IS〜5人の転生者とイレギュラーがいる世界〜(仮) 作:巫女好きの満月
夕方をアリーナを2つのISが飛び回る。
1つは黒と緑のIS。肩にある大型の盾のような装甲が特徴的なそのISの名は黒鉄。操縦者は数少ない男性操縦者の1人、織斑秋一。
それに対立するように飛んでいるのは緑色のIS。IS学園に配備されている量産機ラファール・リヴァイヴ。その操縦者は秋一のクラスメイトである近藤茜。
2人の戦いは一見すると互角に見えるが、その実、茜の方が押されていた。
茜の撃った弾丸が、黒鉄の装甲に弾かれる。だが、秋一の撃った弾は寸分違わずラファール・リヴァイヴの装甲がない場所へと当たり絶対防御を発動させていく。
そして、それが繰り返されていき、そう時間が経たないうちに決着が着く。
『また負けたー!』
『よしっ!』
秋一の勝ちという結果を見て悔しがる茜。秋一は自分が勝ったことに喜んでガッツポーズをする。
『それじゃあ、近藤さん。夕飯ゴチになります!』
『う〜、私から言い出した事だからね。分かったよ〜』
アリーナの上空からゆっくりと降りてくる2人をアリーナの下から眺めていた稲穂はタブレットを操作しながら降りてくるのを待つ。
そして、2人が地上に降りてISを解除する。
「お疲れ様」
「……う〜、ごめんね稲穂くん。折角教えてもらったのに」
「いや、アレは僕のミスだ。黒鉄の装甲を過小評価していた僕の失態だ」
「ううん。それでも、途中からそれが分かったんだから私で修正しないといけなかった。ところでさ、稲穂くん。もう少し威力の高い射撃武装は無いかな? 今のままだと決め手にかけるからさ」
「アレよりも威力の高い物だと機動力が低下する。それでも良い?」
「うん! あっ、それと────」
茜と稲穂がそれぞれ会話をしつつも次々と情報を交換していく。その様子を見ながら秋一は自分の専用機である黒鉄の待機状態であるドックタッグを見ながら先ほどの模擬戦を思い出す。
終始押していたのは秋一であったが、所々黒鉄でなければ大ダメージを受けていた場所があったのを秋一は自覚している。
「……秋一くんはこのあとどうするの?」
「あー、シャワー浴びに部屋に戻るよ。だから後で食堂に集合しようぜ」
「分かった。じゃあ、私は先に戻るね」
ラファールとともにアリーナから出ていく茜の姿を見送る稲穂と秋一。
「それじゃあ、俺たちも────」
────戻るか。そう言おうとした秋一の言葉は途切れた。
何故か、簡単だ。ドドドドドッ! と地鳴りにも聞こえる謎の音が聞こえてきたからだ。
だが、稲穂はそんなことはどうでも良いとでも良いたげにアリーナから出ようと扉を開け中に入っていく。秋一もそんな稲穂に戸惑いながら付いていく。
ISスーツから着替えて廊下へと出る稲穂と秋一はそのまま寮の方へ歩いていくと、再び地鳴りにも聞こえる謎の音が聞こえてきた。しかもそれは秋一と稲穂の方に少しずつ近づいてきている。
そして────。
「織斑秋一くん!」
「稲穂くん!」
近づいてきたのは……いや、突撃してきたのは数十名の女子生徒だ。胸元のリボンの色からして1年生。そしてその手には1枚の紙が握られていた。
「なっ、なんだなんだ!?」
「「「「「これ!!」」」」」
状況が飲み込めていない秋一と何も言わずにその紙を見つめる稲穂へバンッ! と女子生徒一同がその紙の内容を見せてきた。
「えっ、えっと、『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、3人1組のチームでの参加を必須とする。なお、チームができなかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』────』
「そこまでで良いよ! だからっ!」
一斉に伸びてくる手、手、手。何も知らない人が見たらホラー映画のワンシーンにも見えるような光景が広がる。
「「「「「私と組んでください!」」」」」
☆☆☆☆☆
side秋一
さて、この状況をどうしようか。そう俺は思いながら稲穂の方を見る。
稲穂は先ほどから見せられた紙から視線を逸らさずに何かを考えて……いるのかこれは?
