【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~ 作:睦月透火
その割にはなんかメチャクチャかもしれない……許してぇ
1期のシナリオはもう少しだけ続きます……
三日月達の方が騒がしいけど、多分マッキーのせいよね?
堕天使と赤いグレイズ・ファントムが、夕焼けに浮かぶ彫像の様な姿を晒す。
透火は廃駅の屋上で戦闘の一部始終を見守るだけだったが、その脳と精神は疲労困憊状態である……
それは、間違いなく戦闘行動によるものだ。
アリスの完全覚醒により、彼女の脳量子波を介する事で、超性能を誇る堕天使をほぼノータイムで遠隔コントロールする事は可能だった……が、その方向性や瞬間的な判断など、完璧な自律行動に見えた行動や、取捨選択の判断全ては透火自身が行っていた。
脳量子波を介して、アリスから渡される堕天使の戦況やステータス情報……阿頼耶識にも匹敵する程の膨大な情報の奔流……それを彼女は全て捌き、状況判断をこなし、次に打つ手を踏まえてアリスへと指示を出す……
如何にアリスの脳量子波で堕天使を動かせるとしても、ズブの素人にMSでの戦闘など不可能……その為透火は、グレイズ・ファントムとの戦闘が終了するまでの20数分間、先読みを含めた挙動の細かな対応をアリスに指示し続けた……
アリスは意識と人格こそ固有の存在……なのだが、透火の身体を共有している為、制御の際に掛かる負荷のフィードバック先は勿論透火となる。
(頭が……割れそう……もう、立ってるのもやっとだ……)
《大丈夫? 私……初めてMSを動かすから、どうやれば良いのか全然分からなくて……》
透火の思考を読む事で、アリスは堕天使のスペックや動かし方……敵対存在への対処法などを実戦で習得しながら戦い、クルーガーに勝利した……だが制御時のフィードバックと、アリス側との思考速度差による脳の酷使で、透火は頭痛と倦怠感に苛まれていた。
(あはは……そうなんだ……とんだ実戦訓練になったけど、後の方は上手く連携も取れてたし……頭痛はもう大丈夫、だよ……)
少しずつ頭痛は収まってきたので私は歩き始めるが、その足は既にフラフラ……高速思考の反動で身体の感覚が一時的に歪んでいるのか、5歩も歩けずバランスを崩してしまう。
「……っと、大丈夫? また寝不足にでもなった?」
崩れ落ちる私を支えてくれたメリビットさんには感謝だが、今回も寝不足になってると疑われたのは遺憾である……
しかし意識朦朧な私は言い訳も文句も言えず……私はアリスに堕天使を任せ、意識を手放すしかなかった。
後日……蓋を開ければ、ほぼ原作通りに1期のシナリオはほぼ終了。
アーブラウ代表選は、原作よりも危険度の低い状況下で護送された蒔苗氏が無事に代表へと再選を果たし……クーデリアの演説も相まって、火星圏に対する人々の関心は否応無く上がった。
それと同時に、今回の戦闘で市街地に入り込んだギャラルホルンのMS「グレイズ・ファントム」と堕天使の話題は地球圏で持ちきりとなり、エドモントンのライフラインに大きなダメージを与えた責任をギャラルホルンと鉄華団は追及されたのだが……
「この機体にエイハブ・リアクターは積まれてません!
