過重労働指揮官とAR小隊   作:h2RL

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過重労働指揮官とAR-15

〇深夜

 S09基地 某所

 

 

 

あたたかい。

あなたは意識が覚醒して先ず、そう感じた。

 

 

 

S09地区指揮官であるあなたが眠りから醒めると、自らがベッドの中にいることに気づいた。

瞼を開こうとする...が、重すぎて開かない。光も全く感じない。

つまりこの部屋が完全に、もしくはほとんど暗闇だということだ。

 

触覚をある程度取り戻した指揮官は、続いて嗅覚を働かせた。

しかしそこであなたは突如、自らの置かれている状況がいかに異常か、どんどん気がついていった。

 

...このベッドは私のものではない。かといって、基地の医務室のような清潔感のあるベッドの臭いでもない。これは...他の人の、それに女物の臭いがする。

 

それにそもそも、私がベッドにいる事すら不審だ。

確か私はM4に膝枕されながら眠りについたはずだ。だから本来なら私が起きるのはM4の膝の上、もしくはソファーでないとおかしい。

仮にM4がわざわざ私をベッドまで運んでくれたとしても、それならばなぜここは私自身のベッドではない?謎は深まるばかりだ。

 

何よりも背中全体に感じる暖かさ。あなたは目を閉じたまま周りを把握しようと手を伸ばそうとしたが...それすら不可能。

金縛り、いや、何かに優しくまとわりつかれているような感触。

 

色々推察を重ねていくうちに瞼の重みは薄れていき、それを感じたあなたは恐る恐る目を開いた。

 

「...なぜ......。」

あなたは小さく呟いた。

 

あなたが居たのは、司令室のソファーではない...。人形用宿舎のとある一室であった。

 

 

 

 

[newpage]

〇深夜

 S09基地 宿舎

 

 

部屋に入る月明かりに目を慣らしたあなたは、自らの可能な限りで情報収集を試みた。

 

今の時刻は...時計を見る限り午前三時。つまり六時間半ほど寝ていたことになる。

 

そして机に置かれている銃...コルトAR-15。つまりここは戦術人形"AR-15"の個室の可能性が高い。

 

部屋は一見、きちんと整えられている。ただ机の上が少し乱雑としている位か。

 

部屋にはAR小隊の集合写真が数枚飾られている。あの写真は...覚えている。最近撮ったやつだ。あなたもしっかり写真に写っている。

机の上には同様の写真が4枚ほど置かれており、そのうちの一つにはマジックでDear Commanderと綴られている。あなたは少し気恥ずかしさを感じた。

 

しかし、あなたが最も驚いたのは以上のいずれでもなかった。

 

「え、AR-15...。頼むから放して...。」

 

 

...AR-15が添い寝、否、あなたのことを抱き枕にしているのである。

彼女の両腕両足が背中から、あなたの体をみっちりと締め付けていた。そのため、あなたは彼女によって、強く、しかしながら優しく全身を拘束されてしまっていた。

 

「んー......しき、かん......。」

 

普段の口調からは想像もつかない、AR-15の甘い寝言が耳元から聞こえてくる。それに加え、体の近さゆえに感じることのできる吐息に対してあなたの精神は動揺を繰り返していた。

 

このままでは、私の理性の壁が粉々に砕かれてしまう。それだけは避けねば...!

そう思ったあなたは自身の本能の静かなる隆盛をよそに、この場から脱出することを試みたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

AR-15には悪いが、あなたはまず彼女を起こすことから始めた。

この部屋と他のAR小隊の部屋は壁1~2枚で仕切られている。そのため大声を出すとAR小隊全体に迷惑がかかるので、あなたは控えめに、しかし聞こえるほどの大きさで彼女に語りかける。

 

「AR-15、放して...。」

 

 

「M4、またせてる、わよ.....。すぅ...。」

 

「AR-15...、またいつか付き合うから、今は解放して...。お願い...。」

 

 

「.........。んぅ......。」

 

ダメだ。言葉が通じていない。成功する見込みなし。

彼女を無理やりたたき起こすという選択肢は、気の優しいあなたの脳内にはそもそも存在しなかった。

彼女のほのかな体温と滑らかな肌の感触。ふんわりとした掛け布団の香り。ほんのりお酒の混じった甘い吐息。そしてあなたの想像よりも気持ちよさそうに寝ている彼女の雰囲気。四つの感覚を通じてAR-15の存在が感じられる。

ジリ貧。埒が明かない。

このままでは堕ちてしまう、と危機感を抱いたあなたは作戦を変更し、彼女の拘束から脱しようと目標を変えた。

 

まずは手を自由にしようと、彼女の腕に手をかける。華奢な腕、これであなたが動けなくなっているのだから驚きだ。

そのまま優しく動かそうとしたが...、人形の腕力が思ったよりも強く、ほとんど動かない。

仕方ないので手を引き抜こう...としたが、

 

「あ......、ダメ......。んー......。」

 

