【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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そろそろ関係の発展を書かないとダメかなと思いまして……


第21話 白銀の大地にて

 孤島からの脱出後も、地球外縁統制統合艦隊からの追撃は幾度となくあった。

 原作では単に描かれなかったのか、それともイズナリオがタカを括っていたのか……そこは分からない。

 ……だが、現在進行形でイズナリオ・ファリドの思惑を外れていく鉄華団を食い止めるべく、ギャラルホルンは執拗にエドモントンへの道中を襲ってきた。

 

 その度に鉄華団は迎撃を繰り返し……相応の損害もあったが勝利を重ねている。

 

 だが、運命の女神は何も楽をさせてくれる為に居る訳ではない……

 

 原作通りの雪景色の中……モンターク商会の手引きもあって、エドモントンに最も近い終着点を持つ列車に乗り込み、蒔苗の爺ちゃんを護送する最中……

 

『黒いカラスみたいなMSの小娘……貴女と3体3の決闘を申し入れるわ!!』

 

 私はカルタ・イシューと決闘をする事になった。

 その理由は……私と彼女は、相容れない存在だと認識したからである。

 

──────────

 

 事の発端はカルタの通告に過剰反応した私との口喧嘩だ……

 

『あら、女性のMS乗りとは珍しいわね……阿頼耶識でもないようだし、そんな()()()()()()()()、さっさと降りて投降なさい! 今なら私の権限で命だけは保証してあげるわよ?』

 

(は? 今なんっつったこの麿化粧……私のフラッグをカラスだと?)

 

 実は鉄華団への正式編入に辺り、私はフラッグを少し改造……主要関節部の強化や、大気圏突入時の反省としてスラスターシステムの不備対策、試験的にサイコフレームをコクピット回りに分散配置し、全体的に性能も向上……配色も黒へと一新した、所謂『オーバーフラッグ仕様』へと強化を施している。

 

(ブチッ)……アンタ、良い度胸ね……私のフラッグがカラス?

 ……じゃあ貴女は時代錯誤のお飾り艦隊を率いる、絶滅危惧種の山猫かなぁ?』

 

『や、山猫? この私が……お飾り……貴様ァァァ!!』

 

『だってそうじゃない? 前の孤島での失態やら、この状況やら、全て貴女の古臭くてテンプレ丸出しな指揮と、時代錯誤の名乗りやら何やらで招いてるんだもの……呆れちゃうわ~』

 

 ここまでのカルタの戦術指揮は、禍月に悉く見破られている……前世の生涯ほとんどを戦場で過ごした禍月曰く『年期が違うんだよ』だそうだ。

 そしてもちろん、孤島の失態とは『わざわざ集まって、わざわざ名乗りを上げ、昭弘くんに撃たれた()()』である。

 

(ブチッ)……貴女、言って良い事と悪い事があるのを知らなくて? ……あぁ、火星の宇宙ネズミと仲良しごっこする貴女の頭は、その髪色と同じでリアルお花畑なのかしら? ……産まれはさぞ世間知らず……貴女を育てた親も、タカが知れてるわね』

 

 その言葉でお互いは悟った……()()()()()()()()()()()()……完全な()だと。

 

 

 原作とはやや違う形だが……ルーギスとクルーガーという存在のせいか、敵の数が多く、事実上決闘を受けなければ敗北一直線という状態に陥ってしまった鉄華団。

 決闘のメンバーは、この中で最も戦闘慣れしている禍月と、ガンダムフレームという優位性を持つ三日月……3人目は本当はラフタ姉だったのだが、カルタ・イシューを絶対に許したくないという理由で私がもぎ取った。

 

『……アイツ絶対に許さない……私だけじゃなく、父さん達(名瀬さんや生みの親)まで馬鹿にした……!』

 

 黒いフラッグから聞こえる怒りの言葉に、禍月は複雑な表情をする……()()()()()()()()()()()()、それを誰よりも知っているから……

 

 斯くして始まった、カルタの乗るグレイズリッター指揮官機と、私の操るオーバーフラッグの決闘初戦……

 それは互いの意地と、相手への激情だけが全てだった。

 

