天使が白ウォズに恋をした〈完結済〉   作:TAMZET

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これまでのあらすじ

白ウォズに恋心を抱いてしまった薬師寺さあやは、彼に思いの丈を告げる。親友達の妨害もあったものの、彼女は見事白ウォズから了承の返事をもらい、晴れて彼氏彼女の関係となるのだった。


第三話:天使は図書館で語り合う

2019年3月30日(日) 14:25

 

 

ウォズとのお付き合いを始めてからはや1日。

私は今、はぐくみ市内の図書館に併設されたカフェスペースにいる。もちろん、ウォズも一緒である。

徹夜でデートのプランを考えた結果、最終的にたどり着いた答えは、図書館だった。ウォズも私の案を快諾し、いくつかの本を借りた私達は、図書館内のカフェスペースでそれらの内容について語り合っている。

ウォズの選ぶ本はどれも難解で、私は話を聞いているだけで精一杯だ。そんな私に合わせて、彼はゆっくりと本の内容を説明してくれる。

まるで先生が生徒に教えるように、ゆっくり、丁寧に。

 

「と、このようにタイムトンネルは時間だけでなく、複数の次元、世界を多元的につなぐものである。それらを研究すれば、いずれ我々は第2第3の地球を発見する事が出来るようになるだろう。もっとも、これはまだ私の仮説に過ぎないんだけどね」

 

彼の解説に、私は拍手で応えた。

お世辞ではない、本当に心からの感心だった。

 

「ご静聴ありがとう」

 

ウォズも、まんざらではなさそうだ。

安堵のため息を着くウォズに、私は頭の中でまとめた感想を語る。

 

「とっても希望のある話だったと思います!タイムマシンが見つけた、さらに先のある未来の可能性。まだ理解が浅くて、ついていくのがやっとでしたけど」

 

「私だって全てを理解しているわけじゃない。アカデミアでの専攻がそれだっただけさ。この話についてこれただけでも、十分さあやは凄いよ。それに、知見の広さでは、私とて君には一歩譲らざるをえない」

 

「いえいえ、私なんてまだまだ浅学です。それに、誰も知らない変な事ばかり知っていても、肝心な時に役に立ちませんから」

 

私の返答に、ウォズは不満そうに眉を歪めた。

何か気に触る事を言ってしまっただろうか。

どこか鬼気迫るその表情に、私の心はキュッと締め付けられる。

 

「さあや、雑学は思いもよらないところで生きるものだ。もし必要な知識だけを蓄える事のみを推奨する社会が出来上がってしまえば……もしかするとオタマジャクシがナマズの子供だと信じる大人が生まれてもおかしくはないだろう」

 

ウォズの例えに私は目を丸くする。

彼の話の内容を精査し、それが冗談だとわかった時、私は安堵に頬を緩ませていた。

ウォズも、釣られて頬を歪ませる。

 

「ふふっ、ウォズも冗談を言うんですね」

 

「私は元々ユーモアとウィットに飛んだ人間さ。これからも、披露する機会を虎視眈々と狙うとしよう」

 

「でも、本当に面白い例えでした。今度職場体験で使ってみようかなぁ」

 

「職場体験か。この時代の子供は、そんなに早くからそういう事を頑張っているのかい」

 

「まだまだ足りないくらいです。お医者さんになるには、もっと頑張らないと」

 

お医者さんと言う言葉に、ウォズの眉がぴくりと動いた。開きかけていた本を閉じ、彼は真っ直ぐ私の目を覗き込む。

暗い目……その奥には、深い孤独と悲しみが宿っているような気がした。

 

「医者か。私のいた未来でも、そういう人種はいたよ。彼らと関わることは、あまりしたくなかったものだがね」

 

「あら、どうしてですか?」

 

ウォズは一つため息をつき、語り出す。

 

「医者というのはね、いつの時代も、自分の専門能力を外に出したがらないんだ。外に出さない方が金になるからね。それでもって、自分の縄張りに厳しい……頭のいい猿の群れといった方が正しいかな」

 

「でも、患者さんにしっかりと向き合って、その人達を助けるお医者さんもいるのでしょう?」

 

「私の知るそういった人々は……苦しんでいたよ。私はそんな彼らを救うためにも、仮面ライダーになったところはあったんだ」

 

