忘れ物   作:カラドボルグ

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さあ、あともうちょい自粛頑張りましょう!ああ、オンライン授業キツいぜ。
遅くなったけど四話です。



第四話 それぞれの昼休み2

 午前中のクソほど眠い授業終えてようやくの昼休みである。因みに午後も眠いのには変わりないのだが。

 登校中に買ったコンビニ弁当を食べようとコンビニ袋を取り出したところで、後ろの茅ケ崎誠士郎がやけにニヤニヤしながら声をかけてきた。

 

「おい、陽一。お前最近香澄ちゃんとやけに仲いいよな」

「そうか? 前からこんなもんだろ。というかアイツ、俺の編入直後からあんな感じで喋りかけてくれたし」

 

 あの時は本当にびっくりした。

 

 

 

 二年生からこの花咲川に編入した俺にとっては知り合いなどは勿論いるはずもなく、まさに孤立無援の状態だった。その上この学校、後から聞いた話だと近年の少子高齢化云々で最近になって女子高から共学になったらしく、兎に角男女比がおかしい。男3に対して女7といったところだろうか。

 

 これを聞いた男性諸君は「え? ハーレムじゃん。最高じゃねえかクソが」と思ったかもしれないがそう簡単な話ではない。いざそんな女子だらけの檻の中にぶち込まれたらどうすりゃいいか分からなくなるのがオチである。

 

 始めて教室に入ったとき、今話している茅ケ崎も来ておらず、それどころか他の男子生徒も誰一人としてまだ登校していなかった。要するに周りには女子しかいなかったのだ。どうもうちの男子どもは登校するのが遅いらしい。事実この後ろにいるお調子者は今日も今日とて門が閉まるギリギリの時間に駆け込み、かなり厳しいことで有名なうちの学校の美人風紀委員にお叱りを受けたらしい。まあ本人は「いや~今日もご褒美頂きました」と言っていたが。普通に引いたわ。

 

 友人の性癖のせいで話が逸れたが、俺は編入早々にこのハーレム地獄に立ち尽くしてしまった。その上女子たちから浴びせられる「あんな子いた?」的な好奇の視線にさらされて完全にメンタルがやられてしまったのだ。

 

 もうこれはボッチド陰キャを二年間貫くしかないなと考えるまでに軽くメンタルブレイクをかましたところで、突然自分の右隣の席に座っていた妙な髪形をした女の子が声をかけてきた。

 

「ねえねえ! 間違ってたらゴメンだけど、去年キミってウチにいなかったよね? 転校生?」

 

 最初に彼女に抱いた印象は、何だかキラキラした子だな~、そう言ったものだった。整った可愛らしい顔立ちにこの高いコミュ力、あまりにまぶしく感じられたんだろうか、それとも単に美少女に接近されて照れたのか、少し彼女から目線をそらしてしまった。

 

「転校っていうよりかは編入かな。去年まで外国にいたんだ」

 

 すると彼女は心底感心したという様子でこう言ってきた。

 

「外国?! じゃ、じゃあ英語とかもペラペラなの?」

「まあそれなりには」

 

 随分とグイグイ話しかけてくる子だなと戸惑いながらそう返した。すると彼女は今度は嬉しそうにして

 

「ホント?! じゃあ英語教えてくれない? 実は私苦手で……」

 

 そう尋ねてきた。別に断る理由もなかったので了承した(まあ今考えてみればこの選択は失敗だったかもしれんが。だってほぼ毎回聞いてくるもん)。彼女はやったー! と言って心から喜んだ様子だった。ここまで自分の感情を素直に表現できるのは少し羨ましいとも思えた。

 しかしまあ大したコミュ力だ。

 

「よくこんな編入してきたばっかの奴に声かけられるよね。えっと……」

「あ、私、戸山香澄! 香澄でいいよ! 君は?」

「俺は宝田陽一。じゃあ香澄さんでいいのかな?」

 

すると彼女は少しの間目を見開いていた。俺が訝し気にしているとすぐに元の表情に戻して続けた。

 

「さんもいらないよ。私も陽くんって呼ぶから!」

 

マジか。速攻あだ名呼びとは。どうやらこの子は本当に日本人離れしたコミュ力をお持ちのようだ。というかアメリカにもここまでの奴はなかなかいなかったから人間離れの方があってるだろうか、そんなことを思っていると彼女の友達らしきポニーテールの女の子が彼女に声をかけてきた。なんかパンの匂いするな。

 

「おはよー香澄。あれ? その子って……」

「おはよ! 沙綾! 聞いて聞いて! この子、去年まで外国にいたんだって! 私、今友達になったんだ! 沙綾も仲良くしてあげて」

 

おっとー、流石に友達認定早くないですか? こっちは友達になったような覚え一切なかったけど。まあいいか。どうやら彼女のおかげで女友達ゼロは回避できそうだし。

 

「私は山吹沙綾っていうんだ。よろしく、陽一君」

 

いつの間にか名前まで教えられていたようだ。もはや疑問に思うのも面倒になり、そのままよろしくと返した。

さらに香澄は教室の隅の方に座っていたツインテールの子に向かって言った。

 

「ほーら有咲も! さっきからチラチラ見てるだけじゃなくてこっち来て!」

「べ、別に見てねーし!」

「陽くん、有咲はあんな感じだけど、ほんとはとってもいい子だから。仲良くしてあげてね!」

「別に仲良くしてもらわなくていい!」

 

 

 

 

 こんな風に彼女のおかげで段々と友人の輪が広がっていき、その流れで誠士郎ら男子勢ともスムーズに話すことができ、今に至るといった感じだ。

 