……お疑いなら、今この場ですぐ稼働実験でも何でも行う用意があります!」
機体の管理責任者として私は、戦後処理中にも関わらず詰め寄った報道関係者全員の前で、決めつける様な悪者扱いの苛立ちをぶつける様に啖呵をきり……納得、というより僅かな疑いすら持てなくする為、大々的な実験を疑い様のない形……複数のテレビ局に同時生放送で公開させた。
その結果、鉄華団へと向けられていた「MSによる都市機能へダメージを与えた」罪は、完全に
最も、エイハブ・リアクターを不要とする機体……しかも、ギャラルホルンを圧倒せしめるMSの存在は、世界にとって「劇薬」に等しい……
現状「エイハブ・リアクターはギャラルホルンにしか製造できない」という決定的なアドバンテージと「MSはエイハブ・リアクターを積んでいる」故に、ギャラルホルンは勢力を不動の物にしていた……
テイワズ時代に開発した「フラッグ」はさ、ナノラミネートアーマーとエイハブ・リアクターによるアドバンテージを越え難いスペックではあるけど……見た目からMSとは思われ難いのか、何故か黙認されていたみたい……解せぬ。
堕天使の異名を持つMS『ザドキエル』は完全なエイハブ・リアクター非搭載のMSであり、その戦闘能力は事実上、ギャラルホルンのMSをはるかに上回る……しかもエドモントンの戦闘そのものは、ギャラルホルンの情報統制によりメディアにこそ取り上げられないものの、一部の市民には直に目撃されている。
他人の口って、どう足掻いても塞ぎきるなんて不可能よね……
そこで私は、アリスにザドキエルを大気圏外まで離脱させ、軌道上に待機している改造船へと戻すよう頼んだ……すると船は独自判断で船体を光学迷彩「ミラージュコロイド」で隠したとの事……改造船にミラージュコロイドが積まれてるのはAGEシステムによる「進化」のお陰だ。
なお、堕天使はメンテナンスを受けると共に、アリスの脳量子波と制御システムをマッチングさせる処理が行われた事で……正式にアリスの
更にアリスの意識をデータとして移植、サイコフレームの演算領域に人格システムを形成……MS操縦のイロハは、鉄華団の戦闘データやレコードから自己学習している……これによりアリスは疑似人格OSとしての側面も確立し、堕天使はほぼ完全に彼女の
また、ギャラルホルンには時々、堕天使の姿を
まぁ、ぶっちゃけ……堕天使は単独での飛翔や大気圏往還能力、オマケに光学迷彩も備えているので
ちなみにアリスはこの撹乱作戦を「お散歩」と称し、不定期ながら嬉々としてやっているとの事。
次に……鉄華団は今回の功績で原作通り、アーブラウ政府から軍事顧問への抜擢を打診された。
原作ではこの戦い以降も、鉄華団の活躍は少年兵の有用性を世間に知らしめるが故に、若年労働者……要は貧困層の子供達が「稼ぐ為に」身を売り、それを体よく利用する組織が急増、ヒューマンデブリ増加の助長と違法な阿頼耶識施術の横行を招き……歪な世界を更に歪める結果となっている。
しかし鉄華団的には、理由や背景がどうあれ大抜擢には間違いないし、テイワズにも利益をもたらすこの結果は最上この上無い……
だから私は団長に直訴し、軍事顧問として地球に残るメンバーを慎重に選んで貰った。
その結果、私や禍月、チャドさん達など……年少組を纏めながら大人と付き合える顔ぶれが残る事になった。
まぁ、私自身はどっちでも良かったんだけどね……
さて、あの日の後……禍月はまたしても倒れた。
当初は私が意識していなかった事もあり、禍月のアベンジャーがボロボロになっていてもさほど気にも止めなかった。
だが、アベンジャーから回収した戦闘レコードを解析し始めた直後から……私は絶句した。
「……何なのよ……これ……?!」
システムログに表示された「
何故? としか言えない……アベンジャーのシステムはほとんど解析を済ませ、EXAMシステムにも
その上でインターフェイス周りにも手を入れ、万が一EXAMが起動しても、その負荷を大きく抑えられる筈だった……しかし、EXAMの代わりに起動したのは、危惧していたEXAMよりも更に胸糞悪さを増したモノ……
ペイルライダーに実装された非人道的なMS制御システム、
それはパイロット自身を制御システムの一部として見なし、システムの最適解を強制的にパイロットへフィードバックさせる……要はパイロットを取り替え可能な生体部品として扱うシステムだ。
もちろん、常人に扱える代物じゃないし……仮に使えたとしても、稼働中の凄まじい負荷と解放後の後遺症から、完全にマトモな思考が出来なくなるという、廃人作成装置とでも呼べるシステムだ。
「なんで……なんで、こんな……」
私は激しく後悔した……彼の
HADESなんてモノを使えば、タダでは済まない事など百も招致のはず……しかし、躊躇なく稼働したシステムは、彼は己の精神を犠牲にルーギスを倒したのだ。
《……ごめんなさい、貴女に辛い事ばかり押し付けて……》
脳量子波でアリスが謝罪してくるが、アリスに罪はない……もちろん禍月にも。
原因は私だ……私がアベンジャーを完全解析できていれば、ここまで酷い事態は回避できたはず……
