ハイスクールN×D Re:make   作:紺狐はボクっ娘信者

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とりあえずストック大半消化です


13話

 夕食後、千夜先輩を外にあるエントランスに呼び出し、紅茶に口をつけていた。セラが準備したものだが、口の中に芳醇な香りが広がって美味しい。どこかの高級品なのだろうか。

「何かしら。話って」

 怪訝な表情をうかべる千夜先輩。

「驚かないで聞いて欲しい、って言うのは多分無理だ。……ま、いつかは知ることになる事だけど」

「随分と勿体ぶるわね。何なのかしら」

「千夜先輩の姉が生きている。……正確には生き返った、というのが正しいが」

 刹那、空気にヒビが入ったような緊張感が走る。

「……嘘、でしょう?」

「ほんとだ。情報の出処がオーフィスで、尚且つアザゼルも絡んでる。信ぴょう性があるもんだ」

「……じゃ、じゃあ、身体は?魂が定着するものを作るのには技術だけではどうにも」

「それこそ、髪の毛やら肉片やらでどうとでもできるだろ。ただ、オーフィスの身体をベースに作ってるとは聞いた。ある意味では最高の身体だろ」

 二人目の龍神が誕生、と言っても過言ではないわけだし。

「……じゃあ、今姉さんは何処にいるの。何をしているの」

「グリゴリでリハビリ中。現時点で力のコントロールが出来てないから、歩く災害状態と聞いた。あと連絡をよこさないのはサプライズをするためとも聞いた」

「……あんの、馬鹿姉」

 段々、千夜先輩の顔が喜びと困惑、そして怒りが入り交じったような表情になっていく。

「俺もまだ会ってない……と言うか、今日その話を聞いたばかりなんだ。アザゼルにも電話で確認済。嘘をついてたら組織ごと潰しに行くから安心しろ」

「それは安心できないわよ。下手をすれば戦争の引き金になるわ、ふふっ」

 なんというか、この人はやっぱり。

「やっぱり、アンタは笑ってる姿が一番可愛いよ」

 そう、思わず声に出してしまう。

「……え?」

 虚をつかれたような声をだす千夜先輩。

「いや、険しい顔とか最近見せてたような小難しい顔なんかより笑顔のがかわいいって言ってんだよ」

「……そ、そうよね。そういう意味よね」

「まあ、千夜先輩の素が見れたような気がして嬉しいってのもあるけどな」

 そう言って微笑んでみせると、何故か苦笑せる千夜先輩。

「ふふっ、ごめんなさい。……ちょっと、こっちに来てくれないかしら」

 ぽんぽん、と左隣の座席を叩く千夜先輩。

「ちなみに拒否権は」

「主に恥をかかせるの?」

「……ったく。今日だけだぞ」

 観念して隣に座ると、嬉しそうに微笑む千夜先輩。

「こうしてみると、恋人のようね」

「俺じゃ釣り合わないだろ。美人だし」

「そんな事ないわよ。……ねえ、一誠君。ちょっと、左を向いてもらえる?」

「ん、別にいいけど」

 そう言って左を向いて千夜先輩から視線を外すと、こつんと方に何かが当たるような感触があった。

「……少しだけ、肩を貸して」

「……ああ。分かった」

「……うわ、ぁ……よ、か……た……」

 千夜先輩が泣くのを初めて見た気がした。いつも凛々しく振舞っている姿が印象的だったが、どこか無理をしていたのだろう。

「……ごめん。やっぱりこうする」

 一旦千夜先輩を肩から離して、優しく抱きしめる。

「……ぁ」

「……上手く言えないけど、泣きたい時は思いっきり泣けばいいんだと思うよ。千夜先輩は主だけど、それ以前に年相応の女の子なんだから」

「んく……いっせ、くん……」

 優しく頭を撫でながら抱きしめ続ける。

「……ん、ありがと……」

 千夜先輩も体を委ねてくれてる。……とりあえず、このままでいよう。

 

 

