ハイスクールN×D Re:make   作:紺狐はボクっ娘信者

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11話

 その日の放課後。帰り支度をしていると、とある男性から話しかけられた。

「やあ、一誠君。放課後暇かな?」

 そう、学園一のイケメンの噂されるほどの美少年木場祐斗だ。割と旧校舎の近くで一緒になってよく昼食を食べている。いい友人だ。

「んぁ?珍しいな、ここに来るなんて」

「部長から一誠君を呼んでくるように指示を貰ってね」

「部長?」

「オカルト研究部の部長さ。明日からの合宿について話があるということでね」

「ん?リーアの眷属なのか、木場」

「リーア?……ああ、そういう。うん、そうだよ。まあ詳しい話はこの位で、旧校舎に行こうか」

「旧校舎?」

「オカルト研究部の部室があるんだよ。旧校舎だから人が寄り付かなくて好きにできるから、ということらしいよ」

「……まあ、いいけど。1つ条件をつけていいか?」

「僕にできることならなんでも?」

 木場の発言に周囲の女子から黄色い歓声が上がる。……あの、そういう意味じゃないんですが。

「アーシアと遥も一緒に行っていいか?」

「ん、大丈夫だよ。その予定できたから」

 周囲からは三角関係だの四角関係だのと聞きたくない単語が聞こえてくる。……憂鬱だ。

「じゃ、行こうか。アーシア。遥」

「はいっ。イッセーさんっ」

「ん、わかったよ」

 ……さて、どうしよう。会うのは久しぶりだが。というかサーゼクスの反応を見てる限り変なことは言えないしなぁ。

 

 ーー旧校舎

 

 旧校舎の中に入ると、思ったよりも清掃されていることに驚いた。というか、下手したら新校舎より綺麗だぞ。床と窓はピカピカで、それこそだれかが毎日清掃しているかのような。

「さすがに個人で使用するのに汚いのはいただけないということで使い魔に掃除をお願いしているんだ。定期的に清掃業者も入って確実に綺麗にしているよ」

「随分と綺麗だと思ったらそういうことか」

「間違ってもスカートを覗きみようとしないでね。下手をすれば見れるから」

「人を変態扱いすんな」

 何故かばっとスカートを隠す遥とアーシア。

「きょ、今日のは自信が無いですから……」

「まず見る前提で話を進めるのをやめようか」

「……見たら、切り刻むからね」

「だからなんで見るのが前提だ。俺はそういうのに魅力なんてあんまり感じな……へぶっ」

 不意に背中からふたりに蹴り飛ばされた。理不尽すぎる。

「コントのようだね」

「ダメージのあるな」

 面白がらないで助けてほしい。

「て、ここが部室だよ」

 到着したのは二階の端にある応接間のような場所。扉は豪勢なものに変えられている。……というか、金の使い方間違ってる気はするけど。

「木場祐斗です。兵藤一誠君をお連れしました」 

 こんこんっ、とノックをした後に恭しく喋る。

「入っていいわよ」

 少し高めの女性の声が聞こえる。聞き覚えのあるリーアの声よりは少し落ち着いているというか。大人びてる印象だ。

「はい。失礼します」

 そう言って木場が扉を開ける。すると中には骸骨やろうそくといったオカルトのイメージのまんまなアイテムが装飾として置かれていた。ただきちんと整理されており、汚いということは無かった。

 目の前には大きなテーブルと椅子が設置してあり、そこには確か1年生の塔城小猫ちゃんが座って美味しそうに羊羹を食べていた。白髪ショートカットの美少女でロリ体型。どこぞの大きなお友達が狂喜乱舞しそうではある。

「こっちよ、イッセー」

 右方向から声が聞こえる。声の方向をむくと、そこには豪勢な椅子に座ったリアス先輩がいた。たしか、学園三大お姉様の一人だ。燃えるような赤く美しい挑発が印象的な先輩で、スタイルもかなりいい。かなりの美人だ。