 

 

 

 

「まあでも、アイツいなかったらホントにお前ぐらいくらいとしか絡みがなかったのかもしれなかったのか。そっれは地獄絵図だ。アイツには感謝しなきゃな」

「おい何が地獄絵図だ。でもそれ聞いて安心したわ。てっきりお前はそういう方向に興味がないのかと」

「お前俺のこと何だと思ってんの? 一応俺だって健全な男子高校生だぞ」

 

そう。俺だって人並みにそういう欲求はある。事実バイトの決め手は美人の上司だからな。なんか自分でこう言っててなんだが、動機が最高にクズいなおい。誠士郎は続ける。

 

「いやだってお前さ、ぶっちゃけ香澄ちゃんって可愛いじゃん」

「まあ美少女と言っても差し支えないな」

「だろ? そんな子にあんだけ接近されたら、普通の男なら動揺の一つや二つするだろ」

「いや、香澄ってさ、どんな奴にも最初からあんな感じの距離感じゃん。俺だってそうだな……りみみたいな子にあの距離感で来られたらドギマギするよそりゃ」

 

要はそういうのは普段の態度とのギャップなのだ。そりゃ最初の方は香澄と喋るたびに「近い近い近い! ソーシャルディスタンスどこ行った!?」と思ったものだが、三日もたてば「あーこういう距離感の子なんだな」と慣れてくるってもんだ。

 だが誠士郎は、そんなことは分かってんのと俺の見解を一蹴した。

 

「確かにあの子近いよ、距離感。バカな男勘違いさせるくらいには」

「したんだな。勘違い」

「するだろ! でも他の男子との距離感見たら嫌でも気付くわ。あの子の場合全男子に色目使ってるとも思えないし」

 

彼の言う通り、たぶん彼女は恋愛感情とか、そういう概念を親の腹の中に忘れてきたやつだと思う。

 

「それこそアイツがそっちが系統に興味ないと言えるからな。ずっとバンドの話しかいないようなやつだし」

 

すると彼はまるでゴミを見るような目で俺を見てきた。

 

「何その目は?」

「ゴミについてるカスを見る目だよ」

 

おー、如何やら予想をはるかに上回る熱い視線だったようだ。

 

「お前さ、それ本気で言ってんの?」

「本気も何もアイツを見りゃ分かんだろ」

「お前もうカスについてるそのまたカスだわ」

 

降格しちゃったよ。なんでそうなったよ。てかなんでお前にそんなことを言われなくちゃならん。

 

「いいか? この際だからはっきり言うが、客観的に見てあの子はお前とだけは接し方が全然違うぞ。いつも以上に近いし、なにより表情が違う。なんかこう花が咲いた感じって言うのか、兎に角そんなところだ」

「そうか? まあ確かにクラスの男子の中じゃアイツと一番絡みがあるのは確かだけど。仮にそうだとして、何なんだよ? 向こうから親友くらいに思われてんのか? それはまあ嬉しいことだけど」

「もうお前死ねや」

 

辛辣ぅ。この上なくシンプルな罵倒だった。こいつは小学生の頃に習わなかったんだろうか? あっただろ、「ちくちく言葉」と「ふわふわ言葉」って。俺がそこそこ傷ついているのも構わず続けた。

 

「いいですかね? 陽一君。こういうことを俺が言うのが良くないのは分かってるけど、十中八九あの子はお前のこと好いてるぞ」

「それはあれだろ……」

「先に言っとくけど恋愛的な意味でな!」

 

被せる様に言われた。

 

「でもそれだけで恋愛感情に繋げんのは違うだろ。安直すぎる。だいたい女ってのはそんな単純な生き物じゃあないんだよ。アイツもそうだったしな」

「アイツ? 香澄ちゃんのことか?」

「いや、違う。こっちの話だから気にすんな」

「こっちの話って……何があった……って聞かねえよ。これ以上聞かねえからそんな目すんなよ」

 

触れられたくないとこに触れられそうだったからだろうか、いつの間にか彼を射殺すような視線で見ていたようだ。誠士郎には悪いことをしたが、やはり少し話に出るだけでも気分が悪い。

 

 彼は少し咳払いして仕切りなおした。

 

「まあお前が頑ななまでにあの子の恋愛感情を認めないのは分かった」

「頑なって……」

「で、逆にお前はどうなんだ?」

「どうとは?」

「異性としてどう見てんのって話」

 

また答えに困ることを聞いてきたなコイツは。

 

「そうだな……確かにアイツは可愛いとは思うし、明るくていいやつだとも思うぞ。でも、アイツを恋愛対象として見るのは違うだろ。何か女性として見る気には……」

 

 ここまで言って、彼が急に俺から視線を外し、まるで我関せずといった感じで残っていた昼食を掻き込み始めやがった。コイツから聞いてきといてお望みの回答が得られなかった途端その態度ですか。はーん、そうですか。そっちがその気なら仕方ない。コイツが何故毎回遅刻ギリに来るのか、その恥ずかしい理由をここで大声で叫んでやる。

 

 

 すると突然背中から刺すような殺気を感じた。恐る恐る自分の背の方を窺うと、そこにはなんか黒い覇気っぽいものを纏った件の猫耳ガールが立っていた。

 

「お、おう香澄。戻ってたのか……」

 

 すっごく素敵な笑顔を浮かべてらっしゃるのに、なんだろう、目が全く笑っていない。

 

「ふーん、そっかそっかー」

 

 ダメだ嫌な予感しかしない。うん、これはやっべーわ。

 

 

 

 




課題とバンドリしかない今日この頃です。
さあ、評価と感想くれぇ。


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