【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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お待たせしました!!
空白期に起きた出来事をランダムに開示する閑話ストーリー
はーじまーるよー。

最初の話題は『魔改造が完了した元・ブルワーズの船』。



空白期やIFなんかの幕間集
閑話 鉄の華が擁する悪魔の船


♪ た~んた~んた~んたったったったら~ たららったったったったった~たららった~ん

 で~で~んでっでっで~んで~ん で~んでっでっで~んで~ん たららったららったららた~ららっ たららったららったららた~ららっ で~~~ん(※イントロです)

 

 旧式の音楽データの様な古びた音ながら、力強い音楽がスピーカーから流れている……

 

 その音楽は、宇宙を進むこの船を象徴する楽曲であった。

 

 透火によって取り入れられた凄まじい量のデータを参考に、AGEシステムが導き出し……ブルワーズから戦利品として入手した戦艦を元に魔改造されたこの船……

 

 曰く、この船は地球の命運を握る戦いにおいて……幾度となく危機を乗り越え、勝利を手にした船……らしい。

 

 曰く、この船は「旧世界」において「最強」と謳われた姿を模している……らしい。

 

 旧世界……ポスト・ディザスターと呼ばれる現在から、気の遠くなる程の過去……

 その世界において「最強の怪物」として恐れられた艦船が、現代科学とAGEシステムの力により甦った。

 

「……何故だ……なんでコイツをAGEシステムが……」

 

 ブツブツと独り言を垂れ流す禍月を伴い、魔改造の張本人である透火は意気揚々と艦橋への道を歩いていた。

 

「私は大量のデータを仕入れて、()()()()()()()()()()()が良いって方向性を与えただけだし~」

 

 自分が与えた方向性を、AGEシステムがどう解釈し、どう関連付け、どういう意図を以て『この船』という()()に辿り着いたかは自分にも分からない……透火はそう答えた。

 

 実際この船は戦力としても、母艦としても『超』が付く程非常に優秀なのは言うまでもない。

 

 武装は外観から推測可能なだけでも「3連装の大型砲塔」3基に「中型の3連砲塔」が2基、艦首には魚雷発射管と中央部にある大口径砲の様な謎の窪み……艦体中央側面上部には大量の対空砲と、艦橋後方にもミサイルの発射設備が確認できた。

 更に居住環境や設備においても、多少のアレンジや独自解釈があるものの……快適さに溢れた配慮がされており、乗組員の為の大浴場や各種トレーニングルーム、何処から調達したのか不明ではあるが色々な映像作品が見れるシアタールームなど、乗組員の娯楽にも寄与する様々な設備が存在している。

 

 しかも『格納庫』に搭載しているMSは「堕天使」(ザドキエル)だったりするし、艦体中心部に存在する『工場』によって部品や資材等をリサイクル生産したり、時間さえあればMSを全自動で製造する事も可能という程の設備が整っている。

 

 制御システム周りや、世界観に則した仕様の変更はあれど……この船は紛れもなく「宇宙戦艦ヤマト」であった。

 

──────────

 

 透火と禍月が艦橋に到着したと同時に、艦内に警報が鳴り響く……

 

「艦前方11時に、エイハブ・ウェーブを検知……距離、約4000」

 

 船のセンサーがエイハブ・ウェーブを感知した為、索敵担当の少年が声を上げる。

 同時に艦橋中央のマルチモニタが点灯し、3D画像で目標の位置情報や予測推移などが表示された。

 

 もたらされた情報に、禍月は即座に頭を切り替えて艦長席へ……透火も通信席へと移動し、禍月はシートに座りながら声を上げた。

 

「この宙域でエイハブ・ウェーブ……艦の識別登録は?」

 

「船籍データ、照合完了……蒼の傭兵団所属艦『ヴァゼルカイルズ』みたいだね……」

 

 情報処理を担当する透火は、エイハブ・ウェーブのパターンからすぐさま該当艦のデータを割り出し報告する……禍月も合点が行ったのか、顎に手を添えた直後……索敵の少年が再び声を上げた。

 

「エイハブ・ウェーブ反応が5つに……? 後方から新たな艦影……よ、4隻も?!」

 

 蒼の傭兵団とは、海賊行為や傭兵家業で有名な新興団体……ギャラルホルンの艦艇よりも速度を出せる艦艇を5隻も擁しており、その神出鬼没な手口に手を焼いているという。

 その旗頭の船であるヴァゼルカイルズは、PD世界最速の高速宇宙艦艇と言っても差し支えなかった。

 

「蒼の傭兵団のヴァゼルかぁ……あの船足が早いから、通常航行じゃすぐに追い付かれるよ? やるしか無いね」

 

 ブリッジクルーの少年達がどよめく中……落ち着いたままの透火は、禍月にヴァゼルの足の早さを伝え、迎撃を進言する。

 進言を受け入れたのか「しょうがないか……」と禍月は艦内放送を立ち上げ、乗組員……というか、乗っている団員達へ連絡をし始めた。

 

『総員、第一種戦闘配置! 本艦はこれより戦闘状態に突入する!

