忘れ物   作:カラドボルグ

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珍しく早く書けたー。

因みにようやくあの子が登場。



第五話 それぞれの昼休み3

 人は時にかけがえのないものを平気で失くし、そして失くして初めて己の行った取り返しのつかない行為を嘆く。

 

 

 

 

あの日の彼の悲しみに満ちた背中は、今でも私の頭から離れてくれない。

 

ああ、いつになったら神様は忘れさせてくれるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんで!? あの時の·····との··········わ·····れちゃったの!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 な、何だよ? ······って。そんなの覚えてる訳ないだろ! それに·····これは僕に·······れても········ようも·····いこと·····んだよ。ましろ·····も··········るだろ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『··········から·······い! もう·······も·····陽一··········て·····ない! 二度と私の······界に·······らないで!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『··········そっか。君··········う言う·······ら、そ·····するよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ·····ま、·····って! ········ってよ陽一! ────────

 

 

 

 

 

 

 

「……たさん。……らたさん。倉田さん!」

 

 

 誰かの声で悪夢から引きずり出された。だが引きずり出された先もまた悪夢だった。

 教室中の視線がこちらを向いていた。

 

「倉田さん、もう四限目終わりだよ」

 

 如何やら四限目を半分以上寝ていたようだ。あの悪夢の上にこの醜態、最悪の気分だ。

 

 授業終わりの礼が終わると同時に私は逃げるように教室を出た。

 

 

 

 

 

 またあの夢だ。あれから何年たっただろうか。あれ以来彼から一切の連絡すら無い。

 当時、あの心無い言葉につい感情的になってしまったのは確かに私が未熟な子供であったのが悪いというのは今ならわかる。でも、それを理解している今となっても彼を許す気にはなれない。その一方で、叶うならば、彼と再会し、そして謝りたいとも思っている。全くもって矛盾しているが、それ程当時のことには未だに整理がついていない。複雑に絡まった糸のように、私の心の中でわだかまりをなしている。

 

 

 教室を出て私は一人になれるよう、中庭に出た。すると、蝶が飛んでいるのが見えた。少し前の私であれば、居場所が見つからず彷徨っているなどと、勝手に自分と重ねていただろう。でも、今は違う。なぜなら、

 

「ましろちゃーん! もう、勝手にどこかに行かないでよ~」

「ごめんね、つくしちゃん。恥ずかしくてつい……」

 

今の私には居場所がある。

 

「シロー、ふーすけー、来たぞー」

「るいるいも連れてね~」

「なんで私まで……」

「だってるい、この前『春になると、公園で昼食を食べる生徒をよく見かけるわ』ってゲームのキャラみたいな定型文で……」

「とーこちゃん、メタいからそれ以上はストップ」

 

この子たちは、一か月くらい前から私とMorfonicaというバンドを組んでいるメンバーの子たちだ。今の私には、かつてと違って彼女たち、Morfonicaという居場所がある。

 

「はい、ましろちゃん」

 

そう言って、つくしちゃんは私の弁当箱を差し出してきた。そこで私は初めて自分が弁当箱を忘れていたことに気付いた。私はごめんねと言ってそれを受け取った。

 

「もう、昼食とるのにお弁当箱忘れるってどういうこと?」

「あはは。しろちゃん、おっちょこちょいだね~」

「マジかよ!? なんでそうなるんだよ……ってシロ、頭にちょうちょ留まってる。なんかウケる」

 

皆に揶揄われるこの流れの中、何故か頭にちょうちょが留まっていたいたようだ。ちょうちょまで私を揶揄っているように思え、払いのけてしまおうと思ったが、透子ちゃんに「なんか面白いし、映えるから」と、他の二人にも「可愛いから」とそのままにさせられた。るいさんは・・・うん、死ぬほど興味なさげだね。

 

「そういえば、ましろちゃん、起きたときすっごい顔色悪かったけど、何か悪い夢でも見たの?」

 

嫌な汗が流れだした。恐らくつくしちゃんのことだ、本気で気にしてくれているのだろう。それに相手は彼女たちだ。打ち明ければ何かいい答えを得られるかもしれない。この胸のわだかまりについての。そうしよう。そうすればきっと……そう思い口に出そうとした言葉は出てきてくれなかった。

 

 どうしていつも、こうなのだろう。あと一歩のところで勇気が出ないのだろう。もしあの時、その勇気があれば……彼との命運も変わっていたかもしれない。そう思うと自分が情けなくなった。

