Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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回りキャスターを愛して止まない。否、病む。



嘘8話

 

 

「――――っん……」

 

目を覚ましたのは、あれからどれくらいたった後なのだろうか。

 

 

サーヴァントにも眠気はあるのかと、眠い目をこすりながら横たわっていた体を起こす。

 

気だるい感覚と魔力不足が同時に襲いかかり、まるで低血圧の起き覚め貧血のような気分だ。

 

 

少しずつ意識と思考がが通常の回転に戻っていく。

 

そして、奇跡のような真実を認識する。

 

 

 

 

「……生きてる?」

 

 

 

この身はまだ座に還らず限界し続けている。

 

助かった?

 

廃墟のビルから放り出され、暗い路地を魔力切れの体を引きずりながら歩き、力尽きて壁にもたれかかったところまでは覚えている。

 

 

それから何があったと言うのか?

 

 

 

そう思ったところで、自分の中に在る一つの感覚に気がつく。

 

 

 

とても温かく、優しい気持ちが

 

魔力なんか蛇口の周りに浮かぶ結露のような、水滴にもならない量しか流れてきていないのにそう思える。

 

 

 

 

 

見渡すとそこは薄汚れた裏路地ではなく、畳の日本屋敷の一室であることが聖杯の知識から知ることが出来た。

 

 

寝かされていたのは私の体には少し大きめの布団。

 

そこから何処となく男性の匂いがするのは、この家の人間が普段使っている物だということが分かる。

 

 

着ている服も黒いローブから子ども用の紺色の浴衣に変わっている。

 

そう言えばアヴェンジャーにローブの下に来ていた服を破かれてしまったことを思い出す。

 

寝かせるにしろ、そのままではなく着替えさせられたという訳だ。

 

 

気だるい感覚を我慢しながら立ち上がり、おぼつかない足取りで部屋を出る。

 

 

 

 

庭先が見える廊下に出て、自分と繋がっているラインを手繰り寄せる。

 

 

 

 

 

もう少し、すぐそこ……

 

 

 

 

片手で胸の鼓動を抑えつけながら恐る恐る明かりがともる部屋の障子を小さく開けると、二人の男性が見えた。

 

 

「ですから、何か特別な事情を抱えた子みたいなんですよ。」

 

「ふむ、深い理由話をせない訳はおおよそ認めよう。特にこれ以上の騒動もないわけだな?」

 

「はい、あの子が目を覚ましたら事情を聞きますんで、明日先生にもお伝えします。」

 

 

「そうか、なら私はもう帰る。くれぐれも間違いなどは犯すなよ。」

 

「大丈夫ですって、明日の朝になれば藤村先生も来ますし、後輩の子も朝食の手伝いで来ると思います。」

 

 

「フム、藤村先生の監察下なら問題ないだろう。邪魔をしたな。」

 

 

そう言って屈強な体つきをした男性は帰って行った。

 

 

そして尚、ラインから繋がる感覚がこの家を示す答えはただ一つ。

 

あの少年が私を助けた、魔術師(マスター)ということだ。

 

 

僅かながら強張る手に力を込め、意を決して少年のいる居間の障子をゆっくりと開ける。

 

 

「……あ、あの………」

 

 

何と声をかければいいのかとっさに思いつかず、おどおどした形になってしまったけど、私の姿に気が付き振り向いた彼の顔がとても幸せそうに緩み。

 

 

「ああ、気が付いたのか。もう立って歩いて大丈夫なのかい?」

 

「ええ、……あなたが私の、マスター?」

 

 

そう聞きながら途端に恥ずかしさがこみ上げてきて、はたから見たら、もじもじとした締まりのない格好になってしまった。

 

 

「は?………マスターって何さ?」

 

「え?」

 

 

私と彼に同時に湧き上がる「?」

 

 

 

何やらいきなり話がかみ合わない雰囲気だ。

 

 

 

「えっと、あなた…魔術師よね?」

 

「ああ、半人前だけど魔術師だぞ?危ない状態みたいだったから何も考えずに君を助けたんだけど、一体何者なんだ?」

 

 

 

聖杯戦争を知らない?この冬気の地で?

