IS〜5人の転生者とイレギュラーがいる世界〜(仮)   作:巫女好きの満月

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2人の転校生(そのうち1人は男子)

    

 side秋一

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

「え、そう? ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインが良いの!」

「私は性能派だからミューレイのかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノは良いけど、高いじゃん」

 

 多分誰もが嫌な月曜日の朝。クラスの女子たちがわいわいと談笑していた。手にカタログを持っていて、さっきチラッと見えた感じだとISスーツのことで話をしているようだ。

 

「そういえば、織斑くんたちのISスーツってどこのやつなの? 見たことない型だけど」

「あー、俺と秋一のは特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしい。シンと稲穂のは?」

「俺は一応親がIS関係の企業で働いてるから、そこで作ってもらった特注品」

「僕は博士製」

 

 ちなみにISスーツとは文字通りIS展開時に体に付いている特殊なスーツのこと。このスーツなしでもISを動かす事は可能だが、反応速度がどうしても鈍る。

 その理由は────。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れていて、一般的な小型径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止められますが、衝撃などは消せません」

 

 すらすらと説明をしながら現れる山田先生。うん、今日も可愛い。

 

「山ちゃん詳しい!」

「一応これでも先生ですから……ってや、山ちゃん?」

「山ぴー見直した!」

「今日が皆さんのISスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきたんです。えへんっ。……ってや、山ぴー?」

 

 入学してから早2ヶ月。山田先生には8つくらい愛称が付いていた。慕われている証拠なのに違いはないのだが、それは教師としてか、それとも別か、俺には判断がし辛い。

 

「あのー、教師を渾名で呼ぶのは……」

「えー、いいじゃんいいじゃん」

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

 止まらない女子たちの渾名披露会。山田先生がなんとかしようとしているが、止まる事はない。

 まぁ、最終的に「先生はつけてください」と山田先生が泣きながら言って終わった。けど、あの返事の仕方からして直す気はないな。

 

「諸君、おはよう」

「お、おはようございます!」

 

 わいわいとしていた教室が一瞬で静かになる。うん、よく調きょ────もとい教育されているのが分かる。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるのだ各人、気を引き締めるように。忘れた者はかわりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもない者は……まあ、下着で構わんだろ」

 

 いや、構うだろ! と俺たちは心の中で突っ込む。去年まではどうだったかは知らないけど、今年は俺たち男子がいるんですよ? 流石に、不味いと思う、下着姿は。

 

「山田先生、ホームルームを」

「はい」

 

 おっ、おう。さっきのことを気にしてるのか山田先生が、しっかりとやろうとしてる。

 

「今日はなんと、転校生を紹介します! それも2人も!」

「え……」

「「えええええっ!?」」

 

 いきなりの転校生紹介にクラス中が一気に騒つく。

 それにしても、何でうちのクラスなんだ? 稲穂なら何か知っているかもと思い、後ろを見ると稲穂はいつもと同じ無表情でただ前を向いていた。

 うん、よく分からん。

 

「失礼します」

「…………」

 

 教室の扉が開く音が聞こえてきて前を向く。そして、それと同時に騒めきがピタリと止まる。

 まぁ、流石にこれは止まるよな。だって────2人のうち1人は男子だったんだから。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。みなさん、よろしくお願いします」

 

 転校生の1人であるシャルルは誰もが見惚れる(一部の人を除く)笑顔でそう言い、一礼した。

 呆気に取られたのは俺たちだけじゃない。このクラス全員だ。

 

「お、男……?」

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を────」

 

 人懐っこそうな顔、礼儀正しい立ち振る舞いと中性的な顔立ち。髪は金色で体は華奢に思えるくらいスマート。

 嫌味のない笑みが眩しい。

 

「きゃ……」

「はい?」

「きゃあああああ────っ!」

 

 この前聞いた爆音とほぼ……もしかしたらそれよりも大きい音が叫び声が教室中に響く。それに対応できなかった俺と一夏、シンはそれにダメージを食らう。稲穂? ちゃっかりと耳栓付けてたよ。

 

「男子、5人目の男子!」

「しかも、うちのクラス!」

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

「しかも、金髪! 今までにないタイプ!」

「このクラスに入れて良かったぁ────!」

 