AR-15の腕が巧みに変形し、あなたをさらに強い力で拘束し直す。余計に脱出するのが困難になってしまった。本当に熟睡しているのか疑うレベルの芸当にあなたは呆れた。

手がダメなら脚...と言いたいところだが、AR-15の脚がすでに回されており、こちらも腕と同じく解くのは困難。

 

それでもあなたは諦めず、体をもぞもぞと動かし、徐々に四肢の位置を変える作戦へと出た。

焦らず、まず左腕から...。彼女の拘束が二の腕、肘、そして手首へと変化してゆく。そしてようやく片手が使えるように...そう思った時だった。

 

ガシッ

「え?」

何か不味かったのか彼女にまた勘づかれ、せっかく抜けそうだった腕を再度ホールドされてしまった。

AR-15は続いてあなたを90度回転させた。部屋が回転して天井が上となる。あなたの胴体は彼女の両腕脚に挟まれる形となった。

 

「すぅ......。」

 

AR-15はまだ気持ち良さそうに寝ている。あなたは彼女が本当に寝ているのか若干の疑いを持っていたが、どちらにせよ放してくれないのであれば、ここでじっとしているしかない...。

仕方ない。朝になるまで一旦寝よう。AR-15には睨まれるかもしれないが、物わかりの良い彼女であれば、事情を説明したら分かってくれるだろう。

そう思いあなたはもう一度目を閉じる。

すぐに意識は減衰していき、部屋の深い闇と同化し始めた。

 

「......あ、れ、...し、きかん...?」

 

寝つけると思った矢先。AR-15の眠そうな声があなたのそばで響いた。

どうせ寝言だろう。瞼を開けるには値しない。

そう思いあなたはわざわざ確認することすらしなかった。

 

「なん、で......?ゆめ....?」

 

夢じゃない、現実だ...。そうあなたは心の中でAR-15に返した。

一瞬気が取られたが、いよいよ寝られるだろう...そう思った時であった。

 

 

「しき、かん......おしたいしております....はむっ......。」

 

ーーー彼女はあなたの耳を直接咥えこんだのである。

 

 

 

「......ッ!」

予期しない感触に、あなたは体をよじらせ、目を見開いた。あなたの無防備な耳に彼女の柔らかい、少し乾いた唇が襲いかかってくる。

お酒の匂いがほんのり香る。

視界の端に見える彼女は薄く目を見開いていた。目のハイライトが弱く、眠たげである。

これは寝ぼけている、夢と現実の区別がついていない!あなたは直感的にそう感じた。

 

耳全体に接吻をされたと思いきや、耳の上半分、続いて耳たぶがAR-15の両唇に挟み込まれる。優しく咀嚼される。

反射的に距離を取ろう...としたが、彼女の強い抱擁により不可能。気づけばあなたの頭には彼女の片腕がすでに回っていた。あなたの片耳はもはや彼女のものと言って差し支えないであろう。

 

あなたはまだ諦めなかった。これくらいなら慣れれば問題ない...、そう思いあなたは再三目を閉じた。しかし。

 

 

ビチャ

みずみずしく、しかし強い弾力を持った何かがあなたの耳に襲いかかる。

 

「...ひいッ!?」

あなたがその"なにか"がAR-15の舌であることに気づくのに時間はかからなかった。あたかも独立した生物のように彼女の舌があなたの耳を這いずり回る。耳の穴が彼女の唾液で湿って行く。今まで感じたことの無い感触。これでは寝るどころではない。

AR-15を起こさない、という元来の目的すら忘れたあなたは全力で彼女を引き剥がそうとしたが、彼女の抱擁を解くことは愚か、耳に対する執拗な攻撃を止めさせることすら不可能であった。

 

 

そこであなたはようやく理解した。

 

「...どうしよう...。」

 

...あなたの体と意識は、完全にAR-15のなすがままに陥っていたことに。

 

 

 

 

 

[newpage]

〇午前5時30分

 

 

 

窓に火が灯る。

 

 

 

 

「.........。」

執拗な責めを受け続けること二時間半。あなたの意識は上の空になっており、言葉すら吐くことができないでいた。

 

「....ん、んぅ、...ん?」

側からいつもとは異なる反応。一瞬で魂が体に戻ってくる。

 

「し、指揮官...?」

いつものようなはっきりとした声。しかし若干困惑したようにAR-15が語り掛けた。

 

「...やあ、お早う。」

 

 

 

 

「え、うっ、あ...、あ......、」

 

だが、あなたの言葉はAR-15の感情の起爆剤にしかならない。

彼女の顔が赤く染まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァャァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」

ドゴッ

部屋がはち切れるほどの絶叫と共に、あなたの鳩尾(みぞおち)に彼女の膝が直撃した。

 

 

「うっ...!」

 

意識が途絶える。

そうしてあなたは自信の鼓膜と引き換えにして、念願の眠りにつくことができたのであった。

 

 

 

 

 

 

あなたが最後に見たのは混乱と動揺の混じった彼女の顔であった。




M4SOPMODIIとM16A1のお話はしばらくお待ちください。
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