ウォズは身を乗り出し、私の手を握る。その手の冷たさに、私の心臓がドキッと跳ねる。

けれど、抵抗はしない。

冷たい手は、火照りきった私には丁度良い冷却剤になるからだ。

 

「さあやには彼らのように傷ついて欲しくない。自分の信念を通すために身体も心も壊し、夢破れていった彼らのようには」

 

「……ウォズさんの気持ちは、わかります」

 

その時の私の目は、きっと余程力強かったのだろう。ウォズはやれやれと首を振ると、私の手の上から、己の手を退けた。

 

「分かっては、くれないようだね」

 

「もし医術の世界がそのような場所なのだとしても……私は、目の前の患者さんにしっかりと向き合える医師でありたいと思います」

 

「……さあやなら、そう言うと思ったよ」

 

どこが呆れたような様子で、ウォズは笑った。

なんだか、少し腹立たしい。

今度は、私が彼の手を取る番だった。

 

「ウォズにも、何か夢があったのでしょう?教えてください」

 

「いや、しかし私は……」

 

「私だけ話してズルいです。私は、あなたの夢にも興味があります!」

 

私に手をこねくり回され、彼はついにもう片方の手で降参の意を示した。

私に手を弄られるのが、余程恥ずかしかったのだろう。

 

「私は、仲間が欲しかったんだ」

 

「それって、一緒に研究をする仲間って事ですか?」

 

「いや、文字通りの仲間さ。私は昔から、何をするにも1人だった。それで全て事足りてしまっていたからね。だからこそ、こうしてさあやと一緒に居られる事は、幸せなのさ」

 

「…………?」

 

その言葉の中によく分からない寂寥を感じ、私はそれ以上聞く事をしなかった。

やがて日も暮れ、私達は図書館を後にした。

夕闇を反射する窓ガラスは、まるでウォズさんの瞳の色を拡大したようだった。

 

 

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2019年4月3日(木) 23:00

深夜。月は山の際を超え、真っ暗な夜空の中で爛々と輝いている。

普通の中学生であれば床に就いている時間帯……そんな時間にも関わらず、輝木ほまれは、DVDデッキの前に座っていた。

リモコンの再生ボタンを押すと、暗かった画面に光が灯る。映し出されるのは、仮面ライダージオウEP14だ。

 

「これが仮面ライダーかぁ……えみるは面白いっていうけど、なんかいまいちピンとこないのよね」

 

とは言いつつも、ソウゴやゲイツ達の活躍を、ほまれは時に笑い、時に緊張しながら観続けた。

やがて、EP17まで行ったところで、彼女の体力は底をついた。身体は床に迎えられ、目蓋がゆっくりと落ちる。

 

「うー、ダメだ。今日は寝なきゃ、明日の練習に響くからなぁ……」

 

さて、床に就いたはいいものの、なかなか寝付けない。

さあやのことが気になるのだ。

彼女はウォズと言った……記憶が正しければ、その名前は、仮面ライダージオウに登場するキャラクターの名前と同じなのだ。

第1話からそのウォズなる人物は登場しているが、喫茶店で見たあの人物とは、どうも結びつかない。

 

「うーん、やっぱりあと5話……いや、3話だけ観よう!」

 

次の話が始まったら、もっと面白くなるかもしれない。何よりさあやへの応援の気持ちが、彼女の心を突き動かした。

 

(これもさあやの恋路のため!絶対に全部観てやる!)

 

と、そんなことを繰り返すうちに、朝が開けた。

彼女の目の下のクマはひどくなっていたが、その目には確かに、強い達成の快感が込められていた。

 

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2019年4月4日(金) 16:20

 

 

学校が終わり、一同は、はなの家に集まっていた。皆それぞれにお菓子を持ち寄り、部屋着に着替えて駄弁っている。

4人が集まり談笑するその様子は、さながらお泊まり会といった風情であった。だが、その中にはさあやの姿はない。

目の下を墨塗りしたほまれに、えみるが驚愕の表情を浮かべる。

 

「えーっ!?じゃあ、ほまれは昨日で仮面ライダージオウ全部観終わってしまったのですか?」

 

「睡眠時間3時間ってところかな……っていうか、白ウォズ悪役だったじゃん。分かってたら、あの時さあやを力ずくでも止めたのに」

 

