Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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お待たせしました。
お見合いなんてしたくないんだ!!
返せ!正月休暇を返してっ!


嘘26話

 

「マスター。これだけは最後に聞いておかなきゃいけないわ。」

 

「ああ、なんだい?」

 

「マスターは聖杯戦争に参加するのかしら?」

 

それは、衛宮士郎がキャスターを助けた晩に交わした言葉。

 

聖杯戦争に参加するか否か。

 

ルールは聞いた。非道さも残酷さも聞いた。恐ろしさも十二分に伝わった。

 

 

仮に、ここで衛宮士郎が聖杯戦争に参加しないというのであれば、キャスターは数日間だけ彼をマスターとして自身の力を回復させてから関係を断ち、後は適当な人間を傀儡としてやりくりしようかと考えていた。

 

短い間の会話のやり取りであったが、衛宮士郎の雰囲気は魔術師のそれではなく正義感あふれる善良な一般人のそれだ。

 

醜悪で欲深い人間ならば裏切りで返せばそれでいいが、善良なる者からの恩は出来る限り裏切りたくはない。

 

そんな考えをキャスターは持っていた。

 

故に彼女は問う。この未熟な魔術師、衛宮士郎は殺し、殺されな世界に足を踏み入れることを、自分がその立場に立つことをよしとするのか。

 

「俺は聖杯戦争なんて、そんな争い事が有ること自体が反対だ。そんな戦争で、関係のない一般人が巻き添えになる可能性が有るって知った以上、見過ごすことなんてできない。」

 

そうだろう、彼は未だに幼き夢から覚めない狂信者だ。

 

やはり、彼の手を借りるなんて、してはならない。

 

「その前に、キャスターちゃんの願いを教えてくれ。その願いが――――――」

 

 

 

 

 

  *  *  

 

 

 

間桐桜は勝利した。

 

それは彼女の人生の中で初めてのことである。

 

日常の中の出来事ではない。魔術師の世界の、英霊をも交えた殺し合いの舞台において、サーヴァントに刃を突きつけられながらも

 

彼女は敵サーヴァントの契約者であろう想い人、衛宮士郎を、正義の味方を志す少年を信じたのだ。

 

 

その結果―――――

 

 

「―――っ!?どういう心算かしら、坊や。そんな自殺志願な令呪を…受け入れろですって?」

 

メイちゃんが、キャスターちゃんが歯噛みをしながら私に向けていた短刀を降ろし、令呪による命令を下した先輩を睨みつける。

 

 

「何がどうなってるのかよく解らないけれど、とにかく待ってくれ!桜を傷つけるだなんて、俺が許さないぞ。」

 

ああ、やっぱり先輩だ。

 

 

聖杯戦争に参加していても、目の前の少年は少女が知る通りの正義の味方である。

 

 

だったら交渉のカードはこちらから先に切るのが、私を信頼してもらえる第一歩だ。

 

「アーチャーさん、私が最後の令呪を使いきるまで先輩とメイちゃんを傷付けることを禁じます!」

 

 

 

  *  *

 

 

 

桜の座布団の影から赤い光が消失し、キャスターはそれが令呪によるものだと判断した。

 

判断したが……理解が追いつかないという困惑の表情だ。

 

 

「あ、……貴女、正気!?貴女が令呪を使うのが何度目だか知らないけれど、それをわざわざ私たちの前でやるなんて自殺願望でもあるのかしら?」

 

「それは違うなキャスター。ウチのマスターは聖杯戦争で、勝利は目標としていない。」

 

そして私もな。とアーチャーが続ける。

 

 

キャスターはあり得ない発言を聞いたと、目元を包帯で覆っているアーチャーを瞠る。

 

そんな口先だけの、と言いたいのであろうが、キャスターの中でそれが矛盾するということに気がついてしまう。

 

それならば、令呪など使わない筈。

 

 

サーヴァントが手負いだから勝てないと断じたか?

 

こちらの魔力が明らかに弱っていることなど、気配ですぐに読み取れてしまう。

 

サーヴァントはその眼で相手の強さを測るのではない、霊格で見るのだ。

 

魔術師の英霊を倒せぬ三騎士か。このアーチャーと呼ばれたサーヴァントは目を負傷している。

 

弓兵の生命線たる目が使えない為に慎重に出ているのか?