 そして十数分後。千夜先輩がふと、顔を上げる。目元は赤く、相当泣いていたのが分かるような。そんな状態。

「……見苦しいところを見せたわね」

「見苦しい、なんて思ってんならこんなに付き合わねーよ。もう、いいのか」

「……ええ。ありがとう。一誠君」

「礼なんていい。そのためにやったわけでもないし」

「……体で払えと?」

「……冗談でもそんなこと言わないでくれ」

 そんなこと要求してるなんて知られたらまじで命の保証がない。いや要求しないけれども。誤解でも怖い。

「……一誠君。ひとつ聞いていいかしら」

「ん、なんだ?」

「もし、姉さんが目の前にいたとして、一誠君は私の眷属……いえ、家族で居てくれる?」

「家族とはまた大それた話だな。……真面目な話、千夜先輩の眷属を辞めるってことは無い。俺を選んだのは千夜先輩だと思ってるかもしれないけど、実際は逆だぞ」

「……え?」

「俺が一度死んだ時、真っ先に呼んだのが千夜先輩だった」

 ま、言う通りになったと軽くイラついたけど。

「思考で丸わかりなのだけれど」

「だって初対面は最悪だろ。自殺願望者の悪魔に屋上のタンクを点検しに来た赤龍帝」

「改めて聞くと、相当異質ね。宝くじに当選するよりも確率が低いんじゃない?」

「確かにな。その時は悪魔になるなんて微塵も思ってなかったけど、なってみると案外悪くないもんだな」

 美人の主様もいる事だしな、と笑いながらつけ加える。

「でも、後悔していない?元の体の方が弱点が少なく、なにより他勢力から疎まれることもない。悪魔に所属するということは、他の組織から目の敵にされるということ……というのはわかっているつもり」

「じゃあ、千夜先輩は俺を眷属にして後悔してるか?……って、質問の答えが、千夜先輩の質問の回答になる」

 ふと、目を丸くさせるもすぐに嬉しそうな表情になる千夜先輩。

「……貴方、私が望むことを言ってくれるのね」

「千夜先輩の考えてる事なんて、大体は予想できるしな。……それに、俺は本心しか言えないたちなもんで」

 そう言いながら、軽く頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。なんというか、可愛い。

「じゃあ、私の……肩の荷を下ろしてもいいのかしら」

「それはダメじゃないか?上級悪魔としての責任とかそんなのもあるだろ」

「……厳しいのね」

「その代わり、俺も半分背負うことにする。頼りないかもしれないけど、少しくらいは楽になればーー」

 そう、言葉を紡ぐ前に唇を奪われる。なんというか、柔らかい感触が唇を襲って、一瞬何をされたのかわからなくなった。

「……一緒に背負ってくれるのなら、前払いで逃げられないようにするわよ」

「ちょ、な、なにを……!?」

「私のファーストキス。貴方にあげたのよ」

 何とんでもないこと言ってんの主様。

「そうじゃなくてなんで……」

「俺なんかに、って続くのかしら。貴方にあげたいと思ったからあげたのよ」

「……あの、本当に言い難いんだが」

「ファーストキスは済ませた、というつもり?」

「いや、その逆。今のが俺のファーストキス」

 そう、申し訳なさそうに言うと、千夜先輩の顔がだんだん赤くなって。爆発しそうなほど赤くなっている。

「え、そうなの……?」

「……はい。とってたわけじゃないけど、する機会がなかったってやつだな。相手もいなかったわけだし」

 現に迫られたことがあるのはセラくらいなもので。その時ですら色々横槍が入ってしてない訳で。実際に意識があるうちにされたのは今が初めてというやつだ。

「……嫌、だった?」

「……それはこっちのセリフ。それこそ俺が初めてでよかったのかよ」

「嫌な相手にすると思う?」

「いや、思わないな。……いや、んん?」

 何を言ってるの、この人。嫌な人にしないとか、え?どういう事?

