IS〜5人の転生者とイレギュラーがいる世界〜(仮)   作:巫女好きの満月

16 / 16
学年別トーナメント 1

     

 6月最終週。IS学園は慌ただしかった。

 第1回戦の組み合わせ発表間際まで全生徒が雑務や会場の整理、来賓の誘導などを行なっていた。

 それらが終わり、解放されれば今度はアリーナの更衣室へと行き組み合わせ発表と自分たちの試合に備える。

 

「…………」

「…………」

 

 そして、その試合に向けてピットで待機している2人がいた。

 1人は黒色の髪をショートカットにした少女、篠ノ之瑠璃。緊張しているのかその手は震えている。

 もう1人は水色の髪をセミロングにしている少女、更織簪。こちらは瑠璃とは違い緊張はしていないのだろう。今はモニターを広げて自分のISのチェックをしている。

 

「「…………」」

 

 2人の間で会話は発生していない。片方は緊張から会話ができず、片方は集中していて……瑠璃には本当に申し訳ないが、多分瑠璃の存在は忘れられている。

 

「緊張してる?」

 

 そんな2人の沈黙を破ったのは、新しくピットに入ってきた人物だった。

 癖っ毛のある黒髪の少年、貝塚稲穂。ピットに入ってきた稲穂はその手に持っていた缶ジュースを瑠璃に差し出す。

 瑠璃はそれに「ありがとう」と答えて、ジュースを受け取ろうとする。だが、震えている手でそれは受け取れず、カランッと地面に落としてしまう。

 

「ごっ、ごめん!」

「緊張するのは仕方ない」

 

 謝る瑠璃に言いながら稲穂はピットのモニターを見る。そこには各国政府関係者、研究所員、企業の重鎮、その他にも有名な人、権力を持つ人が一堂に会していた。

 しかも、それだけでなく観客席にはIS学園の生徒もチラホラと見える。もう数えることさえ馬鹿らしくなる人が沢山いるのだ。こんな中で緊張するなというのは難しいだろう。

 

「……その割には稲穂は緊張してない」

「そうだよね〜。稲穂くん、緊張しないコツは?」

「慣れ、それ以上でも以下でもない」

 

 瑠璃の質問をバッサリと切り捨てる稲穂。緊張している瑠璃からすれば緊張しているどころか普段と何一つ変わらず落ち着いている稲穂は羨ましかった。

 

「そろそろ、対戦表が発表される」

「……もう、そんな時間?」

「えっ!? うう〜、第1試合になりませんように〜」

 

 稲穂の言葉に、時間が経っていることに気づかなかった簪と、第1試合にならないことを祈る瑠璃。

 例年、学年別トーナメントのトーナメント表は前日に作られるはずだったが突然のチーム戦への変更によりトーナメント表の作成が遅れてしまい、第1回戦の第1試合、直前まで誰も自分たちが何試合目か把握していないのだ。

 

「……モニターが変わる」

「神様、お願いします〜」

 

 一瞬、明るくなってから表示されていくトーナメント表。それを見て稲穂は今だに神に祈っている瑠璃に無慈悲に告げた。

 

「篠ノ之瑠璃、準備して。最初は僕たちからだ」

 

 

 ☆☆☆☆☆☆

 第1回戦

 

 第1試合

 貝塚稲穂      篠ノ之箒

 更織簪    VS セシリア・オルコット

 篠ノ之瑠璃     凰鈴音

 

 第2試合

 織斑一夏          織斑秋一

 黒崎シン       VS 近藤茜

 シャルル・デュノア     ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 

 ☆☆☆☆☆☆

 

 

 アリーナで3機のISが所定位置で待機している。

 その様子を観客席から見ている人たちは今か今かとその対決が始まるのを待つ。

 例年、ここまで1年生の試合が注目されることは無い。だが、今回とその次の試合は多くの人たちから注目されるものだ。

 その要因は3つ。

 1つ目は、第3世代のIS。今だに各国でも研究段階・試作段階のものが多い第3世代IS。この試合と次の試合ではその第3世代IS同士の戦闘が観れるのだ。注目しないはずがない。

 2つ目は、代表候補生の存在だ。次期国家代表の卵である代表候補生が固まっていると言っても過言ではない2つの試合に注目が集まらないはずがない。

 そして、最後の3つ目、これこそが観客席にいる全員が注目している1番の理由。この2つの試合には男性操縦者が出るのだ。いろんな意味で注目されない訳がない。

 

『まさか、一夏たちと当たる前にアンタと当たるとは……思ってなかったわよ』

 