「……ん?リーアは?」

 困惑するような声を出しながら首を傾げる。

「……ん?リアス先輩?」

 ぴくり、とリアス先輩のこめかみに青筋が浮かんだ気がした。

「な、なんでその呼び方をしているのよっ!」

 完全にお怒りモードのリアス先輩。

「んんっ!?どうしたんですか、そんなに怒って」

「昔の呼び方をされたからに決まってるでしょうっ!?イッセー」

 なんというか、この怒り方に覚えがあった。たしか、リーアと初めて会った時もこんな感じで……。

「って、まさかリーアか!?」

「だからその呼び方をやめてって言ってるじゃないっ!?」

「そんな事言われてもそう呼べって言ったのはリーアだろ。それに本名を知らなかったんだよ。お前の兄貴がいつもリーアたんって呼んでるからてっきり」

「……普通、気づくでしょ……。もう、お兄様恨むわよ」

 完全に怒りの矛先がサーゼクスに向いたのがわかった。とりあえず助かったということにしておこう。

「あらあら、そんなに怒ってはダメよ?リーア?」

 煽るように言葉を紡ぐのは同じく三大お姉様と称される姫島朱乃先輩。黒髪のポニーテールが印象的な大和撫子といった印象。贔屓目なしに見ても美人にみえる。……というか、3人ともスタイルいいんだよな。三大お姉様。