「貴方、相当鈍いわよね。ここまで言って気づくどころか動揺するなんて」

「普通に考えて動揺するだろ。……ったく、随分と面倒なやつを好きになったな、あんた」

「ええ。その面倒な奴に相当惚れ込んだのよ、私は」

「「……ぷっ、あははははっ」」

 ふと、何故か笑いが出た。なんというか、理由は分からないけど、実際のところ本当に嬉しいのだろう。さっきから顔の火照りも止まらないし。

「でも、返事はまだよ。今の貴方、相当失礼なことをしているの、わかっているかしら」

「……自覚しているつもりだけど、一応なんでかきくよ」

「貴方、私を見ているようで、私を見ていないのよ」

 確信を着くような千夜先輩の発言。特に動揺することは無いが、申し訳なさそうな表情になる。

「多分、知らず知らずのうちに千夜先輩をあの人と重ねていたところがある」

「知らず知らず、と言うよりはほぼよ。ことある事に心のどこかで姉さんのように接している。それがどれだけ残酷で、耐えようもない程に私を傷つけているかわかるかしら」

「……ごめん」

「……だから、姉さんに会ったあとに、返事が欲しいの。私の事が本当に好きなのか。それとも、姉さんの事が好きなのか」

「……そうすることにする」

 少しの静寂。数秒にも満たない時間が、俺にとってはかなりの。永遠にも似た時間に感じられた。

「ちなみに、初対面が屋上というのは語弊があるのよ」

 静寂を破るように千夜先輩が言葉を紡ぐ。

「……は?」

「私達、十年前に会ってるのよ」

 正直、本当に記憶になかった。

「一誠君が姉さんと会うずっと前。それこそ、神器も発現していないような幼い頃の話」

 そういって、懐かしむように千夜先輩が語り始める。

「姉さんを探すという名目で一誠君の家の近くに来たことがあってね。たしか、近くの公園。古びた遊具が置いてある、小さな公園」

「……」

「そこで、途方に暮れていた私を助けてくれたのが一誠君。貴方だったの。夏の、日差しが照りつける炎天下で、ここだと倒れるからうちに来てって言われて行ったのが一誠君の家だったの」