 元気だな……いや、はすがにこれはその範疇を超えてるだろ。そう言えば、教室は寮の部屋と違って防音ではないはずだから、他のクラスの迷惑になってるのでは? なんか、そう思うと他のクラスの教員のみなさんに申し訳なく思ってしまう。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 面倒そうに言う姉さん。その面倒そうなのは仕事? それとも十代女子の反応? まぁ、多分反応の方だろうね。姉さん、学生時代束さんくらいとしか関わっていなかったし。

 

「皆さんお静かに。まだ、自己紹介終わってませんから〜!」

 

 全員の意識の外から完全に忘れらされていたもう1人の転校生。いや、忘れてたわけじゃない。ただ、先の1人の方が印象的だったから。

 それにしても、もう1人はなんかこう、色々と俺たちとは違う気がする。

 輝くような銀髪を腰近くまで長く伸ばした少女。右目は赤いが左目には眼帯がついている。さらに、両手に手袋を嵌めている。

 そして、その少女の立ち振る舞いは、前世のアニメなどで見た軍人に近い。

 

「…………」

 

 それにしても、静かだな。腕組みをした状態のままでいる。

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

 

 姉さんに言われ、佇まいを直す少女にクラス一同はポカンとした。いや、クラス一同じゃないな。稲穂だけ何も変わっていない。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑さんと呼べ」

「了解しました」

 

 そう言ってすぐに敬礼した。……やっぱり、軍人か。姉さんを『教官』と呼んだということは、間違いなくドイツの軍人だ。

 何でそれが分かったのかって? それはとある事情で姉さんがドイツに軍隊教官として働いたことがあると聞いた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「…………」

 

 クラスメイトたちの沈黙。続きの言葉を俺たちは待っているのだが、その続きは出てこない。

 ……何だろう。何処か既視感を感じる。

 

「あ、あの、以上ですか?」

「以上だ」

 

 うん。やっぱり、どこか既視感がある。

 俺はこれと同じようなものを見たことがある? 

 

「織斑一夏の自己紹介と似てる」

 

 あー! 確かに。一夏の自己紹介の時に似てるんだ! あー、良かった良かった。謎が全て解けた。

 

「……っ! お前は────」

 

 あれ? なんか一夏の方に近づいていってね? ボーデヴィッヒさん。

 一歩、一歩近づき、そして一夏の前に来るとボーデヴィッヒさんは────バンッ! と一夏の顔の前に何かを出した。

 

「え…………っ?」

「私と戦え、織斑一夏」

 

 一夏の前に出されたのは『果たし状』と書かれた封筒だった。

 ……えっ、果たし状? なんで? 

 困惑する一夏と稲穂を除く俺を含めたクラスメイトたち。そんな状態の俺たちを放置してボーデヴィッヒさんは今度、俺の方を向いた。

 えっ、なに、俺にも何かあるの? 

 そう思っていると、ボーデヴィッヒさんは自分が付けていた左の手袋を外して、俺に投げてきた。

 えっ、本当に何これ? 

 

「拾え、織斑秋一」

「は……っ?」

 

 これにはクラスメイトたちだけじゃなくて先生方も固まってる。うん、何これ本当に。てか、これどういう状況? 

 

「なぁ稲穂。これ、どういうことか分かるか?」

「白手袋。たしか欧米だと白手袋を相手に投げるのは相手に決闘を申し込み、相手がその手袋を取ったら決闘受諾の合図とする伝統があった筈。だから、織斑一夏と同じで『私と戦え』って暗に伝えてるのだと思う」

「……そういうことなのか?」

「そうだ、私と戦え織斑秋一」

 

 流石稲穂。そして、血の気が多いなーボーデヴィッヒさん。

 

「あー、ゴホン! ボーデヴィッヒ、今はホームルームだ。そういったことは別の時間にしろ」

「……っ、申し訳ございません!」

「これでホームルームを終える。各人はすぐに着替えて第2グラウンドに集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。遅刻は許さん、以上解散!」

 

 ぱんぱんと手を叩き行動を促す姉さんとそれに従い行動を始める俺たち。ちなみにボーデヴィッヒさんはもう移動している。

 

「織斑兄弟、黒崎、貝塚。お前たちはデュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

「了解です」

 

 姉さんに言われて、まだ立ったままでいるデュノアの方に近づく。

 

「えっと、君はたしか織斑……秋一君だよね? 初めまして。僕は────」

「それは、良いから。とにかく移動しよう」

「そうだな。女子が着替え始めるし」

「このままいたら犯罪者になる」

 

 一夏がデュノアの手を取って、走る。俺とシンはそんな2人の前を先行するように追い抜く。

 そして、そんな俺たちの前にいるのは俺たちよりも先に教室を出ていた稲穂。

 