「こうなることが目に見えていたから嫌だったのよ……」

「随分いたずら好きのように見えるな」

「こうなったのはイッセーのせいでしょう?」

「酷いとばっちりだと思う」

 まあ原因を作ったのは俺だが。

「ってか、さっき聞いた時なんか納得してたな。木場」

「てっきりそういう関係だと思ってね」

「五年ぶりくらいに再会したんだぞ。リーアと認識したのは今だけど」

 五年も放置するとか正気の沙汰では無いと思う。

「……んぁ。そういや、全員悪魔だったな。リーア……もといリアス先輩の眷属だとは思ってなかったけど」

「さすがに気づいていたかしら」

「魔力の気配ってもんがあるんだよ。それが悪魔特有の感じ方。ま、装置とかで抑えられればその限りじゃないけどな」

 そういうの、アザゼル作るの得意そうだし。

「……あの、イッセーさん。そちらの女性とはどんな関係ですか?」

 何やら不安そうにしているアーシア。

「五年前に魔界で魔物から助けた女の子と助けた男って関係。それで魔王の妹」

「ま、魔王様の妹さんですか?」

「ええ、そうよ。……あれを魔王と言うならね」

 この数年で一体何があった。

「悪魔としては尊敬できるけれど、家族としてはね。……一緒にお風呂に入ってこようとするのよ!?信じられるかしら!?」

「そういえば、先日会った時に断られたの俺のせいにされたな」

「普通に考えてこの年齢になってお兄様と一緒にお風呂に入るわけないでしょう」

「俺もそう言ったよ。聞く耳持ってなかったけどな」

 だからあいつの称号はシスコン変態魔王になっている。

「それに、リーアと結婚しろとか何とか言われたぞ。あと近くにいたセラにもソーたんと結婚しろとか何とか」

「な、なな、何を口走っているの、お兄様!?」

 何故か顔を真っ赤にして動揺するリーア。

「「けけ、結婚ですか(するの)!?」」

 近くにいたアーシアと遥まで動揺している。

「さすがにその場でするとは言えないし。それに相手くらい自分で見つけるだろって返したけど」

「イッセー?」

「ん?」

「土下座」

 ものすごい剣幕という訳ではなく、逆に笑顔でそうたんたんと言われる。目が笑っていない。

「何も覚えていないのなら、土下座しなさい」

「……?あ、そういえば口約束はしたっけな」

「……口約束?」

「書面に書いてないから口約束としか言えないだろ。……ま、そうなるにはまだ早いんじゃないか?」

「……早いって、熟女好きなのかしら」

「ちげぇって。とりあえず学生のうちはダメだろ。あと、もう少しいい女になったらな」

「……まったく。イッセーらしいはぐらかし方ね」

 と、他愛もない会話をしていると遥とアーシアからつんつんと脇腹をつつかれる。

「約束ってなんですか?」

「お互いに大きくなって魅力的になったら結婚って約束。正直小さい頃の話だから忘れてるかと思ってた」

「それって、今のリアス先輩ではまだ足りないということですか?」

「……ま、そうなるかな」

 とりあえずこう言っておけば逃げる時の言い訳になりそうではある。

「……一誠君、理想高すぎじゃない?」

「あくまで見た目じゃなくて内面な。見た目だけならモデルレベルだろ。リーア」

「「……頑張らないと」」

 何をですか。

「あれ、眷属は全員か?」

「ええ、そうよ。女王(クイーン)の朱乃に騎士(ナイト)の祐斗。そして戦車(ルーク)の小猫よ」

「……ルーク?小猫ちゃんが?」

「……なんですか」

 何故かジト目で睨まれた。

「いや、イメージ的には僧侶(ビショップ)だと思ったから」

「……見た目で判断しないでください」

「見た目じゃなくて能力的に。だって、普通の人間から転生したんじゃないだろ」

「……っ!?」

「これでも赤龍帝だから気配でなんとなくな。ま、話したくないならそれでいいんじゃないか?」

「……はい」

 こくり、と頷く小猫ちゃん。ただジト目で睨むのは続行するようで。

「じゃ、リーア。どの程度までなら対応出来る?上級悪魔程度か?」

「私は……そうね。上級悪魔の中では中の下。良くて中の中程度だと思うわ」

「随分強くなったな、おい。少し強いくらいの魔獣に絶望してた頃とは雲泥の差だな」

「何年前の話をしているの。せいぜい小学生程度の年齢よ」

 そう言いながらわしゃわしゃと頭を撫でると、満更でもなさそうな顔で言葉を紡ぐ。

「これでも褒めてる方だぞ。で、他の3人は?」

「朱乃は私の同程度かしら。単純な魔力量では私と同程度で、技術だけなら朱乃の方が上ね」

「……それって、滅びの魔力でゴリ押ししてお前はそのレベルって言うことか?」

「……悪いかしら」

「いんや。伸びしろはある。それを伸ばすかはお前次第だろ」

「……ん。話を戻すわ。佑斗と小猫は中級悪魔の中では上位レベルよ。戦闘経験を積めばおそらくは上級悪魔レベルね」

「ふーん……?結構粒ぞろいというわけか」

 と言っても、このままじゃライザーにはお世辞にも勝てるとは思えない。と言うより、ライザー一人に全滅させられる。……流石に、フェニックスは厄介だな。

「よーし、じゃあ俺が多少なりとも本気を出して教えるから死なないように頑張れ」

「……え?イッセーが教えるの?」

「なんだ、不服か?多少なりともお前らよりは強い自信があるが」

「……と言うよりは、一誠君はどれほどの実力があるのかな」

 不思議そうに首を傾げる木場。

「お前ら全員相手にしても傷一つつけられないよ。神器使わなくてもな」

「……口で説明しても納得しないわよ、きっと」

「ま、いいか。じゃあ普通に戦った方早いか」

 まあ、実力を確認するには戦うのが1番だろうし。

 

 

 

 数分後、旧校舎の裏側の開けた場所に集合した。……ま、要するに実力差の確認だな。

 戦闘をするにはちょうどいいくらい……三十メートル四方は開けている。ま、オーソドックスではある。

「……本当にいいのかい?」

 心配そうにしている木場。両手には二振りの西洋剣が握られている。魔力はそんなに感じられない、ただの剣だ。ただ、その姿がさまになっているあたり、ナイトとしてはある程度熟練されているのだろう。

「いいさ。あと、本当に死にたく……いや、怪我したくないなら殺す気で来いよ。手加減はしてやる」

「随分と自信過剰ですわね、一誠君」

 バチバチ、と両腕に帯電させている朱乃先輩。女王ということもあって全ての能力が強化されているが、それでもかなりの魔力量だ。というか、あの帯電してる電気だけで下級や中級悪魔程度なら簡単に屠れるぞ。

「……後悔、しないでください」

 猫のマークが描かれた薄めのグローブを装備した小猫ちゃん。さっきはああ言ったが、単純な戦闘力は普通に高いと思う。ただ、それ止まりってことだ。

「……あれ、リーアは参加しないのか?」

「目に見えているもの。私は遠くで見物しているわ」

「オーケー。じゃあ、遠くでな」

 ちなみに、アーシアと遥は二階から観戦している。……ま、下手なとこは見せられないって訳だ。

「じゃ、こいよ」

 おもむろに四肢を魔力で覆う。簡素だが戦闘能力をあげるには案外効率的な状態。

「じゃ、遠慮なくっ」

 そう、呟いたと同時に思い切り地面を蹴る木場。初動はそんなに早くないが、2歩目に入って瞬間、姿が消えた。

「……ふっ!」

 一瞬。一呼吸置く前に目の前に現れ、躊躇なしに首目掛け件を振り下ろされる。それは一直線に最短距離を走り、効率的に力が込められている剣士のお手本のような一撃。相当修練を積まなければ、こんな芸当は出来ないだろう。

