【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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本小説、2周目1期のエピローグになります。



第28話 それは(原作に)極めて近く、限りなく遠い世界で……

 オルガ達は火星へと戻り……あのエドモントン戦から既に3ヶ月が経過……

 しかし、未だに禍月は目覚めないままである。

 アーブラウ政府の打診から設立された地球支部のリーダーは、禍月となっている……が、未だ目覚めぬ彼の代理として動いているのはチャドだった。

 

『そうか……まだ目覚めてないか』

 

 火星にある鉄華団本部との直接通信も、透火が設置した量子通信端末を使っているので傍受される心配もない……だが、禍月の不在は一部の団員達に暗い陰を落としていた。

 

「一番影響を受けてるのはやっぱり透火さ……まぁ、仕事に影響してないのが幸いではあるけど……事情を知ってるコッチから見ると……な」

 

 以前の明るさは見る影もなく……ただ黙々と仕事をこなす透火の姿に、一部の古参メンバーは一抹の不安を感じていた。

 

『分かった……兄貴の方には俺から伝えとく。

 そっちに送る追加人員も、3日後には出発する予定だ』

 

「了解、また何かあったら報告するよ」

 

 通信を終え、チャドは大きなため息を吐いた……

 

「禍月……お前、愛想尽かされても知らねぇぞ……」

 

──────────

 

《……ありがとう、お陰でようやく皆と話せるようになったわ》

 

─ 私はマスターのご指示に従ったまで ─

 

《これで後は、彼が目覚めれば完璧なんだけど……》

 

─ 彼はまだ目覚めていないのですか? ─

 

《うん……あの人の為とはいえ、あんなシステムが動いたから……》

 

─ 私に1つ、考えがあります…… ─

─ 貴女にも、ご協力頂けますか……? ─

 

 それは、この世に在らざる人外存在同士の企み……

 斯くして、眠れる騎士を呼び覚ます計画が始まる。

 

 

 それから更に2ヶ月が過ぎ……眠れる騎士こと禍月は堕天使のコクピットに座らせられていた。

 

 アリス達の考案した計画はこうだ。

 

《サイコフレームの共振現象を利用して禍月の精神に刺激を与え、覚醒を促す》……というもの。

 

 サイコフレームにはニュータイプの感応波に多大な影響を及ぼし、またはその感応波を増幅、時には物理的なエネルギーへ転化できるという驚異の能力を秘めている。

 その特異性を以て禍月の精神にアクセスし、リアクションを引き出そうというのである……

 

 尤も、サイコフレームは未解明の部分が多く……登場作品である『逆襲のシャア』『ガンダムUC(ユニコーン)』『ガンダムNT(ナラティブ)』において、多様な()()()()を幾つも引き起こしてきた……それ故、宇宙世紀の歴史の中でサイコフレームの存在は『ある時期』を境に封印……研究も完全に凍結させられていた。

 

 後世に残されなかったこのサイコフレームとその関連技術は、ヒトの手に余る……とされたのだろう。

 しかし、何の因果か……サイコフレームと宇宙世紀の人間は切っても切れない縁で結ばれているのかもしれない……

 

 今こうして、禍月桐谷を目覚めさせるべく……堕天使のサイコフレームが活用されようとしているのだから……

 

──────────

 

被験者との物理接続……完了

 

バイタル安定、脳機能も正常値で推移中……

 

感応波検知システム、テスト終了……演算システムも異常なし

 

サイコフレーム、外部センサー素子とのリンクを確立

 

パルス安定……初期コンタクト、問題なし

 

了解……

これよりマインドサルベージオペレーション、スタートします

 

サイコダイブシステム、トレース……オン

 

アリス・システムの外部ネットワークを解放……

サイコダイブ、リリース

 

 

― side アリス ―

 

 まさか、彼が本当に宇宙世紀の人間だったなんてね……

 

 今の私こと『アリス=セファー・ザドキエル』は人外とはいえ、ヒトの手で生み出された存在……転生してきたという禍月桐谷(かれ)を……私は当初、転生者だと信じられないでいた。

