天使が白ウォズに恋をした〈完結済〉   作:TAMZET

4 / 7
これまでのあらすじ

白ウォズに告白し、恋人関係となった薬師寺さあや。彼とのデートを重ねるうち、さあやは彼との距離をさらに縮めてゆく。一方、仮面ライダージオウを一気見し、白ウォズの正体を詳しく知ったほまれは、さあやを彼から救うべく偵察行動を開始する。
春祭りの日……偵察行動をしていたほまれは、ひょんな事からさあやを連れて逃げる事になってしまう。


第四話:天使と星の衝突

4月15日 18:25

黒服に手を引かれながら、私は森を駆ける。真っ暗な森の中で唯一私を導くその手の感触は、私のよく知っている人のものだ。

 

ウォズはどうなっただろうか。

気になるが、今はまだ戻れない。

やがて、黒服は森の奥で走るのをやめた。

 

「はぁ、はぁ……ありがとう」

 

「いいんですよ。それじゃ、私はこれで」

 

「待ってよ」

 

今度は、私が彼女の手をつかむ番だった。

 

「ほまれなんでしょ?」

 

「さあ、何のことだか」

 

俊敏な動きで逃げようとする黒服、だが、私もプリキュアの端くれ……動体視力には自信がある。

サングラスとキャスケットの下から、ばつが悪そうなほまれの顔が出てきた。

 

「やっぱり」

 

「あーもう、作戦失敗!私こういうの向いてないのかなぁ……」

 

「ほまれ?私怒ってるよ」

 

「分かってるって。でも、やっぱり心配なんだよ。白ウォズって悪役だから……」

 

ヒラヒラと手を振るほまれの頬を私は思い切り打った。

ピシャリと鋭い音がして、ほまれの頬が真っ赤に染まる。

 

「怒ってるよ」

 

手加減はしなかった。

ほまれは、ほおを抑え、静かに俯く。

 

「私がウォズを好きになっちゃダメ?私が誰かを好きになるのが、そんなに気に入らない?心配なんていらないから……しばらく話しかけないで」

 

私は踵を返す。

しかし、ほまれは私の手を掴み、引きとめた。その手の力の、なんと強いことか。

 

「そんなの、ダメに決まってるじゃん!」

 

ほまれの剣幕に押されかける私。その目には確かな決意と覚悟があった。

けれど、覚悟なら私にもある。

眉毛をキュッと釣り上げ、私は彼女を睨み返す。

 

「そうやってワガママ言って、ソウゴさん達に迷惑かけるかもしれないって……さあやなら分かるでしょ?」

 

「私ならって何?ワガママって何?ほまれの横でいい子にしてれば、それで私なの?」

 

「そんな事言ってないでしょ。私はたださあやが心配で……」

 

「心配?私に好きな人ができるのがそんなに心配?自分は」

 

ほまれ、方にズンズンと歩み、和服の襟をつかむ。手が飛んでくる。

そう思い反射的に目を閉じる。

 

「…………ッ!!」

 

だが、張り手はこなかった。ほまれの手を振りほどき、私は歩き出す。

息を荒くして、ほまれに背を向けて。

 

「さあや!」

 

ほまれを置いて、私は進む。

振り返りたい衝動を抑えて、進む。

 

「……ほまれのバカ」

 

何で、私の邪魔をするんだろう。どうしてついてくるんだろう。私がウォズさんと一緒にいることが、そんなにダメな事なのだろうか。

 

「ほまれのバカ……ほまれのバカ……」

 

下駄をどこかに放り、裸足で歩き出す。

悪役を好きになるなんて、ダメな事なのだ。ほまれには分かっているんだ。

けれど、私は、分かりたくない。

 

射的屋台に戻ってくると、人だかりは無くなっていた。ウォズの腕には、先ほど落とした景品のぬいぐるみが抱かれている。

ウォズは私を見るなり、「大丈夫かい」と声をかけてくれた。

私は、「大丈夫」と微笑みを返してみせる。

 

「さあや、履物はどうしたんだい?」

 

「走ってる時に、落っことしてしまいました。結構、急いでましたから」

 

「なら、一緒に探しに行こうじゃないか。どれどれ、あの森のあたりだろう?」

 

私は、慌ててウォズの袖を引っ張る。

そっちにはほまれがいるのだ。

 

「いいの。深いところに、落としてしまいましたから」

 

