Fate/Avenge   作:ネコ七夜

28 / 33
小量文ですが投稿



嘘23話

 

 

憎い

 

  死ね

 

    お前の所為だ

 

  罪状を言い渡す

 

―復讐せよ―

 

 

この世の半分が語りかける。

 

お前の所為で滅んだ

 

お前のせいで死んだ

 

お前のせいで失った

 

お前のせいで負けた

 

お前のせいで裏切った

 

お前のせいで勝てなかった

 

お前のせいで誑かされた

 

お前のせいで拐された

 

お前のせいで出来なかった

 

お前のせいで成れなかった

 

お前のせいで死ねなかった

 

お前のせいで生きられなかった

 

お前のせいで折れた

 

お前のせいで諦めた

 

お前のせいで逃した

 

お前のせいで騙された

 

お前のせいで犯された

 

お前のせいで責められた

 

お前のせいで殺された

 

お前のせいで殺した

 

お前のせいで飢えた

 

お前のせいで奪われた

 

お前のせいで奪った

 

お前のせいで壊れた

 

お前のせいで壊された

 

お前のせいで憎んだ

 

お前のせいで怒った

 

お前のせいで焦がれた

 

お前のせいで欲した

 

お前のせいで怠けた

 

お前のせいで驕った

 

お前のせいで騙った

 

お前のせいで犯した

 

 

 

全てお前の所為だ

 

 

 

 

 

「―――う…、あぁ、ああ゛ぁ゛ーーーーー」

 

セイバーは突然頭の中に流れ込んできた呪怨に悲鳴を上げた。

 

返ってきた腹部の傷など、それこそ気がつかないほどの錯乱。

 

絶叫の中で心の傷が抉られていく。

 

 

「成程…確かにこれは、私でなければ持たなかっただろうな。」

 

アーチャーはセイバーの状態変化を確認しつつ、腹部から剣を引き抜き後ろに下がり、同時に黒い洋弓を投影する。

 

 

 

 

「―――――我が骨子は捻じれ狂う」

 

 

 

 

そこに具現化されたのは、おおよそ剣とも矢とも呼べぬ歪にねじ曲がった螺旋の刃

 

大気は唸りをあげて刃の下にマナを巻き込み、真名の解放を要求するかのように輝き出す。

 

対するセイバーは今だ絶叫の彼方に意識を囚われ、アーチャーの攻撃に備える構えも無い。

 

 

アーチャーの腹部の出血は止まらない。両の手で押さえつけ一刻も早くこの場から離脱し静養しなければならないほどの致命傷だ。

 

しかし、『後一手』 その為にアーチャーは自らの両手を使い、弓を引き絞る。

 

この弓の一撃を撃たなければならないのは、彼の意地

 

今回は無理でも、いつか必ず彼女を救うと誓う、彼の想いが彼女を打倒し超えることで確かな自信につなげたいがため。

 

 

 

引き絞る弦はギリギリと軋みをあげ、今まさにその手を離さんとした瞬間

 

アーチャーの目の前に突如飛来した黒い缶

 

その名も『M84スタングレネード』

 

 

「しまっ――――――」

 

閃光と高音が周囲の情報を遮断する、近代武器の一つ。

 

魔術師の戦争においてありえない武装。

 

 

フラッシュバンとも呼ばれる非殺傷の手榴弾は、サーヴァントには通用しない筈の物理攻撃の、この場に限っての例外だ。

 

条件反射のように弓をもつアーチャーは心願、千里眼のスキルにより視力が限界まで強化されいる。

 

霊体化もできないこの状況で、いくら自然現象ではない人間の為の武器であろうが――――この光の威力は拙い。

 

 

人間ですら一時的な失明状態になるこの兵器は、弓兵の強化された瞳に甚大なるダメージを与えることに成功した。

 

さらに、突然の出来事によって構えていた矢は、正に的外れの虚空へと、真名の解放もなく飛んでいってしまった。

 

 

 

かろうじて爆音には対処できたが、英霊ほどの歴戦の兵が戦闘時に目を瞑るなどあり得ない。

 

