Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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私的な衛宮士郎像です。違う点があれば許して。


嘘3話

衛宮士郎は魔術師なのだろうか

 

 

 

彼を見たことのある魔術師がいるとしたら、殆どが否定するだろう。

 

 

彼は魔術師であることが生き様なのではない。

 

 

正義の味方になることが目的なのだ。

 

 

歩道橋を上る老人がいれば手を貸しおぶり。

 

道に迷っている人がいれば進んで話しかけ、道を教え。

 

学校で困っている学生、教師など最早我先へと彼を頼ってやってくる。

 

放課後はアルバイトに精を出し、他の従業員の、しかも正規雇用者の何倍もの仕事を引き受け。

 

休日になればボランティアとして、無償で労力を提供しに出向く始末。

 

 

こんな人物が魔術師なわけがない。

 

魔術師と言うものを知っていようといまいと、万人が同じ答えを口にするだろう。

 

詳しいものが近くを通っても、そこには魔力の残滓など欠片もない。

 

 

強引に拉致でもして体を知れべればそれこそ魔術回路の一本でもあるかもしれないが、そんなモノ街中の2・300人を調べれば稀にあることだ。

 

 

 

 

 

 

衛宮士郎は魔術師なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

「同調、開始(トレース・オン)」

 

 

解は肯定。

 

 

声の場所は彼の暮らす家の庭にある土蔵から。

 

 

誰もいない真夜中に響く、一工程のトリガーワードはその存在が魔道に生きる者の証明。

 

脊髄に流れる液体が急速に冷却されていくような、背骨が発火炉のように身を焦がしていくような、今夜も衛宮士郎の命がけの魔術訓練が始まる。

 

 

 

 

彼は知らない。

 

 

 

こんな行為、魔術師のすることではない。

 

 

 

彼は知らない。

 

 

 

魔術の何たるかを。

 

 

 

彼は知らない。

 

 

 

養父が魔道を正しく教えなかったことを。

 

 

 

知らずに10年近くも間違った訓練を続けている。

 

止める者はいないのだろうか?

 

 

そんな者は一人としていない。

 

彼はこの世の魔術師を、魔術を知るものを一人しか知らない。

 

彼の養父にして故人、衛宮切嗣しか知らない。

 

故に彼は魔術のほとんどを知らない。

 

否、使えない。

 

覚えていないモノも僅かにあれば、扱えなかったモノは大半を占める。

 

 

 

強化

 

 

 

ただそれのみが衛宮士郎の扱える魔術である。

 

 

但し、成功率は1%を切る。

 

 

 

 

 

 

 

繰り返そう。

 

衛宮士郎は魔術師なのだろうか。

 

 

そもそも、彼は何故魔術師なのだろうか?

 

 

 

「正義の味方になりたい。」

 

 

この一点の目標の為の道具として、魔術の訓練をするにしてもえらく矛盾している。

 

 

紙切れ一つ存在強度を強化するにしても、彼がそれを成功させるには小1時間かかる。

 

魔術回路の起動スイッチの作成に30分、魔力精製の為の精神統一に15分、魔術行使にかかる集中に15分―――――

 

効率云々の問題ではない――――無駄の極みである。

 

借りに成功しても失敗しても、それが何になると言うのだろうか?

 

 

 

彼が目指す正義が視えて来ない。

 

 

 

 

「誰かを救える、誰もを救える存在になりたい。」

 

 

 

 

目標が、目的が定まらない。

 

 

彼の学校が学年に配布した進路希望調査表―――――未だ提出していないのは彼を含めた数名のみであった。

 

提出期限はとうに過ぎている。

 

 

 

しかし、それについて彼に指摘するものはいても、気遣う者はいない。

 

皆、わが身の将来を考え、彼を体のいい便利屋として利用できればそれで満足だ。

 

通行人も、アルバイト先の同僚も。

 

 

 

そう、彼の周りこそ魔術師のごとき立ち振る舞いなのに、衛宮士郎はまるで一般人のようだ。

 

利用されこき使われるなど、それこそ魔術師ではない。

 

 

ならば、それこそ彼が望む正義の味方なのだろうか?

 

 

報酬も褒賞もなく、只々まるで機械のようにその身を削りすれ減らし、廃棄物になり果てるまで止まらない存在こそ彼の目指す正義なら、それは最早人の所業ではない。

 

 

人が歩む道を逸脱しているどころの話ではない。

 

道すら歩まず、虚空をもがく人でなしだ。

 

 

 

これほどの凶行、まるで魔術師のごとき茨の道だ。

 

 

 

 

つまり―――――――どうやら、衛宮士郎は魔術師の様な奴なのだろう。

 

 

 

 

そんな魔術師とも呼べない衛宮士郎は、とあるアルバイト上がりの夜、何気なくいつもとは違う空気を感じた帰り道の路地裏で――――――

 

 

 

 

 

 

「――――い、――――じょうぶ―――――!!?」

 

 

 

また、何時ものように、御節介よろしくと曲がり角の傍らで倒れる人物を助けようと声をかけていた。

 

 

これが衛宮士郎の日常。

 

 

どこの誰とも知れない見知らぬ他人を放ってはおけない、破綻者の凶行。

 

そんな行為も、今回ばかりは状況が違った。

 

 

 

倒れていた人物はまるで人間なのに、その体は今にも消えてなくなるのではないかと言うほど――――否、これは比喩ではなく

 

 

本当に体が透け始めている、人間らしきモノに衛宮士郎は声をかけていた。

 

しかも、こんなことが日常で起こりえることなどまずあり得ないのにもかかわらず、衛宮士郎は若干の驚きと戸惑いを見せるだけで、行為自体がえらく日常的であるかの如き態度であった。

 

 

衛宮士郎は奇跡を起こせぬ魔術師だ。

 

 

ならば、これはきっと分かれ道なのだろう。

 

 

その身が正義であるのか悪なのかを決める、運命の歯車が狂いだした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「俺は助けるよ、正義の味方になる為に―――――」

 

 

 

 

 

 

 

――――たとえ、この世全ての罪を背負うことになろうとも。

 

 

 

 




☆だいたいここら辺までがプロローグと思って頂ければ。
にじふぁん投稿時のアンケートでキャスターがロリになることが決まりました。
この他にも通常版、JK版等考えていましたが、流石は同志(笑
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