「君がいいというならそれでいいが……ふむ、しかし」

 

「私なら大丈夫ですから。それより、お祭りの続き、楽しみましょう?」

 

ウォズさんは納得いかない表情だが、ともかくお祭りを進む。さっきまでと違い、お祭りの笛の音が遠くに聞こえる。

砂利道が、足の裏を傷つける。

酷く痛い。

さっき走った時に、木のトゲでも刺さってしまったのだろうか……そう考えるうち、私は心細さに襲われる。

 

そのうち、ウォズとの距離が離れていく。手をつかもうとするが、それは何度もすり抜け。やがて、手が届かなくなる。

 

「ウォズさん……」

 

「さあや、すまなかったね。私が君に合わせよう」

 

ウォズは足を止める。

しかし、私は前に進めない。

足が痛いのはそうだ。

けれど、それ以上に心が痛いのだ。

 

「どうしよう。私、ダメな事してる」

 

「どういう意味だい?」

 

「ウォズはソウゴさんの敵で……私はソウゴさん達の味方です。もし戦うことになれば、私はウォズとも戦うことになるかもしれない」

 

ウォズは、軽くため息をついた。

まるで無感情なその表情に何が込められているのか分からなくて、私はそっぽを向いた。

 

「まさに、その通りだね」

 

「でも、それでも、私……ウォズと一緒にいたいの」

 

私は心の内から湧き上がる情動のままに、ウォズに抱きついた。

彼は小さな身体を抱きとめ、機械のように口角を上げて笑う。

 

「さあやは、優しいね」

 

「優しくない!私は……ちっとも、優しくないです」

 

そう、私はちっとも優しくない。ちょっと物を知っているだけの中学生でしかない。友達とも上手く付き合えない不器用な女の子。

けれど、ウォズはそんな私の前に現れた救世主なんだ。

私は、彼と一緒にいたいんだ。

 

 

___________________________________________________________

4月5日 19:05

 

 

屋台群の外に来ていたはなは、ほまれを追ってきたえみる達と合流していた。

肝心のほまれはおらず、えみるは残念そうにしている。

はなはたこ焼きを頬張りながら、祭囃子の音に合わせてステップを踏んでいる。

 

「あー、たこ焼き美味しかったよ!」

 

「はな先輩だけズルイのです!私とルールーは今来たばかりなのです!」

 

「そういうと思って、たこ焼き人数分、買ってきましたよっ!」

 

「さすがはな、気配りが上手です」

 

2人がたこ焼きを頬張っているところに、ほまれが姿をあらわした。

頬は赤く腫れており、少しだけ俯いている。

 

「おっ、ほまれさんもお仕事お疲れ様です。お夜食いかがですかい?」

 

「いらない。お腹すいてないし」

 

「あー、うん。分かりやしたっ」

 

「それよりも!ジオウの27話、28話、29話を持ってきたのです!あさっての30話に備えて、帰って一緒に……」

 

えみるの言葉は、途中ではなに遮られた。

ほまれの表情を見て、えみるも察したのか、口をつぐむ。

ほまれは祭りの喧騒を背に、暗い街へと歩き出した。

 

「私、今日は帰る。みんなゴメンね」

 

誰も声をかけられない中、はなだけが、一歩を踏み出した。

 

「何かあったの?」

 

「別に。ちょっと、ほっぺが痛くてさ」

 

ほまれは赤くなった頬を押さえながら、1人、暗い街の中に消えていった。

 

___________________________________________________________

4月7日 8:00

 

 

あれから、2日が経った。

私達は、なんでもない歩道を歩いている。

山を右に背負った、早朝の小道……小鳥のさえずりが心地よい。

今日は仮面ライダージオウEP30の放送の日だ。

もうテレビは観ていない。そんな事をしなくても、ウォズは隣にいるのだから。

毎日が、かけがえない幸せに彩られている。ほまれのことも、許してしまうくらいに。

 

「なんだか、夢みたいですね。ほんの少し前までは、ウォズもソウゴさんもゲイツさんも、テレビの向こう側のヒーローだったのに。今ではこんなに近くにいるなんて」

 

「プリキュア……私も君たちの存在は知っていたよ。実際に会う事ができるとは、思わなかったけれどね」

 

「会うだけじゃなくて、こうして好きになって、一緒に手を繋いで。私、多分今が一番、世界で幸せだと思います。ヒーローの隣で、その人を助けられるんだから」

 

