Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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三者三様の夜。
それは人生のピンチであったり、決意の意思を固める時間であったり、ロリコンだったり。



嘘6話

 

 

依然気を失ったままの少女を抱えて衛宮士郎は夜の街を走る。

 

向かう先は無論衛宮宅だ。

 

 

もしも目撃者がひとりでも現れたら、その瞬間に衛宮士郎はその社会的生命は終わりを迎えることになる。

 

 

『夜遅くに、ローブの下が裸同然の外国人で、推定年齢10歳の少女を自宅へと拉致しようとしている青年。』

 

 

どう考えてもヤバ過ぎる。

 

 

故に全力疾走

 

 

魔術回路はこの瞬間にも焼き切れるのではないかと言うほど体に魔力を叩き込み、100メートルを7秒で駆け抜ける。

 

 

もしも教会や協会の者がいれば血眼になって彼を殲滅するだろう。

 

魔術使いも大概にしろと。

 

 

そんなこともお構いなしに走り続け、息も絶え絶えのばて気味になってきたころ

 

 

 

 

「………衛宮か、こんな時間に何をしている……?」

 

目の前に屈強で無表情な、衛宮士郎が通う穂村原学園がほこるMr.クール(勝手に命名)こと葛木宗一郎がいた。

 

『せ、葛木先生!!?まずい、どうすりゃいい?―――』

 

頭の中で一気に思考回路が唸りを上げる。

 

 

 

 

どうする、ここで事情を離して助けてもらうか?

 

だめだ、先生を魔術の世界に引き込むなんてことは出来ない。

 

ならあたりさわりのない嘘でごまかすか?

 

どうやってごまかせばいい!??ローブの下が裸の女の子抱えて走ってたこの状況をどうやってごまかす?

 

痴漢に襲われてたこの子を助けて逃げてましたとでもいうか?

 

それって俺が犯人じゃないか!!今まさに第3者視点は俺が少女誘拐犯だ。

 

 

「……事情があるなら話さんでもいい。――――確か衛宮は独り暮らしだったな?」

 

その空気を読んでるんだか、ぶっちぎって投げ捨てているのか解らない雰囲気で葛木先生は俺と共に歩きだす。

 

 

「余計な警察沙汰は私も好まん。お前の行動内容が確認出来たら私は帰る。」

 

 

おい、あんた教師だろ。と突っ込みたいが、自殺行為を進んで行う理由もなし。

 

変な勘繰りをしてくれなければ、家に運び終えるまでに上手い言い訳を考える時間が稼げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は歩く。夜の街をひたひたと、行く当てを考えながら、身の回りの物をひとしきり詰め込んだキャリーバッグを引きながら。

 

 

「こうなってしまったのは単衣に私の責任だ、半ば無計画過ぎたこをしでかしてしまい謝罪の仕様もない。」

 

 

「あ、アーチャーさん。そんな落ち込まなくても大丈夫ですって。………その、暫くならせ……藤村先生、そう、学校の女の先生の家に頼めば泊めていただけると思いますし。」

 

なんとか私はアーチャーさんを励まそうと自分を空元気で取り繕う。

 

 

今が聖杯戦争の真っただ中でなければ、"アレ"がなければ多少無理を言ってでも勇気を振り絞って先輩の家に押し掛けることもできたかもしれないのに。

 

まだだ、とアーチャーさんは言い、私もその考えにすぐに思い至り賛同した。

 

アレで死ぬはずがない。

 

妙な確信と嫌な予感がいり混ざりながらそう断定できるのは、私の胸の奥に潜むカリヤおじさんの届かなかった欠片が如実に物語っているからだ。

 

 

『チャンスを待つ。この戦争が局面に差し掛かれば必ず奴は"動く"だろう。その時に確実に仕留める。』

 

その為には聖杯戦争に参加し勝ち残っていかなくちゃいけない。

 

おじい様が動く状況の中に自ら飛び込んでいく。それは当に殺し合いの中へと身を投じることだ。

 

 

それは勇気の足りない、臆病な私にとって何よりつらいことだけど。

 

 

 

だけど諦めない。

 

 

 

「君を救う、元より聖杯に願うべき望みなど持ち合わせていない身なのでな。その意味で言えば、マスターのサーヴァントに成れたことは僥倖といえるだろう。」

 

 

こんなに尽くしてくれるアーチャーさんと巡り合えた運命を信じて、私の過去を終わらせ全てをZero(始め)にしよう。

 

 

 

そう思いながら一先ずの宿としての頼みの藤村先生の家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *

 

 

 

 

 

 

 

「言い訳を聞こうかしら、何でこの女の人たちを殺したの、アヴェンジャー。」

 

 

いま、私の心は怒りのあまり冷え切っている。

 

