【本編完結済み】寝落ちしたらモビルアーマーになってた件 ~鉄華団に「厄災の天使」が味方したようです~   作:睦月透火

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今回から、前書きの担当をメリビットさんにお願いしました。
本編の彼女とは違い、私と同じく史実を知った状態で語って貰って居ます。

幸運が重なり鉄華団へと入団したセファー……
待ち構える「史実通りの最後(バッドエンド)」彼らを救うべく奔走するセファー。
そんな中、刻一刻と迫るのはタービンズ壊滅のタイムリミットだった。

セファーは己の力を振り絞り、必死に対策を講じていく……


第5話 私怨を阻む堕天使ってなんか格好良くない?

 ……ま、間に合った……と思う……

 ライド君の乗り換えイベントの後にはギャラルホルン(イオク・クジャン)が容疑をでっち上げる胸糞悪いシナリオ「タービンズへの強制捜査(八つ当たり)」が待ち構えている

 逆転の手が間に合わなければタービンズの壊滅は必至……もしそうなったら鉄華団は、完全に後戻り出来なくなる(史実通りの最後を迎える)しかない

 

 ……だから私は手を尽くす……私だって、絶対に名瀬さん達を見捨てたくないもの! 

 

 セファーは自身の全てを使って、救済手段の準備を整える……手にした設計図もその一つであった

 

「ヤマギ兄ぃ! おやっさん! 機体の最終調整を手伝って! 

 それと誰か、テイワズに行ってるミカ兄ぃ達にも連絡をお願い!」

 

 手空きの整備員達に次々と指示を送り、セファーはある機体の最終チェックを急ぐ

 あとは奴の手を覆す為の証拠……本来なら誰も持っていないはずの情報だが、史実通りの未来の情報なら私は既に手にしている……残りは時間との勝負、これに間に合わなければ道は潰えてしまう

 

 セファーは焦る心を押さえ込みながら自らも作業を進めた

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 それから程なくして、タービンズへの一斉捜査が始まった事がテイワズに伝わる

 マクマードは腑に落ちない名瀬の雲隠れに懐疑心を持つが、そこへ三日月はセファーから持たされた情報を指示通りにマクマードへと伝えた

 理由を問うマクマードにハッシュが資料を手渡した後、三日月は予定通りの伝言(セファーの言葉)をマクマードに告げた

 

「! ……くっ、ふはははははは!!」

 

 マクマードは一瞬だけ驚いた表情を見せたるが、少しの沈黙の後に突然笑い出す

 情報提供者の伝言を口にした三日月、その言葉にマクマードは情報提供者の正体(セファーという少女)に気付いたからだ

 

 マクマードの突然の爆笑に、三日月と一緒に来ていたアトラと護衛のハッシュはビックリするが、三日月だけはその光景に口の端を少しだけ釣り上げた

 

 渡された資料はテイワズのある下部組織を率いる人物の情報、しかも本人に近しい者でなければ知り得ない情報が多分に含まれている……同じテイワズ傘下とはいえ、直接会う機会の少ない鉄華団が、何故コイツの情報をココまで知り尽くしているのか……マクマードは思案するがすぐに諦めた

 渡された資料……それは情報戦では絶対に敵わないという証拠でもあったからだ

 

 そしてマクマードは、部屋を出る三日月達の背中に声を掛けていた

 

「なぁ、三日月よ……この情報をお前に渡した奴に、一つ聞いといてくれないか? 

『アンタは何者だ?』ってな?」

 

 三日月はその問いの意味をよく分からなかったが『分かった』とだけ応えて部屋を出ていった

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 セファーは全ての準備を終えて事務所へと走る

 飛び込んだそこではメリビットに制止され言葉を荒げながらも、兄貴分である名瀬の救援に向かおうとしていた兄オルガが居た

 

「分かってるよ、んな事は!!」

 

「いーえ、兄さんはちっとも分かってません!!」

 

「セ、セファーちゃん……?」

 

「セファー……お前まで!?」

 

 メリビットだけでなく年の離れた義妹であるセファーにも止められ、さらに怒気を増すオルガ

 だがしかし、セファーは構わず捲し立てる

 