 バトルソードとソニックブレイド……否、プラズマソードで鍔競り合い、お互いを罵り合う2人。

 次の瞬間、2機は弾かれた様に同時に離れ……オープンチャンネルから聞こえて来る内容に、この場の全ての人間も『なんだコレ?』と思考停止している。

 

『アンタの家の栄光なんて、所詮カビ臭いモノでしょ……決闘の作法? アンタ今の状況分かって言ってる? 戦争……戦いに卑怯も何も無いわよ! ルールなんて存在しない、そんなものはとっくの昔に廃れて消え去ったわ! 大昔のスポーツか何かと勘違いしてない? コッチは生きる為に必死なのよ!』

 

 ガギィン!! ガァァンッ!!

 

『カビ臭いですって!? 私はギャラルホルンとして、世界に貢献したイシュー家の娘! 貴女の様なリアルお花畑な家系の女とは違うわ! かつての戦争で栄光ある勝利をもぎ取り、今を作り上げたセブンスターズの第一席……その栄光は、たかだか300年で消え去るモノなどではない!!』

 

『また言ったな……ッ! 母さま達を、罵ったなぁぁぁ!!』

 

 MS同士の争いは激しさを増し、同時に口喧嘩もヒートアップしていく……

 

『……なぁ、加勢しなくて良いのかよ?』

 

 呆気に取られながらも、シノは恐る恐るラフタに質問するが……

 

『あんだけ激怒した透火を見るのは初めてだし、下手に干渉してとばっちり受けたくはないでしょ? それに、アタシ達にはあの娘が本気で怒る理由……痛い程に分かるから』

 

 悲痛にも見えたラフタとアジーの表情……三日月や禍月は、初めて見る透火のマジギレという様相には少し引き気味である。

 

 だが、唐突に状況は変化する。

 

「……っく……ッ!」

 

 やはり、怒りという感情で相手を制する事は出来ず、冷静さを欠いた今の透火では、指揮官としても優秀なカルタの相手ではない……カルタは透火を罵りながら自身はしっかりと戦闘にも意識を割き、怒りに任せた透火の動きを見極めながら隙を伺っている……

 

 それから何度目かの鍔迫り合い……その直後に体勢を変え反撃に出るグレイズリッター、フラッグの透火は対応しきれず、隙だらけの体勢に打ち込まれる衝撃がコクピットを襲う。

 

 辛うじて直撃こそ避けているものの、一方的に打ち込まれ始めた事で操作にブレが生じていき、益々対応が困難になっていく……透火の能力的に、殴り合いは向かないらしい。

 

『……透火……!』

 

 ラフタの漏影が一歩前に踏み出るが、直後に弾丸が足元に撃たれる……カルタの部下達だ。

 

『カルタ様の決闘に水を指すのならば、我々も容赦しない!!』

 

 原作よりも多い敵の数……それこそあの赤と青のグレイズを引き連れて来た時は肝を冷やしたが、原作通りカルタが決闘発言をした事で救われていた。

 

 歯噛みしながらもラフタは機体を戻し、弾を放った相手も少し遅れて銃を降ろす……

 

『……負けるんじゃないわよ、透火……!』

『タービンズの意地を見せてやりな……!』

 

 ラフタ姉とアジー姉の呟きが通信を伝わり、私の耳に聞こえてくる……だが。

 

『……その程度で私に挑んだのは、失敗だったようね?』

 

(ラフタ姉、アジー姉……私、ここまでなのかな……)

 

 細かな損傷が重なり、精細を欠いた挙動のフラッグに剣を突き付けるグレイズリッター。

 

『初戦はアンタ等の勝ちだ……もう良い、透火……戻ってこい』

 

 オープンチャンネルで禍月から指示が出される……オルガは負けを認め歯噛みするが、バルバトスの通信から響く三日月の言葉に冷静さを取り戻した。

 

『大丈夫……次は俺が行くから』

 

 

『初戦は敗けで良い……だが、次は三日月だ……良いなオルガ?』

 

 禍月の指示に、三日月は軽くアップをするようにバルバトスを動かし、挙動を確かめる。

 三日月の実力は鉄華団の誰もが知っている……愛機バルバトスの性能も。

 

『……ああ、透火(新入り)には酷だったが、相手が相手だ……任せるぞ、ミカ!』

 

 だが、カルタ自身が交代のため踵を返した直後……赤いカスタムグレイズが予想外の行動に出る。

 

『……んじゃ、負けたコイツはさっさと退場して貰うぜぇ!』

 

 あろう事かフラッグのすぐ側まで接近した赤のカスタムグレイズが、その手に持ったバスターソードを振り上げる。

 

(……え……っ?!)

