Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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※本話におけるアーチャーは原作のように格好良くありません。
格好いいアーチャーでなければ、それはアーチャーでは無いと思う方はご注意ください。
いいか、絶対に叩くなよ、絶対だ!!
心は硝子(顕微鏡のプレート)レベルの強度です。


嘘10話※アーチャーファン注意※

 

「はあ、…ハアっ、ゼッ―――――投影開始(トレースオン)!!」

 

 

アーチャーは逃げる。

 

 

 

なぜ俺が逃げている?

 

この身は生涯にわたり、ただ一度の敗走もなき英霊だぞ。

 

別に英雄などともてはやされる為に行ってきたわけではないが、それでも退くことのない、揺らぐことのない信念を持って突き進んできた英霊だ。

 

 

それが何故…逃げの為に全力を振り絞っている?

 

 

決して負ける要素があるからではない。

 

むしろ勝てる要素が幾重にも見受けられるくらいだ。

 

 

ならばなぜ逃げる?

 

 

ここが見晴らしの良い住宅街の密集地だからか?

 

今が聖杯戦争を行うには不向きな昼間だからか?

 

 

違う、そんなことでいちいち逃げるようなマネはしない。

 

戦えないのであれば、それなりに相手の戦力や情報を掴み取る為にギリギリの綱渡りをやって見せるのが英霊エミヤな筈だ。

 

 

無様に、醜く、だらしなく、みっともなく、型も忘れ、道も忘れ、腰も入れず、只狩られる哀れな姿で疾走とも呼べぬ愚鈍な蛇行で逃げている?

 

 

なぜ逃げる?

 

 

怖い?いいや違う、例え恐怖が目の前にあったとしても、それすら凍りつかせ鋼の意思で立ち向かうのが英霊エミヤだろう。

 

 

なぜ逃げる?

 

 

戦略的撤退ですらない、こんな一方的な戦闘放棄なんて初めてだ。

 

 

なぜ逃げる?

 

 

五月蠅い!ならば、――――――――

 

 

 

 

 

「ゲヒャハハ!!おいおい兄弟、何処に行くってんだ?ヒャヒャッ!!まるで、『ドッペるった後で自分のこと鏡で見た後』みたいじゃねぇか。大丈夫だってよ、その通りにしてやろうか?さあ!!!!」

 

 

 

 

なぜ逃げる?

 

 

見ればわかるだろう、

 

「アイツは一体何なんだ!!!!」

 

見てはいけない、あれは、そんなんじゃない。

 

そんなモノを俺は望んじゃいない。

 

冗談じゃない。そんな訳がない。

 

 

俺は、俺は、俺は―――――

 

 

 

 

「奇遇だねぇ、俺も『エミヤシロウ』ってんだ。ヒヒヒ!」

 

 

ふざけるな、フザケルナ!!!違う、違う違う違う違う違う――――

 

 

俺は理想に裏切られ。自分で望んで、自分を踏み台にして、自分を蔑にして、自分で冒し、自分で償い、自分で―――――

 

 

何で逃げているんだ?

 

 

解らない、判らない、分からない

 

 

何で逃げているんだ俺は!?

 

 

どうしてだ、意味が解らない、訳が分からない。

 

 

 

 

 

 

俺は正義の味方(エミヤシロウ)で、

 

 

 

それで―――――――

 

 

 

――――アイツは何だ?

 

 

 

 

アイツは何の衛宮士郎だと言うんだ?

 

 

 

 

世界と契約した衛宮士郎なら間違いなくそれは俺(英霊エミヤ)な筈だ。

 

そうでなくてはおかしい。

 

 

矛盾する、破綻する、崩壊する、まるで今まで積み上げてきたものが砂上のごとく崩れていく。

 

 

もうたくさんだ、

 

 

 

 

だから、

 

 

 

 

 

 

 

だから―――――

 

 

 

 

 

 

「なーんだよ。オレ(お前)。んなしけたこと言ってるとぶち殺すぞ?」

 

 

 

後ろから届くこの世全ての悪意を詰め込んだかのような悪意。

 

 

地獄の業火を生み出すような呪詛の気配。

 

 

ああああああああ!!!!思い出した

 

 

 

 

忘れるわけがない。

 

 

これは地獄に落ちても忘れない、忘れるわけがない、忘れてはいけない。

 

 

『衛宮士郎』が『生まれた』その時の情景がフラッシュバックする。

 

 

黒い太陽、燃え盛る街並み、死せる地獄の光景

 

 

 

 

 

この世全ての悪(アンリ・マユ)

 

 

 

 

なんで、何で、ナンデ!!!!?

 

 

 

何で俺(アイツ)がアレなんだ!!

 

 

何でアイツ(俺)がアレなんだ!!

 

 

違うだろ、違うだろ、違うだろ!!

 

 

あの出来事があったから、俺は誰かを救おうと

 

 

 

「「そうだ、だから俺は救ったさ」」

 

 

 

「900を救って100を切り捨てた」「100を殺したら900が報われた」

 

 

「この身は」「誰か(他者)の為になることなんざ飽きるほど犯った」

 

 

「それが」「破綻してることなんざ百も承知だったさ」

 

 

「死せる運命にあった」「100人に裏切られた」

 

 

「味方した」「奴なんて、そもそもいたのかよ?」

 

 

「世界と」「無理矢理契約させられ、用が済むなり拷問処刑だ、―――いや、呪術で名前も剥ぎ取られた。故に無銘さ」

 

 

「知ら」「ねぇ訳ないだろう?何せ俺も」

 

 

「違」「わねぇよ、俺は」「俺が」

 

 

 

 

 

「エミヤシロウなんだから」

 

 

 

 

 

ぐらり、とバランスが崩れてとうとうその場に膝をついてしまう。

 

 

ダメだ。英霊エミヤはこのエミヤシロウに勝利することは出来ない。

 

否、殺すことは出来ても、そんな事をしてみろ。

 

 

 

 

その時こそ英霊エミヤは世界を敵に回した大罪人として守護者より救いのない檻に囚われる。

 

 

やはり殺すしかないのか?

 

 

それが桜(マスター)を悲しませる結末になろうとも、己が欲望を、願望を、悲願を達する為に

 

 

 

衛宮士郎をこの手で葬り去ることしかできないと言うのか。

 

 

 

「なあオレ(お前)、テメーの望みは何なんだ?俺は――――――」

 

 

 

擦り切れた記憶の中で誰かがささやく

 

 

 

 

 

『喜べ少年、君の願いは―――――』

 

 

 

 

 

 

 

「恒久的世界平和なんだけどよ?」

 

 

それはエミヤシロウが英霊の座から消えるもう一つの手段。

 

 

邪悪な笑みでアイツ(俺)は言い放った。

 

 

 





書いておいて何ですが、私もアーチャーファンです。
だからこそこんなアーチャーを書いてみたかった。
あれ?ファンならこんな酷い姿書かないって?
カッコいいアーチャーを虐めるとゾクゾクしちゃうくらい大好きです。
嘘です、ごめんなさい。でも書きたかったので。

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