「今、兄さんが無策のまま動けば鉄華団も間違いなくギャラルホルンに潰されます! それにこのまま行っても名瀬さん達は絶対に助かりません! それにマクマードさんも「知らぬ存ぜぬ」だったんでしょ? そりゃ表向きに手が出せない事くらい兄さんだって知ってますよね!?」

 

 オルガは改めて口に出され、悔しさをその拳に……表情に滲ませている

 確かに、間に合わなければ兄貴は死ぬ、たとえ死ななくても、違法組織のタービンズを擁護したとなれば鉄華団の立場はその瞬間絶望の底に落ち、テイワズにも多大な迷惑を掛けてしまう、それは先だってのマクマードとの約束と信頼を裏切る行為……それだけは絶対にできない

 

 完全に言い返せなくなったオルガ、しかしセファーの口から次の言葉は常軌を逸したものだった

 

「……だから私に出撃の許可を下さい! そうすれば万事上手く行きます! その為の準備も整いました、もう既に事は始まっているんです……時間がありません、後は兄さん次第……名瀬さん達を助ける為に……私の計画に乗って下さい!!」

 

 普段からは想像もしてなかった言葉……いつもなら溜め息を吐くメリビットも、さすがにこの状況で何を言っているのか理解に苦しんだ

 逆ギレの如く捲し立てられていたオルガも、その後に続いた義妹の異常な言動に冷静さを取り戻し、何をバカな……とソファーへと座って頭をかく

 しかし、妹は引き下がる気配すらない……むしろこれさえやれば確実だと前から度々見せていたこの先の未来を全て知っているという眼だった

 

 以前からセファーは「その目つき」を布石のように見せていた、そしてその時の結果は言うまでもなく、確定した未来を一片たりとも間違えずに言い当てていた……そして今も、兄貴の危機を私なら救えると……この作戦なら絶対に救えると豪語している……「そんな上手くことが運ぶのか?」という当たり前の疑いと、「これまでの出来事から来る妹への厚い信頼」の間で、オルガはしばらく葛藤する……

 

「……セファー、お前の計画が上手く行ったら、その後どうなるんだ……?」

 

「団長?! 正気ですか?!」

 

 メリビットはオルガの言葉に信じられないと驚愕した

 絞り出すようなオルガの声、しかしセファーは堂々と行ってのけた

 

名瀬さん達(タービンズ)は助かり、ギャラルホルンの連中(イオク・クジャン)は手痛い失態で苦汁を舐め、そして名瀬さんを嵌めた(ジャスレイ)にはキツイお灸が据えられます!! 『これは確定した未来です』!! 

 

 まるでキメ台詞のような一言が最後に放たれる……いや、実際にソレは本当にキメ台詞だった

 オルガを始め、鉄華団の主要メンバーは、このセリフを添えられた後の未来を言い当ててしまうセファーを何度も何度も見たのだから……

 

「……具体的にどうすりゃいい?」

 

 セファーはその言葉に満面の笑みを浮かべ、手短ながら段取りを兄と始めてしまう

 メリビットは心の中で遂に兄妹がイカれたと嘆き、後から様子を見に来たシノと昭弘は、怪しい打ち合わせの様子に首を傾げるのであった

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 時と場所は変わって強襲装甲艦(ハンマーヘッド)の艦橋……そこで名瀬は鉄華団の事を考えていた

 

「アイツらには悪いが、これは俺なりのけじめって奴さ」

 

「馬鹿だねぇ……でも、そんなアンタも格好良いって思っちまったアタシも馬鹿だよ……」

 

 名瀬はアミダの問いにおどけた笑いで返し、迫りくるアリアンロッド艦隊に向けて停船要請の信号弾を発射する

 しかし、停船は愚か何の反応もしないまま、アリアンロッド艦隊の周辺にMS部隊の反応が次々と増えていく

 

「艦隊の前面に新たなMSの反応多数……?」

 

「……何をする気だ、奴ら?」

 

 それはダインスレイヴ……厄祭戦にて使用され、その余りの威力故に禁止兵器として指定を受けた禁断の武装を持ったグレイズの大部隊であった

 