 ……なお、戦闘要員以外や手の空いてる奴、初めてこの船に乗る奴はよく見ておけ!』

 

 少しの溜めを取り、禍月はこう言い切った。

 

「……この船が如何にヤバ()いかを、お前たちに見せてやる!」

 

──────────

 

「目標捕捉、距離3800……船籍照合確認……ん? 

 なんだ、この船……船籍と外見が一致してねぇぞ……」

 

 蒼の傭兵団の旗艦、ヴァゼルカイルズのクルーの1人が疑問を口にした。

 

「なんだと……照合結果は?」

 

「鉄華団所属の強襲装甲艦です……ただ、外観が……」

 

 クルーが驚くのも無理はなかった……公開登録されている船籍情報には、基本的にエイハブ・ウェーブの波形情報と、大まかなサイズ……そして所属しかない。

 それは基本的にPD世界の艦艇は外見に多少の差異はあれど、同型艦だったり近似した形状だったりが矢鱈と多い……そもそも艦艇のクラス識別は、サイズとエイハブ・ウェーブのパターンデータで決定しているからである。

 

 ……しかし今、目の前の宇宙空間に浮かび、まさにこれから自分たちが襲おうとしている船の形状は……

 既存の登録クラスから推測できる物とは完全にかけ離れた……旧世界の洋上艦の様な外見をしていたのだから。

 

「ハッ、虚仮威(こけおど)しか何かだろ? そんなモノで俺達を騙そうなんていい度胸じゃねーか……お前ら! いつもの様に獲物を一捻りにするぞ!!」

 

「「「オオオオッ!!」」」

 

 蒼の傭兵団団長「ラサール・グラマンジェ」……腕っぷしと度胸で成り上がってきた彼にとって、目の前の奇っ怪な船は虎の威を借りる猫の様な奴らだ、とタカを括っていた。

 

 勿論……現実的に考えて、その判断に至るのは至極当然だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……だが、今回ばかりは……相手が悪すぎたのであった。

 

──────────

 

「敵艦接近、距離……約3500!」

 

「砲雷撃戦用意、艦首魚雷……及び主砲の発射準備だ!」

 

「り、了解! 砲雷撃戦用意……艦首魚雷、装填しますっ」

 

 禍月は戦闘準備の指示を飛ばす……砲座コントロール席に座っていた年少組の団員は、画面のサポートに沿ってコンソールを操作……艦首に設けられた魚雷発射口が開かれ、専用の大型魚雷が装填されていく。

 

「主砲、動力伝達を開始……射撃盤、捉敵システムとの連動スタート……誤差修正中」

 

 次に、前方を向いていた3連装の大型砲塔もそれぞれ旋回し、各砲塔がそれぞれ1つずつ敵艦の方へと射線を合わせる……

 

「GN粒子、戦闘濃度で散布……目標、敵大型艦艇……攻撃準備、全て完了」

 

 最後に透火が全ての準備完了を告げる……この船は、魔改造によって利便性を極限まで追求された結果、少ない人員でも完全にコントロール出来る。

 

「敵艦、有効射程距離に捕捉……単横陣形でなおも接近中!」

 

 敵側はまだ射程外の為か、此方を射程に収めるべく前進中……正に、()()()()()()と言わんばかりの状態である。

 

「さ、景気よく行ってみよー♪」

 

「よし……正面の敵艦に魚雷斉射! 右舷側に広がる奴らは主砲で脅してやれ!」

 

──────────

 

「敵艦、戦闘態勢に入った模様!」

 

 観測手の声に、ラサールはほくそ笑んだ……逃げるでもなく、降伏するでもなく、交戦も辞さない態度の敵は久しぶりだった。

 

「フッ、久々に骨のある奴らしいな……鉄華団、だが俺達に遭うとは運がなかったな……!」

 

 しかし……余裕綽々のラサールの表情は、観測手の次の言葉で吹き飛ぶのだった。

 

「……て、敵艦に複数の熱源反応?! 更に敵艦、高速で物体を射出……み、ミサイルが来ます!!」

 

「……んだとぉ?! げ、迎撃しろ! 対空砲撃てぇ!」

 

 まだ届かない、と思っていた距離……だが敵はミサイルを撃ってきた。

 

