「今ここに俺が来なかったか!?」
「馬鹿野郎!そいつがルパンだ!!」
振り返るとそこに人はおらず、間桐桜は不思議そうに首をかしげた。
あれ?確かに先輩の声で話しかけれられた筈。
言葉の内容こそ下品下劣極まりなく、絶対にあの心優しき先輩こと衛宮士郎が吐かない台詞だ。
しかし、目の前にはいつもと変わらぬ殺風景な校舎と影を落とす夕暮れのみ。
人影もまばらな下校風景に、声の主と思しき人物は影も形もない。
聞き違いだろうか? うん、きっとそうだ。
昨日と今朝の一件で少し疲れているのかもしれない。
それに丁度先輩のことを考えていたところだ。
不安と願望がごっちゃになって、あんなあらぬ声を風鳥の過ぎ様に聞き違えただけだろう。
そんなことよりも買い出しに行こう。
早めに準備しに行かないと、先輩が先に夕飯を作り始めてしまうかもしれない。
そうなってはせっかくの思い立った計画が台無しだ。
少々小走りになりながら間桐桜は学校を後にしていった。
* *
「っぶねー。本人に遭っちまうとこだったぜ……」
失敗失敗。
チョイ後姿からでもわかる巨乳女子高生に淫行ついでに道を聞こうとしたら、まさかサクラだとは思わなかったぜ。
おいおい、生前の俺には巨ぬー=桜って方程式は無かったのかよ?なあ、アーチャー?
せっかく現界したまま怪しまれずに活動できるようにメイクで顔の刺青消して髪も目立ち過ぎないヘアカラースプレーで色変えて、おまけにTシャツまで買ったんだぜ?
ズボンはそこいらの学生から剥いだけどな。
見た目いかにも衛宮士郎!だけど極悪につき悪行を行います、みたいな?
しっかしどうするかね?間桐の家なんて覚えちゃいないし。かといって凛たんに『道わかんねぇ』というのもダリィ。
大体、凛たんまだこの町のこと全然教えてくれてないもんな。
変なところが抜けてるのは覚えてたけど、こいつはちょいとうっかりが過ぎるぜ?
しゃーないけど、こんな草むらに居ても道は訊けねぇし、一旦ここは霊体化して桜をすトーキングしながら視姦でもするかな。
「ん?衛宮?あんた今日休みじゃなかったっけ?」
何か草むらにいたら活発そうな女子に見つかっちまったよ。
完全にタイミングのがしたな、こりゃ幸運低いぜ俺、きっとEは確実に逝ってるな。
-SIDE REVERSE『美綴』-
「ん?衛宮?あんた今日休みじゃなかったっけ?」
何でアイツは出歯亀みたいな素振りで草むらに潜り込んでるんだ?
何となく見つけた衛宮に声をかける。
すると
「あ~、いやなんて言えばいいのかね?……ほら、ああ、そう。制服!制服なくしちまってさ。」
見れば衛宮の服装は制服の上着を着ていない、ロングTシャツ1枚の姿だ。
「制服って、あんた学校でなくしたの?」
「そ、おっかしぃな~。どっかで作業したときに置き忘れちまったみたいでさ。」
確かに、こいつはいつもどっかで修理やら雑用やら一人で引き受けているからな。
弓道部を止めてからさらに拍車がかかったみたいで、ここのところ毎日色んなところに出没してはブラウニーやってたから。
成程、そんなに方々飛びまわってちゃ制服を何処に置いたか分からなくなってしまうのもうなずける。
「にしては何だかノリノリじゃん。いつも以上にテンション高そうに見えるぞ?」
「なに、普段は自分に関係ないことやってて、久しぶりの自分用事だ。そう考えればちょっと可笑しくなっちまってな?」
衛宮にしてはえらくまっとうな思考だ。
失礼ながらもそう思わずにはいられない。
「で?そんな草むら探してたの?一日中学校サボって探し回っても見つからないとは大変ね。」
「…一日中?」
「何で疑問形になるのさ?今日授業出てないでしょ?」
「あ、――――ああーはいはい。そういやさぼっちまってたな。そっかそっか、もうそんな時間か。」
「衛宮。集中して取り組むのも程々にしておきなよ?」
こいつは何かに集中すると周りが見えなくなるというか、馬鹿みたいな一心不乱に陥ることがある。
弓道のときだって、射る瞬間はまるで無我の境地にいたってるくらいだし。
「気をつけるさ。んじゃな。」
そう言って手をひらひらさせながら衛宮は校舎の方へ向かって歩いて行ってしまった。
何かいつもとイメージが違うな。
口元はやたらニヤニヤしてたし、そう。慎二を相手にしてる気分だ。
衛宮はよくつるんでたから感化されたのだろうか?
