天使が白ウォズに恋をした〈完結済〉   作:TAMZET

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これまでのあらすじ

白ウォズに告白した薬師寺さあやは、彼と蜜月の時を過ごす。一方、白ウォズが悪役だと知った輝木ほまれは、さあやを白ウォズの魔の手から救うべく行動を開始するのだった。
だが、ほまれの努力はさあやを怒らせてしまい、2人は完全に仲違いをしてしまう。そんな中で迎える白ウォズ消滅の当日。訪れる不幸などつゆほども知らないさあや達の前に、仮面ライダーディエンドが姿を表す。


第五話:天使の魔法が解けた

4月7日 8:25

ディエンドは銃撃しながら、少しずつ距離を詰める。

直撃すれば昏倒必死の銃撃。雷雨の如く襲いくるそれらを、彼はタブレットが生み出す空間障壁を盾に捌く。

リロードの挟まる一瞬の隙をつき、ウォズはタブレットを開き、音声入力を開始した。

 

『仮面ライダーディエンドの銃撃は的を外れ、ウォズに掠りもしない』

 

ウォズの言葉通り、途端に、銃撃はウォズとは明後日の方向に飛ぶようになり、近くの石や民家を砕き始めた。

 

民家から悲鳴が聞こえてくる。

流石は盗人、市民の事なんてお構いなしだ。

私があの人達を助けないと。

 

私のいなくなった戦場で、二人は先ほどよりも近い距離で向かい合う。

その間隔はおよそ60m。

校庭の端から端までの長さくらいだ。

 

「なかなかやるじゃないか。だったら、確実に攻撃が当たるようにすればいい」

 

ディエンドは銃を乱射しつつ、ウォズとの距離を急速に詰めてゆく。

残像を使った、目にも止まらない高速移動だ。

 

「ウォズさん!!」

 

市民を助け出した私が戻ってきた頃には、既にその距離は20mほどにまで縮まっていた。

 

「心配しなくても大丈夫だよ、さあや」

 

ディエンドの攻撃をうまくさばきながら、ウォズは再度、タブレットに語りかける。

 

『接近して攻撃する仮面ライダーディエンドだが、横から追突してきたトラックに轢かれ、重傷を負う』

 

「何ッ!?」

 

ディエンドが反応する間もなく、突如細道から現れた猛スピードのトラックが、ディエンドを吹き飛ばした。

ディエンドはその体を反対側の田んぼの中にめり込ませていたが、やがてふらふらと起き上がってきた。

 

「ふむ、意外と元気そうじゃないか」

 

「そのタブレット、やっぱりすごいお宝だ。けれど、弱点はある……それは、現実に起きえない事象を引き起こす事は出来ないってことさ」

 

ウォズは、正解とでも言わんばかりに、ディエンドに拍手をしてみせた。

その笑みは、勝利を疑っていない。

 

「その通り。君に重傷を負わせることのできる未来がなかったからこそ、その部分においてのみ、未来を導く事は出来なかった。だが、このタブレットがある限り、君は私に勝つことはできない」

 

「それは、どうかな」

 

ディエンドは二枚のカードを手に取る。

ウォズは素早くタブレットに何か書き込もうとするが、それよりも早くディエンドは、そのカードのうち一枚をネオディエンドライバーのスロットに滑りこませた。

 

『カメンライド・メテオ』

 

電子音と共に、流星色の仮面ライダーが召喚される。さあやはその姿に見覚えがあった。

 

(あれは、仮面ライダーメテオ、超接近戦型のライダー!)

 

「お前の定めは、俺が決める」

 

「まったく、手駒の多いことだ!」

 

タブレットを操作しようとするウォズに、メテオは急接近する。メテオの放つ徒手空拳での打撃をなんとか躱すウォズだが、それに邪魔され、タブレットへの指示ができない。

 

『アタックライド・インビジブル』

 

姿を消したディエンドは静かにウォズへと近づき、彼の持つタブレットへと手をかけた。

 

「さあ、そのお宝を頂こうかな……」

 

ウォズは頑張って抵抗するが、ディエンドの膂力は彼を上回り、手を振りほどけない。

その手からタブレットが落ちる……

 

『フェザー・ブラスト!』

 