 鈴がオープンチャンネルで稲穂たちに言う。だが、稲穂たちはそれに何も返さない。いや、正確には返す余裕がない。

 

『あわわわわ』

『落ち着いて篠ノ之さん』

『いや、だって、見てよあの観客の人たち、私たちのこと無茶苦茶見てるよ〜』

 

 プライベートチャンネルで瑠璃を落ち着かせるのに必死だからだ。

 だが、それを知るのはプライベートチャンネルをしている3人と、緊張を凄くするのを知っている身内の箒だけ。

 

『鈴、多分今話しかけても無駄だ』

『どうしてよ?』

『瑠璃が緊張している。おそらく、あの2人はそれをどうにかしようとしていてこちらの話を聞いている余裕がないのだろう』

『……ねぇ、アンタの妹、前に聞いたクラス代表バトルロワイヤルだっけ? その時は緊張していなかったって聞いたけど?』

『瑠璃は同年代と歳の差3歳までなら緊張しないが、それ以上の差がありかつ大人数いると緊張するんだ』

『アンタの妹、どういう奴よそれ』

 

 毒気が抜かれたのか肩の力を抜く鈴。その様子を見ながら稲穂は瑠璃のことを今は諦めた。

 そして、それと同時にアリーナの上空と、稲穂たちの前にカウントダウンのモニターが現れた。

 

 ────5。

 

『まっ、今はそれはどうでも良いか。とりあえずは、一回戦突破しないとね』

 

 ────4。

 

『そうだな。私たちが狙うのは優勝ただ一つ。ここで負けるわけにはいかない』

 

 ────3。

 

『ええ、分かっておりますわ。鈴さん、箒さん』

 

 ────2。

 

『人人人人人人人。大丈夫、私は緊張してない私は緊張してない。よし!』

 

 ────1。

 

『……それで良いんだ』

 

 ────0。

 

『試合、開始』

 

 ビーッと大きな音が鳴ると同時に全てのISが動き出した。

 1番早く動いたのはセシリアが駆るブルー・ティアーズだった。肩部に搭載されている4機のビットを射出。動き出しが遅れた瑠璃を狙ってその全ての砲塔を向ける。

 5つのレーザーが瑠璃を襲う。だが、それらが瑠璃を捉えることはなかった。

 

『うきゃっ!?』

『今被弾されるのは困る』

 

 レーザーをかわして瑠璃を助けたのは稲穂だ。ビットが射出されたと同時にバックパックに搭載されているアンカーを使い器用にダメージを最小限にしながら瑠璃の纏う打鉄を助けたのだ。

 

『逃すか!』

 

 だが、それを見逃すほど稲穂たちの対戦相手は甘くはない。アンカーによってスレイプニルと繋がれている打鉄を狙って龍砲を撃つ鈴と稲穂目掛けて突っ込む箒。

 

『更織簪』

『分かってる』

 

 名前を呼ぶだけ。だが、それだけで簪は自分がやるべき事を把握、実行する。

 簪の専用機、打鉄弐式の背中に搭載された速射荷電粒子砲《春雷》2門を箒に向けて放つ。

 

『く……っ!』

 

 春雷の連射が箒の行く手を阻む。その隙に稲穂は上昇しつつ、アンカーを巻いて収納、瑠璃との距離を縮めていく。

 そして、ある程度瑠璃との距離が近づくのを確認すると、稲穂は衝撃砲を躱しながらバク転、それと同時に打鉄からアンカーを回収。瑠璃を投げ出した。

 

『へ……っ? きゃあああああっ!?』

 

 自分がどんな状況なのかを把握した瑠璃が悲鳴を上げる。その様子を見た鈴とセシリアは稲穂のやったことに頬を引きつらせるが、稲穂はそんなことはどうでも良いと言いたげに両手にライフルを展開ビットを狙い撃った。

 撃った弾は4発。その全てはビットの軌道を完全に予測したもので、誰もが当たると思った。そう、稲穂とセシリアたち以外は。

 

『甘くてよ!』

 

 ビットの軌道が突然変わる。その軌道はこれまでのセシリアがやっていたような教科書通りの動きではない。

 

『……プラン変更』

『了解』

『篠ノ之瑠璃、そろそろ緊張は解れた?』

『解れましたよー。誰かさんのおかげで!』

『ならその誰かさんには感謝しないとね』

 

 瑠璃の嫌味をサラッと受け流しながら稲穂はビットをライフルで牽制する。そして、ついでとばかりにアンカーを箒の打鉄と鈴の甲龍目掛けて射出した。

 

『く……っ!』

 