 通常、ミサイル等の誘導弾は着弾の確実性を増す為に有効射程距離内でしか使わないというのが一般的……だが、敵は予想よりも遥かに外から撃ってきた。

 

 ……つまり、相手のミサイルはその距離でも届く既に有効射程距離内という事である。

 

 なお、ラサールの()()という判断は正しかった……が、射程距離を誤認させられてしまったが故に、ミサイルの速度を読み違えて間に合わず……気が付けば艦隊の左側の2艦に合計6発のミサイルが命中し、船のナノラミネートアーマーが爆発で焼かれていく。

 

「左舷の僚艦に命中、装甲にダメージが……!」

 

「馬鹿な……ココまで届くミサイルだと……?!」

 

「敵艦の砲門が此方を捕捉……な、何だアレは……ッ!?」

 

「ッ?! 回避しろ、取り舵ッ!!」

 

 観測手の声に嫌な予感を覚えたラサールは、操舵手に怒鳴るように命じる。

 直後、ラサールの目に映ったのは……青白い光に貫かれていく、右舷側の僚艦の姿であった……

 

──────────

 

「す、スゲェ……ナノラミネートアーマーが一瞬で……」

 

「どんな手品だよオイ……」

 

 船の主砲……艦橋の下に見える3つの3連装の砲塔から放たれた光の束は、敵艦のナノラミネートアーマーをいとも容易く貫通した事に、団員達は一様に驚きを隠せない。

 

 ナノラミネートアーマーの堅牢さは、最早常識というレベルで知られている……だが、あの光の束はそれを呆気なく破壊した……それはまさしく、常識破壊と同レベルである。

 

『この船は対艦・対MS戦闘に対応した武装を多数持っています……しかしながら、整備には人の手が欠かせません……なので整備班の団員はいつでも募集中でーす♪』

 

 録音であろう僅かなノイズ混じりで、透火の声がスピーカーから響く……

 その声を初めて聞いた団員達の一部は、先ほどの戦闘の凄さと録音の声に唆され……本気で整備班に入ろうかと悩むのであった。

 

 

「……ハァァァァ……」

 

 禍月の盛大な溜め息が艦橋に響く……原因は勿論、先ほどの主砲の威力である。

 ナノラミネートアーマー? ナニソレ美味しいの? という具合の壊れっぷりだ……

 

「どーよ、『3連装陽電子旋転衝撃砲』の威力は~」

 

 子供みたいな透火のドヤ顔を無視し『ナノラミ撃ち抜くとかどういう原理だコラ』と、迫った禍月。

 

 透火から説明されたのは、GN粒子を用いて物体そのものの強度を上げる『GN粒子コーティング』の技術……そして、独自の解釈からアレンジされた『次元波動理論』を始めとする外世界の技術だった。

 

「多少のアレンジは入ってるけど、ほぼ本家の理論に近いものが再現できたからね……まぁ、元は縮退炉(ターンA)の技術なんだけど……

 

 それに補助機関は2基の疑似太陽炉、主砲の陽電子ビームはAGEで使ってた螺旋粒子ボルテックス……要はDODS効果(ドッズライフルの理論)で強化してあるから、ナノラミでも普通に撃ち抜けるよ。

 艦内重力と通常電源は識別の為に残してあるエイハブ・リアクターを使ってるし、システムにもサポートプログラムを入れてあるから、手順か文字さえ理解出来れば年少組でも運用できるしね」

 

(最早やりたい放題だな……こんな奴、何処から拾ってきたよ? ……俺が原因か!?)

 

 あまりの衝撃に自分が透火を鉄華団に引き入れたようなものだという事を忘れかけ、それを思い出した禍月は、若干の後悔と共に今後の方針に頭を悩ませるのであった……




さらば~、原作(設定)よ~
生まれし船は~、宇宙戦艦……ヤ~マ~ト~♪

……という訳で、ついに完成しました空白期の閑話。
あの時から延々と作業を続け、魔改造の末に誕生したのは……

最早存在そのものがタブーな火力インフレ待った無しの戦艦デシタ(白目)

なお、性能や武装ネタとしては2199版以降を参考にしているので……例のバリアーシステムも当然あります!

ちなみに戦闘の結果ですが……
僚艦を先制攻撃で潰したヤマトは、旗艦ヴァゼルカイルズと一騎討ち状態になった後、正面から敵艦と撃ち合う砲撃戦になるものの……バリアーと神業的な回避(禍月の判断)で砲撃を避けながら敵艦の後方に回り込み、エンジンと主砲の砲座を潰して戦闘続行不能にさせ……見事、勝利を掴みました。

なお、敵の僚艦は主砲を撃ち込まれた3艦が轟沈……
鉄華団側の被害は、言うまでもなくゼロですw

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