ハイスクールN×D Re:make   作:紺狐はボクっ娘信者

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再始動


プロローグ

 ーー台無し。

 夕焼けで真っ赤に染まった屋上に響き渡る、少女の声。その声音は、どこか苛立ちを孕んでいる。

「台無し、だと言ってるのよ」

 再び紡がれる少女の声。無視するのも気が引けると思い声の方向を向くと、フェンスに寄りかかっている女性の姿があった。

 腰まで伸びた美しい黒髪。華奢な体つきなのに、出る所は出ている。しかも遠目で見ても可愛らしい顔をしている。まるで人形のような美しい女性。

「何が台無しなんだよ」

「この状況を見てわからないのかしら。私は今、自殺しようとしていた。それを、貴方に発見されたことによって失敗に終わったの」

 どうやら、この女性は電波系の類らしい。せっかく容姿端麗でスタイルもいいのに、もったいない。

「電波系とは随分な言い草ね。今すぐ貴方を捻り潰したいところだけれど、見逃してあげるわ」

 おっと、どうやら口に出ていたらしい。

「口には出ていないわよ。私はね、特殊な力を持っているの。それは、人の心の声を聞く力」

「電波系極まれり、ってやつか?いや、冗談だから。そんなに怖い顔をしないでくれ」

 少女の瞳から光が消えるのがわかった。出で立ちというか、雰囲気で何となくわかる。まずい。少し茶化しすぎた。

「……それで、貴方は何故ここに?」

 こほん、と咳既払いをし、会話を続ける少女。

「点検だよ。屋上にあるタンクの。貧乏くじをひかされたんだよ」

「あぁ……。そんなものもあったわね。早くやるといいわ」

 そう言われても、いきなり自殺発言や特殊能力を持ってる発言する人を放っておくのも気が引ける。

「大丈夫よ。自殺なんてしない。興が削がれたーーというやつよ」

 淡々と答える女性を背に点検を始める。鵜呑みにする、という訳では無いがこれ以上追求しても無駄だろう。油断して言うタイプにも見えない。

「……賢い選択ね」

 特に反応することなく、黙々と点検を続ける。正直なところ名前を書いて点検したことにしたいが、目撃者がいるからそうもできない。

「それじゃあ、ひとつだけ忠告。近いうちーー1週間以内に、自分の身の回りの環境が変わる出来事に襲われるわ」

「そうかよ。なら、その時はアンタの所に行くさ。対処法とかも知ってんだろ?」

「ふふっ、そうね。待ってるわーー兵藤一誠君」

 女性がそう言うと、びゅううううっと強い風が吹いた。咄嗟に目を閉じ、次に目を開けた時にはその女性はいなくなっていた。

「なんだったんだ、アイツは」

 そう呟いて、屋上を後にした。

 

 

「それはね、きっとお兄ちゃんの妄想だよ」

 かなり理不尽な言葉をなげかける妹こと兵藤憂姫。150センチにも満たない身長に貧乳。さらに普段からツインテール。ちなみに、贔屓ではないが兄から見ても可愛いとは思う。

「うるせ。なんで妄想の話をしなきゃいけないんだよ」

「ついに現実と二次元の判別がつかなくなったのかなって」

「俺はそこら辺はちゃんとしてるっつの」

 さっきまでの話を試しにしてみたらこの有様だ。ちゃんと返されるとは思ってなかったが、まさかここまで相手にされないとは。

「でも、人の考えてることがわかるって言うのは、意外と誰でもできることなんだよ」

「と、言うと?」

「人間は喋らなくても、表情やその動作からある程度までなら分かるもの。お兄ちゃんだって、私が思いっきり不機嫌そうな顔してたりしたら何となく察するよね」

「ん、まあそれなりにな」

 まあ、そう言われるとわからないことも無い。ただ、あの人は背を向けていても完璧に当ててきた。仕草だけでそんなにわかるものなのか。

「ただ、どこまで把握できるかはその人次第だからさ。ま、そんなに深く考えないことだよ。それで、その人はどんな人だったの?可愛かった?」

「まあな。黒髪の長髪でスタイルも良くて、なおかつ顔もいい。それこそそんな性格がなけりゃ男が放っておかないだろうな」

 そう言うと、なぜか憂姫は不機嫌そうな表情を見せる。むーっ、とわざとらしく頬をふくらませてだ。

「多分、それは生徒会長だよ。でも、あんな人がタイプだったんだね」

「……いや、そういうんじゃない。あの顔、どこかで見たことあるんだ」

「そりゃあ、全校集会の時に挨拶するからね」

「もっと昔にだ。それこそ、思い出せないくらいに」

 本当に、いつの出来事が思い出せないくらい昔のこと。だけど、その人に会ったということだけは覚えている。まるで、何かの呪いのように、身体に刻み込まれてるような。そんな感覚だ。

「テレビでよく見る有名人を身近な人間に思う、と言うやつかな」

「違う.........と、思いたい」

「それで?お兄ちゃんは恋をしちゃったってこと?」

「誰が、あんな電波女好きになるかよ」

 そう言いつつ、憂姫から顔を背けた。

「なーにー?何か面白い話でもしてるのー?」

 そう、楽しそうに言いながらリビングに入ってくる女性こと千代田こよみ。隣に住む幼なじみで、よく夜ご飯を作りに来てくれる。両親が海外で働いてるせいで料理できる人がいないというのが一番の原因だが。

「あ、こよみ。お兄ちゃんの恋のお話をしてたんだよ」

「一誠が……恋!?」

 何やら驚いた様子のこよみ。

「その反応だと俺が女に興味が無いように聞こえる気がする」

「気の所為だよ。それで、お相手は誰かな」

「生徒会長さんだよ。一目惚れだってさ」

「話を変な方向に持ってくな。そもそも恋なんてしてねぇ」

 そう言って、2人の頭にチョップを食らわす。もちろん、痛みを感じないように優しくだが。

「いったぁ!女に手を上げるなんて最低だよ!」

「ちゃんと加減してるし、いつも俺が受けてる扱きに比べたらマシな方だろ」

「それはそうだけどさっ」

 笑顔を見せるこよみ。

 因みにだが、俺の体には伝説の龍が宿っている。これだけ聞けば思春期の男子の他愛のない妄想かと思うが、事実である。

 まあ、実際にそんな力を宿すと大変で、その力を危険視する勢力に殺されかけたこともある。あとは、戦闘狂に付きまとわれたことも。

 そんな奴らに対抗するためにこよみから扱きこと修行をつけられている。その内容がハードで、今までどれだけ死にかけたか。そのお陰で強くはなれたが。

「それで、どうするの?自分から乗り込んで告白でもする?」

「まだ言うか。……ま、なにかない限りは行かねーよ」

 そういうことになってるし、下手に会いに行ってもはぐらかされるのがオチだろう。

「ふーん。じゃ、頑張ってね。私は夕飯でも作るよ」

 そう言うと、こよみは台所に行って料理を始めた。憂姫の方は考え事をするように顎に手を当てている。

 ……ま、そんな劇的な変化なんて起きない方がいいんだけどな。今の生活には十分満足してるし。

 

 

 余談だが、夕飯には何故か赤飯がでた。いつの間に用意したのだろうか。

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