「稲穂!」

「急いだ方がいい。もう近づいてきてる」

「えっ? えっ?」

 

 状況がイマイチよく分かっていないデュノアの困惑した声が聞こえてくる。すまんなデュノア。今は君に構っている余裕はないのだよ。

 

「見つけた! 1組の男子転校生!」

「しかも見て! 織斑……一夏くんと手を繋いでる!」

「えぇっ!? 織斑……一夏くんは弟の秋一くんとの掛け算が正義なのに……っ!」

「いいえ、よく見なさいあなた達! あの織斑弟くんの顔、何処か寂しがっているあの顔を!!」

「っ!? そういうことですか!」

 

 えっ、どういうこと? 俺あなた達の中でどんな扱いなの!? 

 

「あの人たちは『隣の季節』の作者とその読者だ。どこよりも早く情報を得ることに関しては長けている」

「説明どうもありがとう稲穂! あと、何その本!」

「『隣の季節』、一部の上級生が脚本を、絵などは1年生の人が担当している恋愛漫画。主に2年生と1年生を中心に人気。また、通常版は100円だが1ヶ月に1度しか発売されない限定版の方は1000円で売られている」

「本当に質問に答えてくれてありがとう! ついでにこの状況を打開す方法も答えてくれるとありがたいなぁ!」

 

 ちなみにこの会話をしている間も走っているので、正直に言って辛い。

 

「一応使えるルートは幾つかある。けど、思ったよりも情報伝達が早い。このまま廊下を走っても間に合う可能性は低い」

「だろうね!」

「だから廊下から行くのを諦めよう」

「は?」

 

 何を言ってるんだ稲穂? 廊下を通らないとグラウンドまで行けないじゃないか。

 いや、でも稲穂のことだ。他のルートもあるのか? 

 そう思って稲穂の後をついていく。一夏たちも俺についてくる。

 しばらく走ってついたのは……行き止まり? 

 

「稲穂、道なんて無いぞ?」

「うん。道はない、でも窓がある」

 

 うん、確かに窓があるな。……まさか。

 

「窓から出てグラウンドに行く」

「ハアアッ!?」

「急いで、追いつかれたら間違いなく遅刻する」

 

 そう言って窓を開けてそこから飛び出す稲穂。……えっ、本当に出ちゃったよ。てか、意外と高っ! 稲穂のやつ大丈夫か!? 

 そう思って見てみると稲穂は途中からISを足だけ部分展開して着地していた。あー、確かにそうすれば怪我することなく行けるな。

 てか、今気づいたけど、一夏たちと逸れてたよ。通りで追手が少なかったわけだ。

 バタバタバタとこっちに近づいてくる足音。やっべ! 急がないと……。

 窓に足をかけて、そのまま飛び降りる。地面が近づくのに恐れず、そのまま部分展開。よし、成功した! 

 このペースなら余裕で間に合う。ありがとう稲穂……ッ! 

 

 

 一夏とシン、シャルルも無事(正確には時間に少し遅れた一夏とシンの頭に出席簿が振り下ろされたが)第2グラウンドに到着し、授業が始まる。

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

「はい!」

 

 1組と2組の合同のためかいつもより人は多い。ついでに言えば、俺たち男子に向けられる視線も多い。

 

「くう……っ。何かというとすぐにポンポンと人の頭を……」

「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい……」

 

 ズキズキと叩かれた場所が痛むのか、オルコットさんと鈴は涙目だ。ちなみに、この2人なんで叩かれているかというと一夏とシンに絡んでしまい姉さんの出席簿をくらったからだ。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。────凰! オルコット!」

「な、なぜわたくしまで!?」

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。いいから前に出ろ」

「だからってどうしてわたくしが……」

「一夏のせいなのになんであたしが……」

「お前ら少しはやる気を出せ。アイツらに良いところを見せられるぞ?」

 

 おっ、おう。一瞬でオルコットさんと鈴のやる気ゲージがマックスになったぞ。

 まぁ、当の本人たちは気づいていないけど……。ほら、なんだろ? 的な顔してるよ。

 

「それで、相手はどちらに? わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」

「ふふん。それはこっちの台詞。返り討ちにしてあげるわ」

「慌てるなバカども。お前たちの相手は────」

 

 姉さんが何かを言う前に何か空気を裂く音が聞こえてくる。嫌な予感が……。

 

「織斑一夏、そこから離れた方がいい。織斑秋一も」

「「へっ?」」

 

 稲穂の言葉に呆気に取られる俺と一夏。

 

「あああーっ! ど、どいてください〜っ!」

 

 そんな声が聞こえてきて慌てて離れる俺。一夏? 置いてきましたが何か? 