 なんというか、だんだんと思い出してきた。確か、幼稚園に入る前くらいの時に、黒髪の女の子をうちに連れてったことあったっけ。

「そこで一誠君と遊んだりお話したりして。とても楽しい時間で。そして目的だったはずの姉さんを探す事なんて忘れてしまって」

「……」

「本当は、そこで恋に落ちてしまったのかもしれないわね。それを忘れられずに、今まで生きてきて。自分を騙しながら生きてきたけれど、がまんできなくなってしまった」

「……もしかして、ちーちゃんか?」

「……っ。気づくのが遅いのよ、バカ」

 さっきよりも抱きしめる力が強くなる。

「普通に考えて、出会って一ヶ月程度で好きになるはずがないでしょう……。何年も前から、貴方の事が好きだったの」

「……好きになった経緯は一日程度な気がするが」

「細かいことは気にしないの。一目惚れで、しかも話しているうちにもっと好きになってしまったのだから、タチが悪いのよ」

 そういって、胸に顔を埋める千夜先輩。

「……私は、どうしようもなく臆病者なのよ。貴方が私を突き放して姉さんの元に行くのが本当に怖い。でも、姉さんを突き放す貴方の姿も見たくない。我儘で臆病な卑怯者」

「……千夜先輩は卑怯者でもないし。それにどっちも突き放さないし、どっちも手放すつもりはねーよ。かといって、不誠実なこともしたくないというのが本音」

「……バカね。相当大変な道を進むことになるわよ。それとも、ハーレムでも作るかしら」

「俺にそんな甲斐性はねーよ」

「そう思ってるのは貴方だけよ。それに、私は貴方の一番であれば、側室は許すわよ」

「抜かせよ。一番嫉妬深い主様のセリフじゃねーよ」

「……別に、そんなことないわよ」

 拗ねている様子の千夜先輩。頬を真っ赤に染めあげてて、とても可愛い。

「でも、そろそろ考えるべきよ。姉さんが戻ってくる、ということは否応なくその話は出るでしょうし」

「……ん、そうなるだろうな。千夜先輩と付き合うにしろ、誰かと付き合うにしろ、ハッキリさせとかないとな」

「と言うより、誰から好かれているか自覚しているのかしら」

「千夜先輩とアーシアとカヤだけじゃないのか?」

「……さて、どうしてくれようかしら。この唐変木」

 なんかすごく罵倒されてる気がした。

「でも、私が言うのは野暮かしら。自分で考えるべきね」

「でもハーレム作るとか公言するのライザーみたいで嫌なんだよな。本当に同類のように見える」

「ああ、フェニックス家の。……じゃあ、ひとつ聞くけれど、アーシアや私がライザーのハーレムに加わったらどう思うかしら」

「意地でもライザーのこと殺しに行くが」

「そういうところよ。貴方も相当嫉妬深いようね」

「嫉妬深いとはまた違うだろ。あんなやつの所に行くなら俺が奪う」

「随分と我儘ね」

「龍が我儘で何が悪い。千夜先輩もカヤもアーシアも。全員離れて欲しくない」

「それが私達の本意でないとしても?」

「そう言われたらその時考える。そう言われるってことは俺に問題があるときだろうし」

「言ってること、矛盾してるわよ」

 くすっ、と微笑む千夜先輩。

「離れて欲しくないってのは本音。でも本人の意思は尊重したくて。ただ、ろくでもないやつのとこに行くくらいなら絶対に止める」

 相当な言われようなライザーだが、あいつはこれくらいの評価が妥当だ。

「……一誠君は、私の……私だけの兵士(ポーン)。そう、思っていいのかしら」

「何を今更。俺は千夜先輩だけの兵士だ。それ以上でも、それ以下でもない」

 一旦千夜先輩から離れ、ひざまづく。

「千夜先輩が望むなら、俺は剣にでも盾にでもなろう。刀身を研ぎ澄まし、剣をかまえ、望むならその全てをなぎ払おう」

 千夜先輩の手を取り、甲に唇を落とす。

「あー……こういう硬っ苦しいのは苦手だけどな。要するに、俺はあんただけの兵士ってことだよ。誰のものでもない、千夜先輩だけのだ」

 ふと、千夜先輩を見ると、頬を一筋の水滴が伝っているのが見えた。

「……ごめん、なさい。嫌じゃ、ないの。嬉しくて、涙が……」

「気の利いた事は言えないけど、もう少しくらいはそばに居るよ」

 そう言って、さっきと同じように隣に座る。

「……一誠君。お願いがあるの」

「ん、なんだ?」

「二人きりの時……ううん。出来れば、千夜と呼んで欲しいの」

「随分と唐突だな。それは主としてか?」

「勿論、一人の女性としてよ。……ダメ、かしら」

「そう言われたら断れないだろ。ってか、返事は後でとか言ってたのに、こういうのはいいのかよ」

「姉さんに対する宣戦布告よ。」

 やっぱり嫉妬深いよこの人。独占欲も強いし。いや、そういうとこは嫌いではないし、好きだけれども。

「もう少しいると、そう言ったわよね」

「言ったけど、長時間は勘弁な。風邪ひくし」

「一誠君って、案外病弱なのかしら」

「いかに龍でも風邪は引く。なんなら龍がかかるのと悪魔がかかるものが併発するパターンもあるし」

「その時は看病できるわね」

 ポジティブシンキングすぎるだろこの人。

「それとも、寝室でお話でもしましょうか」

「一応聞くが、そんなことが見つかったら、俺は誰に攻撃されると思う?」

「軽率だったかしらね」

 俺の予想では憂姫とこよみとセラの三連コンボきめられる。ほんとにここら一帯吹き飛ぶ。

「それでは、今宵はここまでとしましょうか?ご主人様?」

「なに、そのキャラ。……ま、そうしましょうか。寝室に戻りましょう」

「自分のな」

「いけずね」

 自分の身というか、ここら一帯が吹き飛ぶのは嫌なんでな。

 まあ、その後寝室に何事もなく戻りましたよ。翌日セラの機嫌は悪かったけど。

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