 クラス代表バトルロワイヤルで戦ったことがある箒とセシリアはともかく、鈴は今までに稲穂と戦ったことはない。だが、その話は聞いていた。話の中には拡張されたものもあったが、その内容のほとんどは『強い』というものだった。

 鈴はその話全てを真に受けていたわけではないが、それでも学年別トーナメントで起こった襲撃、そこで見せた稲穂の指揮と分析能力の高さを鈴は身をもって知っている。

 だが、それはあくまで指揮と分析能力だけ。操縦技術についてはほとんど見たことがない。だが、一夏たちからはかなり巧いとしか聞いていた。

 いくら恋している異性からの情報とは言え、それを鵜呑みにするほど鈴は色ボケしているわけではない。最も、今一夏の話が正しいことが証明されたが……。

 

『……一夏から聞いていたけど、まさかここまでとはね』

 

 アンカーを躱しながら言う鈴。稲穂はそれを無視しながら少しずつ少しずつアンカーとライフルを使い鈴たちを誘導していく。

 それに気づいたのは観客席。セシリアたちは稲穂の射撃やアンカーに注意を向けなければならないため、それには気づけない。

 

『……っ! セシリア、鈴! 何かがおかしい!』

 

 しばらくして、それに気づいたのは意外にも箒だった。野生の勘とも言えるもので稲穂の誘導を察知したのだ。

 そして、その言葉と同時にセシリアと鈴も稲穂の誘導に気付く。だが、それすらも予測しているのが貝塚稲穂だ。

 

『篠ノ之瑠璃』

『分かってますよ!!』

 

 稲穂に名前を言われた瑠璃は先ほどのことをまだ引きずっているらしく頬を膨らませながら両手にとある武器を量子展開する。

 

『……なっ、なんだアレは!?』

 

 それを見た箒が驚愕の声を上げる。いや、箒だけではない鈴もセシリアも、観客席も驚愕させた。

 瑠璃が展開したのは打鉄と同じ大きさの銃……いや、バズーカ。

 展開されたことを確認した稲穂は瑠璃の背に回り、後ろの地面にアンカーを突き刺す。

 そして、そのまま瑠璃のISの照準システムに介入。照準を瑠璃から稲穂へと譲渡する。

 

『照準合わせ、2.05・0.35』

発射(ファイア)!!』

 

 稲穂が照準を合わせると同時に瑠璃が引き金を引く。それと同時に爆音とも言える発射音とともにその弾……いや、弾たちが鈴たちに降りかかった。

 

『な────っ!?』

『なん────っ!?』

 

 発射されたのはただの弾ではなく────グレネード。放たれたグレネードの数は十数個。それが2つだから二十数個。

 そのあまりのものに鈴と箒は開いた口が塞がらなかった。いや、それは鈴と箒だけでなく、それを見ていたセシリアと観客席も同じ気持ちだった。

 そう、なんだあの武器はという思いで……。

 一度に20を超えるグレネードが同時に爆発する。その衝撃と音は馬鹿みたいにデカく、その威力は近距離で喰らった鈴と箒のシールドエネルギーが2分の1も削れたことから察して欲しい。

 

『……稲穂、アンタ、なんて物を考えてんのよ……っ』

『誤解しないでほしい。これは僕の発案した物じゃない』

『はぁっ!? じゃあ、こんな馬鹿げた物一体誰が────』

『私』

 

 自分の喰らったダメージの大きさに頬を引きつらせながら叫び、稲穂に文句を言う鈴だが稲穂はそれを否定する。

 鈴はそれに驚きながら問いかけると、それは意外なところから聞こえてきた。そう、途中から姿を隠し静かにしていた簪の口からだ。

 

『馬鹿げた物でごめんさなさい』

『『『『『…………』』』』』

 

 簪の方を見た誰もが固まる。だが、それは仕方ない。

 今の打鉄弐式は最初に見せていた姿とは全く違っていた。大型のウイングスラスターはさらに大きく分厚くなっている。いや、違う打鉄弐式その装甲の上から別の装甲が取り付けられている。

 しかも、タチの悪いことにその追加された装甲全てには銃口が見えており、更にひと回り大きくなったウイングスラスターはその装甲をスライドさせ、搭載されたミサイルの頭をチラつかせていた。

 打鉄弐式・フルバースト────簪が稲穂に見せたアニメ、それに登場したロボットに、いや正確にはそのロボットが見せた全身のガトリング、搭載されたミサイルの一斉掃射。それを再現したくて稲穂と共同で開発したこのパッケージは反動・射程・照準の複雑化などなど様々な欠点を生み出してしまったが、再現をするという目的は達した。