「それは前に説明したのです!!それより、ほまれ……本当に大丈夫なのですか?フラフラのクタクタなのです」

 

「今日は一日中寝不足って感じだったよね。はい、今日のノート。まとめておきましたよぉ〜」

 

「ありがとうねぇ。わしももう歳だねぇ。もう二度とこんな無茶しないよぉ」

 

はなとほまれのやりとりは、まるでおじいさんとおばあさんのようだ。

動きも若干年季が入っている。

えみるは、そんな2人の様子を呆れた様子で眺めている。

 

「まぁ、全部って言っても、前にえみるに貸してもらった26話までだけどね。ちょうど、ゲイツさんがゲイツリバイブになったところまで」

 

「あー、もったいない……あそこからが面白いのです!ゲイツリバイブとジオウⅡの死闘、ゲイツに帰ってきて欲しいソウゴと、ツクヨミの覚悟を背負って戦うゲイツ、そしてその影で暗躍する白ウォズと黒ウォズ……」

 

えみるはそこまで言うと、何かに耐えきれなかったのか、ビューティハリーの出口へと駆け出した。

 

「えみる、どこ行くの?」

 

呼び止めたはなに、えみるはグッとガッツポーズをしてみせる。五代雄介がよくやるあのポーズである。

 

「私が録画しているディスクを持ってくるのです。それがあれば、27話〜28話まで観ることができるのです!」

 

言うや否や、凄まじい速度で駆け出すえみる。はなの制止の言葉も、最早彼女の耳には届かないようだ。

えみるの去った部屋には、再び静寂が戻った。

静かな部屋に、はなの呟きが波紋を作る。

 

「うー、やっぱりえみる、そういうの好きだなぁ」

 

「私と出会った時も、プリキュアに変装していましたから。キュアエミール……なかなかのクオリティでした」

 

「私も時々似たようなのは観るけど、うーん、えみるには負けるなぁ」

 

彼女達の会話を背に、ほまれは、寝ぼけながらも考える。

さあやもえみるも、なんでそういうのが好きなんだろう。

ヒーローと怪人が戦い、ヒーローがかっこよく怪人を倒す。ありふれた構図だし、それなら夜のドラマを見ていた方が面白いと思う。

しかも、さあやが好きになったのはあの白ウォズだ。関係が深くなればなるほど、ソウゴさんにもゲイツさんにも迷惑がかかる。それを分からないさあやじゃないはずなのに。

でも、昨日のジオウは徹夜をしてしまうくらいには面白かった。知り合いが出演しているという理由だけじゃない、心を引きつける何かが、あそこにはあったのだ。

 

「前にえみるが言っていたことには……確か、自分もそういうヒーローになりたいということでした」

 

「ヒーローになりたいかぁ。わかるよその気持ち。私もかっこいい大人になりたいって思って頑張ってるし。けど、それとはなんか少し違う気がするけど。ほまれはどう思う?」

 

「ヒーローでしょ?そんなの、なりたくてなるもんじゃないと思うけどなぁ」

 

ほまれは、スケート時代を思い出す。

あの時は、みんなの期待に応えながら、とにかくスケートを楽しんでいた。だからこそ、足を挫いた時、落胆した。

ヒーローは本当は、負けたら見向きもされなくなる。その辛さは、よく知っている。

 

「えみるはルールーの言った通りだとして、なんでさあやは好きなんだろう」

 

「それはさあや本人に聞いた方がいいのでは……と、さあやはどこですか?」

 

「あー、今日またデートだって。あの例のウォズって人と、夏祭り」

 

はなのその一言が、ほまれの瞳に火をつけた。

 

「はな?なんでそれを黙ってたのかなぁ」

 

「い、いやぁ。ほら、前にさあやの告白邪魔した時に、ドリルで貫かれそうになったじゃん?アレで反省したって言うかぁ?ほまれも、今日は撃沈してたみたいだったし」

 

「そんなことでなんとする!」

 

ほまれの一括に、はなの背がぴょんと正される。

 

「行きますよさあやのデート応援!ほら、例の服に着替えて!善は急げ善は急げ!」

 

「それ多分善になってないよぉ〜」

 

文句を言いつつも、はなは黒服に着替え始めた。

 

「いざ、さあやの恋を観察するための警察24時!出動だーっ!!」

 