『ダインスレイヴ隊、放てっ!!』

 

 艦隊の指揮を取るイオク・クジャンの声で、今、まさに放たれようとする禁断の槍……

 だが、その射線上に不思議な光と共に謎の反応が現れ、その場にいる全ての者が思考を止めてしまった

 

 オレンジ色に光る鏡のような形が象られ、そこから現れたのは1体のMSだった……背には2対の巨大な翼、それは光の粒子を絶えず放ち、両手には巨大な盾と槍を携え、見る者を引き込む白銀の装甲に身を包み、虚空から現れたその姿はまさに白銀の鎧を纏う天使だった……

 

 この場にいる全員が、その荘厳な雰囲気を放つ1体のMSに目を奪われていた

 しかし、イオクが真っ先に正気へと戻り、言葉荒げにダインスレイヴを放てと再度命令する

 

 そして放たれる禁断の槍……その狙いは後方で撤退しているタービンズ所属の輸送艇……

 しかし、ダインスレイヴは白騎士の横を掠めた瞬間、全て爆発し虚空へと消え去ってしまう

 

「なっ……バカな?!」

 

 イオクは狼狽え、対岸の名瀬はゾッとしていた

 ハンマーヘッドに送られてきたのは先ほど発射された物の詳細と、その予測目標への弾道データ……

 

「……ダインスレイヴを持ち出し、撤退する非戦闘員を狙うたぁ……汚ねぇ真似を!!」

 

「名瀬! 白い奴が動いた!!」

 

 アミダからの通信に反応し、顔を上げて名瀬は突如現れた白騎士を見やった

 白騎士は神々しく翼を展開し、アリアンロッド艦隊へと突撃していく……

 

「えぇい……たかがMS1機で、この艦隊に歯向かうか?! 全艦、攻撃開始! 蹂躙せよ!!」

 

 イオクの号令に艦隊が次々と動き出し、迫りくる堕天使を相手に戦端を開いていった

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『アリアンロッド艦隊にたった1機で挑む?!』

 

 正気とは思えない馬鹿げた作戦、義妹に提案された作戦の1手に、オルガは目を剥いた

 しかし、当の提案者……妹セファーの顔に不安の色は微塵もない、むしろドヤ顔で兄を見上げている

 

『……そう、そしてこの子が私の最高傑作!』

 

 巨大な2対の翼で身を包んだ白いMS……その手には身の丈に迫る巨大な槍の様な武器を手にし、もう片方には同じく巨大な盾を手にしていた

 

『……お、おい……お前、いつの間にこんな物を?』

 

 オルガは驚愕していた、時々馬鹿げた言動をする妹ながらこれはさすがにチート級だと目を疑う

 彼女はこの短期間で、1からMSを製造していた……しかもこの機体は今まで見たどの機体ともまるで違う……悪魔の如き異様を持つガンダム・フレームでもなく、むしろ天使として作り出されたMAのような雰囲気さえ醸し出している

 

『万能型試作MSザドキエル……この理不尽な世界に喧嘩(ケンカ)を売る為に、300年前の過去から転生した「天使の名を冠するモビルスーツ(堕天使)」です』

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「ザドキエル……ハシュマルと対を成す主天使の長、正義と慈悲(じひ)を司る天使……」

 

 そのMSを操るのは、鉄華団の前に敗れた厄災の天使(ハシュマル)の遺産……

 しかし、その体はMSの中には無い……彼女は火星の大地に立つ、鉄華団本部の屋上で空を見上げながら呟いていた

 

「……その威光で、我らの友に救済を……!」

 




はい、遂にオリジナル機体が登場しました!!

ガンダムを知っている方は登場の仕方でお察しの方も多いでしょうが、詳細な情報は別に書きますので別途お楽しみに。
天使の名を冠する唯一のモビルスーツ、原作ブレイクするならこの名前しか相応しいものは無いと思います!(震え声)

さて次回は「慈悲の天使」が「無慈悲」に大暴れします(ぇ
まず無能なペシャン公に「天罰」を受けさせなきゃねぇ……(#゚Д゚)

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