目の前のサーヴァントが女性をめった切りにして殺した。

 

確かにキャスターのマスターが根城にしていた場所にいたからには何らかのトラップと考えての行為かもしれないが、この殺し様はあまりにも人の行為を逸脱している。

 

 

バラバラ、なんて言葉すら生温い有様だ。

 

20~25人はいるであろうその死体は原形をとどめているものなど一つもない。

 

 

「んー。気分♪」

 

 

こいつは気分で殺戮を行えるのか。

 

 

「ふざけないで、あんたがどんな英霊だろうと私のサーヴァントである以上は私の流儀に従いなさい。殺人は絶対に認めないわよ。敵マスターも私が許可したとき以外許さないわ。」

 

「ヒヒ、何だよ?令呪でも使ってこの俺を縛りつけてみるかい?アンリ・マユ(この世全ての罪)のこの俺に?」

 

 

確かにこいつは自称「この世全ての悪」だ。そう名乗る以上、悪行も平然とやってのけるだろうと思っていたけど、ここまで醜悪とは思わなかった。

 

 

「次にこんな真似をしてみなさい。私は迷わずあんたを自害させるわ。」

 

「ヒャハッ!いいねぇその響き、ぞくぞくしちゃうぜ。なんやかんやブチ切れモード入っておきながらも魔術師な凛たんの優しさに涙が出ちまう。……まあいいじゃん、キャスターのマスターも無事にぶっ殺せたわけだし、キャスター自身も致命傷。俺と同じく横っ腹をごっそりと遣ったんだ。持って30分でくたばるだろうさ。」

 

 

そう、こいつの宝具『偽り騙し欺く万象』は触れた相手に自らの傷を写す。

 

写された傷はその時点で相手に自らの傷と確定させ。アヴェンジャーとの因果から切り離され独立する。

 

私の宝石魔術を用いてアヴェンジャーの傷を即座に癒せば相手は致命傷の怪我を負ったまま全快のこいつとの戦闘再開となる。

 

 

更に利点として、こいつの宝具は真名解放の使用魔力が極端に少ないことが最大のアドバンテージだ。

 

 

何でもランクが「D-」と、本来なら高い対魔力を持つサーヴァントなら弾き返してしまうんじゃないかと思うほどのレヴェルの低さと思われるこいつの宝具は、発動条件の縛りが強すぎるとかの理由で、有効対象は広いらしい。

 

 

それにしても気になることは他にもある。

 

 

「で、何であんたは本命のキャスターにとどめを刺さずに投げ捨てたのかしら?」

 

 

そう、最大の謎はそこだ。こいつはキャスターのマスターや部屋に居た女性たちは皆殺しにしたのにキャスターだけはその手に掛けなかった。

 

おまけに私の命令を半ば無視する形であの幼い姿のサーヴァントを犯そうとしやがった。

 

まさかとは思うけど………

 

 

「や、なにをわかりきった事言ってんだよ凛たん。んなもん答えは一つじゃねーか。」

 

 

 

 

「アイツにも聞いたんだけどよ?サーヴァントを死姦するにゃどうしたらいいかって考えててな。キャスターのクラスに納まるくらいのロリっ子だ、もしかしたらうまい方法でも考え付いてくれんじゃないかと思ってさ。な?俺ってやっぱ最高だろう?」

 

 

 

 

「――――――ほう、……つまりあんたはその為にキャスターをひん剥いて逃がしたと?」

 

 

「あったりまえじゃん。ああ、もちろんそれだけじゃねーよ?勿論欲情だってしたさ。アイツ見た目によらず胸もあってさ、Cはあったぜ?Aの凛たんと比べても、これを襲わない奴はいないだろって。ほら、よく言うだろ?悟りは殺さず犯s―――――」

 

 

「死ねぇえええええーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

こいつロリコンだ!!!

 

中学生をババアと呼ぶ奴に違いない。

 

 

 

………キャスター。今だけあなたに同情するわ。今だけこんな奴に襲われたことに謝罪したい気分だ。

 

 

それにしてもあの幼い姿でC?――――なんとなく今更だけど殺意が沸くわ。

 

 

願わくば、そのまま死んでくれればこれ以上こんな変態に襲われることもないだろう。

 

 

 

それこそこの町にこいつみたいなロリコンがいなければの話だけど。

 

 

 

まあ、今はこの殺戮現場の隠滅が先決か。

 

 

 

気は進まないけど、性格どぐされ外道神父に連絡を入れるとしよう。

 

 





という訳で衛宮士郎人生最大のピンチでした。
アヴェンジャーがエロい。どうにかしてくれ。
だけど、キャスターにだったら私は襲いかかる自信がある(キリッ!

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