IS〜5人の転生者とイレギュラーがいる世界〜(仮) 作:巫女好きの満月
side秋一
5月に入った。一夏が鈴を泣かせてから数週間が経った。
その間に一夏と鈴は仲直りした────ということはなく、逆に日が経つにつれ悪くなっていっている気がする。
まぁ、そうは言っても俺はあまり鈴に会っていない。まぁ、今の鈴は良くも悪くも一夏一直線だから、仕方がない。
鈴のことは良くも悪くも一夏しだいだから俺はあまり関わらない方針にしている。
兄に冷たいって? いや、今回のは一夏の自業自得だし、何より当人同士で解決すべき問題だ。
……うん。そういう方針だったのだが、鈴に捕まった結果俺は現在、鈴にアドバイスを少しだけ送りながら日常を過ごしている。
まぁ、アドバイスと言っても面倒だったから、それなら一夏に勝負で買ったら言うことを聞いてもらうという賭けでもすれば良いんじゃね? と言っておいた。
って、今はこんなことを思い出している場合じゃないな。
「当れぇぇぇ!!」
「そこだ!」
シンの剣が空を切り、俺の撃った弾は何もない虚空を通っていった。
現在、俺とシンは稲穂と2対1で模擬戦をしていた。
「…………」
俺たちの攻撃を難なく躱した稲穂は俺たちに攻撃をすることはなくそのまま上昇していく。
それを見たシンも上昇していく。その時に、一瞬だがインパルスを光が包み、接近戦重視の赤い装甲が特徴のソードパッケージから
俺はそれを確認して自分が纏っているIS、黒鉄の中で1番威力と射程の長いスナイパーライフル『黒狼』を展開すると稲穂の動きを制限するように射撃。
左右への動きを制限された稲穂はそのまま下から接近しているシンのインパルス、その他に展開されている剣によってダメージを受ける……そう俺は思っていたが現実は違った。
突然、スレイプニルの動きが止まりそのまま足で空中を蹴り上げた。
「は?」
スレイプニルが上下反対すると同時に下へと落ちてくる。どうやらISを宙に浮かせているスラスターもPICも全部切っているため、地球の重力に従って下へと落ちてきているようだ。
シンはそれを好機と判断して剣を振る。刹那スレイプニルの足についているスラスターが作動するとそのまま少しだけ横にズレた。
そう、少し横にズレただけ。なのにスレイプニルはシンの振るった剣に当たらずそのまま今度は爆発的な加速で俺に近づいてきた。
「えっ、ちょっ、タンマ!!」
「無理」
互いの距離が0になる。その瞬間にスレイプニルの両手に展開される銃。黒鉄から送られてきた情報を見て頬が引きつる。いや、だってそうだろ? 俺の顔の目の前にあるのはショットガンで装甲のない胴体に当てられてるのはバズーカなんだぜ? しかも、どちらも銃口の大きさがこれまで見た中で1番大きい。
シンが慌ててこっちに向かってくるが……うん、間に合わないな。
ドンドンッと二つの大きな銃声。それとともにとてつもない衝撃が俺を襲った。
視界の端にあるエネルギー残量を見る。うわっ、凄い削られてる。もう残り一桁じゃん。
あとはシンに任せるしかない。そう思った時、再び鳴る警告音。それに従って上を見ると、何やら何かを投げ飛ばした姿勢のスレイプニルと此方へまっすぐ飛ばされてきているインパルスの姿が見えた。
あっ、これは無理だ。
ズドンッと再び身体を襲う衝撃。そして、ピーッとなる2つのIS。シールドエネルギーがなくなったのだと無慈悲に告げられた。
「……だー! また負けた!!」
「稲穂のやつ、強すぎだろ……」
インパルスを解除したシンと黒鉄を解除した俺はそのまま降りてくるスレイプニルを見る。スレイプニルはそのまま地面に着地すると光とともに解除され、その操縦者である稲穂の姿が現れる。
「2人とも予想外のことに驚きすぎ。相手がどんな行動をしても落ち着いて対処しなければならない」
