Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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皆大好きキャス子


嘘4話

 

「おい!大丈夫なのか!??しっかりしろ!!」

 

 

どうしたらいい?

 

どうしたら助けられる?

 

 

喧嘩でボロボロにされた学生や、酔っ払いのおっさんを介抱した時と似たようなシチュエーションだけど、こんなパターンは初めてだ。

 

そこに居たのはボロボロの黒いローブを身に纏った、見た目の幼さが際立つ美少女。

 

 

目の前の少女は外国人なのか、淡い紫の髪に今まで見たこともない様な変わった形の尖った耳、そして外見はどこからどう見ても俺と同じ世界、魔術師をイメージさせる黒いローブに身を包み、背中をビルから伸び張り付く配管にもたれかかり荒い息を上げている。

 

いいや、そんなことはどうでもいい。

 

それよりも一番問題なのが――――少女の体が透けて……まるで消えかけているみたいだ。

 

 

人が消える………死ぬって言うのか?

 

冗談じゃない、衛宮士郎は魔術師であり正義の味方だ。

 

助けないなんて選択肢はあり得ない。

 

まして、こんなに苦しんでいる少女を見捨てれば、衛宮士郎はその存在意義を見失ってしまう。

 

 

バイトの賄いでもらった、弁当の入ったビニール袋を脇に投げ捨てて、少女のか細い肢体を抱え起こす。

 

それは正に質量を失っているかのように、その存在が無くなっているかのように重さを感じない体だ。

 

だけど掌から伝わる少女の柔らかさ、体温、幼さから来る香りが確かに現実だと主張する。

 

何が何なのか解らないけど

 

 

 

落ちつけ。

 

 

 

 

幸い時間は夜で、ここは人通りもない路地だ。

 

魔術を使っても目撃者はいない。いや、例え誰がいようとも、そんな事を気にしていたらこの娘は本当に助からなくなってしまうかもしれない。

 

こんな不可思議、救急車に乗せて病院へ連れて行っても、処置なんて出来るわけがない。

 

 

ならば自らの手で救うしかないだろう、衛宮士郎。

 

 

目の前の少女を救えるかどうか、ここから先は己との勝負だ。

 

 

「――――同調・開始(トレース・オン)」

 

衛宮士郎を現す言葉を紡ぎ、意識を己の中へと埋没させる。

 

 

いつもならたっぷり30分はかけて作り上げる、魔術回路を起動させるためのスイッチを―――工程をすっ飛ばして一気に組み上げる。

 

 

 

ビギリ!!

 

 

 

頭の中で何かに罅が入るような音が聞こえる。

 

構うな鍵がパズルのようになっているなら無理矢理にでもねじ込みこじ開けろ。

 

 

 

zzザッ!!―――――j、ガーッ―――――ギギギィzガッ!!!―――――

 

 

体と頭で五月蠅いノイズが聞こえる。

 

どうでもいい、とにかく急ぐんだ。

 

 

「接続・開始(トレース・オン)」

 

無理矢理繋ぎ止める意識を今度は一度も使ったことのない、精神同調に近い魔術を行使するため、必死になって心臓の鼓動を弱める。

 

 

視界がチカチカして、それでも気絶に耐えるのはひとえに目の前で苦しそうにしている少女のおかげだと思う。

 

不謹慎なのは百も承知だけど、それでもその人が今までに見たことがないくらい美人で可愛くて、幼ない少女からこんな感情を掻き立てられるなんて間違っていると思いながらも―――――男なら目を離すことが出来ないくらいだ。

 

 

 

 

 

―――とたん、視界が一瞬暗転する

 

 

 

 

          聖杯戦争                     『―――スターsザんギ%&'てk』          サーヴァント    ジ…        『~=)かなひ{+*』         『ヴェル"#$%&}_』                 『ぅう……ブ<{|力、を―――』               『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』

 

「――――グっ……アがッ!!!」

 

果たして、意識を手放したのがほんの数瞬だったのは僥倖だ。

 

今の数秒で切り上げていなかったなら間違いなく脳の神経が全て細切れになるまで千切れていただろう。

 

だけど必要なことは直感的に理解できた。

 

 

そして、俺は自分の唇を躊躇いなく噛み切り。

 

 

 

解っているのか衛宮士郎。

その行為は例えこの少女を救うためとはいえ―――――

 

 

解ってるさ。でも、こんな可愛い子が死ぬなんて間違ってる。

ああくそ。自分でも、もう何を言っているのか解らないくらいだ。

 

 

 

悩む時間はもう終わりだ、これからは正義の味方を成す時間だ。

 

 

 

最後に一層少女を自分の胸に引き寄せ顔と顔を接近させる。

 

 

 

消えかけている少女の僅かな胸の膨らみが自分と密着し、鼓動と鼓動が重なり合う。

 

よく見れば、少女はボロボロのローブの下には何も着ていない状態だった。

 

その事実に気がつくと心拍数が馬鹿みたいに跳ね上がり、顔が熱くなる。

 

少女の体の柔らかさに加え、殆ど直に近い胸の感触の興奮に理性がぶっ飛びそうになるが、歯を食いしばってギリギリのところで繋ぎ止める。

 

 

 

 

そして、滴り落ちる魔力を詰め込んだ血を―――――

 

 

彼女と唇を合わせることで強引に流し込んだ。

 

 

それは時間が止まるかのような感覚だった。

 

美少女と話す10秒とストーブの上に手を置いた10秒は時間の感じ方が違うと聞いたことがあったけど、こんなの正反対もいいところだ。

 

この瞬間が永遠にも似たような、そんな錯覚。

 

 

柔らかな唇の感触は俺にとっては初めての経験だ。

 

こんな事、一生忘れることなんてできないくらいの気持ちよさで、胸が高鳴って―――

 

これが衛宮士郎の初めての正義で、初めての罪。

 

 

 

 

こんな姿、魔術の秘匿云々の前に警察に捕まるだろ。

 

 

大いに結構だ。それでこの子が助かるなら俺は喜んで引き受け背負おうじゃないか。

 

 

明日から町での俺の代名詞(異名)は

 

 

 

 

『少女性愛者(ロリコン)』になっちまうだろう。

 

 

 

 

 

それが俺と彼女の出会い。

 

 

その時はまったく気がつかなかった、いつの間にか自分の手の甲に浮かぶ奇怪な痣のような刻印に。

 

 

衛宮士郎は罪を背負う。

 

 

少女は何処までも悲劇で、俺は何処までも愚かだった。

 

 

 

 

千を救おうとして五百を取りこぼすのなら――――――

 

それは嘗て正義の味方を志した者の言葉。

 

 

 

それを俺は、

 

 

 

―――を切り捨てて、―――を護り抜こう。

 

 

未だ認められずにいた。

 

 

 

当たり前だ、この身は剣なのだから。

 





士郎は悟りキャスターの体内に向かって自らの液を注ぎ込む。
と言う訳で士郎悟りに目覚めるの回でした。

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