《それは違うよ……彼の意図じゃない、あのシステムの起動は、彼も意図してなかったわ》
アリスは、堕天使の制御の傍らで……アベンジャーのシステムの変遷には気付いていた。
しかし、目の前の敵への対処を怠る訳にも行かず、早急に透火の負担を減らすべく、堕天使の制御をモノにする為にも……それ以上気を向ける余裕などなかったのだ。
禍月は脳にダメージを受け、移動式の医療ポッドで治療中……身体的な負傷は既に完治しているが、脳のダメージは予想よりも深刻で、あれからもう1週間は経つが……未だに目覚める兆候はなかった。
「……バカだな……私って……守ると言われて、彼の大変さを知ったつもりで分かってなくて……結局は私のせいでこんな事に……」
アベンジャーの機体は最早修復不可能なレベルまで損壊している為、堕天使を使って軌道上の船に運び解体作業中である。
彼が目覚めない以上、喩え修復できてもパイロット不在では何の役にも立たない……それに、新型の約束もあるし、アベンジャーがここまで危険なMSだと判明したので、有無を言わさず解体確定。
しかし、この時既に完成度65%に到達した例の新型機も……彼が目覚めなければ無用の長物である。
(彼に謝らなきゃ……私のせいで危険な目に遇わせてばっかだ……)
独りごちる透火だが、アリスは逆だと考えていた。
《逆でしょ? 貴女に謝って貰わなきゃ! アレだけの事をやっといて、さんざん心配掛けたまま放置プレイとか……何様よ!》
(……放置プレイ……アリス、何処でそんな言葉覚えたのよ……)
戦場のど真ん中……あのエドモントン戦の最中での告白。
端から見れば完全に頭がおかしくなったと思われるだろうが、禍月はあの宇宙世紀を生き抜いた歴戦のパイロットであり、転生者……チートの権化とも言うべき強さ
彼が何を思ってあの時に告白したかは分からないが、彼の真摯な想いは透火にしっかりと伝わっていた。
「……少なくとも、告白の返事くらい……しないとね……」
私はあれからずっと禍月の治療ポッドを毎日の様に見に来ている。
単に気になるからだけではない……目を覚ましたら、ちゃんと彼と向き合おうと思っているからだ。
そりゃあ最初は『なにこの男』と、敬遠してた……あの時、薄暗くなった公園で不意の遭遇した時は、敵かもしれないとまで思ったし。
だが目的を同じくし、互いに弱点を補い合える関係だと気付いてから、彼との関係……彼と会う事が少しずつ楽しみになっていた……
趣味の話も彼のノリが良いし、周囲は既に双方好意的だと囃し立て、
私が彼に対する好意を自覚したのは、あの雪原の決闘後……襲われた私の事で禍月がキレたと聞いた頃だった。
(……あの禍月が、ね……そりゃあ悪い気はしないけど……そっか……彼、本気で私を……)
この頃から私は、薄々だが禍月の想いを感じ始めていた……日頃のアベンジャーの整備も良く手伝ってくれるし、差し入れもマメに持って来てくれる……
そんな時が続いた事で、私はぼんやりと『彼と共に歩む未来』を妄想するに至っていた。
(前世でも妻子を大事にしてたみたいだし……私も、彼となら……悪くはない……かな)
そしてここに至って、悪癖でもある妄想が止まらなくなり始める……
多少
ただ、現実は非情なものである……迫り来る敵、次から次へと降り掛かる無茶振り、
だから禍月のあの告白が無かったら、多分私はこの感情を胸に秘めたまま……永遠に陽の目を見ること無く終わらせてしまっただろう。
今、私は……同じ転生者として出逢った彼、禍月桐谷の事が好きなのだ。
自覚したが故に、もう隠しきれない……止められもしない……
……やっぱり彼に、謝らなきゃ。
エドモントンで大暴れした堕天使……
モデル的には前世の改造バージョンから更に手を加えられ、副翼に内蔵されたメインスラスターは、ターンAガンダムに採用されたフラクタル構造のスラスターベーンへと進化しており、擬似太陽炉に頼らずとも飛翔可能……よりターンタイプに近くなっている。
(詳細はいつもの機体解説に)
その為、有限である擬似太陽炉の出力をセーブしながら戦う事も可能。
これにより、エドモントン戦での電波撹乱の影響も最小限に抑えられたので、都市機能のダメージ原因をギャラルホルンに
次回で原作1期は終了となります。
二期までの空白期間……色々あるとしたら幕間として見たい?
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是非とも
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書いてくれるなら
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どっちでも
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あまり興味ない
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いらない