「程々にしておきなよ?」
そう背中に声をかけ、私も下校することにした。
近頃、若い女性の誘拐事件も近場で起きてるから他の学生も部活は中止だし、大人しく帰るとしよう。
そう思いつつ、商店街を横切ろうとしてドッペルに遭遇………
「銭形とルパンの駆け引きってこんな感じだっけ?」
「何の話だ?美綴?」
買い物袋を引っ提げて間桐妹と見知らぬ少女に挟まれながら歩く衛宮にばったりと出会う。
「や、あんたさっき学校にいたじゃん。もう制服見つかったの?」
「?何の話だ??俺は今日一日学校に行ってないぞ?まあ、あんまり自慢できるような話でもないとは思うけど……」
「は?」
衛宮の雰囲気は、うん。
いつもの間抜けそうなお人よし顔だ。
「今ものすごく馬鹿にされてる気がしたんだけど気のせいか?」
変なとこは勘がいいのもいつも通りだ。
「ルパンってホントにいるんだ……」
「だから何の話だって。」
「学校で制服の上着無くしたあんたと会ったんだって。ちょっと……何時もより不真面目さ3割増しくらいの。」
「まってください美綴先輩。不真面目さ三割増しの先輩って、それじゃあ先輩じゃありません。」
…確かに、間桐にそう言われてみれば、そんなのは衛宮じゃない気がする。
白昼夢だったのかな?
「お兄ちゃん、学校にそっくりさんでもいるの?」
お兄ちゃん?
「いや、自分で言うのもなんだけど、俺に似てる男子なんてそんなにいないと思うぞ?」
「そう、個性的な顔の生徒がそろってるのね。」
「……別に俺の顔が無個性ってわけでもないと思うぞ?」
…外国美少女にお兄ちゃんと呼ばれる衛宮……
「…衛宮ってそんな性癖があったのか?」
「違う!誤解だ。この子はちゃんとした俺の家族だぞ。」
へえ、それはまたどこぞの隠し子から始まるギャルゲの主人公だろうか?
「全然信じてない顔だな。」
「まあ、いつも通りのあんたを見て安心したってところだよ。確かに、そのくらいのドン臭さでこそ衛宮だ。」
「……なんでさ。」
「ともかく、突然変なこと聞いちゃって悪かったよ。明日は登校するのかい?」
「それが、まだどうにも決めてなくてな。メイちゃん、この子のことなんだけど、まだ日本に来たばかりだし、家に女の子一人を置いておくのも最近何かと物騒だし。」
成程、確かにお人よしの衛宮なら美少女を放ってはおけないか。
「物騒なのは分かるけど、両手に花な状態で商店街歩くのも気おてけるといいよ。学校の男子が見たら明日から二つ名が変わるかもしれないし。」
「うっ……俺の今の二つ名って何だ?」
「ブラウニー。」
「…なんだかお兄ちゃんにぴったりの言葉ね。」
「先輩の人物像そのままのような例えですね。」
間桐妹まで認めているんだ、これは明日から面白くなりそうだ。
「じゃあ俺たちはもう行くけど、美綴も気をつけて帰れよ。」
「ああ、分かってるよ。」
また明日。と言いかけて今の会話を思い出しグダグダな感じで別れを告げた。
それにしても、私が学校で見かけた衛宮は一体何だったんだろうか?
「お!タイヤキじゃん!おっさん一つくれね?120円?タケーよ、あと20円!おっさんと俺のの素敵な笑顔に免じてここは一つどうよ?―――サンキューウ!ヒャハハ!!」
何処かでまた衛宮の声が聞こえた気がしたけど、あの二人に何か奢っているのだろう。
美少女のメイちゃんは育ち盛りとして、あいつは間桐の胸を何処まで成長させる気なんだろうか?
そんなくだらない想像をしながら自宅へ向かった。
☆
アヴェさんのキャラ変わってね?と思う方に。
「彼はとっさの演技に必死でした」
ズボンの被害者は…一成でおk?