「……ま、こんなもんか」

 刹那、刃先が首に到達すると同時に完全に粉々に砕け散り、霧散する。

 ただ首に魔力を集中させて剣を受け止める。ただそれだけだが、密度を濃くするとこんな芸当もできる。

「今、何をしたんだい?」

「首に魔力を集中させてガード。で、その硬度が魔剣を上回ったから粉々に粉砕って感じだな」

「受け止めるならまだしも、あんな方法で破壊するかい?普通」

「お前が相手をしてるのは普通じゃないってだけだろ」

 そんな自嘲気味な笑みを浮かべながら、今度は黒い西洋剣を作り出す。それは、先程の剣と比べるとかなり魔力の濃度が濃く、作りなれているような感覚を覚えた。まさか、手を抜かれるとは思っていなかったが。

「……いきますわよ」

 ふと、右方向から全力で魔力を放出される。その奔流は空間を削る勢いで一直線に俺目掛け放たれていた。木場はタイミングよく離れていたが、このままだと旧校舎ごと吹き飛ぶ。

「甘い」

 ただ、無造作に右腕を凪いで魔力の奔流を相殺する。不意打ちをするなら声を出さないでするのがセオリーだ。相手に攻撃の意志だけではなく居場所までも教える愚行になる。

「このレベルなら流石にライザーを1回なら倒せるだろうけど、連発できなきゃ回復されて終わりだな。もっと低威力で連射出来れば立ち回りにもバリエーションができる」

「……それは考えましたけれど、貴方相手にそれは効果がないと思いまして」

「攻撃の基本は面で翻弄して点で断つ、だ。全体攻撃をブラフにしながら一点集中攻撃を駆け引きを前提にしながら戦うのが普通だぞ?」

「そんなことをしてしまえば、たちまち魔力が無くなってしまいます」

「だからそこは訓練の蓄積と戦術構築の慣れに関わってくるんだよ。今回の場合だと木場や小猫ちゃんみたいな近距離特化みたいなやつがいるんだから、朱乃先輩は遠距離攻撃……つまり面での攻撃をするべき」

 真面目になって答えてみれば、朱乃先輩ははっとした顔をする。

「で、小猫ちゃんはどうするんだ?スピードならおそらく上の木場がスピード負けして、魔力なら朱乃先輩の方が上なのに簡単に打ち消された。となればすることは?」

「……パワーでごり押す」

 そう言って、思い切りかけ出す小猫ちゃん。流石に木場と比べるとスピードが数段落ちるが、その分パワーがあると思いたい。

「……倒れてください」

 小猫ちゃんから放たれる左ジャブに近い連続攻撃。華奢な腕から放たれているとは思えないほど重い風を切る音に驚くも、余裕を持って紙一重でかわし続ける。

 威力を考察するに、単純なパワーだけならそこらの上級悪魔と比べても遜色ないかもしれない。そこいらの肉弾戦する悪魔よりよっぽどえぐい音してるぞ。ま、それだけに勿体なくはある。

「……当たって、ください」

「洒落にならないって。このレベルは。この戦闘スタイルは独学か?」

「……そうっ、ですっ」

 ジャブでの連続攻撃に変えながらも的確に急所のみを抉ろうとしてくる拳に驚きながらも惜しいなとはと思う。

「撃ち方に無駄が多すぎる。それだと威力がどうしても半減以下になるのに、それでもこのレベルとか怖いな」

「……褒めてるんですか?」

「褒めてるよ。……小猫ちゃん、魔力を使って追加攻撃したりはしないのか?」

「……そんなこと、しなくても」

「勝てるとは言わないぞ。腕力だけで勝ち上がるような怪物は一人知ってるが、それは数十年も鍛錬し続けてやっと手に入れられる境地だ。一朝一夕で手に入れられるもんじゃない」

