忘れ物   作:カラドボルグ

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やっぱり遅くなりました。すいません。
こんな感じですが、読んでくださってる方はよろしくお願いします。


第二話 始業

 教室に着くと、俺は早速昨日の宿題を取り出し香澄に差し出した。香澄は一瞬首を傾げ、すぐにはっとしたような表情になった。

 

「あ! 宿題!」

 

こいつ本当に頭大丈夫だろうか。交換条件持ち掛けてきた張本人が忘れるか普通。

 

「うむ! よろしい! 陽一君、これからも励み給え!」

 

 そして何事もなかったかのように、とても借りる側の人間の発言とは思えんことを言い出した。コイツマジで一回ぶっ飛ばしてやりたい。まあ今は我慢だ。バイトを餌にされたら困るしな。しかしたかられてる気がしてやだなこれ。

 と自分の今の立場の弱さを嘆きながらノートを渡していると、後ろから声がかかった。

 

 

「おい、宝田! お前また香澄に宿題みせてんのか! 何のために私が見せてないと思ってんだ!?てか香澄も何回忘れりゃ気が済むんだ!?」

 

香澄の親友である有咲がそう声をかけてきた。

 

「有咲ー、なんでいつもみたいに見せてくれなかったの?」

 

その質問は少々傲慢が過ぎるだろ。それにしても有咲の愛情が伝わっていないのは頂けないな。

 

「それはなー香澄、有咲がお前のこと好きで好きで仕方ないからだよ。要するに愛ゆえだな」

「お、おまっ!? ち、違うからな!」

 

 

以前も言ったが、有咲がこうしたのは香澄のためを思ってであるのは明白だ。実際、本人こうは言ってるものの顔真っ赤だからな。と、いつも通りのツンデレを拝んでいると、香澄が不安そうな様子で

 

「有咲、私のこと鬱陶しいと思ってたの?」

「そ、そうじゃなくて、今回はお前のためを思って……や、やっぱ何でもない!」

「ん? 有咲ー、照れてる?」

「照れてねー!」

「有咲ー!」

「おい! バカ、くっつくな!」

 

「くっつくな!」とか言いながら嬉しさが隠せていない。

 

「はいはいツンデレ、ツンデレ」

「誰がツンデレだ!」

 

いやお前以外誰がいるんだよ。というか今の香澄の不安そうな聞き方、完全にわざとだろ。こいつこんな芸当できたのか。

 

 

「おはよう、香澄、有咲。それと陽一も」

「三人ともおはよう」

 

 そうこうしている内に沙綾とりみが来た。そう言えばと他クラ香澄と有咲、そして隣のクラスの沙綾とりみ、さらにもう一人他クラスの花園、香澄はおたえとか言ってたが、その五人でPoppin'Partyとかいうバンドを組んでいるらしい。

 

「おはよう! さーや! りみりん! ねえ聞いて、有咲ったら私のことが大好きって!」

「んなこと言ってねー!」

 

意訳すれば間違ってないだろうが、香澄は流石に話盛りすぎだろうよ。

 

「こーら、香澄。有咲で遊ばないの。でも、有咲が香澄のこと大好きなのはみんな分かってるから。ね、りみりん」

「うん。普段はつっけんどんな態度とってるけど、本当は私たちのことちゃんと考えてくれてるのはよくわかるよ」

「うるせー! お前らまで何言ってんだ!」

 

 

 こうして傍で見ていると本当に仲の良さが伝わってくるし、何となく俺だけは違う空間にいるような疎外感を感じて少し寂しい気もするくらいだ。にしても有咲は愛されてるなー。そしてりみの言う通り、口ではこんなだが、やはり満更でもなさそうな感じを隠せていない。もういい加減素直になればいいものを。

 

 

「そんなことよりお前ら聞いてくれよ! 宝田の奴、こっちの努力も知らずに香澄に宿題見せやがったんだよ! 普段は大抵めんどくさがって見せないくせにこんな時に限って……」

 

 露骨に話題逸らしたよこの人。それから違うぞ有咲。俺は知ってた上でやったからな。あんな交換条件がある以上お前の努力なんざ知ったことではない。それからやっぱ香澄への愛情隠しきれてないぞ。そんなことだと……

 

「有咲、やっぱりあれ香澄のためを思ってのことだったんだー。ふふっ」

「笑ってんじゃねー! てかそんなこと今はどうだっていいだろ!」

 

 ほーら、やっぱり沙綾にいじられた。

 こんな感じで有咲イジりに興じている間に問題児が事を済ませたようだ。

 

「はい、陽くん! ありがと! またよろしくね!」

「はいはい。その『また』が無いようにしてほしいんだけどな」

「善処しまーす」

 

こんなに信用ならん「善処します」なんざ聞いたことがない。

 

 

