【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
ついにエドモントン最後の戦いが終わる……
生体ユニット型阿頼耶識を持つ大型MSグレイズ・ファントム2機を相手にするのは、満身創痍ながらも気迫の衰えない男、禍月桐谷の駆る
そして、300年前の禁忌と奇跡が生んだ少女、アリスの操る
……この戦いの結末は、彼らに委ねられた。
2機のグレイズ・ファントムと睨み合う、
唐突にアベンジャーが、使い物にならなくなった左腕を引っこ抜いた時……透火は呆気に取られてしまっていた。
だがその行動を皮切りに
まずは牽制を含めて便利な装備、超硬ワイヤーを用いたテイルブレードを射出。
建物で出来た死角……足元、背後、機体のカメラの死角を伝い、アリスの脳量子波を読み取って堕天使のテイルブレードが伸びる。
『チィッ?! コイツ、死角を突いて……!』
しかし、そこはギャラルホルンでも実力のあるクルーガー……いち早く気付いた彼はテイルブレードの動線を察知しすぐさまその場から離れる。
追撃に堕天使は右腕のGNソードで凪ぎ払うが、それも回避……しかし、アリスは機体をそのまま回し続けて左腕のシールド先端……振動破砕クローを展開し更なる追い打ちを仕掛けた。
『なんだこの動き……人が乗ってやれる動きじゃねぇ……!?』
三度目の追撃も躱しきったクルーガーだが、堕天使の挙動に違和感を覚えた。
《そりゃあ、乗ってる訳じゃ……ないもん……ねッ!!》
機体の回転に捻りを加え、反動をも上手く利用し縦回転へと挙動を変えてGNソードを振り下ろす。
ジャンプとスラスターでクルーガーは避けるが、その行動を取った事でクルーガー自身が「チッ、しくじった!」と舌打ちした。
《こうやって追い出せれば、撃っても良いよねッ!!》
クルーガーの舌打ちは、自身が市街地から外へと追いやられていた事によるものだった。
アリスは自身の言葉も食い気味に急制動からのビームキャノンを放ち……避けた所を狙い低空突撃からのテイルブレード……からのGNソード、振動破砕クロー、ビームキャノン……と連撃に連撃を重ねる。
しかし防戦一方ではあるものの、アリスの猛攻を
いったん攻勢を止め、アリスは再びクルーガーの出方を探る……
だが、その後に響いた声に……戦場の誰もが己の耳を疑った。
きっかけが何なのかは分からない……そもそも、こんな所であんな事を言われたのは初めてだ。
普通は「死亡フラグ」とか言って忌諱するもんじゃないの?
冗談にしては必死過ぎる声に、私の心は平静を保っていられなくなってしまった。
『……透火ぁッ!』
脳量子波じゃない……この声はオープンチャンネル、いや、外部スピーカーだ。
無線通信は軒並みGN粒子で不通だし、脳量子波だったら私とアリスにしか聞こえない……
だがこの声は、私以外……
治療が一段落したアトラちゃんやメリビットさん、護衛メンバーの一部など……拠点にしていたこの廃駅の屋上へ、現状を把握しに上がって来ていた全員の耳にも聞こえていたのだから。
ちなみに、私は堕天使の再起動を済ませてすぐココに戻って来ていた。
……遠目とはいえ、カーゴポッドに登って見るよりも近くて高い位置だしね。
『好きだぁぁぁぁぁ──────!!!!』
そして、戦場に響き渡った一言が
「……え? ちょ……はぁ!?」Σ(Д゚;/)/
これには私を含むこの場の全員が呆気に取られるしか無かった……
そしてたっぷり10秒以上の音のない時間が続き、私はようやく視界にアトラちゃんが入り込んだ事に気付いた。
「……透火さん……」
神妙な面持ちで言葉を紡ぐアトラちゃん……いつの間にかメリビットさんも私の隣に来てるし、鉄華団の待機組も後ろで何やら騒いでいる……
「これって
満面の笑みで食い入るアトラちゃんの眼差しが痛い……無言で私の肩に手を置き、笑顔を見せるメリビットさんの視線が辛い。
《彼、凄いね……こんな状況で愛の告白……》( 〃▽〃)
『うっさい!!』
脳量子波で煽ってくるアリスに対して、私はこみ上げてくる気恥ずかしさを誤魔化すように叫ばずには居られなかった……
『……は……? 何だアイツ? 戦場で告白とか、トチ狂ったかあの野郎……』
さしもの熟練パイロットであるクルーガーも、禍月の常軌を逸した発言に気を取られる……
そして致命的なその隙を、アリスはしっかりと捉えていた。
《……捕まえ、たッ!!》
テイルブレードがクルーガーの機体の左足を捉え、深々と突き刺さる……すぐさま反応してクルーガーはワイヤーを切断する為に腰のバトルアックスを握……ろうとするが、その腕は既にGNソードの刀身によって本体から斬り飛ばされていた。
(俺の反応速度を超えて来やがった……!?)