相変わらず稲穂の顔はピクリとも動かないから正直何考えてんのか、ほれとも考えてないのか分からないんだよなぁ。
「あー、俺は────」
「織斑秋一は近藤茜とペアを組む予定がある。僕はまだ織斑先生からの頼まれごとがあるから今日は返事ができない。もし、組むことになったら会いにいくから名前とクラスを教えてほしい」
俺が何かを言う前に稲穂が全部処理しようとしていた。
えっ、てか今俺、近藤さんとペアを組むことが確定された!?
稲穂に抗議しようと視線を向けると稲穂が手を振っているのが見えた。
ひょっとして、俺を逃がそうとしてくれているのか? たしかに、今あの女子生徒たちは稲穂の方に集中していて俺の方は見えていないように見える。
とりあえず、少しずつ後ろへ下がるが、誰も気づかない。稲穂が少しだけ首を縦に振る。どうやら俺の考えは合っていたようだ。
足音を出さないギリギリの速さで急いでここから逃げる。稲穂、マジでありがとう!
「あっ、さっきぶり秋一くん」
「さっきぶり、近藤さん」
シャワーを浴びてから食堂へ行く途中で近藤さんと会い、そのまま食堂へ向かう。
「稲穂くんは?」
「女子生徒に捕まってるよ。しばらくは抜け出せないと思う」
「そっか」
色々と話しながら券売機に向かい互いに今日の夕飯を選ぶ。
うーん、今日は確か昼にうどんを食べてるしなぁ。麺類は止めとくとしてやっぱ米は食べたいよな。だとすると、日替わり和食定食にするか。食券を買いそのままおばちゃんに渡す。
あとは、呼ばれるまで待つだけだけど……なんか、凄い見られてるな。
いや、見られてるのはほぼ毎日だけど今日のこの視線は例えるならそう、獲物を狙う肉食獣の眼だ。
それに少し震えながらも、出てきた定食を受け取る。近藤さんがまだ悩んでいるのが見えたから先に先でも取ってるか。
キョロキョロと席を探す。おっ、一夏はいる……けど、その周りにいる箒と鈴が地味に怖い。一夏の隣にいるデュノアがなんか苦笑いしてるぞ。シンもその近くにいるけど、あー駄目だ。オルコットさんに捕まってる。
よし、面倒ごとは回避するに限る! さり気なくその近くを避けてちょうど良く空いているテーブルに座る。
さてさて、今日の日替わり和食定食の内容は……おお〜! 鰆だ、焼いた鰆に豆腐の味噌汁、ほうれん草のお浸しに梅干しか。美味しそう(実際に美味しい)。
「席取っててくれてありがとう秋一くん」
「いや、俺もコレ奢ってもらってるからお礼を言わなくてもいいよ」
「いや、ソレは賭けの景品だから別に良いのに……」
苦笑いをしながら座る近藤さん。その手に持つお盆には日替わり洋食定食があった。
「近藤さんは洋食にしたんだ?」
「今日の日替わり洋食定食が美味しそうだったからね。ほら! このパンとかシチューとか美味しそうじゃん!!」
そう言って俺に見せるようにパンとシチューを持つ近藤さん。おいおい、流石にそれは危ないから止めなさい。こぼれたり落としたりするかもしれないでしょ。
「そういえば私さっき知ったんだけど」
「うん?」
「私、いつのまにか秋一くんのチームメイトになってたけど、アレどういうこと?」
「……んぐっ!」
忘れてた! そう言えば俺をあの女子生徒の大群から逃すために稲穂がそんなこと言ってた!
「……うん。なんとなく分かったよ」
「えっ? 今のだけで?」
「多分稲穂くんだよね? それをクラスメイトの子に言ったの」
えっ、マジで今の俺の反応だけで分かったの? 近藤さんエスパー?
「秋一くんはこういう時顔に色々と出るよ。あと、山田先生とかの胸見てるのも」
「なんですとっ!?」
馬鹿な……っ。俺はバレないように見てたはず。まさか、山田先生とか他のクラスメイトにもバレているというのか!?