 ふと、脳裏に暑苦しい悪魔の姿がよぎる。そういや、リーアの親戚だったな。あいつ、今元気なのだろうか。

「……じゃあ、どうしろと」

「それを一緒に考えるための指導者だろうが」

 小猫ちゃんの攻撃に合わせて腕を掴み、そのまま投げ技の要領で空に投げる。俗に言う合気道に近い技法だ。まあ思ったより小猫ちゃんの力が強くて数メートルほど上空に飛んでいってしまったが。

「ナイスキャッチ、ってな」

 落ちてくる場所に先回りしてお姫様抱っこの容量で抱きとめることに成功する。小猫ちゃん本人は複雑そうな顔をしてるが。

「……もう少し優しくしてください」

「次は善処するさ」

 そう言いながら笑顔を見せると、何故か顔を背ける小猫ちゃん。あれ、もしかして嫌われたか。

「ま、怪我がなければ御の字だろ」

 そう言ってゆっくりと下ろすと、「そういう問題では無いです」とジト目で睨まれた。

「リアスは、こうなることを予想していたのね」

「……まあ、そうよ。言い忘れていたけれど前にお兄様とイッセーが戦ったことがあったのよ」

「魔王様と?」

「ええ。その時だったかしら。禁手化(バランスブレイカー)と呼ばれる強化形態が神器にあるのはわかるわよね」

「ええ。神器の至る境地、ということは分かるわ」

「その形態で本気のお兄様を完封していたのよ」

「「「……!?」」」

 随分と昔の話をするな。リーアと会った時だから5年前の話だ。まだやんちゃしてた頃の。それにそんな言い方されるとどこぞの力をひけらかす主人公共と同じようで嫌だ。

「あれはお前の兄貴が『リーアたんと結婚したいなら私を倒しなさい』とか意味のわからないことを言って襲ってきたから迎撃しただけだろ」

「それでも倒すような人間は普通はいないものよ」

「……それはそうかもな。あのシスコン本気で消しに来たからな。赤龍帝を不穏分子として排除するならまだ言い分としてはわかる。だけど、妹を取られたくないから本気で殺しにくるとか頭おかしいだろ」

「それがお兄様なのよ」

「……ジーザス」

 次に会ったら本気で殺されるかもしれない。

「まあこれである程度の実力差があるのは理解したと思うが、さすがにライザーはこれほど強くはないぞ」

「……そうですよね」

 あんなハーレムバカにこんな力持たせたら世紀末になる。

「だから一週間である程度……俺がある程度認めるくらいには強くなってもらうか」

「随分とアバウトね」

「その方が模索しやすいかと思ってな。木場はとりあえず実践経験を積むことが今できることだからな。とりあえず俺と遥の二人をひたすら相手して経験を積む方向になるな」

「……それ、死なないかな」

「死なない程度に加減しながら痛め付ける」

「……」

 何やら少し苦笑しているが、死んだら洒落にもならないから加減はする。

「小猫ちゃんは……知識と戦闘技術の方の訓練をしようか」

「……知識と戦闘技術、ですか」

「語弊があったな。基本的には知識と技術のために午前中は俺と講義。午後からは魔力操作と実戦いう形になるかな」

「……そうですか」

 流石に木場と同じメニューこなしてから夜に魔力操作なんてさせたら本当に倒れる。オーバーワークなんて百害あって一利なしってやつだし。

「朱乃先輩は魔力操作の練習をしながら範囲攻撃の練習。実験相手は俺がなる」

「それだと、一誠君の負担がすごくなるような」

「流石に一日交代だ。へたに移動するよりはそっちのが効率がいい」

「……はい、わかりました」

 よーし、メニューはある程度決まった。……あとは付け焼き刃レベルでどれほどやれるかだな。

「……イッセーさん」

 いつの間にか2階から降りてきたアーシア。

「どうしたんだ?アーシア」

「私は、どうすれば強くなれますか」

「……そもそもアーシアは戦闘向きじゃないからな。神器の操作について学んで、あとは基礎体力をつけるって感じになると思う。案外体力使うから」

「そう、ですか」

「なにも戦闘は全然だけでするものじゃない。アーシアみたいな後方支援特化の存在がなければ即座に壊滅も有り得る」

「重要、ですか」

「そう。真に必要とされるのはいつも回復役さ」

 そう言って頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めるアーシア。

「……あの、私は?」

 何か申し訳なさそうにしている遥。

「遥の場合現時点での木場の超上位互換みたいな感じだろ。それに遥の能力の都合上切込隊長から味方の支援でも何でもござれのハイスペックウーマンだ。いてもらわなきゃ困る」

