【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
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<まさかの堕天使再臨をご希望とは?!>
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突然空から降ってきた、1つのカーゴ……それが私の目の前にある。
もうもうと上がる煙の中から現れたカーゴ……私の存在を関知したのか、封印が解かれる様に扉が開き始め、中に納められていたモノが徐々に顕となる……
「……ッ! コレって……!?」
カーゴに搭載されていたのは、私の記憶に鮮烈に焼き付いた……
(……もしかして、船のシステムがフラッグの性能不足を判断して……?)
カーゴに近付き、機体の外観をチェックする……カーゴ・ポッドに守られて大気圏を降下してきたので、機体には一切の傷もなく……製造されて間もない新品だ。
確かにあの船には、私が知り得る全ての機体の設計図や、既知の技術を応用できる様……AGEシステムとビルダーを直結・内包する形で、艦内を管理する制御システムを構築しておいた。
……それがまさか、私の現状を把握してこんな世話を焼いてくるなど、夢にも思わなかったけど。
(……でも……)
今の私に、コレは扱えない……もう側に立つだけで体が少し震えている。
ここは格納庫ではない……機体はカーゴに納められているとはいえ、ここは外だ……つまり、ここは戦場も同然。
「……でも……」
禍月が戦ってる……彼が戦うという事は、私も戦わなければいけない……
それが私のやるべき事だった……やらなければならない事だった。
……でも、私は動けない……体が動かないよ……
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どれだけ遠ざけても「それ」はずっと側に潜んでる……
私は心から笑えない……だって、そんな事をしたら……また失うかもしれないから。
優しかった両親……過去の記憶にあった、生まれた研究所の職員さん達、そして……私を造ったお父様……
みんな、私を笑わせてくれた……みんな私と一緒に笑ってくれた。
でも、みんな例外なく……私のせいで居なくなった。
……私の前から消えていった。
私はどうしたら良かったの? 「わたし」はどうしていればよかったの?
くらくとざされた「やみ」のなかで、とけないもんだいにあたまをなやませる……そんなときだ……わたしのなかにもうひとりの「わたし」がうまれた……
もうひとりの「わたし」は、すべてにぜつぼうした「わたし」のかわりになった……
わたしのかわりに、りふじんにあらがっていきぬこうとしてくれた。
あのおおきなアクマにも、ゆうかんにたちむかっていた……
でも、さいごのさいごにかげんをまちがって……「わたしたち」は「ちがうじげんのかこ」にとばされてしてしまった。
もうひとりの「わたし」は、それでもあきらめずにあらがったけど……めのまえにせまった「きょうふ」にかてなかった。
わたしはもう、どうしたらいいかわからない……
もうひとりの「わたし」も、きょうふでからだが「たたかう」ことをきょぜつしている……
わたしは「むりょく」だ……
ヒトをこえた「ちから」をもっていても、ヒトには「できないことをできる」そんざいだとしても……
でも、「わたしたち」なら……ふたりなら……
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意識が飛んでいた事に気付き頭を振るが、それで状況が変わる事はない……相変わらず、市街地の方からは戦闘音がひっきりなしに聞こえていた。
ギャラルホルン側も混乱しているのか、どの部隊も動きを止め……市街地で繰り広げられている戦闘をただ見ているだけだ。
『昭弘……アレ、割り込めそう?』
『正直言えば、無理かも知れねぇ……逆に軽く捻られそうだ』
三日月と昭弘の会話のとおり……禍月と敵2体の激戦は、苛烈すぎて入り込む余地など皆無だった。
だが、状況は禍月が不利……只でさえ性能差を埋められ、阿頼耶識による超反応も踏まえた連携をしてくる敵に対して、禍月は孤軍奮闘……ジリ貧に変わりはない。
『……ミカ……こえるか……? ……事なら、禍月……援護に……』
途切れ掛けた通信から、オルガの指示が入ってくる……指示を確認すると、禍月が無事な内に議会の会場まで車で蒔苗氏を護送するとのこと……可能なら禍月の援護に向かえともあった。
「でも、オルガは出来そうなら
「マジか……まぁ、お前ならやっちまいそうな気がするがな……」
バルバトスとグシオンは、ギャラルホルンのMSを蹴散らした後に市街地へと進もうとするが……その足はまたしても青いMSに止められた。
『貴様らネズミにやられっぱなしにはならん!』
『……奴は……あっちか? ッ?! 特務三佐! アレを!!』
アインとガエリオが鉄華団の前に立ちはだかる……が、アインの指す方向を見てガエリオは我が目を疑った。
『な……ッ?! 馬鹿な!! 市街地にMSを近付けただとぉ?!』
しかも、禍月の乗るアベンジャーに攻撃を加えているグレイズ・ファントムが自軍の所属であるという事に更に驚愕した。
しかし、三日月と昭弘がアベンジャーを援護しようと動き始めたのをきっかけに我を取り戻し、三日月達を止めるべく立ちはだかった。
『MSをこれ以上街に近付けるな!!』
しかし、既にグレイズ・ファントムが2機も動き回っているので、その説得は意味を成さない……三日月と昭弘は無視して強行突破しようとしたために揃ってアインとガエリオは彼らを止めに入った。
『……邪魔!』
『貴様らッ!!』
『行かせるわけには……!!』
三日月達の様子に気付き、透火が防衛線側を見る……その光景は原作とは違う展開、三日月達が介入出来ない状況に焦りだす。
(やっぱりガエリオは単独じゃない……コレじゃ禍月が……?!)