「いや、そうだとしても流石に落下するのはダメだろ」
「流石にアレは危険だろ!?」
「慣れれば誰でもできる。誰もやってないだけ」
「「他の人がやってたまるか!!」」
本当に、あんな事を他の人もやり始めたら心臓がもたない。
稲穂がさっきやったことは簡単だ。だって、ISの設定からPICを切りスラスターの出力も0にすれば良いだけだから。
だが、問題はそれをやった後で切ったPICを元に戻さないといけない。練習とかでやるならともかく、模擬戦でそれをやることは自殺行為とも取れることだ。
だが、それを稲穂は容易くその自殺行為をして俺たちを撃破した。
「稲穂は怖くないのかよ」
「怖くはないよ。そもそも、僕にとってアレは当たり前のようにやった事だから」
「「……はぁ?」」
稲穂の言葉に再びシンとともに驚く。PICを切って、さらにはスラスターを軌道修正にしか使わない操作を当たり前のように? 何それ、危険じゃん。
「製作中の機体ではよくある事故の一つ。何回も失敗したから自然と操作を覚えた」
「あー、そういう事……」
そういえば稲穂は自分の専用機を1人で作ってたんだった。その中にはテスト飛行などもあるはず。なら、納得だ。
「そういえば、操縦で思い出したけど稲穂の操縦は滑らかだよな。なんか、コツでもあるのか? セシリアの動きもなんか俺よりも細かな操作できてるし……」
「2人とも、PICの制御をマニュアルにすればセシリア・オルコットのような細かな操作はできる。けど、僕のやり方は参考にはならないから機体制御は他の人に教えてもらったほうがいい」
「参考にならないって、どうしてだ?」
シンと一緒に早速稲穂から教えてもらったPICの制御の設定をオートからマニュアルに変更してみる。後で、どう変わったのか確認しないとな。
「僕はPICだけじゃなくて、他の全てもマニュアルでやっている。だから参考にするのは少し間違っている」
「……えっ、全部をマニュアル?」
「そう」
ISの操縦って、その何個かはオートで制御されてるって授業でこの前習ったぞ?
てか、そんな操作指が追いつくのか?
「慣れれば誰でもできる」
「いや、それはおかしい」
「現に束さんはできた」
「おい待て、比べる対象がおかしい」
そりゃあ、大天災なら出来るかもしれないけど、あの人と俺たちは違うから……姉さんならできるのかもしれないけどやっぱり比較対象がおかしい。
「あと、今日はもう終わり。2人のエネルギーも無くなったし僕はこれから予定があるからここを出ないといけない」
「今日も夕飯は食堂で取らないのか?」
「そうなる」
ここ数週間、稲穂は再び食堂に姿を現さなくなった。その理由は分からないが、近藤さんによると昼と夜は布仏さんも姿が見えないとか。
「彼女か?」
「違う、協力者」
「おっ、おう」
シンの発言に戸惑う事なく即答する稲穂。その顔には照れや恥ずかしいと言ったものは浮かんでいない、無表情。
「お疲れ、明日からはアリーナ使えないから授業の復讐をしたほうがいい。7月には期末テスト、直近では6月の頭に中間テストがある」
「げぇっ」
「う……っ」
稲穂から聞かされたテストという単語に俺とシンの顔が歪む。稲穂のおかげで授業がだいぶ分かるようになったとはいえ、まだ不安がある。
あと、単純に俺はテストが嫌いだ。おそらく、シンもそうなのだろう。だから俺と同じように嫌そうな顔を今もしてる。
「……勉強、頑張るか」
「そうだな」
アリーナから出て行く稲穂の背を見ながら俺とシンはため息を吐いた。
アリーナから出た俺とシンは別のアリーナへと向かっていた。その理由は……まぁ、クラス対抗戦の前の一夏がどんな感じなのかを見る……のは建前で、本音は今日鈴が一夏に会いに行くと言っていたからその様子を見に行くためだ。