「はぁい……」

 

かくして、メンバーを半分に減らした恋愛警察は出動した。

その後、全力でダッシュしてきたえみるが、ルールーしかいないはなの自室を観て絶望するのは、およそ30分後の話である。

 

 

____________________________

2019年4月5日(金) 18:10

 

 

ウォズとさあやは、春の桜祭りにいた。

日も陰り、辺りは夕闇に包まれている。そんな闇を打ち消すかのように、祭囃子の音と屋台のおっちゃん達の呼び込みが辺りを賑わし、小道は独特の空気を形成している。

ウォズはいつもの格好だが、さあやは青を基調とした浴衣姿だ。青い生地の中には無数の蝶々が舞い、背の低い彼女を少しだけ大人に見せている。

けっこうな人混みの中を、2人は手を繋ぎ、ゆっくりと歩いてゆく。

 

その様子を伺っている2人の黒服の姿があった。彼女達はそれぞれ別の地点から、彼女たちを監視する。

 

「こちらほまれ、対象Wは対象Sと手を繋いでいる模様。現時点で既に警戒レベル3に達していると推察されます。どうぞ」

 

「はいはい。後ろから見てる限りだとさあや……対象Sの髪の結び方が気合入ってると思います。どうぞ」

 

「了解、以後監視を続けるように。どうぞ」

 

「はーい」

 

無線……ではなくスマホの電気を消し、ほまれはたこ焼きの刺さった串を片手に、手を繋ぐ2人の様子を観察する。

黄色いサングラスから覗くその目に映るは、半分心配半分羨望といったところか。

 

EP26を観る限り、白ウォズはゲイツさんを王にしたがっている。もしここから先の話でそれが成功していれば、きっと黒ウォズではなく彼がゲイツさんを支えていく事になるのだろう。

だが、テレビで見た白ウォズのキャラクターを考えると、素直にあの2人の付き合いを喜ぶことはできない。

 

「っと、いけない。監視に集中しないと」

 

ある屋台にて、2人は射的を始めていた。

さあやの狙いは良好だが、的の中央を狙っているのは悪手だ。おそらく後ろに重しが付いていることを知らないのだろう。

一方の白ウォズは、彼女の背後で何やらブツブツとつぶやいている……弾に細工でもしているのだろうか。

警戒しなければ。

 

「はな、対象Wに動きあり。近づいて監視を強化されたし」

 

「はーい。あ、おじさん!たこ焼き、2つ……いや、3つお願い!」

 

「ちょっと!はな?」

 

「あ、はいはい!大丈夫だよー」

 

ダメだ、はなは頼りにならない。

 

(こうなったら私が……)

 

双眼鏡の先を射的屋台の方に戻すと、そこでは小さな騒ぎが起きていた。

 

ほまれは群衆に隠れ、騒ぎの内容に耳をそばだてる。どうやら、白ウォズが何かしらの景品を落としたらしい。

 

「ちょっとちょっとお兄さん。勘弁してよ。あのね、あのクマが落ちるわけないでしょ」

 

「しかし、私の放った弾はあのクマさんに当たり、あのクマさんは落下した。君たちが定めたゲームのルールに従うなら、あの景品は私のものだ」

 

頑なに引き下がらない白ウォズの横で、さあやは彼の袖を引っ張っている。

辺りには人も集まってきており、その中には明らかに一般人ではない、肩口から色とりどりの傷を覗かせた人々がやってきていた。

 

「ウォズ……もういいですから。行きましょう?」

 

「しかしだね」

 

「おい兄ちゃん、ちょっとこっち来な」

 

おじさんに胸ぐらを掴まれ、白ウォズの体勢が崩れる。

さあやを助けるなら、今しかない!

 

「さあや!私と来て!」

 

「え……ちょっ!?」

 

騒ぎの中、群衆の隙間を抜け、ほまれはさあやの手を掴んで走り出す。黒と青の小さな身体は、闇蠢く森の中に消えていくのだった。




第三話をお読みくださり、ありがとうございます。

意外と相性の良かった白ウォズとさあやさん。一方、ほまれさんは仮面ライダージオウにどハマりし、白ウォズの正体を知ってしまいましたね。話がなかなか動かない第三話ですが、次回から本格的に話が動くので、ご期待ください。

次回の投稿は、3日後になります。
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