IS〜5人の転生者とイレギュラーがいる世界〜(仮)   作:巫女好きの満月

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訓練と理由

    

 昼休み、本来なら友人とともに昼食を食べたりする時間。

 だが、ここ第2整備室ではそんな暇はなかった。

 

「システムチェック、整備のチェックはどう!?」

「組み立ては8割終わった! でもシステムの方がまだバグ取りが終わってない!」

「稲穂くん! システムチェックの方に来て!」

「分かりました。布仏本音、僕の代わりに整備班に」

「了〜解」

 

 打鉄弐式の組み立てとそのシステムを完成させる。そのことだけを考えて人が次々と動いては入れ替わっていく。

 打鉄弐式の装甲が組み立てられていくのに並行して簪と数名の上級生、稲穂が打鉄弐式のシステムプログラムを改善していく。

 

「組み立て終わり! 整備もついでに終わったよ!」

「終わった人から片付けを。手が空いた人はシステムの方を手伝ってください」

「武装の方はどうする?」

「明日から随時やっていくので整理と整備をお願いします」

 

 あっちこっちから聞こえてくる声に稲穂は返事をしながらも自分の手を止める事はしない。……いや、手を止めるどころかスレイプニルを部分展開してその副腕も使ってさらに仕事をこなしていく。

 そして昼休みが終わる数分前に────。

 

「……これで、終わり」

 

 タンっと簪の叩いたキーボードの音が整備室に響いた。その音と、簪の言葉に整備室にいた人は全員肩の力を抜く。

 2人を除いて。

 

「更織簪、今日の放課後第3アリーナを借りてある。そこで試運転をしよう」

「……分かった」

 

 簪と稲穂だ。2人はまだ試運転を終えていないからという理由でその肩の力を抜くことはしていない。

 それに苦笑いする上級生たちと本音。一応、武装以外のところは終わったのだから気を抜けば良いのにと思ってはいるが、それでもまだ試運転が終わってないことを考えると仕方がないと思い直す。

 

「試運転が終わったら今度は武装かぁ。……ねぇ、本当に例のアレ、いやアレら? 実装するの?」

「……はい。駄目ですか?」

「いや、駄目じゃないけど……」

 

 上級生の視線が自分たちの手に持っている武装データの方に移る。そこには、新たに生まれ変わる打鉄弐式に搭載される予定の武装リストがあった。

 何個かは普通にミサイルや薙刀などで何も言うことはないが、上級生たちが目を向けているのはその下にある本来の打鉄弐式にはなく、後で考えられたもの。

 

「……まぁ、本人が良いって言ってるなら良いか」

 

 上級生たちは簪の顔を見て無理矢理納得した。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 side秋一

 

 時は過ぎて、デュノアが転校してきてから5日経った土曜日。俺はアリーナに来ていた。

 IS学園では土曜日の午前中にも授業がある。だが、その午前中を乗り切れば完全に自由な時間が待っている。だが、土曜日はすべてのアリーナが開放されているため、ほとんどの生徒は自主訓練をしにアリーナに来る。

 それは俺も同じ。今日は稲穂とシンを誘って自主訓練をしようとしていたのだが、稲穂は別用で来れないためシンと2人でやろうと思い、アリーナに来るとそこには既にデュノアと手合わせをしている一夏たちがいた。

 手合わせが終わった時に、デュノアからどうせなら一緒に訓練をしようと誘われたため、俺たちも入れてもらったのだが……。

 

「思った以上に、デュノアは操縦が上手いな」

「そうだな。それに、教えるのも上手いぞ」

 

 デュノアが一夏に付きっきりでさらには一緒にいた箒と鈴もそこに混じっているため、俺とシンは暇になってしまった。

 オルコットさんも一応いるのだが、今はビットを動かしながら自分も動く訓練をしていて、流石に邪魔をするのも忍びないと思って声はかけていない。

 

「オルコットさんも頑張ってるな」

「次の学年別トーナメントに向けての訓練だってさ。最近は模擬戦を控えめにしてビットの操作とか狙撃の練習をしてる」

「詳しいな」

「俺も一緒にやってるしな。それ」

 

「へー」と返しながらシンの顔を見る。うん、こいつその理由に絶対に気付いてないな。

 

「オルコットさんも大変だなぁ」

「え? 何がだよ」

「何でもない」

 

 大変と言えば、稲穂も大変そうだな。先週までは俺に訓練をしてくれてたけど、最近は時間が取れないって言ってたしな。

 また、前みたいに何かの資料でも作ってるのかと思ったんだけど、この前見たときはISの設計図らしきものを作ってたから多分別の用事か……。

 

「それにしても、当たらないな」

「一夏は昔から射的とか苦手なんだよな。というか、近接特化?」

「秋一はその逆で近接戦が苦手。マジで足して2で割ったら良い感じになるんじゃないか?」

「……自覚してんだからやめてくれよシン」

 

 そう、俺と一夏はそれぞれある一定のものに特化していて、それ以外はあまり成績が良くない。

 一夏は近接戦ではバリアー無効化攻撃の利点があるものの、それでも代表候補生レベルの戦闘ができる。

 俺は近接戦はあまりできないものの、射撃戦ではオルコットさんと対等に戦えるし鈴相手だと今のところ連勝続きだ。

 ……アレ? 本当に俺と一夏は足して2で割ったら良い感じになるのでは? 