 

『照準システムの半分をスレイプニルに譲渡』

『照準補正、アンカー射出、対反動制御良し』

『マルチロック完了、全兵装、一斉掃射!』

 

 簪が引き金を引く。たったそれだけで簪の前にいる箒たちを弾幕の嵐が襲った。

 ガトリングの連射、多方向からくるミサイルの大群。それを見た箒と鈴は回避をしようと後退するが、ガトリングの連射と多方向からくるミサイル全てに対処することはできず、少しずつシールドエネルギーが削られていく。

 だがそれもすぐに収まる、理由は簡単だ。鈴と箒を狙っていたミサイルが全て破壊されたからだ。

 

『助かったわセシリア』

『どういたしまして鈴さん』

 

 ミサイルを全て破壊したのはセシリアだ。直接狙われたのがミサイルだけだったため、鈴たちより比較的精神的に余裕があったセシリアは自分を狙ってきていたミサイルをライフルで破壊すると、残りのミサイル全てをビットで破壊したのだ。

 

『……っ、まだくるぞ!』

 

 爆煙で目の前が見えなくなる中、箒は鈴とセシリアに注意を促す。そして、それを鈴とセシリアは素直に受け取りすぐさま回避運動に移る。

 爆煙の中、進んできたのは打鉄────瑠璃だった。

 

『……はっ、たった1人なんて舐められたもの────』

『油断するな鈴、瑠璃だけの可能性はあり得ない!!』

『……その通り』

 

 瑠璃に自ら接近しに行った鈴、その横から手が出てきた。水色の装甲の手、そう打鉄弐式の手だ。

 その手は鈴の甲龍、その左腕を確かに掴んでいた。

 

『いつの間に……っ!?』

『……今きたとこ』

『それ、シチュエーションが違う────っ!!』

 

 打鉄弐式の手から光が漏れ出る。そして、それが一際大きくなると同時に打鉄弐式に掴まれていた腕に衝撃が走った。

 爆発したのだ。掴まれていた腕、その装甲が。

 

『なんなのよ、その手!』

『……秘密』

 

 ゼロ距離は不利だと判断した鈴は強引に手を振り解くとそのまま加速して奥へ行く。簪と瑠璃の奥にいるであろう敵の指揮官、稲穂を倒すために。

 確かに鈴の行動は正しい。劣勢である鈴たちが勝つにはこの状況を作り出した簪か、その簪と瑠璃を指揮・サポートしている稲穂を倒せばこの状況はひっくり返る。

 

『見つけた!!』

 

 甲龍のハイパーセンサーが爆煙の中でも目立つスレイプニルのオレンジ色の装甲を捕らえる。

 鈴が双天牙月を装甲めがけて力一杯投げる。そして、双天牙月は()()()()()()()()()()()()()

 

『切れた……っ!? まさか────』

『正解』

 

 鈴が感じた疑問、その正体を察すると同時に甲龍を襲う弾丸。被弾していく度に減っていくシールドエネルギー。

 やられた、アレは囮だと鈴は悔しがりつつも退避しようと合流を動かす。

 本来、ISの装甲が容易く切れることはない。何故ならISの表面にはシールドバリアーが張られていて、そのシールドバリアーがなくなるかバリアー無効化攻撃を使わない限り装甲を断ち切ることはできない。

 そう、切れたということはその装甲にはシールドバリアーが無い。つまり、(デコイ)ということだ。

 

『チェック』

 

 装甲のない腕を銃弾の雨が襲う。絶対防御が発動し通常時よりも多くシールドエネルギーが減少していく。

 

『……っ、最初からこれが目的!?』

 

 鈴は気づく。稲穂たちは最初からセシリアでも箒でもなく自分を先に倒す気だということを。

 だが、今更気づいてももう遅い。最後の銃弾が放たれると同時にシールドエネルギーが0になる。もう鈴にはどうする事もできなくなった。

 

『篠ノ之瑠璃、状況は?』

『ごめんね、まだ箒倒せてない!』

『更織簪』

『ビットを1つ潰した』

 

 通信しつつ稲穂は全員の位置を確認していく。下では瑠璃と箒が近接戦をしている。簪の一斉掃射のダメージ、そのおかげにより有利に立っている瑠璃だがやはり剣道……いや、剣術の経験者からか次第にその差が縮まっている。

 上ではセシリアと簪が中距離での射撃戦をしている。事前に稲穂から教えてもらっていた情報を基に戦っているおかげでビットには対応できている簪だが、苦戦を強いられていた。