 視界の隅で稲穂がスレイプニルを展開して盾を構える。えっ? なに? 攻撃でもくるの? 

 そんな疑問を思った瞬間、ドカーン! っと一夏のいた場所とその周囲が土煙に襲われた。稲穂のやつ、これが分かって盾を展開したのかよ。

 土煙が晴れていく。そして、そこで見たのは……。

 

「あ、あのう、織斑くん……ひゃんっ! そ、その、ですね。困ります……こんな場所で……。いえ! 場所だけでなくてですね! 私と織斑くんは仮にも生徒と教師ででして! ……ああでも、このまま行けば織斑先生が義姉さんってことで、それはそれで魅力的な────」

 

 山田先生に覆い被さり、かつそのたわわな胸部装甲を揉みしだいている一夏の姿だった。

 ……うん。とりあえず、一夏、そこ変われ(とっとと離れろ)

 

「いいい一夏あああ」

 

 鈴? お前、何、双天牙月を連結してんの? しかもそれ投げようとしてない? てか、投げたぁぁ!? 

 

「うおおっ!?」

 

 叫び声を上げる一夏。うん。俺もあんなものが投げられたら驚くわ。しかも鈴のやつ躊躇うことなく一夏の首目掛けて投げてやがる。

 しかも一夏はタイミングからしてかわせない。アレ? もしかしてこれ殺人事件が起こるの? 起こっちゃうの? 

 

「はっ!」

 

 だが、そんなことは起こらなかった。ドンッ! ドンッ! と短く2発、発砲音が聞こえてきて、そして双天牙月を弾いた。

 マジかよ。それをやった人物に俺は目を向ける。それをやったのは一夏の下で倒れている山田先生。上体だけをわずかに起こしただけの不安定な状態で射撃を行いしかも当てる。

 俺も射撃型の専用機だから分かる。あんな不安定な状態での命中率は低くなる。なのに山田先生はあてて見せた。

 

「…………」

 

 驚いているのは俺だけじゃなく、他の人たちもだ。って、稲穂のやつは驚いてないな。もしかして、知ってたのか? 

 

「山田先生はああ見えても元代表候補生だからな。今ぐらいの射撃は造作もない」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし……」

 

 山田先生の雰囲気が元に戻る。くるんと体を回して起き上がるとメガネを両手で直した。

 

「さて、小娘ども。いつまで惚けている? さっさと始めるぞ」

「え? あの、2対1で?」

「いや、さすがにそれは……」

「安心しろ。今のお前たちならすぐ負ける」

 

 負ける、その単語を言われた瞬間オルコットさんと鈴がその瞳に闘志を滾らせる。

 

「では、始め!」

 

 号令と同時に飛翔するオルコットさんと鈴。それを目で確認してから山田先生も飛翔した。

 

「手加減はしませんわ!」

「さっきのは本気じゃなかったしね!」

「い、行きます!」

 

 口調こそいつもの山田先生だが、その雰囲気はいつもとは違う。オルコットさんと鈴が先制攻撃をする。だが、それを山田先生は余裕をもって回避した。

 

「さて、今の間に……そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみろ」

「はっ、はい。山田先生が使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第2世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは初期第3世代型にも劣らぬもので────」

 

 空中での戦闘を見ながら解説していくシャルル。その様子を見ながら俺は稲穂に話しかけた。

 

「なあ、稲穂。お前はどっちが勝つと思う?」

「山田先生」

「即答かよ」

 

 俺がどちらが勝つかを聞くと山田先生と即答する稲穂。

 うん、稲穂が即答するってことは山田先生の勝ちは揺るぎないんだろうなぁ。

 

「セシリア・オルコットも凰鈴音も強いのは確か。機体性能も2人の方が上、だけど────」

 

 稲穂の視線が衝撃砲を撃とうとしている鈴に向けられる。

 

「────チームワークのない、打ち合わせもしていない2人は互いが互いの枷となり障害物となる」

 

 鈴のいる場所にオルコットさんが勢いよく突っ込み、ぶつかったところでグレネードが投擲。一際大きな爆発が起こって、2人が地面に落ちてくる。

 