 

だとしたら、先の迷いのない剣での人質行動が説明できない。

 

あれは目が封じられていようとも、接近戦も心得ているという現れだろう。

 

室内であったから狙撃をしなかった可能性もあるが、それでも今の私ではあの刃を避けることは出来なかった筈だ。

 

なのに何故、桜は令呪を使ってまで衛宮士郎と、しかも私までアーチャーの攻撃禁止対象に入れた?

 

坊やが私に使った令呪は「今、間桐桜を攻撃するな」という内容で伝達されている。

 

仮に、私がもう2、3呼吸置いて、再度彼女を攻撃すれば、令呪の縛りが外れる可能性もあるのに。

 

 

 

ならば、本当に戦意がないのだろうか?

 

 

判らない。しかし、状況は不明なままであちらのペースに流れている。

 

仮に、ここで私が彼らを信用するための材料を要求しようにも、あちらは既に令呪を消費する暴挙に出ているのだ。

 

そしてそれを目撃したのは衛宮士郎(お人よし)だ。

 

これが姦計を巡らせた罠だとしたら、衛宮士郎は落とされる。

 

 

切り札を今切るべきか?

 

いいや、まだ切れない。

 

アレは絶体絶命の瞬間、聖杯戦争も終盤で切るべき裏技だ。

 

なら、今は手持ちの材料でどうにかするしかない…ないのだけれども。

 

この先に待ち構えている相手が持ちかける交渉カードは恐らくは『同盟』。少し引いたものでも『不干渉』だ。

 

間桐桜

 

 

『間桐―――マキリ』

 

 

この地に住まう聖杯戦争の御三家が一角。

 

そして呼び出しているのは、現在は負傷中とはいえ三騎士のアーチャー。

 

これほどの好条件を引き当てている者が、はたしてそのようなプライドを捨てる行為を行うだろうか。

 

魔術師とはその大半が、自らに課した法と理念を厳格に順守することに、ある種のプライドを持っている。

 

その流れで、他者との関わりを極端に避ける者すらいる。

 

それは名門名道になればなるほど、その血筋に刻み込まれていくものであり、魔道が門外へと漏れ出さぬようにするためである。

 

それは聖杯戦争中であろうと例外ではない筈だ。

 

 

――――と、ここまでが魔術師としての理屈。

 

 

そう、ここまでが間桐桜を魔術師として、人ならざる道を歩むものとして捉えた場合だ。

 

 

このように疑われ、迫害されることは生前に嫌というほど味わってきた。

 

もしも、ここまでが彼女の計算通りに進んでいることだとしたら、反英雄としても称賛の言葉を贈るほどだ。

 

勘に依る処が大きいが、この状況は咄嗟であったと見ることもできる。

 

その上での綱渡り――――大きな賭け。

 

彼女が本当に聖杯に求めるものがないというのであれば、先の行動は

 

『恋心』

 

鈍感なマスターは気がついていないかもしれないけれども。

 

 

だから、この次に発する言葉、返答でそれを見極める。

 

 

「なら、この場で私を納得させる一言を言いなさい。」

 

 

そう、真に幸せを願い、それが叶わない絶望の淵にいる者が発する言葉はいつだって一つだ。

 

愛して欲しい。それならば、他者からこの解答を要求されて答える言葉は―――――

 

 

 

「………ごめんなさい、言えません。」

 

 

ええ、それが正解。

 

 

願いを口に出せない弱者。

 

望みをかなえようとしても、自分自身ではどうしようもない深い闇に囚われてしまっている、心清き者の精一杯の叫びだ。

 

 

自分でもわかるくらいに、睨みつけていた瞳は和らぎ、固く結ばれて痛く元が緩む。

 

 

さあ、ここにいるのは権謀術数を巡らす裏切りの魔女だ。

 

されど、それを従えるのは正義の味方を目指す青い少年。

 

 

言葉にしなさい。

 

  持ち掛けなさい。

 

貴女が望む愛しい手は今確かに―――――強くなる。

 

 

「でも、お願いします。メイちゃん、先輩。聖杯なんて要りません。だから――――――――」

 

 

ああ、100点満点もいいところだ。

 

 

