、おい透火?」
「イヤぁぁぁぁぁぁっ!! 止めてぇぇぇっ、何で……なんでこんな……ッ!!」
まるで発狂したかの様な叫び……髪を振り乱し、錯乱状態に陥る透火。
突然の豹変に禍月も何が起きたのかよく分からなかった……だが、間違いなく今の彼女は普通ではない事だけは理解できた。
「うぅっ……ダメ……殺さないで……お父さん……おかあさん……怖いよぉ……」
薄暗い部屋に啜り泣く声だけが虚しく響く……泣きがなら親を呼ぶ声を聞いた時、禍月は以前……密かに名瀬から打ち明けられていた
『あの子は暗闇がダメなんだ……
産みの親を目の前で殺され、目を盗んで逃げ出したが、それから掃き溜めの様な場所で5年もの間、浮浪者やゴロツキ共に追い回されながらたった一人で生きてきたんだ……
2年前に俺が拾った後も、夜な夜なその時の光景が闇と共に頭に浮かぶらしくてな……
正直言って、その時のあの子の顔は忘れられねぇ……
まさに絶望の真っ只中……すがるものもなく、孤独と暗闇に蝕まれ、全てを失った様な顔だった……』
艦内照明が軒並みダウンしている今、彼女の精神は闇に蝕まれ疲弊している……恐らくただ声を掛けても元には戻らないだろう。
禍月は照明の代わりを探すが、船に持ち込んだ私物が少ないので役に立ちそうな物は無い……
(正気に戻ったら殴られそうだが……仕方ない……!)
「……?! ……ぁ……っ……」
意を決して禍月が取った手段……
「大丈夫だ、俺が付いてる……誰にもお前を殺させはしない……大丈夫、大丈夫だから」
彼女は今、トラウマで精神が幼い頃に一時的な逆行を起こしている……そう踏んだ禍月は、透火の頭をまるで小さな子供を慰める様に撫で、声のトーンに注意しながら声を掛ける……
その後ゆっくりと身体を寄せ、触れ合わせる事で幻ではない事を認識させる……その所作は、小さな娘をあやす父親の様だった……
前世では
「……ほんと? ……あたし、ころされない? ……だいじょうぶなの……?」
トラウマ真っ只中の為か、言動までも幼児化してしまっている透火……それほど迄に根深い物である証拠でもあるのだが、禍月は「戻ったら絶対半殺しにされる……!」と戦々恐々であった。
・
・
・
程なくして、艦内照明も復帰……原因は先の戦闘でイサリビに直撃していた砲弾が、電気系統のシステムを制御するための配線を傷付けていたらしく、艦内からは見付けにくかった場所であった事も重なって、発見されずにそのままであった事が原因であった。
なお、照明の復帰後すぐに透火は元に戻ったが……
「フンッ!!」ドゴォッ!!
己の予測通りに禍月は密着から問答無用で腹パンされました。
(あああああもぅ!! 何でこんな時にこんな事になるのよ!!
完全に弱みを握られたも同然じゃないの……私のバカ! 幼児退行するとかマジで最悪だわ)
だが、錯乱中に聞いたあの言葉……それはその場凌ぎのいい加減な言動ではないと感じた透火。
(……本気……だったのかな……もし、本当に命を狙われたら……
って、何を考えてるのよ!! 彼は私と同じ転生者、ただの同志! でも……)
なんなんだろ、案外悪くないかもしれない……と、思ってしまう自分がいた。
照明ダウンの原因……
実はドルトの戦闘でシノがヘマした時の弾でした。
暗所恐怖症、本人にとっては思い出したくない過去……
産みの親を失った時の悲しい思い出……
今でも彼女は夜寝る時も灯りを消せず、夜間外出など出来る筈もなく……夕方になると焦りながら帰路まっしぐら。
最初の歌の後もそうでしたね……
さて、次回はいよいよ地球降下……
その際に襲われるのはガンダムストーリーの鉄板イベントですよね~w
禍月への腹パン、あなたの感想は?
-
Judgment《天罰》ですわ!
-
禍月くん、何だか不憫ですね
-
彼は尊い犠牲になったのだ……
-
次はもっと慎重かつ大胆に(マテ