状況を打開するには、目の前にある
《……ごめんなさい……》
「え……っ?」
頭の中に響く、知らない声……知らないのに安心できる……不思議な少女の声だ。
「誰……なの? 頭の中に……」
《……わたしはあなた、あなたはもうひとりのわたし。
……
この頭の中に響く声……それは
(ううん、コレは私の自業自得……だから私は自分が許せないよ……禍月は今も1人で戦ってるのに……!)
禍月が戦ってるのに、肝心な私が動けない……彼だけで対抗しようとするのはあまりにも無謀なのに……
すぐにでも私が行って助けたい……でも、私の身体が
《……あなたは「かれ」をたすけたい……わたしも「みんな」をたすけたいよ》
(そうよ、約束したのよ……2人で鉄華団を助けるって……それなのに……)
《だいじょうぶ……わたしはあなた、あなたはわたし……わたしたちふたりなら、「きょうふ」だってのりこえられる……わたしがそばにいるから》
私の恐怖は孤独と暗闇……そしてヒトの悪意……でも、彼女は……アリスは『一緒に居るよ』と励ましてくれた。
……私よりもずっと重い闇に晒され、心を壊された悲しい過去を背負っているのに。
『……は、アイツに……束した……俺が居る……俺が守るって……!』
禍月の声が、また途切れ掛けた通信から聞こえてくる……そうだ、あの時……彼は、恐怖に怯えていた私を守ると言ってくれた……私の恐怖を拭い払ってくれた。
1人じゃない……私はもう1人じゃない……共に歩む
「……ははっ、バカだな私……私よりも酷い事されたアリスに慰められてるなんて……」
いつの間にか身体の震えは止まっていた……でも、いつまたあの恐怖に囚われるか分からない。
(ねぇ、アリス……私の事、手伝ってくれる?)
《うん、あなたの思い……伝わってるよ……私たち2人なら、できる!》
カーゴの中身を今一度確認し、起動までの手順を最速でこなす……何度も世話になった機体だ、この程度の作業なら例え視力を奪われても完璧にこなせる自信がある。
頭部の整備用コネクターに端末を繋ぎ、機体の駆動システムを地上用セッティングへと変更……ビルダーによる建造時に更なる最適化を施されたシステムは、セッティングの変更手順すらも簡略化し、予想よりも早く作業は終わる。
ふと、機体のカメラアイに映る自分の顔が見えた……その瞳はいつもの紫色ではなく、虹彩は文字通り虹色に輝き、
「……
論理では説明ができない『感情』をパイロットから学習する事で、戦闘の状況を自律的に判断する能力を獲得し、最終的には搭載されたMSの複雑な機体システムを単独で完全に制御する能力を得られるという、いわゆる
ヴォン……!
システムの再起動と更新が済み、機体のカメラアイが緑色に輝く……
私は急いでボディを伝って駆け降り、駆動の邪魔をしないようにカーゴの方へと移る。
《思ったよりも自由に動かせる……コレなら!》
頭に響くのは、さっきまでの拙い言葉ではない……私との同調によって完全な意識を取り戻した、
《……あの2つから、嫌な感じがする……彼が危ない!》
「うん……アリス、お願い!」
……今ここに、
ようやくここで過去のフラグを一つ回収……
まぁ、名前こそ同じですが彼女とシステムとしての「ALICE」とは無関係です。
……近い事は出来ますがね?
原作のALICEも疑似人格を持っており、作中でもパイロットであるリョウ・ルーツを守る様にMSを動かして敵との激戦を繰り広げ……ラストバトルはパイロットを脱出させた後、大気圏突入を慣行しながら逃げる敵の大型MAを狙撃して撃破……そして自身は大気圏の摩擦で燃え尽きる、という印象に残る名場面でした。
機械に意志が宿る……というのはさすがにオカルト染みてますが、宇宙世紀のガンダム達が繰り広げたラストバトルは、それぞれの背景こそ異なるものの……かなりオカルトチックな不可思議現象が描かれています。
さて、いよいよエドモントンでのラストバトルも大詰め……
生き残るのは果たしてどちらか?
二期までの空白期間……色々あるとしたら幕間として見たい?
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是非とも
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書いてくれるなら
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どっちでも
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あまり興味ない
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いらない