【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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大変長らくお待たせしました。
ええすみませんね、PSO2-NGSが6/9スタートという事で空き時間をほぼ吸われまして……
言い訳させて下さい!
そもそもウチはPSO2をβテストからプレイしてますし、7年以上もの期間をほぼ毎日コツコツやって造り上げたマイキャラ達が前よりも綺麗に見える超大型アップデートが発表直後からもう楽しみで楽しみで……キャラクリは時間泥棒と言いますし、チムメンと遊ぶのもメチャ楽しくてついつい時間を使って……
(。>д<)<ゴメンナサァイッ!!



前話のアンケートですが、何というか予想通り過ぎて草バエルw

でも、さすがにこの結果は反映させられません……
やるとこの先の整合性が取れないので(ヒデェ)

さて、22話はたぶん重要なお話。
1期決戦の地、エドモントンまであと僅か……


第22話 その感情の先にあったものは……

 EXAM(エグザム)システム……

 それは「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」と呼ばれる作品に登場したMS用の戦闘補助OS……だがその実態は戦闘補助とは名ばかりの……ニュータイプの殲滅を目的とし、それを可能にしたMS自体を指す。

 そして、原作でEXAMシステムを搭載されたMS……ブルーディスティニーと、イフリート改でも、その能力の50%しか発揮できなかったとされている。

 

 だが、もしその残り50%の性能を含め……全力を出せるMSに搭載されていたとしたら?

 その答えが今、あの雪原に広がっている惨状であった……

 

「……何だったのだ、あの機体は……!」

 

 ガエリオ・ボードウィンは、先程まで居た戦場から地球外縁軌道統制統合艦隊司令カルタ・イシューを助け出し、最寄りの自軍基地まで愛機であるキマリストルーパーを走らせながらそう呟く……

 

 彼が目にした光景は、地獄という表現すら生易しい程の光景だった。

 

 

 雪原に幾つもの破片と赤黒く見えるオイル……バラバラにされたMSの残骸と撒き散らされたオイルが、あたかも血の惨劇の様相を呈していた。

 その光景を生み出したのは……カメラアイを赤く灯し、指揮官機らしきグレイズリッターのコクピット付近をソニックブレイドで貫き、無造作に放った機体……この世界に迷い込んだイレギュラーの悪魔、アベンジャー(復讐者)である。

 

「……ッ!? カルタァァァァ!!」

 

 ガエリオが到着した直後は正にカルタの乗るグレイズリッターが、アベンジャーにトドメを刺される直前だった。

 咄嗟にガエリオは最大速度でキマリストルーパーを突っ込ませ、シールドバッシュの要領でアベンジャーとグレイズリッターの間に割って入ると同時にアベンジャーを吹き飛ばして距離を取らせたのだ。

 

 吹き飛んだアベンジャー……その当たり所が良かったのか悪かったのか、突撃された際の衝撃がコクピットを盛大に揺らした事でパイロットの意識も半分ほど吹き飛ばし、禍月を正気に戻したのである。

 

「おい、カルタ! しっかりしろ……! チィッ……!」

 

『……よぉ……ガエリオ、だったか……? ……止め、てくれて……ありがと、な……』

 

 ……ただし、先程までEXAM起動中だった為の精神的疲労と先程までのショックが重なり、ものの数秒後に沈黙(気絶)したのだが。

 

 兎も角、キマリストルーパーの乱入によってアベンジャーの暴走は止まり、ガエリオは重症を負ったカルタを救う為に鉄華団を放置して基地へと舞い戻るのであった。

 

 

 幸いにも透火は右腕に軽い負傷こそ負ったものの、数日で完治……

 だが、あれだけ見栄を切った決闘は敗北し、更にクルーガーにまで襲われたという精神的ダメージが予想以上に大きく……禍月も、EXAMシステム使用の負荷による精神的疲労が抜けきらない為、2人ともしばらく養生しろと言い渡された。

 

 頼りになる作戦指揮官とメカニックの片割れが同時にリタイヤとなった今、鉄華団は大きく疲弊していた……だがその間、先の騒動でギャラルホルン側の損害も予想以上にあったらしく……エドモントンに到着する直前まで、虚を突いた襲撃すら一切無かったのは不幸中の幸いであった。

 

──────────

 

「現在、鉄華団は先の戦線から離脱後……移動速度こそ衰えましたが、未だにエドモントンへの鉄道路線をひた進んでおり、あと2週間ほどで辿り着くと思われます」

 