彼女は踏み出した。ならば次の出番はその手をつかむ者だ。

 

 

 

この世全ての悪が見せたものとは違う、罪ではなく正義を背負う少年は何を想うか。

 

少年は少女へと―――――その手を伸ばす。

 

――――愛する人の笑顔へと至る、その扉への道は、示された。

 

 

 

 

 

  *  *

 

 

 

 

「ランサー。やはり私が前衛になります。貴方はルーンによる戦闘補助を中心にしていただければ……」

 

「おいおい、それはこっちの台詞だ。早いうちに型を付けるってなら俺が前に出ている方がいい。」

 

とある洋館の一室でランサーとバゼットは揉めていた。

 

ゲイボルグを封じられたランサーではサーヴァントとやり合うには難しい。

 

特攻をかける気で突き当たればキャスターくらいならどうにかできるかもしれない。

 

そんな悲観的な、消極的な考えに陥ってしまっているバゼットに、ランサーは

 

「他の連中に俺の封殺がどこまで漏れているか分からねぇ。宝具も使っちまっている以上、今最優先するべきはあの狂戦士を真っ先に潰すことだ。他の連中と潰し合うような事態も考えられなくはないが、奴も確かに刺し穿つ死棘の槍を受けている。アレで心臓を貫かれて何で死んでねぇのかは分からないが、少なくとも再生は満足にできていない筈だ。」

 

挑むなら、狂戦士との再戦。

 

それもできるだけ早く。

 

ランサーは原初のルーンにも精通する、キャスターとしての素養も兼ね備えている。

 

魔術と肉弾戦をうまく組み合わせれば、セイバーやキャスター以外なら十分に対処できる。

 

そう計画を定め拠点の洋館を出ていくランサー。

 

あくまでバゼットはマスター(魔術師)なのだ。ましてや女ならそれはランサーが前に出すまいとする気概も十分に伝わる。

 

「……やはり、私では貴方の隣には立てませんか…?」

 

俯きながら小さくバゼットは己が心中を溢す。

 

「いつの時代でもあることだろうが。テメーが守るべき女を、戦いの場で前に立たせるなんざ男は好まねぇのさ。」

 

「それは偏見です。私はそんなこと――――」

 

「それに、ちったぁ俺を信用してくれてもいいんじゃねぇのか?『信用』だって、対等ならそれこそ戦友だ。」

 

ランサーはバゼットに背を向けながら笑う。

 

不利な戦いなど、苦戦などそれこそ生前では茶飯事。それでも手持ちの力で困難を、不可能を切り抜け奇跡とする。伝説をなす。

 

それこでこその英雄だ。

 

その背中はバゼットにはとても大きく映り、しかし今自分がその背中を任されたと悟る。

 

その背中こそがランサーの語った『対等の信用』

 

「――ふふっ、戦闘時はあまり離れないでくださいね。傍にいてくれれば私もサポートしやすいので。」

 

「おう、なかなかいい口説き文句じゃねぇか。それでこそ張り切り甲斐が有るぜ!」

 

先ほどまでの落ち込みが幾分か和らいだバゼットはランサーと共に夕暮れの街へと向かう。

 

 

 

 

 

「ギャハッ!!凛たんに報告ぅっ!!」

 

こりゃあ明日から退屈せずに済みそうだ。

 

人の逢間に紛れた悪意は次の罪悪を狙う。

 

 

 




猫:
本当は後半部分は慎二を書こうとしたのですが、納得できい部分を叩修正している内に前消ししてしまったのさっ!!
慎二君キレイにしすぎてもあれなので少々原作通りのゲスさを混ぜて行こうかと考えています。
さて、士郎と桜がペアとなる訳ですが。当初、この組み合わせは非常に難しいと思いかなり迷いました。
桜とキャスターって、ホロウでこそそこそこ中がいいようですけれど、聖杯戦争中ならキャスターいじめっ子に変貌しちゃうんじゃ?と。
なので、それっぽい心理描写で今回は埋め尽くす羽目になりました。
今のところ桜の中の蟲には気がついたとしても知らんぷりな形で進めたいと思います。
キャスターは桜の心の弱さに打たれても、生者を救うのは生者として、現時点では深入りしないと理解していただければ幸いです。
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