 

『ッ?! 透火ッ!!』

『野郎……ッ?!』

『ヤベぇっ!!』

 

 ガァァンッ!!

 

 凄まじい打撃音が響き、土煙と共に舞い上がった黒い機体……コクピット付近に真新しい大きな損傷が付き、機体は空中で体勢を変えつつ落下……コクピットを下向きにしながら、まっさらだった粉雪の舞う戦場に倒れ伏す。

 機体の動力はまだ生きているものの、コクピット付近に直撃した損傷がどんな影響を及ぼしているのか、皆目検討も付かない。

 

「……う……そ……と、透火……?」

 

 まるで自身の妹の様に感じ、親身になって世話を焼いていた当時の記憶がフラッシュバックし、次に目の前に広がったのは、無惨にも倒れ伏す彼女の愛機という悲惨な光景……

 ラフタはまるで自身の身が引き裂かれる様な思いを言葉に出来ないまま、弾かれたように漏影を操作し黒いフラッグを抱き起こしコクピットを探る。

 

『ねぇ、嘘だよね……返事しなさいよ!!』

 

 悲痛な声と共にコクピットブロックの装甲を無理矢理引き剥がすと、可動式の連動シートがパイロットを機体から排出……地上戦だった為か、タービンズのツナギを改造し一角獣の紋章(ビスト財団のエンブレム)が描かれたツナギ姿で頭から血を流したまま気絶している透火を、ラフタは自らもコクピットを降りて引っ張り出す。

 

──────────

 

『……チッ、さすがに一撃じゃ死なねぇか……悪運の強い女だな』

 

 新入りとはいえ、入団前から気に掛けて貰い、晴れて正式な仲間となった少女……団長であるオルガを始め、鉄華団の重要メンバー達は……透火の愛機(オーバーフラッグ)が吹き飛ぶ様に驚愕したまま動けないでいた。

 

 ただ、一人を除いて……

 

『……オイ、お前……今アイツを殺す気だったか?』

 

『アァ? 当然じゃねぇか……俺らの任務はテメェ等の殲滅なんだ!

 ただ、お優しい指揮官様が決闘でケリを付けるって聞かねぇから大人しく決着が着くまで下がってただけだよw バカでも分かるだろそれくらいはよぉ?

 

 で、コイツはウチの指揮官様に負けちまってんだ……大人しく退場しないとなァ?』

 

『……そうか……』

 

 クルーガーの言葉に、底冷えするほどの冷たい声色で返す男……禍月。

 その口元が怒りで僅かに歪んだ直後、何故かさらにニヤリと歪んだ笑顔をしていた……

 

『 起 き ろ 、E X A M …… ! ! 』

 

 ─ 《 EXAM SYSTEM 》 ─ 

 STAND-BY_ 

 

 ……それから始まったのは、(まさ)しく『蹂躙』であった。




クルーガーに横合いから思いっきり殴られ重症です。
そのせいで禍月までマジギレしました……

オルガ達が動けなかったのは、決闘に従うしかなかったのと
まさか敵側がルール無視してくるとか予想外だった事
あと、実は小本説のIF補正でカルタの実力がブーストされているからです。

次回、蹂躙劇……

戦争という悲劇で顕となった、ニュータイプの兵器的側面。

ルーギスとクルーガー、今後も使うならどれくらい?

  • さっさと空気にして欲しかった。
  • もう退場でいいでしょ?
  • 1期ラストで散るなら続投も考慮
  • 2期冒頭で散って貰いましょうかw
  • 「夜明けの地平線団」戦で消えれば無問題w
  • タービンズ襲撃を代行して消えて貰おうか?
  • よし、ハシュマル戦で消し炭にしよう!
  • 最後の最後で恨みを喰らって消えて欲しい

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