「…………」

 

 副官からの報告を聞くマクギリス・ファリド……若干の思案の後に1つだけ確認を取る。

 

「ふむ、議会の開催には……まだ間に合うようだね?」

 

「はい、進行速度はやや低下してますが……エドモントンに駐留している部隊にも、今回の件が伝わっている様で……兵士達にも少なからず動揺が広がっています……このままの速度でエドモントンに到着すれば……程度の差こそあれ、鉄華団側が比較的に優位に戦闘を進めるでしょう」

 

 既に彼もマクギリスに傾倒しているのか……冷静に戦況を予測、分析結果を淡々と語る副官……マクギリスはその言葉に薄笑いを浮かべ、執務室の窓を見やる。

 

 ここは地球におけるギャラルホルンの本部にして最大の拠点、メガフロート式基地施設ヴィンゴールヴ……

 その一室でマクギリスは、己の書いたシナリオがトントン拍子に進んでいく様を、内心でほくそ笑みながら、鉄華団に淡い期待を抱くのであった。

 

(もう少しだ……もう少しで、俺の描く未来が始まる……!)

 

──────────

 

 なお、禍月の怪我の治療は数日で完治し復帰した……のだが。

 

(……俺は、アイツを……いや、俺にはミユが……)

 

 禍月の心は、前世の妻であるミユの事を思い悩んでいた……

 

 ミユは宇宙世紀(前世)で結婚し、子育てやら何やらとずっと生涯を共に過ごしてきた女性……

 禍月……いや、クガヤ・アルファラ(前世の自分)にとって、彼女はかけがえのない存在である。

 

 だが、このPD世界(鉄血のオルフェンズ)に転生し、禍月桐谷となってこの世界に降り立った時……彼は彼女(ミユ)の存在を忘れていた。

 事実、女性ばかりのタービンズと邂逅し、鉄華団の辿るクソ未来(原作END)を書き換えていく同志となった彼女(透火)と出会うまで、ミユの事など全く思い出せなかった。

 

 夜の公園で偶然出会い、その翌日に鉄華団関係者として相互協力し始めたあの日……

 透火の事を「可愛いな……」と思った直後に(いや待て俺にはミユがいるだろ!?)とその時初めて思い出した程だ。

 

 その後も時を経る毎に、宇宙世紀で彼女と過ごした記憶はどんどんと薄れていく……

 ……まるで、それが当たり前であるかの様に。

 

(あぁ、クソッ……何でだ! 何で俺はミユを忘れて……いや、当然か……

 

 彼女(ミユ)はあくまでも、クガヤ・アルファラの(IFの宇宙世紀という別)世界の人間であり(クガヤ)の妻だ……この世界に転生しちまってる禍月桐谷(俺という存在)とは、何の関係もない…………これが未練、って奴か)

 

 ニュータイプである禍月の思考は、ミユという女性の記憶を失っていく自分の事を客観的に認識した事で、改めて己を再認識する……自分は「禍月桐谷」であって「クガヤ・アルファラ」ではない、と。

 

「認めちまえばスッキリしちまうのは別に良いさ……

 

 けど、何だか寂しいな……これが新人類(ニュータイプ)かよ……ったく」

 

 宇宙世紀に残した妻子……という未練の様なものは、確かに今まで燻っていた……だがどう足掻いても、そんな別世界の未練などどうしようもない……

 

 日を追う毎に冴え渡っていくニュータイプの思考は、アッサリとこの未練に見切りを付けてしまっている。

 

 だが同時に、拭えない孤独感というものも湧き出てきた……

 

(でも、だから……なのか……? 俺が……アイツに惹かれてるのは……)

 

 恐らく同郷からの転生者であろう透火との出会いは、それこそ運命の出会いとも言える物だった……

 聞けば幼い頃から両親の才能を受け継ぎ、鍛えられたという彼女の器用さと歌……

 しかも、夕暮れの公園で孤独に歌う少女は……同郷の者でなければ知り得ない「ガンダム」の歌を唄っていた。

 

 そして彼女は、同じ世界に2度転生し……このクソッタレな世界の黒い歴史を直に()せられている。

 

(封じられた誕生の経緯、忌まわしき過去の地獄……スラム街の悪夢……)

 

 これまで禍月は、彼女の過去や前世の記憶を少しづつ語って貰っていた……

 

