Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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今回は残酷な描写、人道的倫理観をかなり無視した表現があります。
苦手、嫌いな方はブラウザバックすることをお勧めします。
こちらを見なくてもストーリー上問題ないようにしていきますので、ご安心を。


嘘5話

 

最初にこの時代この世界に呼び出され、最初に目を開けたときに

 

 

目の前に居たのは、おおよそ人の持つ醜悪さを全て併せ持ったかのような、下劣な男の魔術師だった。

 

 

男は私の姿を見た瞬間、何が気に障ったのかいきなり表情を険しくし、舌打ちをするとカツカツと背を向け離れて行ってしまう。

 

まるで私に対する興味を信頼を、信頼を失ったかのように。

 

まだ一言も言葉を交わしていないのにそれは無いだろう。

 

呼び出された場所である、振るい廃屋のような部屋の隅には何人もの裸体の女性が淫具と男の白濁にまみれて放置されていて、そのどれもが精神のほとんどが死にかけだったことは一目で知れた。

 

 

 

 

「最初の仕事だ、掃除(食事)しておけよ」

 

 

 

 

男は怒った声でそれだけ言い放ち部屋から出て行ってしまう。

 

何だと言うのか。この私に、人に仇なし恐れられた身とはいえ仮にも英霊である自分に、こんな壊れた女性たちの精神を食らって―――殺せと言うのか。

 

いくら魔女と言われた私でも、こんな仕打ちを受けるために聖杯の呼びかけに応えたわけじゃない。

 

 

しかし、目の前の女性たちは薬と魔術によって心まで犯しつくされてしまっている。

 

もう、心に光は灯ることすらない。

 

 

「………ごめんなさい、どうか恨んで……恨めるだけの心を持って逝ってちょうだい。」

 

 

 

 

体を満たす魔力を不快に思った事などこれが初めてだったけど、この味は彼女たちが生きていた証。絶対に忘れたくないと思った。

 

 

 

「令呪を持って告げる。若い女を20人ほど攫って来い。俺の用がすんだらお前に食わせてやる。」

 

 

 

最低な魔術師だ。こんな肉欲にまみれたゴミ屑なんて早々に他のサーヴァントに殺されてしまえば――――いいえ、そんなことを待っていることすら億劫だわ。

 

殺してしまおう。裏切りは私の象徴。本当に嫌いな呼び名だけど、思い知らせてやる。

 

自身が呼び出したキャスターがどれ程の存在かを………

 

 

 

令呪の縛りに無理矢理町の女性を攫いながら、そう心に誓いを立てる。

 

 

 

しかし、そんな私の計画はひと組の襲撃者にあっさりと台無しにさせられる。

 

 

 

 

 

 

 

「ギャハハッ――――――ご馳走さまだぁ、殺しに来たぜぇ!!!」

 

 

 

廃墟に乗り込んできたのは全身に奇怪な刺青を彫り込んだサーヴァント。

 

両手には猛獣の爪を思わせるこれまた奇怪な短剣。

 

 

「キャスター!!なにをしてる、早く殺せ!!殺しやがれ!!」

 

動揺するマスターがみっともなく叫ぶ姿に思わず笑みがこぼれる。

 

 

 

ええ、ご命令のままに殺して御覧に入れましょう、マスター?

 

 

―――――――ただし

 

 

 

 

目の前に居たマスターの背中にに私の宝具を、ルールブレイカ―を突き刺す。

 

「な――――――貴様……キャスタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

神代の魔女を舐めた愚かさをその身で知れ。

 

サーヴァンととしての契約が切れた一瞬で、私はマスターが持つ二画の令呪をはぎ取り自分の手に移植する。

 

その流れるような裏切り行為にマスターだった男は顔を青くし

 

 

「御機嫌よう、マスター(愚か者)」

 

私は男の体を渾身の力を込めて刺青のサーヴァントの前に突き飛ばす。

 

 

ザマアみろ。私はこれで自由だ。お前なんてもう用済みだ。

 

心の中で笑いがこみ上げる

 

―――――と、その瞬間

 

 

「何だぁ?よりにもよってこの俺に擦り付けようってか?――――ハッ、上等上等!」

 

 

 

 

 

その罪――――オレが貰うぜ?

 

 

 

一瞬にしてぐちゃぐちゃの肉塊に成り果てる男の体

 

 

頭蓋が一面に巻き散らかされ、臓物は細切れで、手足なんて割き烏賊みたいになって、ビシャリと血に濡れた音を立てながら床に重力に従って崩れ落ちる。

 

 

今のはなんだ?

 

 

クラスは解らないが、今の攻撃を推測する限りではアサシンかバーサーカーか。

 

どちらにせよこのままじゃ私は長くは限界出来ないしこのサーヴァントとの戦闘も不可能だ。

 

 

どうする、どうすれば?

 

 

 

「あー、ツマンネ………そうだ、お前に一つ質問なんだけどよ?サーヴァントを死姦するにやどうしたらいいのかね?ぶっ殺しても後が楽しめないんじゃ達成感なんて零ジャン?」

 

………なんてことを言い出すサーヴァントだ。こいつは英霊と言うよりも邪霊と表現した方がいい気がする。

 

「おいおい、ロリっ子サーヴァントよぉ、シカトすんじゃね―よ。援交させるぞ?」

 

「……あなた、最低ね。流石の私もここまで品性が崩れた人物を見るのは初めてよ?」

 

「おお、やっと返してくれた言葉が詰るって、さてはSだな?だけどこりゃお前が望んだ応えの一つでもあるんだぜ、言っちまえば俺が免罪符だ。ヒャハハッ!!」

 

私の望み?