 

 答えられずにいる私を見兼ねたのか、それまで毛ほども興味のなさそうだったるいさんが助け舟を出してくれた。

 

「別にいいんじゃないの? 答えたくないことだってあるだろうし」

「そ、そうだよね。ごめんね、ましろちゃん」

 

 そう言って、つくしちゃんは申し訳なさそうに目を伏せてしまった。

 しまった……何とか彼女の気持ちを立て直さなくては

 

「そ、そんな大層なことじゃないよ。なんか……そう! 沢山のぬいぐるみに追いかけられる夢見て、ちょっとびっくりしちゃって」

「な、なあんだ。それならよかった」

「シロってぬいぐるみいっぱい持ってるんだっけ? 絶対それが原因じゃん!」

 

 よかった。うまく誤魔化せたようだ。()()()()()()()

 七深ちゃんとるいさんは心配したような表情で私の方を見ている。恐ろしい勘だ。というかるいさんってこんな顔するんだ。しかし、彼女たちはそれ以上聞こうとはしなかった。

 

 

 

「まあシロのぬいぐるみ中毒は兎も角、これは私からの提案なんだけど、偶にはさ、Circleで練習しね?」

 

 なんか聞きなれない病名を宣告されたような気がしたが、どうせ突っ込んでも「ミクロン、ミクロン!」と返されるだけだろうから置いておいて、確かにそれは魅力的な話だ。

 

「うん、いいと思うな、私」

「でしょ! そうと決まれば早速……」

「おっと、しろちゃんと透子ちゃんは私んちのアトリエではご不満と。なるほどなるほどー」

「ち、違うよ! そういうことじゃなくて……」

「あはは、そんなに焦んなくても、分かってるよーって、拗ねないでよー」

 

 七深ちゃんが小悪魔だ。ひどい。私達のそこまで言って委員会並のグダグダ加減を見かねたのか、るいさんが話を進めた。

 

「私も桐ケ谷さんの意見に賛成よ。二葉さんはどうなの?」

「私ももちろん賛成! じゃあ早速……って言いたいところだけど、最近本当に予約取るの難しいんだよねー。だから今すぐにっていうのはちょっと……」

 

 

 すると突然、透子ちゃんの携帯が鳴動した。誰からだろうか? 

 

「あ、まりなさんだ」

 

え? いつの間に連絡先を……ってまあ彼女のコミュ力ならばおかしくないだろう。いや、どうだろうか? うーん、まあもう面倒くさいので考えないでおこう。

 

 つくしちゃんが「リーダーの私が知らないのにー!」とか言っているのを尻目にまりなさんとの通話に応じた

 

「もしもし、まりなさん。お久しぶりでーす。え? はい。はい……え!? マジで!? はい、よろこんで! ぜひ参加させてください!」

 

 

何だか透子ちゃんが居酒屋の店員みたいな返事をしているんだけど……一体どうしたんだろうか? 

 

「ありがとうございます! ……え? いいんですか!? 明日に練習!? いやーまりなさんマジリスペクトっす!」

 

 

え? 今練習って……如何やら通話が終わったようだ。

 

「どんな話だったの?」

 

 

そうつくしちゃんがきくと、透子はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ふふーん。実は……」

 

それを聞いた私たちは

 

「「「え────!」」」

 

どこぞのお祭り男並みに驚いた。るいさん以外は。もうちょっと驚こうよ。

 

そんなるいさんですら、少しだけ、ほんの少しだけだが顔を綻ばせているような気もした。それ程に私たちにとって嬉しい話でもあった。それにこの話は()()()()()()()からの直々の誘いだという話だ。こんな嬉しい話は無い。

 

「よし! そうと決まればもっと練習頑張らなくちゃね!」

「お、つーちゃんがやる気だ~」

「当然でしょ! こんな機会なかなか無いよ!」

 

 

 

 知らせを受け、みんなでわいわい盛り上がる中、私の頭に留まっていた蝶が急に突然逃げるように私から離れた。皆の声にびっくりでもしたんだろうか、そんなことを考えた。が、目の前の吉報に頭がいっぱいで、そんな思考はすぐにどこかへ追いやられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

そして新しく感想と評価を下さった方々、お気に入り登録して下さった方々、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします!

さあ、ましろ好きよ、この指とーまれ。






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