 人造人間として造られ、奇跡のごとく心を持ち……そして壊され、記憶の奥底に封印された過去……

 その身体に憑依転生し、迫る少ない時間で(原作ENDまでのカウントダウンを)無茶振りされ、それでも必死に掴み取ろうとした……だが、その努力すらも虚しく再び時を戻され、更なる苦痛と地獄を記憶に刷り込まされ、今に至る……

 

(とんでもなくクソだな、彼女をココに放り込んだ奴は……)

 

 だが、彼女は生きている……自分に出来る最善を叶える為に、自分に出来る事で。

 

(だからなのかねぇ……さすがに同郷ってだけじゃ、何の説明も付かねぇもんな……やっぱり俺は……)

 

 惹かれている、それも徐々に確実に……

 

──────────

 

 その後も……鉄華団一行は補給と修理を進めつつ、列車の旅を続けていた。

 

「オ~イ、そっちが終わったらでいい! バルバトスの脚を見てくれや~」

 

「はぁ~い!」

 

 エーコ・タービンは鉄華団のMS整備を手伝っている。

 

(あの損傷で透火が無事だったのは良かったけど……)

 

 あの惨劇の日から数日後……透火と禍月の身体ダメージは、医療カプセルによって回復し終えていた……しかし。

 

 

 愛機の整備の為、いつもの様にコクピットシートへ座る透火……ココまではいつもと変わらない光景だった。

 

「……っ!?」

 

「……お、おい……透火?」

 

 突然吐き気を催したかの様に口を抑えてコクピットから飛び出し、そのまま格納庫を出ていってしまう……

 不審に感じて後を追った雪之丞が見た光景は……恐怖に顔をひきつらせながらも『大丈夫……まだ、私は死んでない……だから、大丈夫』と、自分に言い聞かせ……かつての孤独と恐怖に耐えている少女だった。

 

 彼女が過去に受けた、自分が死ぬかもしれないと思った瞬間……

 

 過去に負ったトラウマをも超えた精神的ダメージと、前よりも直に見えてしまった『相手の感情』……日常的には問題なく過ごしているといっても、まだトラウマを克服出来ていなかった透火にとって、今回否応なしに再び与えられた「死の恐怖」など……到底耐えれらるものではない。

 

 トラウマ持ちに、更なる恐怖を上塗り……それも濃厚ギガ盛り&回避不能というコンボ付き……

 そして彼女自身、あの時偶然にもに感じ取ってしまった()()()()()が頭から離れず、ついに精神が根を上げてしまう。

 

「……ゴメン、禍月……」

 

 ……私、たぶんもう……戦えない……

 

 

──────────

 

「……この仕事が終わったら……フラッグ、解体するわ……もう乗らないし」

 

 1時間ほどして、透火は仕事に復帰したが……開口一番、もうパイロットはしないと語る。

 

「……今後は整備士一本でやってくのか?」

 

 雪之丞の言葉にしばらく沈黙の後に頷き、踵を返してアベンジャーの整備を始めに機体へと歩き去る……その後ろ姿に、今までの様な元気は欠片もなかった。

 

「……ありゃあ相当ヤバいかもしれんな……」

 

「えっ?」

 

 雪之丞の漏らした一言に、怪訝な表情で疑問を浮かべるヤマギ。

 雪之丞には前以て透火の過去(タービンズに拾われた経緯)を知らされていた……その他には()()()()という立場から団長であるオルガと、同じ女性の大人であるメリビットさん……そして透火自身が自ら教えた禍月だ。

 

 雪之丞はヤマギに、当たり障り無い範囲で透火のトラウマの事を伝える……理解すると共に複雑な心境に陥るヤマギ……そして当の本人は……まるで何かを振り切る様に、他の鉄華団の整備メンバーと共に淡々と整備に打ち込むのだった。




トラウマ持ちに更なる衝撃!
幸か不幸か、トラウマ発動トリガーがすげ替えられました……

現在の状況は、ジャミル・ニート(ガンダムX)が患ったコクピット恐怖症に近いモノです。

パイロット廃業を宣言する透火……だが、決戦の時は近い。
果たして禍月と鉄華団は、透火(のフラッグ)抜きで……原作よりもヤバそうな雰囲気が漂うエドモントン攻略を成せるのか?!

今後であなたの気になるポイントは?

  • 禍月の新型機
  • フラッグ解体の行方
  • マクギリスが拾ったアレ
  • 原作改変の結果(1期)
  • (透火の)乗り換えの件はどーした?
  • エドモントン戦の内容

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