「うるさい、この貧乳!」
禁断のワードを言った一夏の声が聞こえてきた。
……あー、これはヤバイだろ一夏。
(あっ、やべ)と思っている一夏の顔が目に浮かぶ。そして、その瞬間、ドガァァンッ!! と爆発音が聞こえてきた。
シンと顔を合わせて頷く。急いで一夏たちがいるであろう場所へと走る。そして、たどり着くと。
「私にソレを言ったんだから、覚悟しときなさいよ一夏。あんたの中にある自信────私がこの手で叩きのめしてあげる」
大声ではない、けれどその声ははっきりとここに響いた。
てか、鈴の身体からオーラみたいなものが見えるんだが。どんだけ、キレてるんだよ。
まぁ、今回の場合は一夏の方が悪いな。絶対に。
鈴が去っていく。その後ろ姿を見てから一夏の方を見る。さすがに一夏もこれには後悔しているのだろう。俺、後悔してますみたいな顔をしていた。
「……一夏」
「分かってるよ秋一」
俺が言おうとしている事を察しているのだろう。それは言わせないとでも言いたげに俺の言葉に被らせてくる。
「分かってる……」
そんな一夏にしてやれることは俺にはない。オルコットさんと合流したシンを置いて俺は回れ右してこの部屋を出て行った。
☆☆☆☆☆
「そうか。天災からの使者の情報はこれだけか……。いや、君を責めているわけではないよ。これに関しては彼らが愚かだったせいだ、断じて君のせいではない」
地球のどこか、薄暗い部屋の中で誰かがそう言いながら端末を操作する。すると、そこにはどうやって集めたのか様々なISのデータと戦闘データ、そして────この前IS学園で行われていた1年1組のクラス代表バトルロワイヤルの様子が流れていた。
「君はよくやってくれた。ゆっくり休暇を味わいたまえ」
プツッという音ともに通信が切れる。それと同時に、部屋の明かりがついてその誰かの姿が見えるようになった。
黒いスーツを着た仮面の男だ。歳はおそらく、20代。
「さて、これで
男が端末を操作すると、そこには3人の人物のデータが映し出される。
『織斑秋一』『篠ノ之瑠璃』『黒崎シン』。この3人のデータとIS学園入学前の入試テスト、IS適正、専用機の情報など機密情報まで入ったデータを。
「見たところ、特に重要視するほどではないな。だが、黒崎シンと織斑秋一の連携には目を見張るものがある。が、私の計画に支障が出るわけではない。織斑一夏も、原作より少し強化されているだけ。しかし────」
男の目が次に映し出されたデータを見て目を細めた。
「貝塚稲穂。君は少し、厄介だな」
稲穂のデータ、その中に特に重要とでも言いたげに強調されている『篠ノ之束』の文字と、バトルロワイヤルの時に稲穂が見せた動きを見て男はそう判断を下した。
映像が終わる。再び再生。映像が終わる。再び再生を何度も何度も繰り返す。そして、その中で男はあることに気づいた。
「……この、装甲。まさか────『展開装甲』か。だとすると、このシールドエネルギーの不自然な現象は……クックック。なるほど、現在開発中か、既に完成しているな『赤椿』は」
この場に稲穂か束がいれば、男の出したその名前に驚きを隠せなかっただろう。何故ならその名前は
だが、男はそれを知っている。いや、男からしてみれば知っていることは当たり前なのだ。
「さて……原作ではかの天災が『ゴーレム』を乱入させるが、おそらくしてこないだろうな。ならば────」
男の手がピアノを弾くかのように端末のキーボードを打っていく。すると、男の前にある画面が出てきた。
「────私が代わりにやろう。なに、死んだら計画の障害が減るだけだ。なにも問題はあるまい」
画面には3つの全身装甲のISがその時を今か今かとその時を待っているかのように立っていた。