瞬間、空に展開された無数の青羽が、超速でメテオとディエンドを攻撃した。

2人はもんどりうって倒れ、メテオは消える。ウォズを庇うように空より現れたのは、キュアアンジュである。

 

「さあや……」

 

「世界融合によるプリキュアの出現……士の言っていた事は本当だったみたいだね。君がそこのウォズに味方する理由はないと思うけどなぁ、キュアアンジュ?」

 

アンジュは、ディエンドの問いに答えず、再びフェザーブラストを放つ。

銃を乱射して抵抗するディエンドだが、全てを落とす事は叶わず、さらに追加される羽弾の勢いに吹き飛ばされるのだった。

 

ディエンドは体制を立て直し、今度はライオトルーパーズを召喚した。

ロボットのような動きで翻弄する彼らに相手をさせながら、ディエンドはアンジュに語りかける。

 

「流石に強いね、キュアアンジュ。だが、君は気がついていないのかい?君たちの関係が偽りだと言うことに」

 

「偽りじゃない!ウォズは私に絆石をくれました。それに、ウォズといられるのも、多分あと少し……だから、今は邪魔をしないで下さい!」

 

「本気で言ってるんだとしたら、実におめでたい。彼に人を愛することができると思うかい?」

 

「できます!ウォズは、私と仲間になってよかったって……そう言ってくれたんです」

 

周囲に展開したフェザーブラストが、ライオトルーパーズの体に突き刺さり、彼らを爆散させる。

アンジュは手掌で羽弾を操ると、ディエンドの周囲に展開させた。これでいつでも、彼を狙い撃つことができる。

そんな危機的状況で、彼は笑った。

 

「なら、彼の気持ちは本当かもしれないね。でも、君の気持ちはどうなんだい?彼への好意が嘘じゃないと言い切れるかい?」

 

「当たり前です!」

 

「なら……たとえば、このタブレット」

 

ディエンドは懐からタブレットを取り出した。それはさっきまでウォズの手にあったものである。

ウォズも手元を探るが、そこにタブレットは無い。

 

「してやられた……さあや!彼の言葉に耳を貸してはいけない。ここは一旦引こう!」

 

「でも、ウォズさんのタブレットが……」

 

ディエンドはアンジュが羽弾を動かすより速く、タブレットに何かを書き込んだ。

瞬間、アンジュの心が、ずんと沈んだように重くなった。その重さに耐えかねて、彼女はその場に膝をつく。

 

「今、君にかかった魔法を説いた。このタブレットには、実現可能な未来を導く力があるんだ。彼はその力で……」

 

「聞いてはいけない!さあや!」

 

「君の心を捻じ曲げたのさ!」

 

ディエンドがアンジュに見せたタブレットの文字。そこには、『薬師寺さあや、ウォズに抱いた偽りの好意の呪縛から解かれる』とあった。

 

「そんな……ウォズ……」

 

あれだけ高鳴っていた心が、とくりとも動かない。あれだけ楽しかった気持ちが、少しも弾けない。

力を失った羽弾が、地面のつゆと消える。

ディエンドは一時後退し、一枚のカードを取り出した。

 

「流石に、現職のプリキュア相手じゃ分が悪い。ここは撤退させてもらうよ。お宝もいただいたことだしね」

 

『アタックライド・インビジブル』

 

ディエンドは、インビジブルの能力で消えてしまう。残されたのは、アンジュとウォズ。アンジュは変身を解除し……私、薬師寺さあやに戻った。

 

「どうしよう、ウォズ……私、ウォズのことが好きなはずなのに、好きでいたいのに。その気持ちが、心からこぼれてく……」

 

泣き崩れる私に、ウォズは何も声をかけてくれない。ウォズは口元を固く結び、私に真実を語り出した。

 

「薬師寺さあや。彼の言った事は本当だ。君の持つ私への好意は、私があのタブレットで作った、ニセモノなんだ。そして今日、世界は終わる……アナザーブレイドの手によってね」

 

その言葉が決定打となり、私の身体は糸の切れた操り人形のように動かなくなった。

分かっていたはずだった。

だからこそ、信じたくなかった。

静かな小道を、私の涙がわずかに濡らした。

 

_________________________________________________

4月7日 9:30

 

 

ほまれは、白銀のスケートリンクに舞っていた。

スケートの練習は日課ということもあるが、これには雑念を払うという役割も込められている。

3回転ジャンプを成功させ、着地してポーズを決めてみせた彼女に、惜しみない拍手を送る者があった。

 

