忘れ物   作:カラドボルグ

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ガチャ・・・通算70連敗!!


第八話 死刑宣告

 いや~凄かった。本当に凄かった。まさかアイツにあんな姿があったとは。何故かは分からないが、アイツのそういった一面を知れたことを嬉しく思い、またもっと知りたいと思う自分がいた。

 

 そしてコッチも凄い。いや~ホントに凄い。何が凄いって? そりゃあもうまりなさんのお怒りっぷりですよ。結局あれから三十分以上、俺はアイツのリサイタルを聞き続けていた。まあ軽く命令無視なわけでして。

 

 というわけで今現在、俺は素敵な笑顔をたたえて仁王立ちしていらっしゃる美人上司の前に正座させられています。香澄にかっ飛ばされた時も言ったが、俺は決してそういう類の趣味は持ち合わせてはいない。

 

「指示無視して可愛い女の子とイチャイチャと……初日から随分いい度胸してるね~。さてと、どういうことか説明してくれるかな?」

 

こっわ! まりなさん怖いって! というか……

 

「いやいやまりなさん、確かに俺は直ぐ戻って来いっていう指示は無視しましたよ。でもその『イチャイチャ』っていう言い方にはだいぶ語弊がある気がするんですが」

「いーや、あれは確実にしてました。個室で美少女とよろしくやってました」

 

おい、個室でよろしくやってたはもっとダメだろ! 迂遠になった分余計に性質(たち)が悪い。

 

「それ、絶対まりなさんの個人的感情入ってますよね?」

「んー? どんな感情だー? 言ってみ?」

「そりゃあまあ、恋人の一人も……」

「陽くん!」

 

そこまで言ったところで香澄に止められた。急にどうした? そう思って香澄の方を見るとまりなさんの方を見て顔を真っ青にしていた。

 まさかまりなさんの後ろに幽霊でもいたのだろうか? まさかまさか。おばけなんてないさ♪ おばけなんてうっそさ♪ ねぼけた……おーっと、どうやらおばけなんかより数倍怖いのがいるようですね。

 彼女はあくまで微笑を浮かべたままだ。だがしかし、ハイライトが職務放棄している。どうやら彼らにも働き方改革は適応されるらしい。

 

「恋人の一人も、何なの?」

 

 言えない。ここまで来れば俺でも分かる。絶対言ったら死ぬ。

 

「あー、今の無かったことにしてもらっていいですか?」

「恋人の一人もその歳になっていないから、かな?」

「ちょっと! 何自分で言っちゃってんですか!? ……あ」

 

やっべ、自白しちゃった☆

 

「陽一くん……」

 

判決は……

 

クビ(死刑)!」

 

でっすよね~。というわけで俺はなりふり構わず長く日本で培われてきた伝統

 

「ほんっっっっとうに! すいませんでしたーーーーーー!」

 

DOGEZAを披露した。誇り? そんなものはな、(いぬ)にでも食わせておけ! 

 

「まりなさん! 私からもごめんなさいします! そもそも私が嬉しくなってずっと陽くんをいさせたのが悪いんです!」

 

香澄……。コイツには本当に助けられてばっかりだな。

 

「それと、前にも言いましたけど、陽くんは元からこんななんです! 悪気はないんです!」

 

うん、同時に迷惑もかけられっぱなしだな。香澄さん、それは一切フォローになってないですね。何か余計に性質(たち)悪いヤツになっちゃってるから。まあ事実なんだから何も言えんが。

 

「口は悪いけど、根はとっても優しいツンデレさんなんです! だからどうか! 陽くんをクビにするのだけは~」

 

おい! やめろ! マジ恥ずかしいからツンデレはやめろ! 刑執行の前に殺す気か!? 

 

「ふふっ。ふふふっ。ふっ、あははははっ!」

 

すると突然、まりなさんが笑い出した。え、何? 怖い怖い怖い! 

 

「あー、ゴメンゴメン。陽一君の慌てた反応があまりにもおもしろかったからつい」

「じゃ、じゃあ陽くんがクビっていうのは……」

「安心して。冗談だから。だいたい、私がクビにするわけないじゃん! そもそも私が人手足りないから募集してたのに」

 

え? じゃあ最初から俺のびくついた反応見て楽しんでただけってことか? なーんだ、一時はどうなることかと……っていやいや待て。よくよく考えてみればこの人、多分監視カメラか何かで中の俺らの様子知ってたよな? なら何で呼びに来なかったんだよ? 

 

「え? そりゃあ、面白かったから」

 

何この人!? 何このサディスト!? 何なのこのアラサー!? そんなんだから……

 

「あー別に指示忘れてたことは良いんだけど……」

 

 俺の肩にポンっと手をおいて続けた。

 

「さっきの発言は()()()()()()()()。あとさっき、何か失礼なこと考えられたような気がしたんだけど……」

「それはマジで気のせいです! 天地神明に誓って!」

 

ふえぇ~。この人何? サイコメトラーか何かか!? 

 

「酷いよ~、まりなさん! 最初から全部知ってたってこと!?」

 

そうだそうだ香澄。お前から言ってやれ。俺はもう……この人には何も言えないから。ははっ、完全に奴隷だな! 

