【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
そして堕天使も少し、前から変わった事を強調する回なのです。
阿頼耶識搭載のグレイズ・ファントム2機を相手に
満身創痍まで追い詰められた禍月……
しかし、突然起きた通信妨害を皮切りに現場の雰囲気は一変。
そこに現れたのは純白のMS
2対の翼と、身の丈に迫る盾と剣……
正しく天使の姿を模し、
その
それが堕天使と呼ばれる
名を……
──────────
『……オイオイ、何だぁ? この白い奴は……?
オイ、ルーギス! ……あ? 何で通信が繋がんねぇんだよ?!』
それはどの機体も同じであった……現在、戦場に展開しているMSやMW……陸上部隊や基地……ほぼ全ての無線回線は雑音と共に不通となり、有線で供給されている市街地内の民間回線のみが生きている状態。
この現象のせいなのか、敵味方どちらの陣営も現状を把握する事が出来ない状態となっていた……
ただ、1人を除いて。
「……あの機体、ザドキエル……堕天使、か」
頭からの出血が目の方へと来ているため、若干視界が赤くなってしまっている禍月。
しかし彼だけが、突然戦場の空中現れた機体に合点がいっていた……
透火の前世……MAハシュマルと共に封印されていたポッドから救出され、当時の鉄華団を急速に建て直し、様々な危険をギリギリで回避して存続を勝ち取ろうとした少女『セファー・イツカ』……彼女が自ら設計、製造したMS。
イレギュラーとして出現した異形のMF『デビルガンダム』と相討ちになるまで搭乗していた、擬似太陽炉搭載型の試作MS……
背部から撒き散らされるオレンジ色の光は動力源でもある『GNドライヴ
本来、
そして太陽炉から放出される光……GN粒子には、電波障害という弊害こそあるものの……「質量操作」「高濃度圧縮によるビーム化」「物体に定着させる事による強度上昇」「粒子濃度操作による防御膜形成」「脳量子波の伝達」等々……数えきれない程の能力を持ち、太陽炉はそのGN粒子を半永久的に生成する事が出来る。
『……禍月、聴こえる?』
「……?! 透火? 何で聞こえて……通信障害の筈だろ?!」
GN粒子による通信障害が起きているというのに、変わらず聴こえる透火の声……あり得ない事態に思わず声をあげる禍月……だが、透火の声とは違う……もう一人の声が聞こえた事で、ニュータイプの超感覚が瞬時に答えを導き出した。
《彼、怪我をしてる……大丈夫?》
「……なるほど、脳量子波か……俺の頭がイカれたかと思ったぜ」
深くは知らなくとも、禍月は元々ガンダムに関する知識を広く持っていた。
転生してニュータイプ能力に振り回され難いのも、前以てそういう事が起こり得る……と、気構えが出来ていたから。
……勿論、脳量子波という能力についても既に予習済みなのである。
《意外と大丈夫そう……?》
「ああ、問題ない……この程度ならな」
頭から血を流しながらも、問題ない……と言い張る禍月の強がりに、透火とアリスは揃って『アンタ馬鹿ァ?!』と心の中でツッコミたくなるのを必死で堪える。
『……と・に・か・く! ザドキエル……アリスが手伝ってくれるから、私も戦う!』
その声に合わせるかの如く、堕天使ザドキエルは右手の大剣……GNソードを展開し、シールドと共に構える。
その挙動に、敏感に反応したのは赤いグレイズ・ファントム……クルーガーの方であった。
『なんだぁ? 俺と殺ろうってのかよ……? ハッ、上等じゃねーか!』
《彼をやらせはしないわ……!》
透火の意に沿って、アリスの意思を以て動く堕天使の左腕が赤いグレイズ・ファントムの方を向く……ガコン、と鈍い音と共にシールドが割り開かれ、現れた砲身……その先端に集う光を見た瞬間、クルーガーは言い知れない悪寒に襲われ、急いで機体を横に走らせる。
「……あっ、オイ待て止め……!」
『……えっ? ちょ、それはダメ……!』
《……逃がさないんだから……っ!!》
禍月と透火も、アリスのその行動に異を唱えるが……既にオレンジ色の光の束が市街地を移動する赤い大型機に直撃する寸前であった。
『チィッ、何なんだ……っ!! ビーム兵器だとぉ?!』