拍手の主に、ほまれは驚愕する。

そこにいたのは、常盤ソウゴさんだ。テレビで見るのとなんら変わらないその風貌。

何度目をこすっても、その姿は消えない。

常盤ソウゴと輝木ほまれは、先のティードとの大戦で共に戦った仲間である。互いに違う敵と戦っていた2人だが、不思議とほまれはソウゴにシンパシーを感じていた。

 

レオタードから着替え、ほまれはジャージ姿でソウゴの隣に座る。タオルで汗を拭くほまれに、彼は持参の水筒を差し出した。

 

「お疲れ様」

 

「ありがとうございます!」

 

体育会系のノリで、お辞儀をするほまれ。ソウゴも先輩らしく胸を張ってみせる。

水筒の中身はアクエリアスだった。

けれど、味がしない。昨日からそうなのだ。

 

水筒を片手に、ほまれは気になっていた事を尋ねることにした。

 

「でも、どうしてここに?」

 

「はなから、ほまれが元気ないって聞いてさ」

 

「そう……だったんですね。でも、私は大丈夫ですから。はなも心配症ですよね」

 

「白ウォズと付き合ってるさあやの事が、心配なんでしょ?」

 

『さあや』という言葉に、ほまれの笑顔が凍りつく。

 

「さあやと、喧嘩してるんでしょ?でも本当は、彼女を助けてあげたい……違う?」

 

核心を疲れ、ほまれは俯いた。はながソウゴさんに話したのだろうか。でも、私ははなにもこの事は話してない。

ましてや、助けたいなんて、誰にも。

 

「はなから、聞いたんですか?」

 

「違う違う。けど、みんなから話を聞いて、今のほまれを見たら、なんとなくそうなのかなって思っただけ」

 

ソウゴの推理力に、ほまれは驚きを隠せない。この2日、ほまれはほとんど眠れていなかった。眠ろうとすると頬の傷が痛んで全く寝付けないのだ。

何度も泣きそうになった。

けれど、大事な友達の恋路を邪魔しようとした自分には泣く資格なんてない。そう言い聞かせて、自分の心を殺してきた。

 

「ソウゴさんはその、ゲイツさんと仲、良いですよね」

 

「まぁ、仲間だからね。長い付き合いだし」

 

「分かります。多分、互いの心の中も分かっちゃうんですよね。以心伝心みたいな」

 

「いや、全然」

 

ほまれ、目を丸くする。

あんなに通じ合っていそうな2人が、互いの心の中を読めないなんて想像もつかなかった。

 

「元々俺たち、敵同士だったからさ。生まれた時代も場所も……当然、考え方も違う。何度も喧嘩したよ。なんなら殺しあったし」

 

「そう、でしたね」

 

そう考えてみればそうである。

そして、今更気がついた。

さあやと自分、違うところばっかりじゃん。これまで喧嘩しないでいられたのは、何で?

 

(さあやが……合わせてくれてたから?)

 

黙ってしまった私に、ソウゴさんは続ける。

 

「でも、何度喧嘩しても、その度に仲直りすれば元通りになるんだ。俺達はそうしてきた」

 

「仲直り……ですか?」

 

「そうそう。喧嘩して仲直りして、また喧嘩してまた仲直りして。その繰り返しで強くなってく友情も、俺はあると思うよ」

 

ソウゴは、指を一本立てて、人懐っこく笑ってみせる。その笑みに、心のどこかが溶かされていくようで。

ほまれは逃げるように天井へ目を逸らした。

 

「俺に、いい考えがあるんだ。仲直りの先輩としてのアドバイス」

 

「えと……」

 

ほまれに構わず、ソウゴは続ける。

 

「まず、相手の言ってることを、全部しっかり聞く!それで、自分の思ってる本当のことも全部言って。それで、納得するまで喧嘩する!そうすれば、きっと大丈夫!」

 

「それって、結局喧嘩してません?」

 

「でも、仲直りはできるよ。本当の気持ちでぶつかり合えばね」

 

「本当の……気持ち」

 

天井の光が眩しくて、ほまれは何度も瞬きをする。その度に視界が潤んできて、寂しい気持ちが止まらなくなってくる。

 