 理由は単純、稲穂から教えてもらった情報よりもセシリアの戦術の幅が広がっているからだ。

 ビットである程度の牽制からの射撃、ビットとライフルによる5方向からの同時攻撃、さらには自分自身を囮とした近距離からのミサイルビットによる攻撃など稲穂の予想を上回る成長をセシリアは見せていた。

 

『作戦プランを変更する』

『お願い』

 

 通信を切った簪はセシリアから1回距離を取りながらミサイルを放つ。だがそのミサイルは全てビットにより撃ち落とされる。

 

『……くっ』

 

 ミサイルが爆発した場所が悪い。簪が放ってすぐにビットで撃たれ爆発したため、簪は姿勢制御に意識を向けなければならなくなった。

 ほんの僅かだけ簪の意識がセシリアから外れた。セシリアはそれを察すると同時にここで簪を倒すために全力を尽くす。

 

『────』

 

 ビットの照準を合わせるより早くミサイルビットを放つ。簪はそれを春雷で迎撃しようとするが、それよりも早くハイパーセンサーが後ろに回り込んだビットと正面から狙いをつけているセシリアを捉える……否、捉えてしまった。

 

『────』

 

 それはおそらく一瞬の逡巡。だが、この状況では致命的なモノ。

 ミサイルビットが、その軌道を僅かに変える。後ろのビットから、セシリアの持つライフルからレーザーが放たれようとしている。

 春雷でミサイルを撃ち落とす。無理だ、既に春雷の射線から外れている。

 ミサイルを使ってビットを落とす。無理だ、照準を合わせ、放つまでにビットとライフルが打鉄弐式を狙い撃つ。

 無理矢理にでも躱す。無理だ、アレらの攻撃を躱すにはもう遅い。

 もはや簪には打つ手がない。そう、簪には。

 

『な────っ!?』

 

 レーザーが放たれる寸前、ビットとライフル、ミサイルが同時に爆発。

 それをやったのは鈴を倒してから煙で姿を隠していたオレンジ色のIS。その両手にはマシンガンが握られている。

 

『っ、稲穂さん……』

『チーム戦だということを、忘れない方がいい』

 

 再びマシンガンの引き金が引かれる。次に狙われたのは箒の使う打鉄。ミサイルや春雷などによりその装甲の大半が削られている。

 そう、装甲の大半が無い……つまり、そこに攻撃が当たれば絶対防御が発動するということだ。

 

『く……っ、舐めるなぁ!!』

 

 それをすぐに理解した箒は一気に後ろへ下がろうとする。だが、その箒の動きは止められた。

 他でもない、箒の妹である瑠璃によって……。

 

『な────っ!?』

『ごめんね箒。でも、逃すわけには行かないの』

 

 瑠璃の打鉄、その両手が掴んでいるのは箒の打鉄のまだ装甲が残っている腕。言葉通り、箒を逃すことをしない強い意志で瑠璃が箒を掴んで止めていた。

 銃弾の嵐が箒を襲う。何回も何回も絶対防御が発動し大幅にシールドエネルギーが減少していく。

 箒の打鉄、そのシールドエネルギーが尽きるのはそう時間が掛からなかった。

 

『……残ったのは、わたくしだけですか』

 

 セシリアはそう呟きながら自分の専用機ブルー・ティアーズの状態を確認する。

 ビットはミサイルビット以外が全て墜とされ、ライフルを失いさらにシールドエネルギーは残り200。使用可能武装はミサイルビットと近接武装《インター・セプター》が1つだけ。

 それに対する相手の状態はシールドエネルギーがまだ300以上残っている稲穂のスレイプニルに、武装や隠し球がまだ残っていると思われる簪の打鉄弐式、シールドエネルギーが100と少ししか残っていないものの今だに戦闘続行可能な瑠璃の打鉄。

 もはや勝利することは不可能。

 

『……それなら』

 

 セシリアがインター・セプターを展開して構える。それに気づいた稲穂はマシンガンを収納、瑠璃の方へと降りていく。

 それはセシリアを侮っての行動ではない。ただ、頼まれただけだ。

 

『1対1というわけですか?』

『……うん』

 

 脚部装甲と武装を変えた簪に。

 新たに展開された武装は薙刀。そして、展開された脚部装甲は厚くなっている。

 2機のISが上昇していく。そして、ある程度の距離ができたところで2人は同時にぶつかった。

 そして────。

 

『────勝利チーム『貝塚稲穂・更織簪・篠ノ之瑠璃』チーム』

 

 ────稲穂たちの勝ちが決まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。