 

「それにしても、シャルルのIS。言っちゃ悪いけど……」

「おい待てシン。言うな」

「稲穂のスレイプニルと色が似てるよな」

「言うなって言ったよな!?」

 

 そう、デュノアの専用機『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』の色合いはオレンジ色。稲穂のスレイプニルの色もオレンジ色、被っているのだ色合いが。

 

「はぁ、まあ良いや。それで、シンはどう戦うんだ?」

「何のことだよ?」

「デュノアと。学年別トーナメントで戦うことを想定してるんだろ? 何時もは暇があったら『模擬戦しよーぜ!』って言うお前が今日に限っては誘ってこないし、それに視線がデュノアから動いてないぞ」

「えっ、マジで?」

 

 シンが慌てて自分の顔を触るが多分、それだと分からないぞ自分の顔は。

 

「ねえ、アレって……」

「嘘っ!? ドイツの第3世代型?」

「まだ、本国でのトライアル段階だったんじゃ……」

 

 アリーナがざわつきだす。何だろうかと思い視線を移す。

 

「…………」

 

 そこにいたのは黒いISを身に纏ったボーデヴィッヒさん。

 転校初日以降、色々な人と関わって……いや、俺と一夏の情報を得ているのは知っているがなんで今ここに? 

 ちなみに、俺と一夏はボーデヴィッヒさんと一度たりとも戦っていない。いや、純粋に時間が無かったのと戦う理由がないからだけど。

 

「織斑一夏、織斑秋一。私と戦え」

「……何でだよ」

「お前たちについての情報はいろんな奴から聞いた。クラス代表バトルロワイヤル、クラス対抗戦。勝敗は置いておくとして、そのほとんどはお前たちが強いという話だった」

 

 なにこの子? なにが言いたいの? 

 

「それで、何だよ?」

「私は、お前たちから学びたいだけだ」

「学びたい?」

 

 ラウラの言っていることに俺と一夏は頭にクエスチョンマークを浮かべる。学ぶ? 俺たちのなにを学ぼうとしているんだボーデヴィッヒさんは。

 

「そうだ。私は学びたいのだ、知りたいのだ。教官が言っていた『お前たちの強さ』を」

「はぁ」

「だから戦え、織斑一夏、織斑秋一」

 

 ……正直に言って、意外だ。

 俺はてっきり、ボーデヴィッヒさんが俺たちと戦いたい理由は報復だと思っていた。

 ボーデヴィッヒさんが教官と慕っている姉さん。そして、おそらくボーデヴィッヒさんはあのことを知っているはずだ。『第2回モンド・グロッソの決勝戦』のことを。

 はっきり言えば、俺も一夏もこのことをあまり思い出したくもない。だけど、それと同時に俺たちにとっては忘れられない出来事だ。

 結論から言えば、俺と一夏は誘拐された。よく分からない奴らに。

 どういう目的なのかは未だに不明。俺と一夏は拘束されて暗闇に閉じ込められた。何分か何時間か、それとも何日かは分からないが俺と一夏は救出された。ISを纏い、モンド・グロッソ決勝戦を放り出してきた姉さんによって。

 今でも、昨日のように思い出せる。あの時の姉さんの姿を。俺たちの無事な姿を見て、安心したような顔をした姉さんの顔を。

 決勝戦は勿論姉さんの不戦敗。誰もが期待した大会2連覇は果たされることはなかった。誰しもが姉さんの優勝を確信していただけに、この事は大きな騒動を呼んだ。

 俺と一夏さえ、誘拐されなければ姉さんは大会2連覇の偉業を為した。だから、俺はてっきり姉さんの教え子であるボーデヴィッヒさんは俺と一夏のことが許さないのだと思っていた。だから、報復の意を込めて果たし合いもしくは決闘を俺たちに持ちかけたのだと思っていた。

 

「……悪いな。それ、また今度にしてもらえないか?」

「なに?」

「ボーデヴィッヒさんは知らないと思うけど、6月に学年別トーナメントっていうのがあるんだ。その時だったら、戦える」

「……なるほど。たしかに、今ここで戦うと周囲に被害が出るな。分かった。お前たちの提案を呑もう」

 

 大人しく、戻っていくボーデヴィッヒさん。アレ? 俺はてっきりまだ突っかかってくると思っていたけど、違ったのか。

 

『私はお前たちと戦う。お前たちも私と当たる前に負けてくれるなよ?』

 

 ボーデヴィッヒさんの姿が見えなくなる直前、そんな言葉がプライベートチャンネルで聞こえてきた。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

「全試験終了。武装各種、戦闘行動に問題無し」

「良かったぁ〜。ねっ、かんちゃんもそう思うでしょ〜?」

「……うん」

 

 夕方、アリーナの使用時間ギリギリ。

 第3アリーナから出てくる3人の影があった。稲穂、簪、本音の3人だ。

 

「それで生徒会長とはいつ?」

「……学年別トーナメントが終わったら、申し込もうと思ってる」

「学年別トーナメントに参加は?」

「……武装の確認も兼ねて参加するつもり」

 

 話し合いながら廊下を歩く3人。しばらく歩いていると、前に誰かが立っているのが見えた。

 

「……誰?」

 

 簪がその人物を見てそう言った。上級生と関わることが増えた簪だが、まだ同学年の人とはあまり関われていないのだ。

 だが、簪が知らないだけで稲穂と本音はその人物を知っている。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「貝塚稲穂」

 

 互いに互いの名前を呼び合う稲穂とラウラ。

 互いに何を思っているのか分からない仏頂面であるためそれは本音と簪には察さない。

 

「貝塚稲穂、お前に聞きたいことがある」

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