 

 

「――――どうやらお互い噛みあわないわね。……お互い質問し合う形でいいかしら?」

 

「よく解らないけどいいぞ?―――――それじゃ、自己紹介から行こうか。俺は衛宮士郎、未熟ながら魔術師をやってる。君の名前は?」

 

 

「今は、……そうねキャスター(魔術師)と名乗っておきましょうか、勿論偽名のようなものだけど今は本名を名乗ることは出来ないわ。あなた、聖杯戦争を知ってる?」

 

 

「聖杯…戦争?聞いたこと無いぞ?それと君…キャスターちゃんは何か関係があるのか?」

 

「ちゃんッ!?―――ええ、私はその戦争で呼び出された使い魔、英霊よ。」

 

「使い魔って…!?何処からどう見ても人間にしか見えないぞ?」

 

 

彼は驚きながら私を眺める、どうやら本当に聖杯戦争の事を知らないらしい。

 

 

「勿論、英霊ですもの。人の形をしていない奴がいるとしたら、それは悪霊か悪魔の類よ。私のターンね。英霊の意味くらい魔術師のはしくれなら知っているでしょ?」

 

「ぐっ……過去に偉業を成した人や神話や、おとぎ話に出てくるような信仰や崇拝の対象となった人物のことだろ?」

 

「そうよ、そして聖杯の力によって現界したのがこの私。キャスターのクラスを与えられた英霊。」

 

 

ちょっと胸高々に振舞ってみる。そうよね、どうやらこの少年はこの地に居ながら聖杯戦争の事も知らない素人魔術師みたいだし、ここで上下関係をはっきりさせておかなくっちゃ。

 

 

「えっと、つまりキャスターちゃんは過去の人物で、歴史に残るような英霊ってことか?」

 

「そう、因みに私以外にも、この冬木の地には英霊が召喚されている筈よ。7人の魔術師が7体のサーヴァント、つまり英霊を使い魔として使役し聖杯を奪い合う戦い。それが聖杯戦争なんだから。」

 

「なっ!?ちょっと待ってくれ、冬木に俺以外の魔術師がいるって言うのか!?」

 

「……あなた、本当に魔術師なの?魔術師の気配がそこまで濃いものだとは一概に言えないけど、まるで今まで魔術師なんて見たことがないって顔よ?」

 

 

 

「…………」

 

「え゛……?」

 

 

物凄く気まずい空気が流れる。

 

魔術師に遭ったことがない魔術師なんているのだろうか?

 

 

「もしかして、極度の引き籠り?」

 

「断じて違う!俺は毎日学校にも通っているしバイトもしてる!休日はボランティアにも出向いて地域交流の場にも積極的に参加してるんだ!そりゃあ、魔術師との交流なんてなかったけど、けしてひきこもりじゃないぞ?」

 

 

「………」

 

「何だよ?今度はそっちが黙っちゃって」

 

―――――呆れてものが言えない。

 

 

こいつ、エミヤシロウという人物は魔術師と呼ぶべき人物じゃない。

 

学校に通ってバイトにボランティア?上二つは構わないにしろ、ボランティアですって?

 

魔術師がそんな等価交換をぶち壊す所業に何の抵抗感も抱かないなんて正気じゃない。

 

 

「はあっ、これはとんでもない外れ籤に助けられた見たいね……いいわ、マスターを矯正するのもサーヴァントの役目だと思って諦めるわよ……」

 

 

「だから、何だよ『マスター』って?俺はそんなのになった覚えはないぞ?」

 

 

 

「…………ほんと、これじゃ勝ち残れないわ。――――いいこと?今夜は私が説明することを理解するまで寝かさないから。」

 

 

 

どうも私の前途は多難を通り越し万難らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡り。

 

 

言峰綺礼は協会の一室で霊気盤を眺めていた。

 

 

 

「ふむ、今回の聖杯戦争はどうやらクラス外の英霊が呼ばれたようだな、召喚したのは――――凛か。」

 

 

召喚された時間から推測するにそう考えるのが妥当だろう。

 

どうやら最後まで自分の忠告をうっかり忘れていたようだ。

 

彼女の魔力が最高に高まる時間と召喚時間が少しずれている為、大方『また』やらかしたのだろう。

 

 

まあ、呼び出したのならそれはそれで構わない。

 

 

早速だが、そう急に彼女に助力を求めなければならない厄介事も舞い込んできたことだ。

 

ここはひとつセカンドオーナーとしての仕事ぶりを観るとともに、呼び出したサーヴァントについても遠くからだが見させてもらうとしよう。

 

 

そう考えながら夜は耽っていく。

 

 

 

 

『続いてのニュースです、冬木市を中心に起こっている女性連続誘拐事件ですが―――――――』

 

 

 





浴衣は子ども時代の士郎のものです。
キャスターに襲撃をかけた凛達の行動理由はとりあえず必要かと思い、シンプソンに出張ってもらいました。
そして、自分で押さえ目に書いておきながらキャスターのセリフがR指定な意味で『今夜は寝かせないわよ』とデフォルトで誘惑調に脳内変換されている私の脳内電波。
浴衣姿のキャスターに言われたらイチコロです(笑)
この気持ちまさしく愛だ ハアハァ……
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