「んー……そっか」

「それに、遥の場合安心してみてられるからな。だから自信持てよ。最強の騎士様」

「ん、ありがと……」

 ぽんぽんと頭を撫でれば軽く俯きながら涙声でそう呟いた。……何か、思い詰めてるとこもあるんだろう。

「私、絶対にお役に立てるように頑張りますっ」

「私も、一誠君が背中を預けられるような……。ううん。守れるような、騎士になる」

 うん、いい決心だと思う。……遥の場合俺は本気出さないと負ける可能性高い、というのは黙っておいた方がいいだろう。遥の強さは本当に凄い。

「……で、この状況どうするのかしら」

 そう、リーアに言われると真面目にどうしようか考える。

「……とりあえず、部室戻るか」

 

 ーー余談

 

「そういえば、セラとの約束、日曜日だけど修行で行けないよな、これ」

 部屋で一人絶望する男の姿。あの魔王、そういった話のバックレは本当に許さないタイプだ。それこそ骨数本ではゆるしてもらえないだろう。さて、どうするか。

 ーーこん、こんっ。

「お兄ちゃん、いる?」

 不意にノックの音が聞こえたかと思えば続けて憂姫の声が耳に入る。

「ん、いるぞ?」

「入るよ?」

 とことこと部屋に入ってくる憂姫に癒されながらも現状に絶望するばかりだ。

「どうしたの?」

 首をかしげながら質問する憂姫に言葉を詰まらせる。

 単純に女の子とデートについて考えている、なんていえば数日は話を聞いてもらえない。なんなら拷問もの。かと言って嘘をつけば好感度が下がる。というかしばかれる。さて、どうしたものか。

 ……というか、千夜先輩の予言が当たって真面目に笑えない。

「……魔王様の接待をしろと言われてたんだ。ただ日曜日は修行ってことで居ないだろ?だからどうしようかなって」

 よし、これで嘘はついていない。それで回避できーー

「そうなんだ。ちなみに、その方は男性?それとも女性?」

 ーーませんでした。

 さらに難問を押し付けられたよ、おい。……まあ、ここは素直に答えるしかない、か。憂姫も知ってる相手だから慎重に。

「女性というか、魔法少女。結構前からの知り合いで、アニメとかである魔法少女のコスプレが好きな魔王様」

「……それって、大丈夫な人?」

 とても反応に困る返しをしないで欲しい。

「俺の知る限りでは(俺に会うために)仕事を放り投げたり(完全に趣味で)魔法少女のコスプレしたりするけど実力だけなら女性悪魔最強。氷を使わせたら右に出るやつは俺は知らない。神様を含めてな」

「それって、夢見る少女に最強の力を与えたような感じだよね」

「正直それだ。で、そいつをもてなすって考えたら秋葉原しか思い浮かばない」

「けれど、修行でその場所に行けない、ってことだね。まあ仕方ないんじゃないかな」

 うん、わかってくれたなら嬉しい。

「じゃあ、その人に電話をかけて、どうするか聞いてみたら?譲歩してくれるかもよ」

 訂正。全然わかってない。

「……もう、腹くくるしかないか」

 そう言いながらポケットからスマートフォンを取り出して連絡先を開く。そこには魔王様やら堕天使提督。そして天使のお偉いさんなど色んな人の連絡先が記載されている。もちろん本人だ。