「私はヒーローではなく、どちらかと言うとヒーローを支える立場だけれどね」

 

「そうでしたね」

 

「ふふっ」と、私はわざとらしく笑ってみせる。

ウォズも笑みを返してくれる。

少し高いところから来る笑みがたまらなく嬉しくて、私は少しだけウォズとの距離を詰める。

 

「君といると、本当に心が落ち着く。私の人生、仲間を作ろうと思った事は無かったが……時には気まぐれに身を任せてみるのもいいものだね」

 

「その仲間を作りたいと思ったのは、どうしてですか?」

 

「偶然としか言いようがないな。君にイタズラを仕掛けてみたら、それが予想以上に効果を発揮したってだけさ」

 

「イタズラされた覚えがありませんよ。むしろ、されてみたいくらい」

 

「じゃあ、イタズラして差し上げましょうか、天使様?」

 

ウォズは少し意地悪に距離を離す。

私はそれを詰める。

私達の身体はどんどん歩道の右に寄っていく。ウォズが用水路の端に足をかけ、転びそうになった。

傾いた身体を私が頑張って引っ張り起こすと、白ウォズの手の中に、キラリと光る宝石のようなものがあった。

 

「きれい……」

 

「これはね、絆石といってね。どれだけ距離が離れていても、互いに引き合う性質を持っているんだ」

 

「なんだか、ロマンチックですね。あまり科学的ではありませんけど」

 

絆石は、右側が赤に、左側が青に染まっている。私がじっくりと覗き込んでいると、ウォズはそれを半分に割った。

 

「割っちゃうんですか?」

 

「この石は一度割る事で、近くにある個体を持ち主と認識するんだ。で、こっちの方を、君に持っておいて欲しい」

 

ウォズはそう言うと、私に青い方の石を手渡した。手のひらの石は、ウォズの持つ赤い石の方に戻ろうと動き始める。

 

「わっ!行っちゃダメ!」

 

「気をつけて持っておかないと、この石はすぐにどこかへ行ってしまうからね。もしこの石が止まる事があったら、それは石の持ち主が死んでしまった時だけだ……」

 

「死んで、しまった時?」

 

私の心の中に、少しだけ不安が生まれる。なんでウォズは、今こんな話をするんだろう。

 

「逆に言えば、この石が動く限りは、君と私のどちらもがこの世界に生きて存在していると言う事になる。この石は、その証明なんだよ」

 

「ウォズ?どうして……」

 

その真意を問いただそうとしたところで、いきなり、銃声が響き、足元に爆発が起こった。何が起こったか、分からない。

 

「きゃっ!!」

 

「誰だい?私の大切な時間を邪魔するのは」

 

ウォズさんが、殺気の籠もった視線を銃撃の飛んできた方へ向ける。

彼がタブレットを広げると、それを待っていたかのように銃の主が姿を現した。

茶色のトレンチコートに身を包んだ青年。その手には、真っ青な銃が握られている。

 

「君は確か、仮面ライダーディエンド。君は私の味方じゃなかったのかな?」

 

ディエンドは口端を歪め、銃をくるくると回転させる。

こちらに向けられた銃口からは、明らかな敵意が感じられた。

 

「そのつもりだったけど、僕は生憎泥棒でね。君のお宝が欲しいって思いを止める事は出来なかった」

 

「私の、お宝?」

 

「その通り。君が持っているそのタブレット。とても心惹かれるお宝だ」

 

そう言うや否や、男は青い銃にカードのようなものをセットする。シュンシュンと甲高い電子音を発す銃を、男は、天へと掲げた。

 

「変身」

 

『カメンライド・ディエンド』

 

小気味良い電子音と共に、彼は青い仮面をつけた戦士へと変身した。アレは、仮面ライダーディエンドだ。

 

「ウォズ、ここは……」

 

「さあや、隠れていてくれたまえ。あんな盗人程度、私1人でなんとかなるさ」

 

ウォズはタブレットを開く。

かくして、戦いが始まった。




第四話をお読み下さり、ありがとうございます。
ついに白ウォズが消える日が来てしまいました。さあやさんとほまれさんはまだ仲違いしたまま……ついに、物語は終局へと向かいます。

次回もお読みいただけると幸いです。

※Pixivにも同じものを投稿しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。