 

 しかし、サイコフレームを通して……禍月の精神と直接リンクしている今、彼の精神が垣間見ている過去の記憶、彼の覚悟……その全てを私は見てしまった。

 

 そして、これも何かの因果なのだろうか……過去の私、厄災戦以前の『私』(アリス)を守ろうとしてくれていた彼らをも、私は幻視した。

 

 いや、あれは幻視ではない……確かに彼らは何者かの協力を得てあの場に存在していたのだ。

 

 彼らの想いは……今も私を案じている……なら、私は彼らの想いに応えるべきだ。

 

 しかし、その為に必要な事は?

 私が彼らの想いに応えるには、どうすれば良いのか?

 

 その疑問が、後に私の欲望人らしさを産む結果になるとは

 今の私には……思っても見なかったのである。

 

 

《……禍月桐谷……貴方、まだ目覚めないつもり?》

 

 彼らの姿が消えた後……1人佇む禍月へと、私は恨み辛みの入り交じった言葉を吐き掛けた。

 

 この男は彼女を守る、という約束をしておきながら……過去の亡霊に負けたままこんな所で燻っているのだ……例え彼女が好きな相手でも、それだけは許せない……彼女はもう1人の私なのだから。

 

《貴方が帰ってこないから、あの人から笑顔が消えたわ……

 

 貴方は約束したハズでしょ? 2人でこの理不尽を乗り越えると……

 それが何?! なぜ貴方は彼女の側に居ないの?》

 

 バツが悪そうに頭を掻く彼に、私は更に逆上してしまった。

 

《貴方ねぇ……約束したなら最後まで貫き通しなさいよ!!

 あの時の言葉は嘘だったの?! 彼女は運命なんていう歯車に良いように弄ばれ、否応なくこんな私の代わりまでさせられて……あんなに傷付いても、誰にも助けを求められずにもがいてるのに……》

 

 こんな事をいう為に来た訳じゃないのに……言葉が止められない。

 私の意識に渦を巻くどす黒い感情が、怨嗟となって吐き出されていく……

 

《私には助けられないの! 私じゃ無理なのよ!!

 私じゃあの人は助けられない……貴方しか居ないのよ!!

 

 あの人と初めて、脳量子波で話せる様になった時……私はそれまで呪っていた神さまに感謝した……

 でも、それまで私の代わりをさせられていた事に気付いた時……今度は自分を呪ったわ。

 

 私が背負うハズの運命をあの人にやらせている……私がやるべき事をあの人がしている……何故、私ではなくあの人なの?》

 

 既に溢れんばかりとなっていた涙を必死に堪え……禍月が声を掛ける間も無く、更に言葉を吐き続ける。

 

《でもあの人は笑ったの……私が謝罪を口にした時、笑ったのよ……

 

『代わりでも何でもないわ、今までの事は私がやりたいからやっただけ……』って……》

 

 あぁ、もう言葉にできない……私は泣きながらその場に崩れ落ちた。

 

― side out ―

 

 アリスはそれ以上言う事ができなくなった……止めどなく溢れる涙、自分の感情が言うことを聞かず、只々自責の念だけがこみ上げてくる……しかし禍月は、その続きを全て脳量子波……いや、自身のニュータイプ能力で察していた。

 

 アリスはたった1人の……自分と向き合い、無碍に扱わず、自分を慰め、慈しんでくれた彼女透火が心配なのだ……彼女が好きなのだ、そして守りたいのだ。

 

 アリスもまた、自分と同じ想いを持っていたのだ……と。

 

「……ゴメンな、アリス……俺は、透火だけでなく……お前まで傷付けちまってたのか……」

 

 その言葉を聞いたアリスの嗚咽が徐々に収まり始め……禍月は以前よりも決意に満ちた表情を見せながら、自信満々にアリスに応えた。

 

「ああ、こんな想いは久しぶりだぜ……

 