「……あった」

 そして見つけたのはセラと書かれた連絡先。それを見た瞬間、憂姫の表情が少しだけ強ばった気がした。

「随分、仲がいいんだね。あの人と」

「それこそ五年前から知り合ってるからな。単純な期間だけで言うなら三番目くらいに付き合いが長い。家族の憂姫やこよみには負けるけど」

「……そう」

 落ち込んでる憂姫の頭をとりあえず撫でる。

「……ふぇ?おにい、ちゃん?」

「いや、可愛いなって」

「……っ。それ、反則っ」

 涙目になりながらもどうやら機嫌を直してくれたようだ。

 さて、電話電話……っと。

「ちゃんとスピーカーでね?」

「……はい」

 もう、無言で頷くしか選択肢はないようです。

 ーーぷるぷるぷるっ。

 もうどうにでもなれとスピーカーにして通話を開始する。

『はい、もしもし……って一誠君!?きゅ、急にどうしたの、かなぁ?』

 三回もコールがならないうちに電話に出ましたよ、魔王様。しかも声が上ずってる。相当動揺しているようだ。

「いや?ちと声が聞きたくなったから電話した、とか言ったら怒るか?」

『お、怒らないけど、珍しいよね。そういうので電話かけてくるなんて』

「まあ嘘なんだけど」

『うそかいっ!……で、要件は何?』

「日曜日の件だよ。前にサーゼクスのとこで話しただろ?」

『あー、ふたりっきりでデートするって話ね』

 ぴくり、と憂姫が反応する。正直怖い。

「それさ、サーゼクスからの依頼の修行で日曜日は無理そうなんだよ。あの時話してたろ?」

『えー……一誠君とのデート、楽しみにしてたんだけどな』

 とても笑顔でこちらを見る憂姫。目が笑ってない。なんか闇のようなものが見える。

「で、え、と?」

 待って、俺死ぬかもしれない。

「と、とりあえず今度埋め合わせするけど、何がいいかなって話」

『んー……じゃあさ、その修行先に私いくよ。たぶんサーゼクスのとこの別荘のどれかでしょ?』

 ……何言い出してるんだ、この魔王。

「いや、仕事とかあるんじゃないのか?」

『仕事なら終わらせたもん。一誠君とのデート、無くなるのは嫌だったから』

 いや、前にあったの二日前だぞおい。四十八時間で全部終わらせたのかよ。それが出来るならいつもやれよ。

「場所自体は俺も知らないぞ。おそらく転移魔法陣ですぐにいくだろうし」

『サーゼクスに場所を聞くよ。それでもダメなら駒王学園に乗り込むよ』

 なんでそういう行動力はいつも凄いんですか。もう憂姫が闇落ちしそうなレベルで病んでるよ。黒いオーラ出てるよ。そのうちオルタにでもなりそうだよ。

「……なんでそこまでするんだ?お前ほどの美人ならいくらでも相手がいそうだけどな」

『分かってないなぁ。一誠君が好きだから。一緒にいたいから頑張ってるんでしょう?』

 あ、もうダメだ。俺の方が罪悪感でおしつぶされそうだ。

「す、き?」

 あ、俺死んだわ。

「……あー、好きにしろよ。その代わり、弁当もってこいよ?花嫁修行したとか言ってたなら、その成果見せてくれ」

『うんっ。腕によりをかけて作っていくね』

 ーーぷつっ。ぷー、ぷー、ぷー。

 そして電話が切れた。……さて、今からどうしようか。

「おにい、ちゃん?」

「……はい」

「魔王様と付き合ってるの?」

「絶対にない。天に誓って」

「じゃあ、魔王様との関係はなに?」

「ゆ、友人」

「向こうはそのつもりじゃないみたいだよ。それに、相当美人なんだろうね。楽しそうだったよ、お兄ちゃん」

 完全に怒ってるよ憂姫さん。

「……ま、確かに見た目だけならな。ただ、真面目な話そういうのはないって。それに、好きって憂姫も言ってくれるだろ」

「それは、魔王様も同じだよね」

 それを言われては元も子もない。

「現時点では恋人を作るつもりなんてないっての。憂姫もいることだし」

 そう言いながら優しく抱きしめると、困惑した様子で目を見開く憂姫。

「ふぇ……?」

「結局のところ、憂姫を抱きしめてるのが一番落ち着くし」

「……ん、ぬいぐるみじゃないよ」

「知ってる。でも俺のかけがえのない、一人だけの妹だろ。だから、少しくらいこうさせてくれ」

「……一緒に、寝る?」

「ちと恥ずかしいけど、そのつもりできたんだろ?」

「うん。……一緒に、寝よ?お兄ちゃん」

 まあそのまま一緒に寝ましたよ。間違い起きないように理性はたらかせながら。

 これ完全に俺クズ男になり始めてないかこれ。

 

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