クルーガーは堕天使の挙動と反応速度に、更なる違和感を覚える……先程までの攻防でも、人体の制限を完全に無視した速度、急制動からの淀みない反動利用……そして、人体の限界を軽く上回る反応速度だ……
『……テメェも阿頼耶識積んでやがるのか?! 俺を上回るとは……テメェ、本当に人間か?』
クルーガーは通信の繋がらない相手に言葉を紡ぐ……が、残念ながら返事は帰って来ない。
仮にGN粒子が撒かれていようが……堕天使を操るアリスには、サイコフレームか脳量子波による意識伝達以外、相手に言葉を伝える事は出来ないのだから。
《……元が人間じゃないのは確かね、でも……》
しかし、届かずとも律儀に答えるアリス。
そして彼女にとっては……ヒトかそうでないかなど些細な事だった。
《私の元が何だろうと……私は彼女の為に戦う、前世で彼女が……私の代わりになってくれた様に……今度は私が、彼女を助けるの!》
自我崩壊寸前であった
更に転生してからも、変わる事なく
《今度は一緒に戦うの……2人で、一緒にっ!!》
アリスの声に呼応するかの様に、堕天使の挙動はキレを増し……段々と赤いグレイズ・ファントムを追い詰めていく。
『テメ……!? クソッ、この俺が……負ける……だとぉ?!』
最早機械化された肉体でも捌き切れない、グレイズ・ファントムの反応速度を超えてくる連撃……堕天使の振るうGNソードの斬れ味は、正確にナノラミネートアーマーの隙間、関節部、構造上の脆弱な部分……動き回る相手に対し的確に振るわれる。
クルーガーの操作に不備はない……むしろ彼の技量は、MS戦におけるあらゆる面で屈指の実力を誇っている。
しかし、今回は相手が悪かった……
阿頼耶識システムを搭載したグレイズ・ファントムは、カタログスペック上ギャラルホルンでも最高レベルの機体だ。
だが、あくまでも阿頼耶識システムは、人間の持つ能力を引き出すもの……
サイコフレームの持つ驚異的演算能力と、脳量子波による情報共有……そしてパイロットが搭乗する必要がない事による挙動の制限もない堕天使との能力差は……有人機と遜色なく、状況を正確に把握し、そして完璧に制御されるのであれば……優劣など言うまでもない。
どれ程グレイズ・ファントムが優れていようと……有人機故の超えられない壁は、
『……何が……楽な仕事だ……ケッ、こんな化け物……相手とか……冗談……
マ……リスの野郎……俺らを……嵌め……って……ッ』
1つの衝撃の後、苦し紛れに悪態を吐くクルーガー……コクピット内の彼は最早瞳に光もなく……機体側に付いている生命維持装置が辛うじて彼の生命を繋ぎ止めている状況だ。
機体も既に四肢は断裂し、全身を刻まれ装甲は砕かれ、自慢のバスターソードも既に失っており、力なく膝で立つだけ……
対して、傷1つ無く傍らに浮かび、大剣の切っ先を相手の胸部へと突き刺している堕天使……
誰の目にも明らかな勝敗の結果は……夕焼け空に変わっていくエドモントンの街中に、奇妙な静寂と、抗えない畏怖を撒き散らすのであった。
……とりあえず決着です。
まぁ、判断や把握が的確で制御もマトモなら
行動の制限なく動ける無人機に軍配が上がるのも道理……
なお、アリスの脳量子波による堕天使の強さは……
つまるところ『
……やりすぎやがなwww
これでもアリスちゃん本気じゃないとかマジキチ?()
二期までの空白期間……色々あるとしたら幕間として見たい?
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是非とも
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書いてくれるなら
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どっちでも
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あまり興味ない
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いらない