「くっ、うう……っ。まさかこのわたくしが……」

「あ、アンタねえ……何回避先読まれてんのよぉ……」

「り、鈴さんこそ! 無駄にばかすかと! 衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」

「それはこっちの台詞よ! なんですぐにビットを出すのよ! しかも当たらないし、牽制にもならなかったし、エネルギー切れるのも早いし!」

「ぐぐぐぐ……っ!」

「ぎぎぎぎ……っ!」

 

 成る程、確かにこれは酷い。

 

「落ち着け、貴様ら。諸君らも、これでIS学園教員の実力さ理解できただろう。以降は敬意を持って接するように」

 

 手を叩いて姉さんがみんなの意識を切り替える。

 

「専用機持ちは織斑兄弟、黒崎、貝塚、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では5人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな? では分かれろ」

 

 姉さんがいい終わると同時に一斉に俺たち男子陣に群がる女子たち。

 

「織斑君、一緒に頑張ろう!」

「秋一くん、よろしくお願いします!」

「黒崎君、教えて〜」

「デュノア君の操縦、見たいなぁ?」

「なおなお〜、お願い〜」

 

 ……わー、予想を遥かに超える繁盛ぶり。どうすれば良いんだこれ? 

 そんな風に困っている現状を見かねたのか、それとも自らの浅慮に嫌気がさしたのか、姉さんは面倒そうに額を指で押さえながら低い声、俗に言うドス声というもので告げた。

 

「この馬鹿者どもが……。出席番号順に1人ずつ各グループに入れ! 順番はさっき言った通りだ! 次にもたつくようならISを背負ってグラウンドを100周させるぞ!」

 

 鶴の一声……いや、鬼の一声でワラワラとアリのように群がっていた女子たちが散っていき、2分とかからずにグループがキチンと作られた。

 

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

 ふうっとため息を漏らす姉さん。

 

「……やったぁ! 織斑君と同じ班っ。苗字のおかげね……っ」

「私は秋一くんだっ! 茜も嬉しいでしょ?」

「えっ!? そ、それは……うん」

「黒埼君、よろしくね?」

「稲穂君よろしく〜」

「……うー、セシリアかぁ」

「……凰さん、よろしく! あとで織斑君とかの話聞かせてよ!」

「デュノア君! わからないことがあったらなんでも聞いてね! ちなみに私はフリー! いつでもウェルカム!」

 

 ワイワイと姉さんにバレないように盛り上がる女子たち。それにしても、唯一あまり騒がしくないのはあの転校生、ボーデヴィッヒさんだけど……。

 ボーデヴィッヒさんのところを見る。すると、そこで俺はあるものを見た。

 

「なるほど、あの2人はそういう関係なのか」

「そうなんだよ! ほら、ここ! こういうのもきっとやってるんだよ!」

「む……っ、なんだこれは? 何故裸同士で────」

 

 なんか本(BがLの本)を読んでいた。えっ、なにあれ? なんか、心なしかあの表紙俺と一夏に似てるような気がするんだけど。

 てか、あの本のタイトル『隣の季節』って書いてあるんだけど!? えっ、稲穂は恋愛漫画って言ってたけどその実BがLの本だったの!? 

 

「なるほど、中々興味深い話が聞けた。その対価店……ではないがISについて教えよう」

「「「「「ありがとうボーデヴィッヒさん!」」」」」

 

 ちょっと待って! 何、教えてるのそこの女子たち! ボーデヴィッヒさんも何が『興味深い話が聞けた』っだ! ただの腐女子トークじゃないか! 

 

「ええと、いいですかー? これから訓練機を1班に1機取りに来てください。『打鉄』と『リヴァイヴ』が各4機ずつです。好きな方を班で決めてとりに来てくださいねー。あ、早い者勝ちですよー」

 

 山田先生がいつもよりもちゃんと先生をしてる……だとっ!? と驚いている時間がもったいないか。

 それにしても、ISスーツだと普段から揺れるその大きなものが余計────。

 

「いったぁ!?」

「秋一くん、何を考えていたのかな?」

 

 いきなり背中をつねられた。何気に痛い。いきなりだったからつい声が出てしまった。

 それをしたであろう人物、近藤さんに視線を向ける。うわっ、なんかすごい良い表情をしてるよ。

 

「山田先生の胸を見るのは良いけど、さっさと実習を始めよ?」

「りょっ、了解」

 

 始めよ? のところで何か見えてはいけないものを見てしまったような気がする。しかも、言ってることが正論だから何も反論できない。

 

『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので設定でフィッティングとフォーマットは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってください』

 

 ISのオープンチャンネルで山田先生から連絡がきた。とりあえず稲穂との勉強のおかげでそこまでなら意味がわからないものもないし、何とかなる! 