それが裏目に出た。 いいや、逆手に取られた。

 

片手で目を覆い、もう片方の手で我慢の利かなくなった腹を押さえてのたうちまわる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイバー!今のうちに離脱よ!!」

 

「――――くっ、マスターか……ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

  *  *  

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、今日は桜ちゃん体調が悪いみたいだから学校もお休みするそうよ。」

 

そんな話を聞いたのは朝食の準備を終えて居間にて座った時であった。

 

「藤ねえ、そう言うことはもっと早く教えてくれ。」

 

昨日と同じく桜の文の朝食を準備していたのに、と思いながら何やら上機嫌でご飯を箸でつつく冬木の虎を睨みつける。

 

「そりゃ私だって桜ちゃんのいない朝食はさみしいわよ。でもでもぉ、桜ちゃんだってこれまでも色々あって来ない日があったじゃない?その日がちょっとずれちゃっただけじゃない。」

 

「ああ、よく解らないけど月に1回くらい来ない日があったっけ。」

 

「…なるほどね、お兄ちゃんは鈍感だから分からないだろうけど……」

 

キャスターちゃんはどうやら桜が来ない理由について予想ができたらしく、呆れたように溜息をつきながらナイフとフォークを使って器用に和食を口に運ぶ。

 

実は箸がまだうまく使えないと、昨日の朝食で判明し、顔を真っ赤に染めながら無理矢理端を握り込む姿はなかなかに可愛らしかった。

 

その後に笑いながらナイフとフォークを渡したら、刺されそうになったのはかなり怖かったが。

 

「そこら辺は、仕方ないと思っておくさ。でも、よく藤ねえが朝食前に連絡もらえたな。」

 

桜のことだから、朝の早い時間に電話をすることなんてない筈だけど

 

「それは、昨日言わなかったかしら?桜ちゃんの家、何でも改修工事があるとかで暫く内で寝泊まりすることになってるのよ。」

 

「―――――――」

 

「そうなのか?聞いてなかったと思うけど。っきっと、昨日のごたごたで言いそびれたんじゃないか?」

 

「そうね、私もその話は聞かなかったわ。」

 

キャスターちゃんにも覚えがないということは、どうやら本当に藤ねえが言い忘れたらしい。未だに、あれ?おかしいな?といった表情をしているが。

 

「うぅん………ま、いっか。そのおかげで今日は桜ちゃんの朝ごはんまで食べられる訳だし――――」

 

そう言いながら藤ねえは桜の分の朝食に箸を伸ばそうとする

 

「そう言うことなら弁当にして届けておく。雷画さんにもついでにあいさつしておくよ。」

 

ひょいとと皿を取り上げ、虚空で空振りさせる魔の手の主の恨めしそうな視線を無視して台所へ向かう。

 

「うぅ、藪蛇だったか……っ!―――まあ、桜ちゃんはそんな訳で良いんだけど、問題は士郎よ。今日も休むの?」

 

一応、教師としての心配もあるんだろう。

 

確かに、俺の成績は悪くは無いけれども、優等生でもない。

 

そんな奴が長期間授業をほっぽっているのは些か拙い。

 

けれども……

 

「昨日も言っただろ。それと今日はメイちゃんに町を案内しようと思ってるんだ。昨日は簡単に商店街の方を廻ったけれど、まだまだ日本に慣れないらしくて。」

 

「ごめんなさいお兄ちゃん……私の為に学校をお休みさせちゃって………」

 

俺の傍でキャスターちゃんが瞳を潤ませ、上目遣いでちらりと藤姉を見れば

 

「許す!!私が全力で許すわ士郎!!……でもその代り、午後になったらキャスターちゃんを連れて学校に来なさい。」

 

まあ、日本の学校の風景を見せて、更に俺も午後から出席させるという藤姉なりの計らいが出された。

 

 

 




猫:
アーチャー何とか生還、暫く静養。
セイバー、イリヤに助けられて生還。古傷ぐりぐりで更に修羅になるかも

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。