堕天使の射線から避けた筈のクルーガーの機体に、オレンジ色の光が直撃……その光は確かに当たっている……が、ナノラミネートアーマー故にその光はまるで撥水コーティングされた布が水を弾く様に装甲表面を湾曲してあらぬ方向へと曲げられた。
しかし、当てられたクルーガーの脳裏には当てられた事による驚愕ではなく……その武装そのものの存在に違和感を感じていた。
『……その姿……その武装……まさか、300年前の技術……?!』
禍月のアベンジャーを挟んで反対側に立っており、クルーガーの一連の行動を見ているしかなかったルーギスの声も震えていた。
……あり得ないのだ、
あり得ないのだ……
……
『何なんだよテメェは……! その力は……ッ?!』
ザドキエルの放ったビームはナノラミネートアーマーで弾かれるも、装甲表面に弾かれ湾曲して更に中空を進み続け、幸いにも市街地には被害を及ぼす事なく誰も居ない荒野に着弾……
そして、当てられたクルーガーのグレイズ・ファントムの装甲は無事だったが、直撃を受けた瞬間……装甲に守られず露出していた関節や、腰にマウントしていたバトルアックス……左肩に内蔵されているマシンガン等……機体の一部が熱融解しており、完全に無事とは言えなかった。
「……マジかよ、ナノラミネートアーマーで止めきれなかった……?!」
『……嘘……前より出力上がってない……?!』
《……え、装甲で弾かれた……?! でもダメージは受けてる……》
そして、想定よりも与えたダメージが大きい事に……結果を予測していた禍月と透火……そして、予想だにしなかった結果にアリス本人も驚いていた。
『……って、そうじゃなくてアリス! ソレ撃つのは市街地じゃダメよ?! もし建物に当たったら……!!』
「市街地でナノラミネートアーマー持ちにビームを撃つんじゃねえよ?! 弾かれて流れ弾で大惨事だぞ!!」
《ご、ゴメンナサイ!! 手っ取り早く攻撃当てて彼から遠ざけたくて……ごめんなさいぃ~(´;ω;`)》
実の所、透火もアリスも厄災戦当時の記憶は全く持っていない……しかし、透火の人格は元々転生者であり、セファーの時にナノラミネートアーマーの技術や効果は数えきれぬ程に履修済みである。
しかし、つい最近目覚めたばかりのアリスはそんな事など何一つ知らない……この不手際は記憶と人格が違う故に起こった事故であった。
・
・
・
『……その姿、その力……まさか300年前の亡霊がまだ彷徨っていようとは……!』
『テメェ、そのふざけたナリ……大昔の天使でも語ろうってのかよ……上等だ!!』
未だ声色に僅かな驚愕の色は残るものの、クルーガーとルーギスは明確にザドキエルを敵と認識した。
そのザドキエルはアベンジャーの傍らに移動し、地上2mほどに浮かぶ……その姿は戦場の何処からでも確認できた。
「……堕天使だ……」
戦場の片隅でギャラルホルン兵士の誰かが口にした、空想の存在……後にこの時のザドキエルは、この世界のギャラルホルン内部で『
作中の説明でややこしいと思われた方、スミマセン!
ザドキエルの放つ「
脳量子波の伝達は本家のGN粒子が持つ能力です。
ですが、アリスの脳量子波と禍月のニュータイプ能力はどちらもかなり優れており、なおかつ堕天使にはサイコフレームがあるので、GN粒子の仲介が無くても通じ合えた……今話で透火達の会話が成り立っている理由はそういう事です。
あまり作中で長々と語りたくないのでココに補足としました。
……まぁ、
次回、ついに決戦スタート!
そして禍月が何かするつもり……脳内BGM推奨かも?
二期までの空白期間……色々あるとしたら幕間として見たい?
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是非とも
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書いてくれるなら
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どっちでも
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あまり興味ない
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いらない