 

「それじゃあ、出席番号順にISの装着と起動、そのあと歩行までやろう。1番目は────」

「はいはーい!」

 

 元気よく手を上げて飛び跳ねる子。山田先生よりは小さい(当たり前)が普通くらいの胸を揺ら────っといかんいかん。

 

「出席番号2番、蒼井佳奈美! 漫研所属! 趣味は人間観察!」

「えっ、何故にいきなり自己紹介を?」

「末長くよろしくお願いします!」

 

 そう言って頭を下げて手を出すクラスメイトならぬ蒼井さん。え? なーにこれ? 

 

「あっ、佳奈美ズルイ!」

「一目見た時から決めてました!」

「自己紹介から決めてました!」

「えっ、えっと……今日見て決めました?」

「いや、そこは乗らなくても良いから!」

 

 何故か目の前に一列に並んでお辞儀して手を突き出してくる女子たち。どうすれば良いのか分からずに他の班を見るが一夏やシン、稲穂、デュノアさんのところも同じようになっていた。

 

「えー、これどうすれば……?」

 

 空を仰ぎたくなる気持ちを押さえて何とかしようと考えるが、やべえ、何も思いつかない。こういう時は────稲穂! 

 稲穂にプライベート・チャンネルを繋げる。

 俺には無理でも稲穂なら何とかできる……はず。

 

『この状況から助けてくれ、稲穂!』

『大丈夫僕の予想通りならあと少しすればこの状況も終わる』

 

 えっ? 稲穂さん今何と? この状況があと少しで終わる? どうやって? 

 そう思っていると、スパパパパーンッ! とこれまでに聞いたことのない炸裂音が鳴った。

 えっ、まさか稲穂の言ってたことって……。

 

「ほう、凄まじいやる気だな。だが、これだと男子生徒が少し尻込みしてしまうな。変わりに私が直接見てやろう。最初は誰だ?」

「え……っと、そのー、先生のお手を煩わせるわけには……」

「何、遠慮はするな。将来有望な者、やる気に満ち溢れている者にはそれ相応の訓練が必要だろう? ……さぁ、出席番号順に並べ。先頭から始めていくぞ」

 

 ひいっと小さく息を飲むデュノア班。うん、可哀想に。

 そして、そんな生贄(デュノア班の女子)の惨状を見て飛び火を恐れた他の女子たちは流れるように解散。俺のところは蒼井さんがISの外部コンソールを開いてステータスを確認している。

 

「よしっ、始めようか。蒼井さん、ISには何回か乗ってる?」

「うん。授業で数回」

「じゃあ、大丈夫か。とりあえず装着して起動までやろう」

「分かった!」

 

 慣れた様子でISを装着、さらには起動、歩行まで流れるように進めていく蒼井さん。えっ、何この子。普通に上手いんですけど。

 

「あっ、装着解除時にはしゃがんで、そうじゃないと次の人が困るから」

「了ー解!」

 

 危ない危ない。しゃがむのを忘れるとISは立ったままの状態で、次の人をコックピットまで運ばないといけなくなる。

 あー、危ない危ない。

 

「あー! 織斑一夏くんの班、お姫様抱っこで運んでるー!」

「「「「なっ、なんだってー!!」」」」

 

 えっと思い一夏の班のところを見る。あー、なるほど立ったまま解除しちゃったのね。だからかー。

 

「あー、ちょっと勿体無かったかぁ」

「いや、ちゃんとやったんだから良いじゃん!」

「えーでもねー」

 

 そう言ってチラッとシンの方を見る蒼井さん。あー、シンの方もお姫様抱っこやってるよ。

 ……っ、まさか、稲穂もやってるのか? お姫様抱っこ! 

 そう思って確認してみる。

 

「はい、乗って。上げるから捕まって」

「うん。ありがとう稲穂くん」

 

 スレイプニルの両腕に展開した盾の上に瑠璃を乗せて上に上げていた。

 あー、お姫様抱っこじゃないけど、運んでるわ。

 

「ねっ?」

「いや、ねっ? じゃないから」

 

 この後、無茶苦茶説得しながら全員にISを装着させた。

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