「まぁ、山田先生とか他の人は気づいていけどね」
良かったぁと息を吐く。うん。マジで良かった。山田先生とか他のクラスメイトにバレていたら俺、明日からどんな顔して合えば良いのか分からなくなる。
「……ところでさ、秋一くんは学年別トーナメント。誰と組むのか決めた?」
「えっ? いや、全然」
近藤さんかの質問に俺は考えてから答える。部屋に戻った時、シンと話したけど学年別トーナメントはデュノアが女であることをしばらくは秘密にしなければならない都合上、一夏、シン、デュノアがチームを組んだって聞いた。
俺はあの話を聞いた当初、シンと組もうかなーって考えていたけどそのシンは一夏たちと一緒だからチームは組めない。稲穂は……うん。いつのまにかチームを作ってそう、というよりもう作ってるのでは? と考えてしまう。
オルコットさんたちは……うん、なんか黒い笑みを浮かべていたから多分そこでチームを組むと思う。
瑠璃は……誘おうとしても最近教室以外で会わないしな。どこに行ってるのか気になってクラスメイトに聞いたら稲穂と整備室に行ってるって聞いたから多分、稲穂と組む……のかなぁ。だとすると無理か。
となると、俺の知ってる人でチームを組んでくれそうなのは目の前にいる近藤さんくらい……か。
でもなぁ、近藤さんも俺より他の人とチームを組みたいよなって考えると────。
「じゃあさ、私とチームを組まない?」
「へ?」
「私と秋一くんと、あと1人でチーム……。うん! これで行こう!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ、近藤さん! それって……えっ、良いのか? 俺と、チーム組んで」
「うん。私も学年別トーナメントに参加したいし、何より秋一くんとチーム組みたかったから丁度いいかな」
そう言って笑いかけてくる近藤さん。うん、可愛い。
「……じゃあ、よろしくお願いします?」
「うん! よろしくね、秋一くん!」
互いに握手をしようとして────まだ夕食を食べている途中だったのを思い出して、苦笑する。見れば近藤さんも苦笑している。
「あはは……」
「はは……」
「……最後の1人、誰にする?」
「……近藤さんに当ては?」
「ない」
チームを組むと宣言したものの、俺と近藤さんは互いに最後の1人に当てがあるか確認したが……近藤さんはいないと答えた。
うーむ。そうなると、ちょっと困るな。俺は一応、当てはあるけど不確定すぎるんだよなぁ。
「……稲穂は多分チームを自分で組むだろ? だとすると、他に余っているのは」
「ふむ、なら私がお前たちのチームに入ろう」
「「ほぇっ?」」
突然後ろから声をかけられて驚いた俺と近藤さんはその声をかけられた人物に目を向ける。
声をかけてきたのは銀髪と眼帯が特徴的な転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒさんだった。
「まだチームができていないのだろ? ならば、私と同じだ。それに、私ならば即戦力だぞ?」
腰に手を当てて自慢げにするボーデヴィッヒさん。俗に言う『ドヤ顔』をするボーデヴィッヒさんを可愛いと近藤さんが呟く。
いや、確かに可愛いけど、そうじゃなくて!
「……ボーデヴィッヒさんは俺の『強さ』ってやつを知りたくて俺と戦いたいんじゃなかったのか?」
「……確かに、私はお前の強さというものを知りたいと思っている。だが、お前たちの友である貝塚稲穂は言っていた。『織斑秋一の強さは敵対するよりも協力した方がわかる』とな。そして、そんな話を聞かされた後で都合よく学年別トーナメントがチーム戦になったと聞いたからな。この機会にお前の強さを学ばせてもらうために、お前のチームに入りたいんだ」
ボーデヴィッヒさんの眼は揺らがず、真っ直ぐに俺を見据えていた。
姉さんだったら、この段階で嘘かどうか判断できるんだろうけど、あいにく俺は普通の人間だからな。そういうのは分からない。
でも、折角最後の1人が都合よく来たしな。
近藤さんに目を向ける。近藤さんは俺の視線の後に気づいたのかOKとハンドサインで伝えてきた。
「……分かった。こちらからもお願いするよボーデヴィッヒさん」
「ラウラで良い。これからはチームメイトだからな」
差し出された右手を掴んで握手する。
ボーデヴィッヒさん……いや、ラウラはそれに満足げに頷くと握手していないもう片方の手に持っているお盆を見せながら聞いてきた。
「ところで、相席良いだろうか? ここ以外、どこも席が空いていなくて困っていたところだ」