「あれから口も聞いてもらえないんです……さあや、最近、ビューティーハリーにも顔出さないし」

 

自分の言葉に、少し心が痛くなる。

さあやと話せない日々、辛いのを押し殺してきた日々。それは、仲間のいなかったあの頃によく似ていた。

堪えていた涙が溢れ出てくる。

 

「私、本当はさあやを応援したい。けど、そうすると大切な人達達に迷惑がかかっちゃう。私、どうしていいか分からない……」

 

ほまれの手の上に、ソウゴは手を重ねる。

 

「今からでも遅くない。さあやの気持ちになって、彼女が何をしたいのか、考えてみよう」

 

「それは、もう考えてみました。けど……悪役を好きになる気持ちなんて分かりません」

 

「もう一回だけ!俺も魔王を目指してるから、もしかしたらわかるかもしんないし!」

 

ソウゴに乗せられて、ほまれは真剣に考え始める。

白ウォズに恋してしまったさあや、さあやはどんな気持ちだったんだろう。

最初は多分、警戒してて。けど、ウォズも仮面ライダーだから、近づきたくなって。そうしてるうちに好きになっていって。

 

「うーん。ダメだ。私、好きな人が仮面ライダー……しかも悪役だったら絶対上手くいかないですよ。なんか、距離感が難しそうっていうか」

 

「そうかな?なんか、悪役って不思議な魅力を持ってたりするものじゃない?俺が好きになった人も、そんな感じの人だったなぁ」

 

「ヒーローの台詞じゃありませんよ。っていうか、ソウゴさん女っ気無いですけど、それいつの話ですか?」

 

「小学生の頃かな」

 

「それって恋なんですか?」

 

「恋だよー!今でも覚えてるもん」

 

言い方がなんだか子供っぽい。

でも、ソウゴさんのおかげで、少しだけ気分が晴れた。ほまれは立ち上がり、スケート場の方を見やる。

氷に刻まれた、いくつもの轍。

それを見ているうちに、一つの仮説がほまれの中に浮かんできた。

 

「もしかして、憧れ?」

 

「何か思いついた?」

 

「さあやにとっても、多分ヒーローって、憧れなんだと思うんです」

 

ちょっとよくわかんないと言った表情のソウゴに、ほまれは続ける。

 

「頭も良くて、なんでもできて、みんなにすごいって言われて、知らないうちに、自分の道を決められてる。そんなさあやにとってヒーローは自由の象徴なんだと思うんです。だからこそ、自分じゃ感情移入できない……でも、悪役って、多分……」

 

ほまれは「ありえない考えかもしれないけれど」と前置きして、続けた。

 

「自分がなれたかもしれない、もう1つの自分?」

 

「あー、なんかわかる気がする。俺にとってのオーマジオウって感じだ」

 

だとしたら、ほまれは多分、ウォズには自分に足りないものを求めてるんだ。

で、ウォズはさあやが持っていない物を持ってて……もしかしたら、逆も然りなのかもしれない。

ウォズにないものを、さあやも持っているんだとしたら、きっと2人は、すごく仲が良くなるのだろう。

 

ほまれは、すっくと立ち上がった。溜めていた涙はどこかに引っ込み、足にはいつも以上の力が漲っている。

 

「ソウゴ先輩!話聞いてくれて、ありがとうございました!」

 

「いいっていいって。俺も、そろそろアナザーブレイドを倒さなきゃ」

 

「私も、さあやを探してきます!!さあやの話を全部聞いて、今の考えが正しいのかどうか確かめてきます。私の気持ち全部ぶつけて、それで、仲直りしてきます!」

 

言うや否や、ほまれは駆け出す。後ろで、ソウゴは手を振って見送っている。

 

「今の君なら、きっと大丈夫」

 

一度止まり、深くお辞儀をして、ほまれは駆け出した。大事な親友の元へ。




第五話をお読みくださりありがとうございます。
ついに白ウォズがさあやさんにかけていた魔法が解けてしまいました。ディエンドにタブレットを奪われ絶体絶命の白ウォズは、果たして次回どうなってしまうのでしょうか。
一方、ほまれさんはソウゴの激励の元完全に復活しました。この話も残すところ二話……次回をお楽しみに。

次回の投稿は3日後になります。

※Pixivにも同じものを投稿しています。
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