 自身の精神の奴隷化にもはや感慨深さすら覚え始めていた俺を他所に、まりなさんは香澄に耳打ちしていた。

 

「香澄ちゃ~ん、私は、彼との二人きりの時間を壊さないように気を遣ったんだよ~。むしろこれは感謝してくれても良いんじゃないかな?」

「まりなさん……! 一生ついていきます!」

 

 あっれ~!? 何吹き込まれたか知らんが、一瞬にして香澄が懐柔されやがった。コイツにも如何やら掌大回転民族の称号を与えねばならんらしい。

 

「うん! 今回はまりなさんは何にも悪くないです! ということで陽くんが100パー悪い!」

 

 うわぁ~、ひっどい裏切り方だぜ。ここ最近俺に人権っていう概念自体が消えかかってますね。あ、そっかぁ。俺って奴隷だったもんな! あ、ヤベ、目から塩水出てきた。

 

「まあ、陽一君のそのオイタの過ぎる口は追々何とかしていくってことで! じゃあ明日、学校終わってから来てね! よろしくー!」

「は、はい……これからよろしくお願いします」

 

俺はバイト先を間違えたかもしれん。まあ全部自分で招いた災いだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちはCircleを後にして、帰路についていた。

 

「陽くん! どうだった? ライブハウスでのお仕事は。これからもやっていけそう?」

「う~ん、どうだろ? まあぶっちゃけ、今日やったのって、お前に機材を運びに行っただけだからまだよく分かんねー」

 

俺の答えに彼女は、そっかと少し不安そうに言った。そこで俺は、「でも」と付け足した。

 

「まあスタッフさんの感じとか、あそこの雰囲気自体見ても、悪い職場じゃあないことは何となく分かるし。それに、お前の紹介してくれたバイトだ。まあ間違いなくいいとこなんだろうし、そもそもそんな簡単に辞めるかっての。お前の顔に泥濡れるかよ」

「……そ、そっか。うんうん、そっか。それなら良かった!」

 

もう暗くなっていたが、それでも尚はっきりと分かるくらい彼女の顔はパァッと明るくなった。まるで夜空の星の様に。

 

「ま、兎に角俺なりに頑張ってみるよ。ありがとな。目的だった美人上司さん以外は問題ねーよ」

 

もうあの人に関しては細心の注意を払わねば。今度こそ殺られる。

 

「いや~、アレはホントに陽くんが悪いよ。まあ、ちょっとまりなさんにも問題があるけど……。それでも! あの発言をあのお年頃で独り身の女性に言うのはデリカシー無さすぎだよ!」

 

ぐうの音も出ない切り替えしだが、お前もお前で今凄い配慮に欠ける発言したよ。本人いたら多分崩れ落ちて泣くんじゃねーかな? 

 

「もう! ホントに辞めさせられるかもってドキドキしたんだから!」

「よかったじゃねーか。お前の大好きなドキドキが体験できて」

「ドキドキはドキドキでも、キラキラしてないとダメなの!」

 

あらら、ドキドキ違いでしたか。そりゃ残念。

 

「またそうやって茶化して……。だいたい、今日一日で何回女の子の地雷踏んでるの? 陽くんには、致命的に女の子に対しての配慮が足りません! 反省して!」

「まあ流石に今日でそれはハッキリ分かったわ。反省してるよ」

 

実際今日一日でここまで踏みまくれるのは、寧ろ才能とまで言えないだろうか? よく今日の今日まで女性に後ろから刺し殺されなかったものだと思う。

 

「でもお前に配慮云々言われんのは何か違う気がするわ。せめてもうちょっと思慮分別のある人間に言われたかった」

「あー! また言った! また言っちゃった! そういうのが配慮に欠けてるって言うの!」

「いや、今のは流石に分かってて言ったぞ」

「尚更良くない!」

 

ふはははは。俺もそこまで馬鹿じゃないからそれは分かってたさ。でもコイツにそういうこと言われんのは何か本能的なものが許さなかったのだ。

 

 すると彼女は徐にポケットからスマホを取り出した。

 

「分かった。陽くんがそのつもりなら私にも考えがあるもんね!」

 

そう言って彼女はスマホに何かを打ち込んでいた。何だろう、無性に嫌な予感がしてきた。誰かに何かを送ってるのだろうか?このタイミングで?誰に?何を?そこまで思考を巡らせてようやく、自分の置かれた状況のまずさにも気付いたが、時すでに遅く… 

 俺のスマホが不気味に鳴った。画面を点けるとそれが沙綾からのメッセージであると分かった。

 恐る恐る開くとそこには

 

『明日七時に私ん家に来て』

 

 たったこれだけの文章なのに、これが死地への赤紙であることが分かった。如何やら俺は明日、やまぶきベーカリー(ゴルゴタの丘)に行かねばならんようだ。

 

 ゆっくりと視線を上げ、今度は香澄の方を見てみると、それはそれはしてやったりの顔で俺を見ていやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、最後の晩餐は何にしようかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆の評価と感想でどうか私のガチャ運の無さを慰めて~


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