 だから今度こそ守り抜いてやる、もう二度と……お前らに涙は流させない……ってな!」

 

《……遅いわよ……お馬鹿さん……でも、ありがとう……》

 

 その言葉を皮切りにアリスの姿が霞み始め、禍月も己の意識が浮き上がっていくのを感じた……

 

 

 気が付くと、禍月はベッドに寝かされていた。

 長時間寝ていた所為か、異様な身体の重たさに辟易するが……側にいる人物の姿を認識した直後から、その鬱屈した気持ちも吹き飛んだ。

 

(隠れて泣いてたのか……悪いな、こんなに待たせちまって……)

 

 その人物……ベッドサイドに持たれたまま眠っている透火の目元と、同時に視界に入ったカレンダーの表記から、自身が半年もの間眠っていた事に気付き、心の中で謝罪する禍月。

 

 窓の外は真っ暗……最初は夜かと思ったが、カレンダーと共に置かれていた時計の表示から、昼間である事はすぐに分かった……

 

(……昼間なのに窓の外が異様に暗い……もしかして、宇宙か?)

 

 ……禍月の持った疑問は、しばらくして起きた透火のテヘペロと共に驚愕に包まれたのは言うまでもない。

 

──────────

 

 クーデリア・藍那・バーンスタインの依頼を無事に終えた鉄華団……

 テイワズの後ろ楯を得た事で新規に団員達も増え始め、地球支部の人員も徐々に増強されている。

 

 エドモントン戦から半年が経過した現在。

 

 透火が提案し、オルガが驚愕とともに了承した人員輸送の手段は、通常の正規ルートでも身内であるタービンズ経由でもなく……透火が自己満足の為に魔改造を施した、元ブルワーズの強襲装甲艦()()()()()が使われていた。

 

 透火がAGEシステムに入れまくった数々のデータをしっかりと参照、整理整頓し……その上で熟考、検証した後にシステムが導き出した、鉄華団の為の船……

 

 その外見は、()()()()()と言えるほどの特異な姿をしていた……

 

「……この船さ……前から思ってたが、異様過ぎる外観だよな」

 

「いつかの時代の大型艦らしいけど……さっぱり訳が分からないぜ」

 

「大方、その時代で強かったとかいう理由でコイツがヤラカシタんだろ?」

 

 チャドとダンテ、そして昭弘が船の外観に屈託のない感想を述べている。

 その傍らで覚醒から数日で完全復帰した禍月は、現在自分が乗り込んでいる船の全容を知らされ、頭を抱えていた……そしてこの船を造り上げた当の本人(透火)は禍月に対してテヘペロしている。

 

「なんでだよ……なんでこんな結果になるんだよ?! 俺は信じねぇぞ……これがAGEシステムの結論だとか、絶対に信じねぇからなッ!!」

 

 復帰したばかりの禍月から飛び出すこの絶叫に、昭弘たちは首を傾げるばかりであった。




……復帰までに半年経たせるとかいう暴挙に出ましたが、
無事に禍月は復帰……サイコフレーム様々ですわ(設定的に)w

さて、ラストに禍月が叫んだのはブルワーズの船が見るも無惨(?)な姿へと魔改造されてしまったが故の反応であります。

そして、誠に勝手で申し訳ないですが……
この話の投稿完了を以て、本小説は一旦休載扱いとします。

オマケ扱いの閑話は完成次第、しれっと投稿しますけどw

ちなみに、閑話最初の話題は勿論……
「魔改造されたこの船」の話題になります!

では、1期ラストのアンケートと行きましょうか!

AGEシステムが導き出した「答え」…魔改造の末に誕生したその「戦艦」の姿とは?(ヒントは歌詞にあり)

  • ♪君らしく誇らしく、向かってよ
  • ♪誰かがこれを、やらねばならぬ
  • ♪愛を止めないで、走り続けるの
  • ♪弱さを知って強くなれ、恐れず信じる事で
  • ♪平和の願い照らすため、今こそ復活だ!

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