 

 

免罪符?

 

 

何の話だ?やっぱりこいつ、どこかおかしい。いや場所は主に頭だろうけど。

 

 

「だってよぉ…おまえ、自分がしたことに後悔してる顔じゃねーか。」

 

 

ドクン、と胸の鼓動がひときは高鳴る。

 

 

 

 

 

クズなマスターとはいえ、裏切り死に至らしめ、嫌厭でも罪なき人間を喰い荒し、――――壊し

 

 

そんな最低な行為がかすんで見えるほどの残虐を目の前で堂々と見せつけるサーヴァント、私の裏切りを容認し私のマスターを殺した男。

 

 

「んじゃ、後片付けもしとくかな」

 

 

そうニヤけながら答えた目の前のサーヴァントはバチンと指を鳴らすと

 

部屋の隅に居た、心が壊れてしまった女性たちに無数の剣が突き刺さる。

 

 

まるで機関銃によってハチの巣にされるように―――――

 

 

 

「さて、これで最悪はこの俺だ。………ロリっ子、残りはお前だけなんだけどよ……死ぬか?」

 

 

その言葉を言い終わると同時に部屋から廊下へと繋がる鉄の扉が勢いよく蹴り開けられ、一人の赤い少女が息を荒らげながら目の前のサーヴァントに殺気を放つ。

 

「アヴェンジャー!!―――――ッ!!?……これはどういうこと?」

 

部屋の隅で血濡れの女性たちだったモノを見たサーヴァントのマスターと思われる少女が殺気を向ける。無論彼にだ。

 

「おいおい、ずいぶんと遅い到着じゃねーかよ凛たん。遅過ぎるから敵のマスターぶっ殺してそこらにいた女も勢い余って犯っちまったよ?」

 

「アヴェンジャー!!!――――私はキャスターをしとめなさいと指示した筈よ。」

 

それにしても、アヴェンジャー?なんだそのクラスは?

 

そんなクラス、聖杯からの知識にはなかった筈だ。

 

 

一体このサーヴァントは何だと言うのか。

 

「あーあ、せっかくの殺人もこれじゃ興ざめだ。……ってわけなんだけどよ?キャスター、やっぱ殺すわ。」

 

そう言って全身刺青のアヴェンジャーは私に向かって右手を突き出してくる。

 

 

 

 

死にたくない――――

 

 

 

途端にこみ上げてくる恐怖。

 

信じられない、自分にもまだそんな夢を見る心が残っていたのか。

 

 

こんな絶対的な邪悪の前で思い知らされた。自分が悪だと思っていた罪だと思っていたことはなんてちっぽけだったのだろうか。

 

こんなやつ、――――マスターがいれば何とか切り抜けることも倒すこともできたかもしれないのに、私は自らその可能性を放棄してしまった。

 

 

それこそ罪だ、こんな汚れた願いなんて最初から持たなければ―――――

 

 

 

「ヒヒヒ、何だァ?まだ足りねえのか?」

 

アヴェンジャーがそう呟くと私との距離を一瞬で詰め、私のローブの下の服を掴むと力任せに引き裂き始めた。

 

 

「な!?何やってんのアヴェンジャー!!!」

 

「ヒャハッ!見て判んねーのかよ?ロリっ子でも使って慰めようかなってなっ!!ギャハハ、俺って天才?」

 

 

一見高校生くらいの見た目なアヴェンジャーだがやはり英霊、その筋力はこんな年端もいかない姿の私じゃ魔力で力を強化しても太刀打ちできない。

 

 

されど侮るなよ復讐者、この身はキャスター(魔術師)だ。

 

その身は攻撃に転ずるとなれば現代には失せたる神秘を持って汝が身を消し去ろう。

 

接近しているアヴェンジャーの下腹に右手を添えこの身に残る魔力を絞り出してランクAの魔力をもって全力で撃ち抜く。

 

 

とっさの反撃に気がついたのか身を捩るアヴェンジャーだが―――――遅い!!

 

閃光とともに彼の左わき腹がごっそりと吹き飛ぶ。

 

 

アヴェンジャーの表情が驚きと苦痛に歪み直後――――――

 

 

 

 

 

この世のものとは思えない邪悪な―――――優しい笑みを浮かべ

 

 

 

 

 

 

 

 

「偽り騙し欺く万象(ヴェルグ・アヴェスター)」

 

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

 

 

 

突然頭の中で鳴り響く呪いのカーニバル。

 

 

そして私の体に彼と全く同じ傷が左わき腹がごっそりと吹き飛び――――

 

 

「さっさと行けよ、キャスター」

 

 

そう小さな声で言いながらアヴェンジャーは私のローブを掴み体ごと天井近くに合った硝子のない窓から放り捨てた。

 

 

 

 

ああ、彼はなんて悪なのだろうか。

 

 

 

その身がどんなに罪で汚れようとも、悪人で敵の私さえ逃がすためにこんな茶番を演じたと言うのか。

 

 

 

その姿は今まで見たどんな者よりも英雄で

 

 

 

 

 

無実の罪人(正義の味方)だった。

 

 

 




残酷で優しい、ぶっ壊れたアヴェンジャーを表現するのって難しいです。
復讐者が背負ったのはこの世全ての罪。
少女の罪まで自らが肩代わりし免罪符として奪い取る。
因みに復讐者エミヤは原作本編のどのルートとも違う衛宮士郎の末路。

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