 すると沙綾が首を傾げて不思議そうにしていた。

 

「どうしたんだ? 沙綾」

「いや。そういえば、陽一ってさ、今まで香澄に宿題見せるの結構嫌がってたのに、聞いてる感じこれからも宿題忘れたら陽一が見せるって感じだったから。なんでかなーって」

「確かに。どういう風の吹き回しだ?」

 

やっぱり気付いたか。香澄にいいようにやられたことを語るのは気が引けるが、どの道バレるのだからここは正直に話すのが吉か。そう思い、

 

「いやー香澄がいいバイト紹介してくれるって言うから。その交換条件に折れったってとこだ」

 

と、嘘偽りなく(美人上司がトドメの一撃であったことは伏せているが)語った。各々呆れたり、怒ったりするんだろうと考えていたのだがかえってきたのは予想外の反応だった。

 

「バイトって……おい! それ何のバイトだ!?」

 

 

 きっとお怒りだろうと考えていたツンデレツインテールがやけにこれに食いついて来た。他の二人も興味津々と言った感じだ。

 

「そーいや、どんなのかは聞いてなかったわ。香澄、俺のバイトって何なの?」

 

 すると香澄は、らしくもなくもじもじし始めた。え? なに? 俺どんなバイトさせられんの? まさかそっち系? そっち系なのk「ライブハウス……」ん? 

 

「ライブハウス?」

「うん……」

「あれだよな? あの……バンドとかがライブするあれだよな?」

「そうだけど」

 

 なるほど。さっきも言ったように彼女らはバンド活動をしている。ならばそう言ったところとツテがあってもおかしくはない。確かに意外なバイト先ではあったがそこは納得出来る。だが気になるのは、

 

「なんでそんな顔赤らめてもじもじしながら言うのよ?」

「ふぇっ? そ、そんなことないよー。もうやだなー陽くんったら」

 

 そんなことあったと思うんだが、まあ本人がそう言ってるならいいか。そう納得していると、沙綾たちがなんだかにやにやしながら俺たちを見ていた。

 

「どうしたよ?」

「へー、香澄なかなかやるじゃん。と思って♪」

「うん、香澄でも偶にはやるんだなーと」

「ちょ、ちょっと有咲ー。それじゃまるで私が普段は全然ダメ見たいじゃん!」

「全くもってその通りだろうが! だいたいこの状況まで持ってくんのにどれだけ……」

「あー! わかった! わかったから有咲、それ以上は~」

「あ、有咲ちゃん! 流石にそこまでは……」

「流石に分かってるよ。そこの男みたく、いくらこっちの系統でもそこまで馬鹿じゃねーから」

 

 

 また俺一人ほっぽらかして四人の世界に入りやがったと思えば、いつの間にか盛大にディスられていた。いやなんでさ? てか何だよ? 「こっちの系統」って。すると三人はそろって大きな溜息をついた。いやなんなの? マジで。泣いちゃうよ、俺。

 

 

「これは香澄も苦労するね~」

「前途多難だね……」

「てかなんで香澄はあんな奴を……」

「あれ? 有咲ー、ヤキモチ?」

「だから違う!」

 

 しかも俺とは逆の方を向いて何か話し始めた。声が小さくて何を言ってるかは分からないが、少なくとも俺をディスってるのだけは分かった。

 

 もういっそ本当に泣いてやろうかと思ったところで始業のチャイムが鳴り、担任が入って来た。

 

「はーい、みんな席についてー」

 

 

これを合図にようやく俺のディスり合戦は終わってくれた。

 

「やっと終わってくれたよ全く。香澄、何話してたんだ?」

「え!? え、えっとー……ひみつ!」

「なるほど、俺の悪口か。そうだったかー。よし、泣くわ」

「なんでそうなるの!? ま、待ってよ違うから~」

「おーい、戸山、宝田。お前ら何時までいちゃついてんだー。夫婦(めおと)漫才なら他所でやれー」

 

 

 周囲から笑いが起こる。ほんと何てイジり方をかましてくれるんだろうかこの担任は。気分が悪い。すると香澄が小声で俺に尋ねてきた

 

「ねえ、『めおと』って?」

「ん? 夫婦(ふうふ)のことだよ」

「ふーふ!? や、やだなー陽くんったらー」

「いやいや俺が言ったんじゃねーから! てか顔赤らめんな! こっちまで恥ずかしくなっちゃうだろうが」

「おーいお前ら。マジでつまみ出すぞ」

 

 また怒られた。全く香澄は……いや、今大声出して喋ってんのバレたの俺か。

 

 

 

 本当にこんなことで今日のバイトは大丈夫なんだろうか?

 嫌な予感がしてならなかった。 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
しかし今回は話が進まなかった。タグにいるもう一人の子は一体いつになったら出てくるのやら・・・


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